命改変プログラム

ファーストなサイコロ

消えるアイツと不確かな影



 スマホから放たれてた強力な光が次の瞬間爆発となって、続く粉塵で消え去った。一体何がどうなったのか……僕には全然分からない。
 光の中に消えたバカラさんがこれをしたのか? でもそしたらあの人は無事なんだろうか?


「メカブ……」


 僕の声に画面を見つめてた彼女がこちらに来る。そしてスマホを僕達は交換しあった。


「無限の蔵、あの人……死んじゃったかも」
「バカ言うな、そんな簡単に死ぬ玉じゃないだろ。アレは」


 僕は画面に残されてたバカラさんの最後の言葉を見ながらそう言った。僕のスマホには結構衝撃的な事実があった。
 そう言うことか、どうやら最後の悪足掻きをしてたあの所長を、バカラさんは殺した……のかも知れない。そこら変は確認できないな。この粉塵が晴れればそこら辺も分かるだろう。
 てか、画面見てビックリなのは、タイムリミットが一秒を切ってるじゃないか。本当にギリギリだったんだな。百分の一秒の世界なんて、一歩間違えば瞬きしたらゼロだよ。


『おい、どうなった? 戦士フィフティィィンよ! 状況の正確な詳細を報告しろ!』


 スマホから第四の所長の声がうるさく響く。状況の報告ね……それが分かったら直ぐにでもしてやるよ。だからちょっと黙ってろ。
 スマホの画面を覆う粉塵が少しずつ次第に晴れていく。そして見えてきたのはバラバラに吹き飛んだ機械の惨状と、そんな機械の残骸に押しつぶされてるバカラさんの姿。
 爆発で吹き飛ばされたのか、少し離れた所に二人とも飛んでるな。僕は立ち上がろうとする。フラフラしながらもなんとか立ち上がると、メカブがその体を支えに貸してくれた。


「ほら、あの人の所まで行きたいんでしょ?」
「サンキュ」


 僕達はバカラさんの元へ、そしてハゲ共は第一の所長の元へそれぞれ足を向ける。


「大丈夫か?」


 そう言って僕を背負ってくれてた人がメカブに代わろうとする。だけどメカブは首を振った。


「大丈夫よこのくらい。それよりも怪我人の手当をしてあげて」
「そうか? じゃあ頼む」


 視線を彼が向かう方へ向けると、結構怪我してる人は居る。まあ無茶な戦いだったし、寧ろ重傷者が居ないだけでも良かったのかも。
 救急車が必要な人は誰もいないだろう。


 近くまで来ると、僕はバカラさんの握りしめてる物に目が行った。この人はどうやら、あの所長をやっぱり殺しに行ったみたいだな。そうしなくちゃ止まらない……そう思ったんだろう。
 その手にはリアルでは見ない、刃が格好良くウネってる感じのナイフを手にしてる。確かあったよこういう武器。この人はナイフ使いだったってことか?
 僕は画面に映るバカラさんを何度かタップしてみる。だけど反応がない。一端、彼にのっかってる瓦礫をタップしてみると、その瓦礫がギギギと音を立てて反対側へ倒れる。でもそれであることに気付いてしまった。
 瓦礫を退かした事で、彼の体に起こってる惨状と言うか……そういう物がみえた。それはちょっと目を背けたく物だ。実際メカブは背けたよ。だけど僕はそんな事出来ない。僕はもう一度この状態でバカラさんをタップする。


『がはっ……ははは、随分と血が流れてる……そんな気がする。それに体が重いし……なあ、俺は死ぬのかな?』
『なな何を言ってるか! お前がその位の怪我で死ぬわけがなかろう! お前は死なない! 今直ぐ医療班を向かわせてやる! なあに心配するな、傷は思ってるよりも浅いぞ!』


 バカラさんの声に応えるのは第四の所長。だけどその声はどう聞いても震えすぎだ。不安にさせまいと口数多く喋ってるけど、動揺が手に取るようにわかる。この人は本当に土壇場に弱いな。
 それに傷は浅いって……流石に自分の状態は自分が一番良くわかってるんじゃないかな? まあ「もうダメだ」なんて言えないのもわかるけど。てか回復薬とかないのかよ!


『はは……相変わらず、そんなんじゃマッドサイエンティストには程遠いなアンタ……なあ、あの装置は壊れたか?』


 そんな質問に、僕は出てきた台詞をタップする。


『ああ』
『良かった。……だけどまだ終わってない。そんな気がするんだ。なあ戦士フィフティン。後の事は任せて良いか?
 お前の……働きは見事だったぜ。だから……後の事を……頼みたいんだ。
 なあ……俺は最後まで戦士で入れたかな?』


 そう言って虚ろな瞳がどこか遠くの空を見つめてる。LROは血の表現をしないはずだけど、このイベントは例外なのか結構生々しくそれを見せてる。
 だからこそわかる。この人の横腹に突き刺さった残骸から流れ出る血は尋常じゃないって。
 この人は多分……もう悟ってる。


『最後……だと!? 何を言ってる貴様! まだ我らの野望は達成されてないぞ! マッドサイエンティストとの契約は悪魔の契約! 成し遂げるまでは死ぬことすら許さんわ!!』


 だけどそれにあらがわせるように声を上げる所長。でもそれはもう届いてるのかどうかすら……


『なあ……俺は……戦士だったか?』


 再びそう繰り返したバカラさん。どうしてそんなに戦士にこだわるのか、僕にはわからない。だけど付き合いが長いのかどうか知らないけど、所長はどう見てもその顔に涙が伝ってた。
 小さいウインドウで表示される画面は所長の顔で一杯だよ。


『戦士だったさ! このマッドサイエンティストが証明してやる!! お前は最後までこの街を思う戦士だった!!』


 所長のそんな言葉が僕の胸にも刺さる。実際あんまりこの人の事は知らないけど、ここまで引っ張ってくれたし、このイベントで重要な人物だった。
 それに所長があまりにもボロボロ泣くから、もらい泣きしそうじゃないか。戦士だよ。僕もこの人は戦士だったと思う。


『そうか……それは良かった。ああ……良かった』


 そう途切れがちの声が聞こえる。そしてバカラさんは最後に人差し指を立てて腕を上げた。僕に向かってだ。


『後は頼んだ……戦士……フィフティィィ…………』


 ポトリと力無く落ちる腕。もう幾らタップしても反応が返ってくることはない。大きな声で何度も何度も名前を叫ぶ所長の声が、虚しく僕のスマホから流れてた。僕は画面の中に横たわる彼に向けて最後の言葉をかける。


「託された。後は任せて眠ってろ……安らかにな」
「無限の蔵」


 ポツリと呟いたメカブが僕の服の裾を握りしめてる。こいつも今のをずっと後ろから見てたんだろう。僕はその手に自分の手を重ねる。


「戦士ね……私も戦士としてフィフティィンて呼ばれたわ。ここまで来るのだって本当はちょっと大変だった。リアルの面じゃなく、LROの方でね。兵隊に追い回されたわ」


 ああ、そう言えばそれは言ってなかったっけ? 敵はリアルだけでもLROだけでも無かったって。それは悪い事したな。


「そっちも逝ったか?」


 僕達がバカラさんの死をしみじみと感じてると、素っ気ないそんな言葉が聞こえた。振り返るとそこにはハゲと赤髪ライオン野郎。
 そっちもって事は第一の所長も死んだって事か。


「おいおい、イベント使い捨ての一キャラが死んだ位で何だよその顔は? まだまだイベントは終わってねーぞ。楽しもうぜ!」


 そう言ってヒャハハハ! と笑い声をあげる赤髪ライオン。なんて不謹慎……じゃないのかな。あっちの方が普通なのかも知れない。普通に僕達の方がおかしいのか。
 ゲームのキャラにいちいち感情移入なんて……まだこれは画面越しなのにな。LRO本体は直接触れ合うし、ただのゲームの様に思えないけど、これはそう言う訳じゃない。
 けど何だろう……感情移入しやすくなってるのかも。だから普通にこいつ等の態度はムカつく。それにまだ終わってない? お前たちの野望は潰えただろ。


「それは違うな! まだまだまだまだまだまだなんだよ! 死に際にそう言ってたぜ。そっちはどうなんだ?」


 そう言えばこっちも『後は頼んだ』だったっけ? それは後が有るって事。まだ終わっちゃない。アイテム手にしてないしな。


「そう言う事だよ! 俺たちの目的は向こうの奴らの小競り合いじゃない。レアアイテムなんだ! それを手にしない限り、俺たちの争いも終わらねえ! そうだろ?」
「まあ、確かにな」


 そこは異論はない。確かに僕達の目的もソレだ。だけど装置を壊した事でそれは結構振り出しに戻った――


『うぬ!? なんだ?』


 ――突如スマホから聞こえてきたそんな声。なんかゴゴゴと言う音と共に、スマホもバイブしてるぞ。画面を見ると大きく振動してるのがわかる。一体何が? 装置は全部壊した筈だ。


『ちょっと邪魔よ。泣くんだったら別の場所にしなさいよ。悲しんでる場合? 彼の思いに応えようとは思わないの?』
『なんの事だ助手?』
『この振動よ! もしかしたらキッカケにはなったのかも知れないわ。三つのアイテムが共鳴を始めたのかも……見て、凄い勢いで異常な磁場が発生してるわ。
 これはさっきの比じゃない! 気を付けてね』


 僕に向けた最後の言葉だけ妙に物腰が柔らかかった。相変わらず所長には厳しいみたいだ。てかとうとうアイテムが姿を現す時が来たって事か?
 でもこのままじゃこの街の人が居なくなる可能性も消えてないな。アイテムを手に入れて、それを止めなくちゃいけない。
 それがバカラさんの意志でもある。きっと僕達が手に出来たら、ブリームスの人達は無事で入れるんだろう。だけどあいつ等……ハゲ共が手にしたら、そうはならない気がする。
 このイベントはマルチエンディングなのかな? ルートによって異なる終わりが用意されてる的な。様々なルートが有るのはきっとそう言う事だろ。


 スマホのバイブが段々と弱まっていく。すると画面から『あれは何だ!? 空に違う光が……』と言う所長の声。僕は空にスマホを向ける。
 するとそこには七色の光の柱。そしてそれを結んで空に現れてるのは……魔法陣? いや、何かの紋章かな? おいおい、どういう事だよこれは。
 空に現れた紋章か魔法陣を唾を飲み込んで見てると、メカブが興味深いことを言った。


「ねえこの光が上がってるところ……これって例の通路。宝箱が浮いてた位置じゃない?」
「そうか?」


 そう言われてみればそんな気がしないでも無いけど、どうなんだろう? 地図と重ねれれば分かりやすいんだろうけど、そんな機能ないし確かめるには自分で比べるしかない。
 まあでも、確かに確認されてた宝箱と通路の数にはあの光はあってるのかも。


「だけどこれからどうするんだよ? また宝箱の所まで行かないといけないのか? でも……そんなに単純なのかな」


 僕は素直に思うことを言ってみる。だってどういう事なのか、まだわかってないだろ。どうせなら僕はもう、後一回切りの移動で済ませたい。
 体がそう言ってるもん。数カ所ある宝箱の浮いてる人喰い通路を巡るのは流石にね。答えを見つけて移動したいんだ。それが望み。


「そんな事言っても、行ってみなきゃわからない。じゃない? せめて通路が……ううん、たから箱がどういう状態に成ってるのか確認しないと」
「それは、まあそうだけど」


 何がその通路で起きてるのかは知りたい。それはそうだけど……あそこにアイテムがあるとは自分的には思えないんだよね。
 確かに一度、暴れ出した宝箱の中にソレっぽいのを見たけど、でも普通に数あわないじゃん。だからあの通路にあるのは本体の分身みたいな物何じゃないかって……


「大丈夫ですよ二人とも。行かなくても私達には現状を知る術は有ります」


 僕達が行くか行かないかで迷ってると、ロン毛の人がそう言ってスマホをつんつん叩いて見せる。ああ、そっか。なるほど、掲示板ね。
 不特定多数が書き込めるここなら、その場に居る人だって居るはずだ。


「メカブ」
「わかってるわよ。私のもう一台で見たいんでしょ」


 そう言ってもう一台のスマホに掲示板を表示させる。それは今日何度も世話になってる場所。流石相変わらず情報早いな。
 パッと見ただけでも既にこの現象への書き込み多数だ。それをざっと見た感じだと、突然宝箱が開いて光を放ちだした――って感じだな。


「ねえこれは?」


 別段予想通り……とか思ってると、メカブが新たな書き込みを発見した様だ。


「近くに居たNPCが消えた? これって……」


 気のせいかも知れないけど、通路の外に居たはずのNPCが居なくなった様な……と書いてある。そしてそんな書き込みに釣られてか、「そう言えば」と便乗する書き込みが相次ぐ。


「通路に入らなくてもNPCが消えだしてるって事か? 実際どこまで本当かわかんないけど、事実ならアイテムの影響だろうな。
 人が消える……そしてブリームスはゴーストタウンか」


 LROの歴史通りに事が運ぶのならそうなるんだろう。まだ終わってなんかない。歴史を変えるとかは知らないけど、僕達はきっと抗う側に居ると思う。
 そしてそんな歴史を起こす側がハゲ達。


「きゃはは! テメェ等は書き込みを見るだけでアクションが起こせないだろ? まあ当然、そこに居る奴らは赤の他人だからな。
 だが俺たちは違う。使いがってのいい下部が、そこかしこにいるんだぜ」


 そう言って赤髪ライオンがスマホを耳に当てる。電話で指示しようという魂胆か。てか、ここに居る奴等で全員じゃなかったのか。総力戦だと思ってたんだけど……


「保険は常に用意するものだ。それに儂等側も、これでイベントが終わったかどうかはわからなかったからな。重要な場所には監視を置いておくべきだろう?」


 ハゲは得意気にそう言いやがる。だけどそんなのは使える駒が多い奴ら限定の手法だよ。普通は足で確認なんだよ。最近はそれこそ掲示板で知り得ない情報を仕入れる事が出来るように成ったからまだ良いけど、数が多いってのはやっぱりそれだけで武器になり得る事だ。


「ちょっと、もしもこのままあいつ等がアイテムを手にしたら……」
「確認だけだろ。僕のスマホでしかあの装置を壊せなかったみたいに、イベントを進行してるスマホは一つの筈だ。それは多分、ハゲかあの赤髪の奴のか……どちらにしても待機してる下部の奴がアイテムを手にするなんて事は出来ないだろ」


 なにがどうなってるかを確かめさせて、その後にこいつらのどちらかが動くはずだ。だけど待ってるだけじゃ先手は取れない。
 どうにかして出し抜かないと、僕たちに勝利は……そんな事を考えてると、赤髪ライオンがいきなり大きな声を出した。


「あっ……おい! どうした? 応えろコラアア!! ……ちっ」


 なんだか不機嫌そうにスマホを見つめる赤髪ライオン。そして再び、スマホを耳に押し当てる。


「おい、今何が起きてる? 取り合えず出来る事は全部やってみろ。ああ? 人が集まってきてる? 邪魔だから追い払っとけ。――ん?」


 いぶかしむ赤髪ライオンの表情。その瞬間、僕たちにも聞こえる叫びが奴のスマホから上がった。


「ぎゃあああああああああああああああああああ!!」


 まさに断末魔の叫び。敵の叫びなのになんかゾクッて来た。思わずスマホを耳から離した奴は、直ぐに何度も呼びかける。だけどどうやら応答は無いようだ。


「何よ今の叫び……尋常じゃなかったわよ」


 ホントなんかとてつもない者に出くわしたか襲われたかしたみたいなさ。それこそ映画とかでしか聞いたことない叫びだった。


「一体何が……」
「俺が知るか! たく、あいつ等……お前等手分けし残りの場所にも掛けてみろ」


 そう言われてハゲと数人の部下共がスマホを耳に当てる。すると出る奴も居れば、既に出ない奴も居るらしい事がわかった。


「ちっ、一体どうなってんだ? テメェラ以外でも俺たちに喧嘩ふっかけて来る奴らが居るって事か……それとも、お前等の仲間がこれをやってんのか?」


 そう言って赤髪ライオンは強い眼差しで僕たちを睨んで来る。獰猛な獣の様な目だ。血に飢えてるなあれは。でも言っておくけど、そんなのは知らない。僕たちには心当たりが無いことだ。


「まあ、確かに……テメェラに襲われてもあんな声を出すとは思えねぇな」


 そう言って案外簡単に納得した赤髪ライオン。まああの叫びは尋常じゃ無かったからな。てか、身を案じてるのなら直ぐにでもここに居る何人かを向かわせろよ。
 血みどろで倒れてたらどうするんだ? それを想像させる位の叫びは上がってたぞ。


「ふん、俺たちに気遣いたぁ余裕じゃねーか。まあだが、そんなの不要だ。人は向かわせるが、刺されてる訳じゃあるめぇよ。
 人は倒れる位の場所を刺されて大声出せるほど頑丈じゃないんだぜ」


 そう言ってハゲを使って数人を道路の向こうに送り出す赤髪ライオン。最初はどんだけキチガイな奴だと思ったけど、少しは話は通じる様だな。
 でもなんか今の言葉は実感がこもってたみたいで、なんか恐ろしかったぞ。刺したことも刺された事もあるのか? まあヤクザの若頭なんだろうし、そのくらいの経験はしててもおかしくはないな。そんな事を思ってると、メカブが僕の服をツンツン引っ張る。


「なんだよ?」
「ちょっとこれみてみなさい。さっきの叫びと関係あるんじゃない?」


 そう言われて僕はメカブのスマホを覗き込む。さっきの掲示板のスレにも今の叫びが上がってるのか?


【今自分は衝撃映像を見た! 空を飛ぶ巨大な黒い生物。その手から放たれた何かでこの場は煙幕につつまれたんだ。そしてその後、悪魔の様な断末魔の叫びが上がった。
 煙が晴れるとそこにはチンピラっぽい奴が泡を吹きだして倒れてた。今のは一体何だったんだ?】


 こんな書き込みが僕の目に入る。う~んなんか信じれない話。当然書き込みの後にもの凄い勢いで「ネタ乙」とか「自作自演は余所でやれ」とかのコメントが複数上がってる。けどそんな中、別の人も同じ様な事があったと書き込んでるんだよね。
 それが三人以上にもなると、「マジで?」とかの書き込みも増えていく。


【マジだって言ってるだろ。嘘なんて言ってどうなるよ。自分はほら、あの宝箱が浮いてる所にいるわけだけど、そこでいきなり――】


 宝箱の有る場所……場所も一致してるな。マジなのかこれ? 得体の知れない何かが、このイベントには参加してるのか?
 ここに来て第三勢力の登場とかマジで勘弁なんだけど。


『ちょっとよろしいですか?』


 僕がイヤな想像を膨らませてると、スマホからそんな声が聞こえてきた。目を向けるとそこには画面の中で、更にウインドウ内に現れてるジェロワさんが見える。僕はその画面をタッチして言葉を進める。


『資料の解析は八割方完了しました。それで今起こってる現象ですが、これは多分一つのアイテムが起こしてることじゃなく、三つのアイテムその干渉なんだと思われます。
何せ古くてアイテムの詳細な情報は無いですけど、三つのアイテムはそれぞれ「時間」「空間」「創造」に干渉出来る重要アイテムらしいです』


 時間と空間はわかるけど……創造ってなんだ? だけどジェロワさんはそんな僕の疑問には答えてくれない。


『助手よそんな情報は今は良いんだ!! この街を守る術はなんだ!?』


 泣きはらした顔でジェロワさんに詰め寄る所長。いつもなら冷たく払い退けるだろうけど、今だけはそれをしないジェロワさん。


『この街を守る方法は、やっぱりこのアイテムをどうにかするしかない。検討は付いてるわ。空に現れた模様の一点に力場が集中してる。きっとそこに……』


 そう言って画面に地図が表示された。つまりはこれをアキバのと照らしあわせれば良いって訳だな。
 僕は買ってた地図を引っ張り出す。もう使わないと思ってたけど、思わぬ所で役にたった。

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