命改変プログラム

ファーストなサイコロ

みんなの勇気



 四方八方から伸びてくる足。そんな足が僕の体の至る所を蹴り続ける。頭から肩から、背中にわき腹、全身を満遍なく几帳面な程ドコベキベコと果てしなく。


「スッ……むげ……んんん……」
「メカブさ、迷うくらいなら普通に呼んでくれない?」


 スオウか無限の蔵で悩んで言葉に詰まってたみたいだから、僕はこの状況で軽くそう言ってあげた。すると僕の体の下にいるメカブは怒ったようで、心配してるような微妙な顔をして文句言って来る。


「バカ! そんなこと今はどうでもいいでしょ。私をかばって何やってるのよアンタ!」


 アンタって……あ~あ、名前でさえ呼んで貰えなく成っちゃった。それに怒ってる所悪いけど、これは大事な事なんだぞ。


「なんでそんな文句言うかね? 僕にとってこの行動は大切なんだけど。さっきの様な事にはしたくないんだよ。お前を守れないのが、殴られるよりも辛いだろうが」


 だからこんな痛みへっちゃらさ。どんとこいウォーリーだぜ。へへっと僕は笑ってみせる。


「何笑ってんだ? テメェには用はないんだよ! さっさとそこをどきやがれ!!」


 そう言ってチンピラが勢いよく蹴りを放ってくる。それは僕の顔の右側を捉えた。首が反対側へ延びて、勢い良く反れる。だけどこのポジションだけは譲れない。僕は踏みとどまってチンピラを睨み付ける。


「退くかよ……ここだけは譲れない。アイテムを諦めても、コイツばっかはそうも行くかよ。お前等なんかに汚させない! 
 それは絶対なんだ!!」
「こんのっ! 死にかけが!!」


 不愉快そうな顔を歪めて、無造作にドカドカ蹴ってくるチンピラ共。ホントそろそろ諦めろよ。何でここまでメカブに執着する?
 いや、もしかしたら、僕の言動がムカつくだけかも。けどさ、他にどうしろって言うんだ。下手に出れば良かったのか?
 ちょっと考えてみるけど……それはあり得ないな。下手に出ると、下手に調子付くだけだろコイツ等は。結局全員ぶっ飛ばせれば早かったのに……今の自分の状態が悔やまれる。
 視界が血で濁る。口の中にも鉄の味が一杯だ。全身が痛いのは言うまでも無くというか、そろそろ痛いのかどうかすら分からなく成ってきたかも。


「止めてよ! これ以上スオウを……無限の蔵を傷つけないで!!」


 そう言ってメカブが僕の頭を庇うように腕で覆う。暖かな感じがする。良い匂いになんだかこのまま気絶したらとっても気持ち良いんだろうなって思える。
 けど……それはやっちゃいけないことだ。それに結局スオウと無限の蔵両方呼んでるし、まあ良いけどね。メカブらしいと思えるし。


「無限のく……なんだって?」


 チンピラが聞きなれない言葉にちょっと混乱してる。あいつ等脳味噌は鶏並だから、直ぐに会話に付いてこれなく成るんだろう。


「おい、そんなのどうだって良いんだよ。そいつ助けたかったら、君がご奉仕してくれれば良いんだ」


 混乱してるチンピラの代わりに別の奴が横から入ってそう言ってくる。そんな言葉にメカブは、僕を一瞬見て、そしてこう言った。


「私は何をしたら良いのよ」
「ふぇへっへ、そりゃああんな事やこんな事を……分かってんだろお前だって」


 気持ち悪い笑い声を出してそんな事を言うチンピラ野郎。見なくても分かる。絶対に鼻の下を延ばした顔してるだろ。
 僕は僅かに体を震わせてるメカブの腕を掴む。そんな事させるわけない。


「ダメだ。そんなの……絶対にダメだ!」
「そんな事言ったって……アンタ死にそうじゃない!」


 ああ、ホント自分のダメダメさ加減にそろそろマジで嫌気がさしてくる。けどここでメカブを差し出すなんて、それはアイテムとは訳が違うんだよ。
 それはダメなんだ。それだけは絶対に受け入れられない事なんだよ。僕は強い光を瞳に宿してこう言った。


「それでも! 僕が幾ら死にかけたって、そんな事させない。信じろよ。僕は死なないからさ。だから安易に自分を差し出すな。
 女の子だろ。僕なんかよりもその体を何百万倍も大事にしてろ」


 僕は男だからな。別に幾ら傷つこうがヤンチャで済む。けど女の子は違うよ。傷なんて無い方が絶対に良い。僕が巻き込んだ事を、後悔しないで欲しいなんて、この時点でもう無理なのかも知れないけど、体や心に残る傷まで負わせたら、そんなの男として終わりだろ。
 今、今日この時、守らないといけないのはコイツだ。なら、何がなんでも僕は守ってみせる。


「アンタは……ズルいわよ。自分だけが、男だからいつだって守る立場に居るのが当然だなんて……ズルいのよ。女の子だって守りたいって思う。庇いたいって思うんだよ」
「はは……そんなの知ってる」


 僕だって女の子に守られてた時あったしな。だけどアイツが傷つく度に、僕は後悔ばっかりしたよ。守り守られる相互関係でも築ければそれが一番なんだろうけど、それはなかなか難しいじゃん。
 特にアイツ以外とは難しい。そんな時は、僕はいつだって守る側に行こうと決めてる。古くから男は女を守る者……じゃなく、僕がそうしたいからそうするだけだ。


「私は、メーカーオブエデン何だからね。インフィニットアートをその身に宿す選ばれた人間なの! 凡人は引っ込んでなさいよ!」


 メカブは瞳に涙を貯めてそんな無茶苦茶な事を言い始めた。どうやっても自分を犠牲にしたいらしい。だけどこっちもどうやってもお前を守りたいんだ。
 それにお前のその設定にはもう大分慣れたんだぜ。僕はメカブにぎこちない笑顔を見せてこう言ってやる。


「おいおい、僕だってインフィニットアートを持ってるはずだろ。凡人なんかじゃない。まあメカブのとは格が違うだろうけど、こんな雑魚に天寿なんて使うべきじゃないだよ。
 下界に神が降りないように、お前は高見の見物してな」


 僕は僕の頭を覆う彼女の腕を優しく解く。そしてメカブをの浮いた背を再び地面に付ける。


「バカ……そこまで言うなら守って見せないよ。辛い顔なんか見せるな」
「善処するよ」


 まあそう言っても、結局我慢する事しか、僕には出来ないんだけどね。ニコニコしながら殴る蹴るをされるのもそれはそれでどうだろう? だろ。


「おいおい、まだそんな余裕があるとは驚きだな。その女を売れば自分は助かるのに、随分立派な心意気だよ。その偽善者っぷり、虫酸が走る!!」
「はっ、羨ましいんなら真似して見ろよ。まあ誰かに付いていく事しか出来ないお前等じゃ無理だろうけどな」


 心新たにメカブを守る。そう誓ったから、ちょっと精神的に大胆になってた。思わず言ったその言葉はチンピラを逆撫でするには十分だったよ。
 顔面に迫る靴底。叫びあがる声――――声? それはなんだかガムシャラで、とてもこの視界に映るチンピラ共の事とは思えない。
 そして不意に横から、飛び出た誰かが僕を踏もうとしてたその足の主を突き飛ばした。


「てってめぇえええ!!」
「ヒッヒイィィ……」


 地面に倒れたチンピラがタックルをかました誰かに向かって叫ぶ。そして萎縮しちゃうその誰かさん。あれはどう見ても一般人だよな? 僕が助けを呼んだ人とは明らかに違う。
 けどどうして……いや、勇気ある人がいたって事だろう。それは嬉しいけど、今度はこの人がやられちゃいそうだ。立ち上がったチンピラに胸ぐらを捕まれてるその人は今にも泣きそう。
 チンピラはやけに顔を近づけて脅してる。その周りに他のチンピラも集まって来てヤバい感じ。だけどその人は必死に何故かスマホを見てた。
 いや、チンピラの汚い顔を見るよりはそっちがマシかとも思うけど……逆に「こっち見ろやあぁ!?」とか言われてるぞ。


 けどその人はやっぱりスマホの画面を凝視。指を動かしてる所を見ると、何か打ち込んでる。この瞬間に何か書き込んでるのか? 
 余裕があるのか無いのかわからない!! 何かぶつぶつと「大丈夫だよね」「僕は間違ってない」とか呟くのが聞こえて、小刻みに首が縦に揺れる。
 そんな様子にムカついたのか、胸ぐらを掴んだチンピラが彼に頭突きをかます。


「うわあああああ痛い!!」


 そんな声が辺りに響いた。少し太めの彼の鼻筋に赤い滴が線を引く。


「あわっわわわ……」
「この程度で済むと思うなよ。もう一発行くぜ!」


 そういってチンピラが助走を付ける様に頭を引く。僕は腕を伸ばして、そのチンピラの足を掴んだ。


「止めろ!」
「はん、お前はお姫様だけを必死に守ってろよ」


 横から別の奴が僕の腕を蹴った。あっけなく外される腕。そもそも言って止まるような奴らじゃない。悪い意味で。
 調子づきやがって、このままじゃ折角勇気を出してくれたこの人が可哀想じゃないか。何か出来ないか必死に考える。


(何か……何か何か何か何か何か何か無いのか?)


 そんな風に思ってると、目に入るデコられた四角いスマホ。そうだ、もう一度シクラにあの音を出して貰えば何とかなるかも知れない。
 拾って来てて良かった。だけど、よく考えたらメカブは僕を注視してる。ここでメカブのスマホに話しかけるのは、その存在をバラすことと同じかも知れない。
「あ、私のスマホ」と呟いてるし、視線を外すのは無理っぽい。けどそんな些細な事を気にしてる場合でもないか。情けない声が上方から上がってるし、折角助けようとしてくれた人を見捨てられない。
 僕は取りあえず画面を確認。けどそこにはシクラはいない。僕は小さな声で「おい、おい」と声を掛ける。けどシクラがいつもみたいにひょっこりと顔を出すことは無い。
 どこ行ったんだアイツ? こんな大切な場面で出てこないとか……今の僕の頼りはアイツしかいないのに。超不本意だけど、僕はこの有様だからな。


 実際秋徒達でも良いんだけど、アイツも僕と同じの高校生。二・三人ならまだしも、数十人のチンピラ相手じゃ、助けに来いよりも、逃げろと言うよ。
 アイツにも守るべき人が居るしな。運悪く、この状況を知らない事を願ってるくらい。けど、よくよく考えたら警察はどうしたんだ? この騒ぎなら駆けつけて然るべきだろ。
 これだけ目立つ所でこんな事やってるんだ。見えない訳が……そこで僕はあることに気づいたよ。立ち止まった人達の人混み、それがもしかしたら邪魔なのかも。
 よく見たら、野次馬は倍々式に増えてるみたいだ。そこにはただの野次馬根性だけの奴も居るけど、何故かスマホとこちら側をチラチラ見てる奴が一杯いる。
 それがどういう事なのかはわからない。もしかしたらただ単に僕たちの情けない姿でもweb上にアップしてるのかも知れないな。


 そんな事を思ってると、僕の視線がそんなスマホを向けてる一人と目があった。するとその目にはさ、ただ面白がってる様な目とも、同情するような目とも違う色が見て取れた。
 それはいわば、そこで胸ぐらを捕まれた彼が最初に宿してた光かも知れない。そしてその人もスマホに目を落として、それをしまったかと思うと、声をあらげて走り出した。
 逃げ出したんじゃない、胸ぐらを捕まれた彼の元へ一直線だ。だけどそれだけ吠えたから、反応した別のチンピラ共がその人のいく手を遮った。


「おいおい、なんか今日はバカがやたら沸くな。この暑さに頭までやられた――がっ!?」


 口を動かしてたチンピラに入った拳。けどそれを打ったのはさっき飛び出した人じゃない。更に別方向から走ってきた人がいたんだ。


「てっめぇ等――げはっ!?」


 吹っ飛ばされたチンピラに更に今度は背中側からのタックルが入る。それもまた別の人。なんだこれ? どうなってる?
 ただの野次馬だった人達がちょっとずつ何かに促される用に動き出してる。てか、これは乱闘では? 凄い事に成ってきたぞ。


「なっなんで? どうしちゃったのこの人達?」
「さあ……正義感に目覚めたんじゃねーの?」


 僕たち二人はこの中で一番困惑してるかも知れない。だってこんなのあり得ないだろ。一体この人達は何の為にこのチンピラ共とやり合ってんだ?
 僕たちは彼らを知らないし、彼らだって僕たちの事を知らない筈だ。それなのに……何でこんな事ができる?


「てめぇら! 覚悟は出来てるんだろうなぁああああ!!」
「うるせぇ! この犯罪者集団が!! LROの中でも外でも、好き勝手やれると思うなよ!!」


 もの凄い勢い熱が増していく。辺りからピーピー聞こえる笛の音は、警官か何かだろうか? これは大事だ。イベント事態が中止に成りかねない。
 いや、そう成らなくても後々問題になりそうな光景だ。でもどうやら飛び交う言葉でわかったことは、僕達の為って訳じゃないって事だな。
 彼らの意識は助けるんじゃなく、立ち向かうって言う方が正しい気がする。


「ふふ、悪党共を懲らしめる日が遂にきたって訳ね」


 メカブも彼らの意識を同じようにくみ取ったのか、ポツリトそう呟いた。やっぱり酷いことされそうに成ったからな。まあ当然だね。
 ビルが建ち並び、アニメキャラの看板が見守る街がどっかのヤクザ映画の舞台にでも成ったような有様。みんなの顔と街の風景が合ってないったらない。
 もしもこれが映画のワンシーンなら、背景だけを抜く事は出来ないだろう。そんなアキバと言う街での戦い。今まではイベントで、遊びだったはずだけど、これはもうそんな枠を軽く飛び越えてる。
 交差し合う拳という武器、心を抉る様な言葉の数々は至る所に放送禁止用語が! するとチンピラの一人が、思い出したようにこちらに焦点をあわせて来やがった。


「なに暢気に見てるんだよテメェは!!」


 何だその八つ当たりは! とか言いたいけど、それよりも迫る拳への対策が必要。そう思ってたら、直前で誰かがチンピラの拳を受け止めてくれた。
 その手はお世辞にも力強さなんて物はあまり感じれない物だ。というか、どっちかっていうとちょっと老いかけ始めた様な印象さえ受ける。
 皺も見えるし、僕は手から腕へ視線を移動してそして頭へ。そこまで老いてる人でもないだろうけど、四十代位かも知れないな。
 この人も実はイベント参加者なのかな?


「おっさん何のつもりだよ? てかテメェ等マジでブゥカじゃねーのか? こんな事して、全員捕まるぞ」


 拳を受け止められたチンピラが鼻から口に繋げてる鎖を揺らしながらそんな事を言う。明らかにオジサンよりもガタイも筋肉量も多そうで、趣味が体を鍛えることとか言いそうな部類の奴。
 だけど僕を助けてくれたオジサンは一歩も引く所か、冗談混じりにこう言った。


「はは、確かに君が言うようにバカだと思う。だけどこの年でも言ってみたい事があったんだよ私には。
 お前達の好き勝手にはさせない!! どうだ? 主人公っぽいだろ」


 オジサンは得意気に口元をつり上げた。だけどそれがチンピラの勘に触ったのか、次の瞬間が逆の腕が腹に入った。


「ぐふ……」
「おじさん!!」


 その場に膝をつくオジサン。けど僕の言葉に無理矢理な笑顔を作って見せてくれた。どうやら左だったからそこまで効いてないよ的なアピールをしてるみたいだ。
 それなら良いんだけど……結構綺麗に入ったように見えたよ。


「オッサンが年も考えずに調子付くからそうなるんだよ」
「ふはは……やはり私は……主役の年から離れすぎてたかな」


 そういう事じゃないよね? まだ冗談をいえるとは、このオジサンかなり良い根性してる。そんな風に思ってると
今度また別の人が目の前のチンピラの相手をしてくれる。
 というか、既にチンピラ共よりもこちらが側の人数の方が多いんだ。自然と一対多数になれる。既に戦況は変わってるんだ。


「ちっ雑魚がウジャウジャと沸きやがって!」


 面白い事に、僕がお前達に言ってた言葉を向こうが使ってる。まさしくその気持ちを思い知れと思ったね。けど、実際誰かが傷つくのをみてたい訳でもないんだ。
 どうしたってこの人達はケンカとかそんな経験に馴れてるとは思えない。だからこそ、チンピラ共の様なヤンチャな奴らからしたら、雑魚に見えるんだろう。


「ちっ、主役の座を取られちゃったな」


 そう言って僅かにかげりを見せたオジサン。だけど次の瞬間、勢い良く立ち上がり


「だが、まだ私は老いに負けるつもりはない!」


 そう言い、殴られた相手の足にすがりつく。


「ぐはっ! くそ爺が!!」


 倒れたチンピラがそう言いつつ、オジサンに拳を向ける。だけどそれを阻んでチンピラを更に押さえつける人がいる。筋肉質のチンピラを押さえつけるのについには三人掛かりだ。


「なんだか……良く見たらみんなさ、あんまり殴ったりしてない?」


 わざわざ押さえつけたのを見て「あれ?」って思ったんだ。倒れた所をボコボコに蹴ることだって出来た筈なのに、この人達はそれをしなかった。
 押さえ込むとか、一番体力使う方法だろ。僕は辺りに目を向ける。確かにそこかしこで殴りあってるよう見えるけど、積極的に拳を向けてるのはチンピラ共だ。
 みんな取りあえずへっぴり腰だし、基本体当たりを狙うか、避ける事を不格好にやってるだけ。


「殴る事に抵抗があるんじゃない? 普通は誰だってそうでしょ?」
「まあそれはそうかも知れないけど……」


 けどみんな一致団結悪者退治! 的な感じでテンションが上がってる筈だ。勢い込んで殴ったとしてもおかしくはないけど……それに少なからず殴られたりもしてるだろうし、その反撃を自ら抑制してるとしたら、それは結構凄い事だぞ。
 そんな風に僕が思ってると、後ろから靴が地面を踏む音が聞こえた。僕は思わずメカブを後ろに回して振り返る。すると目の前には既に拳が……と思ったら、柔らかい口調でこう言われた。


「我々はヤクザやチンピラとは違うんですよ。それとこれは貴方の持ち物でしょう?」


 目の前にあった拳が開かれると、そこには紛れもなく僕のスマホがあった。今日で青い色の胴体に傷が入りまくってるけど、これはこれで自分のと分かりやすいな。
 まあ決め手は裏蓋の所に張られた変なシールだけど。取り合えず間違いない。僕はお礼と共に、スマホを受け取る。


「いえいえ、それよりも早く画面を確認したほうが良いですよ。なんだか音がずっと成ってます」


 そう言われて確かに気づいた。なんかスマホから甲高い音が鳴ってる。もしかしてさっきから聞こえてた笛の音らしき物ってこれか? 


「それが成ってたから見つけれたんですよ」


 そう言ってニッコリ微笑みをくれる。なんとも良い人そうな感じ。僕は急いで画面を確認する。てか、確かあのゴツイ装置を破壊出来たのか……まずはそれだよな。
 暗転してた画面に光が戻る。すると画面下にはバカラさんの言葉が一杯だ。取り合えず、一番を上を読むと、どうやらまだ装置は健在らしい。


『まだ足りない、もう一度だ!!』


 の文字がある。スマホを装置の方へ向けると、串刺し状態の棒から変な光を出してる装置があった。煙も見えるけど、まだ完全に壊れきってない。むしろ中度半端に稼働してる様だ。どうやらまだ僕には仕事があるようだ。


「大丈夫ですか? 手を貸しますよ?」


 そう言ってくれる優しい人。だけど僕は首を振る。


「大丈夫ですよ。この位、自分でやりきらないと」


 僕はそう言って、装置をタップする。そして次の瞬間画面一杯に炎と煙が広がった。きっと離れなかったら爆発に巻き込まれたんだろう。画面の上部の部分が赤く点滅してる。
 そして破壊を確認した所で画面にバカラさんの言葉が現れる。


『よし、次行くぞ次!! まだ後二つあるからな!』


 その瞬間「え?」っと僕は思ったよ。まだあるの? が正直な感想。青空の下、僕は進むべきかどうかを立ち悩む。

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