命改変プログラム
乗算の力
一つ一つの踏み込む足音が大きく、そして強く聞こえてた。少しずつ傾いて来た日差しが、少し広い影をビルで作ってる。
まあだけど、僕たちが走るのは道路の中央部分。そんな影が届くはずもない、絶好の日光浴スポット。ジリジリと肌を逐一焼く感じさえ分かるくらいの日光の照射率だ。
だけどそんな暑さよりも、今はこの場に漂う緊張感の方が半端ない。互いにお互いを視認して、そして最初の一撃を交差させる時まで、このこめかみ辺りを刺激する感覚は消えないだろう。
開戦はハゲの隣の拡声器持った赤い奴によって宣言された。それによって、血の気の多い向こう側は今か今かと待ってる状態。
開戦の火蓋を切るのはこちら側の役目と言わんばかりの対応。でもこれは、奴らが統率されてる事を示すんだろう。
それは実際厄介な事。だってそうだろ? 一人一人が個々に動くのならそれは幾ら数が居ても同じだけど、ちゃんとしたまとまりを自覚して動かれるのでは、連携とかが違う。
統率されてない大人数は雑踏だけど、統率されたそれは兵隊だ。その違い。そして今や、チンピラ共は兵隊化してる。
一筋縄じゃいけなさそうな感がするな。僕は手元のスマホに目を落とす。
(けど、もう時間がない。確かもう一分切ってる筈だろ)
あれこれ考えてる暇も、怖じ気付く一瞬も僕達には無い。ただあの装置の五メートル圏内にどうやっても近づかないといけないんだ!!
照りつける太陽の下、僕達は四・五十人の内の十五人程度が待ち受けてる最初の接触ポイントに突っ込む。待ってましたと言わんばかりに鬼気とした表情で拳を握り閉めてるチンピラ共。
「飛んで火にいる夏のなんとかってな!!」
どっかのバカがそんな事を言って拳を向けていた。どうして最後の最後で覚えるのを諦めた!! って言いたくなる残念さだよ。
だけどそんな突っ込みは無意味。ここで足を止める予定は、悪いけどないんだよ。
僕達布被ってる二人を中心に置いて、みんなが守る為に周りを囲んでくれてる配置での進軍。真っ先に狙われてるのは専ら前方のみんな。
そこに併せてチンピラ共は拳を放ってる。だけどな、こっちだって役割分担くらいしてるんだ。
(ゴメンだけど、頼むみんな!)
そんな思いを僕は心に表す。誰にも見えないし、届かないけど、でも今大々的に声を出すわけには行かない。だけど思わずには居られないから、だからせめて心には。
前方のみんなは拳に恐れず突っ込む。その姿はガムシャラで滅茶苦茶かも知れない。結局当たっちゃってる人だって居る。
だけどそれでも押し負けない炎が、みんなそれぞれに灯ってた。
「「「ずあああああああああああああああ!!!」」」
そんな声と共に、前方に居た四人がチンピラ共にぶつかりそのまま押し倒す。それも丁度、僕達に迫ろうとしてた奴らを阻害する所にだ。
元々奴らは横に開いてて、僕達も今の形を維持してちょっと感覚を広げてた訳だけど、それを接触まじかに成るにつれて少しずつ自分達の感覚を狭める用にしてた。だから奴らの両端側は、これで思わぬ障害物が出来たわけだ。
だけどこんなのはジャンプ一発で越えられるだろう。けど、必要だったのはこの一瞬で十分なんだ。
僕達はこの一瞬で、前衛だった四人を残してこの場所を抜ける。振り返らない事は既に決めた事だ。四人の犠牲に応えるには「やり遂げる!」それしかない。
後ろから聞こえる声を振り払い、僕達の前には後ろに居た人達がまた数人前に来てくれる。もう一カ所越えないといけない関所がある。そのための準備だ。
だけど次はこんなあっさりとはいけないだろう。こっちのやり方はバレた訳だし、そして四人減ってしまった。それなのに奴らは増えてるんだ。最終地点までたどり着いた時、目標は二桁だけどそれもどうなることか。
だけどここは同じやり方しかない。まだここで手の内を晒す訳には行かないんだ。
「さぁさぁ来いやあああ!!」
そんな言葉を発して今度はチンピラ共からこちらに迫る。横に広がってたから包むように僕達を囲んでこようとする。逃げれない様にしてきたか。
こいつらは後数十秒稼げば良いんだ。それで僕達は負ける。それは実際絶望的な数字に見えるけどさ、だけどこうも考えれるんだ。
僕達にはそもそも長期戦なんか出来ない。それなら限られた時間に全力を賭けれる事は、もしかしたら一番勝率を高くできるんじゃないかって。
だから僕達はこの一瞬を最大限に有効活用する事を考えたんだ。そしてたったの数十秒だからこその折れない心って奴を維持できる!
「同じ手が通じると思うなよおおおお!!」
そんな事言いながら握りしめた拳を大きく振りかぶり始める奴ら。てか既にさっきと同じやり方じゃこれは越えられないだろ。本当はこの先で使うつもりだったんだけどしょうがない。
まだ勢いを失うわけには行かないんだ。僕は僕を背負ってくれてる人に耳打ちする。
「了解。みんなアレを構えろ!!」
その言葉でみんなはポッケに忍ばせてたスマホを取り出した。そして素早く向かい来るチンピラ共に背面を向けて、元々起動してたアプリを実行!! その瞬間、タイミングに僅かなズレがあったけど、概ね一斉に強力な光がチンピラ共を包んだ。
「うわ!」「ぎゃあ! 目が!」
とかの声が聞こえる。この隙に前方に来てたみんなでチンピラ共にタックルをかます。これで最後の光が上がる場所が見える。
僕達はそのままチンピラ共を飛び越えて前へ! 余りにもフラッシュ大作戦が幸をそうしたから人数が減らずに済んだのはよかった。
けどこれだけ効果的なら、次の場所でも使いたい所だったな。
「ぬわああ!? ――――ぶばっ!」
僕がフラッシュ大作戦の余韻を感じてると聞こえてきた誰かが殴られた様な声と音。目を向けると、前方で先行してた一人が殴り倒されてた。
そして目前に広がるのは一斉に全員で掛かってくるチンピラ共の姿。小細工止めるの早すぎだろこいつら。いや、だけどこいつ等にとっては最良の選択かも知れないな。
ようは受け身を止めたって事だろ。幾ら絶対な物量があったってそれを生かしきれずにこれまでやられてたから、さっさと総力戦にしてしまえと……そういう事か。
元々変に分散させなくても良かったんじゃね? とか薄々思ってたし、これは厄介な判断をしてくれた。兵隊が勝手に動く訳ないから、これはハゲかあの赤髪ライオン(ライオンのタテガミみたいだから)の指示か?
「おいおい、すっごい数だぞ! どうする?」
僕を担ぐ人も流石にちょっと狼狽えてそんな事を聞いてくる。この人がそうなんだから、周りはもっと同様しててもおかしくはない。
だけど今、僕は奮い立たせる言葉を大々的に言うことは出来ない。みんなの勇気を信じるしかないんだよな。ただ一つ出来る事は、この一番近い人のテンションをあげる事くらい。
この人がムードメーカーっぽいし、そういう立場にたってる。まあだけど、この状況で「頑張れ」も「後少し」も全てみんな分かってる事だろう。
もっとほかの言葉……色々検索かけたけど、教養に乏しい僕には当たり前の事しか言えないな。
「どうするも何も、僕達がやることに変わりなんてないですよ。僕達はただひたすらに、あの光を目指すだけです!」
運んで貰っといて何言ってるんだって思われても仕方ない。だけどやっぱこれだった。確実でみんなの目的地でそして目に見える距離ではたかだか数十メートル。
やれない距離じゃないと思えるだろ。見える目標は何よりも気持ちを奮い立たせる要因に成るはずだ。
「言ってくれる……けど! 確かにその通りだ!! 全員この数秒にだけ全てを賭けようぜ! そのくらい、今の俺たちでも出来るだろ!!」
「「「お……おう!!」」」
彼の言葉で気持ちが持ち上がったみんなは迫り来るチンピラ共に自ら体当たりしていく。それは僕達の道を造る為。一度倒れても、再び立ち上がり、どんなに無様でもその手を伸ばす。
みんなは一人でも多くの敵を引き受けようとしてくれてる。そんなみんなの姿に応える為にも、僕達はやり遂げないといけない。
どう足掻いてもあの場所までたどり着く!!
あっと言う間に僕達を包んでくれてた壁が薄くなり、背中に居る僕にも迫るほどに成った大量のチンピラ共。だけどそれでも進めてるのは、この背負ってくれてる人のスペックの高さ故だ。
片腕を振り回し、迫るチンピラをボッコボッコと吹き飛ばすこの人は圧巻。だけど流石に息が荒く成ってるのが分かる。それに体が燃えてるように熱い。
てかどう考えても無理してるよな。人一人背負ってここまで走らせてるし、それに背負ったまま戦闘なんて……普通は出来ないよ。
「こんな事言うのもなんだけど……大丈夫ですか?」
「はは……大丈夫に……決まってんだろ」
やばい、全然大丈夫っぽくないぞ。汗の量ハンパないじゃないか!
「このくらい、まだまだ平気だよ。人間ってのは本当に駄目だと思ったときからが案外長い物だぜ」
そんな事を親指立てて言ってるけども、それはある意味寿命を削ってるみたいな事と変わりないぞ。痛みや辛さは、脳が発する危険信号だ。
甘えまくるのもどうかと思うけど、無視し続けるとその内越えた限界によって、体は壊れる。そういう考えで無茶をやり続けた結果が僕の今のこの状態だしな。
LROの肉体はデータだから……幾ら傷ついても血が流れても、精神でHPがある限り立ててた。肉体に影響があることは分かってたけど、そんな事よりも目の前の事だった。
そんな無茶が体をこんな風にさせたと言える。
「無茶をしずぎると体が壊れるぞ」
「はは……じゃあ問おう。お前はこんな状態に成るまで無茶をしたんだろ? それで後悔してるのかよ?」
目の前のチンピラにその強靱な拳をたたき込みながら、この人はそんな事を言った。その瞬間「ああこいつバカだな」って思ったよ。
何言っても無駄。だって自分がそうだったから、よく分かる。僕は素直に応えてやる。嘘偽りじゃないこの気持ち。
「全然。後悔なんてあるわけない。失敗したと思うのは、今この場で役立たず極まりない今の自分の事がだ!」
「はは! それならしっかり守られて、最後の仕事の体力を温存してろ! それまでは俺達をイヤでも信じてくれや!
無茶なんて誰だって分かってる。でも誰も止まらなかったのは、今この瞬間、俺達は生きてるって感じるからだ!!」
そう言って僕達は遂に押し寄せてきてたチンピラ共を抜けた。僕達と、もう一人布を被ってる奴セットでね。てか、これだけしか残ってない。
後はみんな僕達の為の道に成ってくれた。でもそのおかげで後十メートル程度。投げるには五メートル以内だから後半分程度。後数歩の距離!!
「どっちか知らないが、まぁ聞け。ここまで―――――――――――――――――――――――――――だ!!」
チンピラ共の集団を抜けて、少し胸をなで下ろしてた一瞬。そんな声が耳に届いた。イヤな予感。肌に突き刺さる様な冷酷な眼差しが僕達を射抜いてるのを感じた。僕は思わず「避けろ!!」そう叫んでた。
「ぐっ!?」「づあっ!?」
だけどそれは遅かった。心の一瞬の隙を突いて懐に入り込んだ奴は、僕達の丁度中間で何かをした。その瞬間、僕と背負ってくれてる彼、そしてもう一セットの方がそれぞれ反対側に飛ばされる。
思わず手から放れた白い布が宙を舞う。そして僕は地面を転がる羽目に。アスファルトの固い地面に肩や背中を強打する。リアルの痛みはやっぱ半端ないな。
ダメージが蓄積された体にはもう拷問だ。僕が声に成らない声を上げてると、さっきの攻撃を決めた奴がこちらを見ながらこう言った。
「そっちだったか。残念だったな、これで終わりだ」
日光に照らされた奴は眩しい。だけどこのシルエット……多分ハゲなんだろうなとはなんとか分かる。てか、メタボ気味の体に見えたけど、さっきのは一体何なんだ? リアルであんな事出来るのかよ。だけど今はそんな質問を投げかけてる場合じゃない。視界に映るみんなはまだうずくまってるし、ここで立ち止まってる時間はないんだ。
「そっちが貴様なら、こっちはやっぱりあの女の子か?」
そんな事を言いながら、ハゲがもう一方の布を被ってる人へと近づいた。こっちに来ないのならありがたい。僕はなんとか立ち上がろうとする。
「っつ……」
足がガクガクする。だけど、ずっと背負われて楽してたんだ。それは最後の最後には自分で走る為。予想だってしてない訳じゃなかった。
だからこそ……動けよこの野郎!!
「ん? これは……!!」
布を取り上げたハゲがそんな言葉を漏らしたのが聞こえた。バレたか。けどまだだ! 僕はまだ……動ける!!
「ずああああああああああああああ!!」
蒼天を突く怒声と共に、僕は立ち上がり走り出す。地面に足が縫いつけられた様な感覚がしないでも無いけど、もうガムシャラに行くしかないんだ。そう、まだ後一人あそこにいる。
「ちっ、待ちやがれ! これはどう言うことだ!? あの女は一体どこに!?」
そんな事を言いながら、出てる腹を揺らしながらこちらに向かってくるハゲ。だけど後数歩で射程圏内。僕はポケットからスマホを取り出し、その画面を見つめる。目の前に見える大きな機械の姿。
放電が激しく成りつつあるのがこのスマホでも分かる。
「くはっはっは! やらせねえよ!!」
向かいくる赤髪ライオン。遂に出てきたそいつが、ライオンみたいな獰猛な瞳を爛々と輝かせてこちらに、その手にあった拡声器を投げつけてくる。
「つっ……」
「ひゃっはああああああ!!」
拡声器を弾き返すと同時に腹に入った拳。喉をせり上がる酸っぱい物を僕は押し戻す。こいつ最初からこれを狙って……僕の膝はあっけなくこの場に崩れ落ちた。
「テメェ……」
「ひっひゃは! こんなのもいらないよな!?」
そう言ってこの赤髪ライオン野郎は僕の腕ごと、スマホを蹴りとばす。腕に走る痛みと共に、スマホがアスファルトを転がっていく。
「くっそ!」
僕は赤髪ライオンに背を向けてスマホへと腕を伸ばす。こんな奴相手してる場合じゃない! だけどそれが気に食わなかったのかそいつは僕の背中を勢い良く踏みつけやがった。
「おいおい、俺様を無視するとは良い度胸してんじゃねーか。ま、だけどもう終わりよ。なあゲン?」
そんな声と共に、アスファルトに横たわった僕の目に、黒い靴が見えた。その足下にはスマホ。それをハゲが拾い上げる。
「ええ、その通りです若。これで我らの勝利は確定――――ん?」
スマホを握り得意気に言葉を紡いでたハゲがその口を僅かに歪ませる。
「どうしたゲン?」
「いえ、確かこいつのスマホは赤じゃなく、青い色をしてた様な……」
はは、サングラス越しで良く見てるじゃないか。確かに僕のスマホは“それ”じゃない!
「くく……」
僕は地面にへばりついたまま、乾いた声を上げる。
「どういう事だ! これはお前のじゃない! そうだろう? ならお前のスマホはどこに――――――まさか!?」
そう言ってハゲは突然当たりをキョロキョロ見回す。どうやら僕らの狙いに気付いた様だな。
「どうしたゲン? 俺達の勝利だぞ? もっと喜べ」
「まだですよ若! これはこいつのスマホじゃない。儂等が守るべき装置を壊せるスマホをこいつは別の奴に持たせてた。
それならこいつ等は全て囮……その可能性が有ります。もしかしたらあの女が既に近くに――」
そう赤髪ライオンこと若頭に説明してる所で、言葉が急に途切れた。その視線を追うと、ハゲ共が余裕をかましてた位置の後ろ……そして多分五メートル以内ギリギリのラインに、見慣れた奇抜な格好をしたメカブの姿があった。
そのちょっと離れた所には崩れ落ちてるメカブを乗せてた人。よく頑張ってくれたよ。メカブは既に僕のスマホを翳してる。
「――あのガキがああああああああああ!!」
今日一番のハゲの怒声だった。それは白いシャツの隙間から見えてる入れ墨に似合う声。だけど今更声だけでメカブがビビるわけもない。
走り出すハゲと赤髪ライオン。それを一別して、僕と目が合う。僕は目で「やれ!!」と告げた。そして受け取ってくれたメカブは、その細い指を二度画面に続けざまに触れさせて宣言する。
「チェックメイト。私たちの勝利よ!」
メカブは急いで後ろに下がる。それはきっとビビったからじゃなく、僕の言いつけ通り、その場にいたら爆発に巻き込まれてブリームス側のHPがゼロに成るからだ。
スマホを取り上げられた僕にはどうなったのか分からない。だけどメカブに追いつく前に、ハゲと赤髪ライオンは足を止めて、スマホをその場に掲げてた。
僕はそんなハゲたちからメカブへと視線を移す。するとそれに気付いたメカブが親指を立てて見せる。その瞬間、「やったんだ」って思えてきた。
「よっ――」
「よっしゃああああああああああああああああああ!!」
僕が喚起の叫びをあげる前に、後ろから聞こえたそんな声。それは僕を背負ってくれてた筋肉マンの声。暑苦しく良く通る声は、後ろで大乱闘を繰り広げてた人たちにも、伝わるレベルだったようだ。
そしてざわざわとなり「やった?」などと、呟く輩はその場に立ち尽くしてるハゲと赤髪ライオンへと視線を向けてるのが分かる。
「ひゃ……ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! おもしれえよお前等。あの時スマホを取ろうとする必死さも、実は演技だったって事か。ひゃは! やられたわこりゃ」
そう言って大いにゲラゲラしまくる赤髪ライオン。まあ全くその通りな訳だけど、上手くはまってくれて助かったよ。こっちはギリギリまでメカブの事もスマホの事も隠したかった訳だからな。
あれは僕のスマホだ。だから僕が持ってるなんて固定概念をぶち壊してメカブに持たせて。僕は二台あるメカブのスマホの一大を持ってた訳だ。
だけど実際、ハゲに気付かれるか気付かれないかは賭だったよ。最初の時点で気付いてれば、もしかしたら止めれたかもね。この赤髪ライオンは僕のスマホなんて見たことなかっただろうから、疑いもしなかっただろうけどな。
てか、あの布の下がメカブじゃなかった時点で、ハゲは疑うべきだった。余裕をかましてたから、お前達は負けたんだ。
「ゲンさん! 若頭!! 俺達は……負けたんですか?」
そんな事を言ったのは良くハゲと一緒にいた金髪。そしてやっぱりモヒカンも近くに居たらしい。てか既にスマホで確認してるだろあいつ等。
わざわざ言葉を求めなくても、そのスマホに事実が映ってる筈だ。そんな事を思ってると、僕のスマホを持ってるメカブがちょっと慌ただしげにこう言った。
「ちょ、何こいつ……何する――きゃあ!?」
一体何が? そう思ってるとわかりやすい現象が目に入る。なんだかスマホのディスプレイがやたら強く光ってる。そしてそれは僕のスマホだけじゃなく、この場に居る全員のスマホが一斉に同じ様に光ってた。
「何だこれ?」
「くはは! ホラよ、返してやる。それと勝利に浸るのは早いぜ。なんせまだ誰もアイテムを手にした訳じゃない」
ハゲが僕にメカブのスマホを投げつけて返してきた。僕はそれを受け取ると、画面を見――――ることは出来ない位に光ってるな。
結局メカブのスマホじゃ詳しい事は分からない。だけどこの光は多分、あの装置の光。直前で壊した筈なのに、間に合わなかったって事なのか?
「違う! あの第一の所長よ! あいつが装置を暴走させてるのよ!」
そんな言葉と同時に、僕の画面を横切る影。それはバカラさん? 光の中へ消えていく彼。次の瞬間「ダメ、そんなの!」と叫ぶメカブの声が上がる。
何もわからない僕はただ画面を見つめる事しか出来ない。
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
1512
-
-
841
-
-
0
-
-
337
-
-
439
-
-
381
-
-
310
-
-
125
-
-
140
コメント