命改変プログラム

ファーストなサイコロ

リアルの痛み



『しゅ……集団失踪だと? はっはははは!! 流石は国家の懐柔となりて研究の意義を見失ったら奴らだ。だが、そんなマッドサイエンティスト的な役割を担う研究者は奴らじゃない!!
 そんな奴は私一人で十分だ!! 奴らの狙いは我らが全て奪い取る! やるぞお前等!』


 その言葉に続く声は聞こえない。何ともチームワークの成ってない組織だ。そんな反応に満足できない所長はプルプル震えて再び大声で叫ぶ。


『お、お前達、私を一人にする気かあああ! そうなのかああああ!?』


 なんかすっごい格好悪い事言ってるよこの人。情けなくて思わずため息か笑いが漏れそうだ。なんだかこのままじゃめんどくさそうと判断したのか、ようやくウインドウ内から反応が返ってきた。


『はいはい、やりましょう所長~~』
『てか、その年でそんな顔しないでくれますか? 見るに耐えかねるんで』


 どっちもスゴく投げやりな感は否めない。けどそれでも、反応してくれただけで嬉しい所長は再び声を張り上げる。


『よし、これより我が第四研究所は第一研究所と張り合うためのオペレーションを開始する!! これはきっとこの国の歴史に残る戦い成るであろう。
 そう聖戦と呼べるものだ!! はっ!? うおおおおおおおおおおおおおおおお、良い名前が浮かんだぞ!!』


 さっきからやけに叫びまくりな所長。中二病全快で吠えてるよ。そんな所長に引き気味なのはジェロワさん。小さな声で『この人大丈夫?』とか呟いてる。
 まあ心配するよね。実際僕もそう思ってるし。この人ホントに大丈夫かな?


『ふわっはは! 三十路よそんな顔をしなくてもお前の聞きたい事はわかってる。そう慌てるな。今この聖戦の作戦名を発表してやる』


 そう言ってバサァァァと白衣を翻す所長。三十路事ジェロワさんは据わった目で再び言われた許せない言葉のせいで『殺してやる』を連呼してた。
 なかなかにカオスな状況だ。けれどそんな呟きは無視して、テンション上がった所長はジェロワさんを見下ろす為に踏み外してた階段を再びあがり宣言する。


『今をもってこのオペレーション名は【エンジエル・ブレイク】とする!!』


 誰も何も反応しない。僕の近くの爺さんが、『おお、あの雲は家の婆さんに似てるの~』って言ってた方が気になった。
 てか、そんな作戦名なんてどうでも良いから、本題に戻れよ。意味わかんないしな。僕がそんな風に思ってると、ジェロワさんも『何それ?』とか呆れた感じで言ってる。するとウインドウに現れてるハッカー君が言葉を割り込ませてきた。


『所長――、名前なんてどうでも良いんで、何やるんですか? 流石に第一と全面対決なんて無理っしょ。規模も人員も持ってる技術も何もかもが違うって』
『ホント、こっちは使えないハッカーに中二病全快なだけの所長だし、やり合えないでしょ?』
『おいおい、所長はともかく僕は本気出せばスゴいんだぜ! 取り消せ万年雑用係!』
『ふん、アンタも所長も低レベルな争いでしょ。家事全般得意な私の方が、よっぽど有能よ! ひれ伏せ野郎共!』


 ウインドウ内で再び喧嘩が勃発してる。コイツ等相当仲悪いな。いいや、仲が悪いって言うか相性の問題だと思う。


『やめろ!! 本当にお前たちは……これは聖戦なんだぞ。奴らの行おうとしてることは狂気のさたなんだ。大丈夫さ、俺たちならやれる!
 それに奴らに対抗するための情報がある。そうだよな?』


 そう言って所長はジェロワさんに視線を送る。おお、ちょっと所長らしい。そんな所長を見上げてジェロワさんは頷いた。


『貴方たちは頼りなさそうだけど、大丈夫。私が居るからね。私をバカにしたこと後悔させてやるわ』
『ちょっと聞き捨て成らないが、頼りにしてるぞ。それでは我らはこれより、三十路が持ち帰った情報を分析解析に移る!』
『だから三十路言うな!』


 そんなやりとりで纏まりかかってる。けどこれじゃ僕達はどうすれば……そんな風に思ってると、新たなウインドウが所長の側に現れる。


『よう、どうだそっちは?』


 そう言ってウインドウ内に現れたのはバカラさんだ。この街を相手取って戦ってる集団のリーダー。てか、今度は第一の奴らの動向を探ってたんじゃ無いのか?


『こっちはこれよりオペレーションエンジエル・ブレイクの為の情報解析に移る。そっちは第一の奴らの妨害を頼む。奴らのその装置は危険だ。
 こちらに加わった三十路の情――んがっ!?』
『おい、どうした?』


 途中で止まった言葉に疑問符が浮かぶバカラさん。三十路三十路言うから、ジェロワさんが強行手段に出たんだ。ようは所長の頬を彼女が引っ張ってる。
 そして据わった目で見据えて『ジェロワ』と脅しをかけてる。


『う……ゴホン。ジェロワが言うにはその装置は危険らしい。取り合えずそれも壊しておくのが得策だろう。その間にこちらは情報分析を進めておく。
 戦士フィフティィンは返しておくぞ。なかなか出来る奴だからこき使え』


 なに勝手な事を言ってるんだコイツは。けど、これで僕はバカラさん側で第一連中の妨害に当たるって事に成るのかな?
 けど僕達はこのイベントでは戦えない筈では? どうやってその装置を壊したりするんだ? それに向こうにはハゲ共がついてる。それはどうなるんだろうか?
 色々と考える事は有るけど、でも取り合えず僕達はバカラさん達と共に、第一研究所の奴らの妨害に向かう事になった。




 まだまだ日が高い午後の時間。僕達は第四研究所のある寂れた一角から抜け出して、アキバのメインストリートへとやってきてた。
 歩行者天国なこの場所は道路の中央から端っこまで人が流れてる。そんな中には僕達と同じ様にスマホを掲げる人達も一杯だ。
 そしてこぞってそんな同類の人達のスマホが一カ所に向いていた。そしてそこにこそ、僕達が目的としてる物が映し出されてる。


「な……に、あれ?」


 そんな風に呟くメカブ。何かをお前は知ってる筈だろう――と言いたくなるけど、まあ実際そう呟く心境は分かる。
 アレの事を知ってる僕達ですらそうなんだから、事情を知らない人達がザワザワと成ってるのは無理もない事だね。てかホント……なんかスゴいな。
 三・四メートルは有ろうかと言うくらいの大きな装置。と言うかロボットっぽく見えなくもない。三角型の形状に、幾重もその胴体にぶっ刺されたみたいな無骨な棒。下半身は移動をするためか、六本の足が蜘蛛みたいにワシャワシャと動いてる。


「思ってたのと随分違うよな。あのぶっささってる様に見えるのから、アイテムを干渉する電波でもだすのかな?」
「さあ、けどあれを壊すとか苦労しそうじゃない?」
「確かに、それは言えてるな」


 まさかこんなデカいとは思わなかったもん。せめて大の大人が二人係で運ぶ程度の物とかそんなんを予想してた。けど蓋を開けてみたらビックリのこのサイズ。何をどうすればいいのかもさっぱりだな。


『流石第一と言うべきだな。第二の奴らのよりも大層な感じだ。それにしても……やっぱりだが警備が多いな。第二のを潰した影響か?』


 だろうな。合流したバカラさんが『ちっ』と舌打ちしながらそう言う。


『だが、もたもたはしてらんねぇ。アレが起動したらヤバいんだろ。それなら怖じ気付く事なんか出来るかよ。多少荒っぽくなるが、これで行くか』


 そう言って僕は何かを渡された。それは拳大の大きさをした銀色の卵みたいな物だった。何これ?


『それは武器だ。対象に投げるか押しつけるかすれば高圧電流が流れる仕組みに成ってる。人一人を気絶させる位余裕だぞ。
 押しつける分には三回、投げつける分には一回まで使える。用途によって使い分けろ。ちなみに投げつけたら五メートルは離れろよ。
 投げつけた方が出力が大きいから感電するぞ』


 へぇ~この卵形の物がそんな強力な武器なんだ。持って使う分が三回なのは、出力調整が出来るからって事か? なんか画面にも使い方が出てきたぞ。なるほど、近づくと自動でロックオンされるみたいだな。投げつけるか押し当てるかは、対象との距離で勝手に切り替わるって訳か。投げつけるからってどこからでも投げられるって訳でもない様だ。


「なんだかそれって、LRO自体にも似たようなのあるわよね」
「そうなのか? 僕は全然知らんぞ」


 渡された卵型の武器をスマホ越しにみながらそう言われたけど、実際僕は武器屋とか早々いかないからな。なんてたって僕のセラ・シルフィングはそこらのどんな武器よりも優れてると勝手に思ってる。
 しかも思い入れも人一倍だし、取っ替え引っ替えのLRO方式とはちょっとあわないんだよね。まあスキルは驚く程に偏ってるだろうけど、それでもセラ・シルフィングは超強力だし、問題ない。


「それってLRO本体じゃ武器じゃないのよね。どっちかっていうとブービートラップ型よ。前の領土の取り合い……侵略戦では良く使われた様だけど、最近はあんまり使う機会自体少ないのよね」


 へぇーそうなんだ。まあブリームスはLROだし、同じ物があっておかしくはない。ちょっと仕様が違うのも、このブリームスが過去だから……かもだし。
 最初はこういう用途って事だったのかも。僕はこの卵形の武器をバカラさんから、五セット計卵十個を貰った。一つのホルダーに二つセットしてあるから、それが五セットって事ね。
 なんか多くね? とか思ったけど、まあ多いに越したことはない。足りなかった困るけど、多ければそんな事も無いからね。
 武器も揃ったしそろそろ行動開始だな。取り合えずあのデカ物に近づいてこの武器を投げつければそれでいいんだろう。
 近づくよりちょっと離れた攻撃の方が強いとはこっちにはありがたい仕様だ。


『じゃあ行くか。どっちにしろ護衛には気づかれるんだし、一気にやるぞ。どちらかがアレを潰せればいいんだ。怖じ気付くなよ』


 そう言って画面の中のバカラさんは走り出す。たく、そっちは人が少ないから良いけど、こっちは溢れる程に居るんだぞ。そんなホイホイ走れないんだよ。
 それでも追いかけない訳には行かないし、僕もあの機械を目指す。


「お前はそこで見てろよメカブ」
「守ってやる! くらい言えないの無限の蔵?」
「はっ、自分の身くらい自分で守れ」
「何それ! 君にはガッカリだよ!」


 憤慨した様な声が後ろから聞こえたけど、僕は振り返らずに機械を目指す。近づくにつれて立ち止まってる人が増えるから、これは予想以上に大変だ。
 てかそんな事を思ってる間に、ブリームス側では僕達の接近がバレたみたいだ。


『おい、それ以上近づくな!』


 そんな声がローブに身を包んだ奴らの周りに陣取った兵士からあがる。手には長い槍。やっぱり明らかにこの街はあちら側についてるって事だろう。
 僕が迎え打つかどうかを考えてると、そこで先行してたバカラさんがこんな声を上げる。


『おらおらああ!! 俺様の顔に見覚えはないのかお前等!?』


 なんだその宣言は。そんなに注目されたいの? そんな事を思うと同時に、画面には『きっ貴様は!!』とかの声が挙がる。


『お前は第二研究所の実験を邪魔した奴だな。貴様等の活動は既に法に触れてる! 遠慮はせんぞ!!』


 そう言って兵士達はバカラさんを討ち取ろうと向かってくる。そうか、あの人第二研究所の実験を妨害したときに顔を知られちゃってるんだな。だからそれを利用して、奴らを引きつけてくれるって訳ね。
 一瞬で理解したぜ。僕は更に前へ! 人混みがうざいけど、無理矢理進む。汗臭くて死にたくなる。けどそんな状況を我慢して進むと、ようやく画面には緑色のロックオンが例の機械を囲んだ。


(よし、これで)


 僕はそう思って指を画面に近づける。だけどその時、音もなく腹部に鈍い衝撃が走る。


「ぐっ!?」


 ズルリと膝に力が入らなくて地面に落ちる。密集地帯がら思わず誰かの肘が腹に入った……とは思えない鋭さだった。これは……


「おいおいダメだよ兄ちゃん。今から始まるショーを妨害して貰っちゃ困るんだ。引っ込んでな」


 汚らしい言葉、視界に映る拳には指輪が全部の指にはまってたりしてる。聞くだけで頭悪いんだろうなと思う笑い声……汚らしいファッションはこいつらどうやらチンピラ風情の様だ。


「お前等……まさかハゲの?」
「ハゲとは失礼だな。けどまあその通り。邪魔するなよ。怪我しちゃうぞ!!」


 そう言って今度は蹴りをかましてくる。僕は後ろに飛んでそれを回避。ある程度の距離を取ると見えてくる。こいつら、野次馬共に混じって相当数この機械の周りを囲んでやがる。
 だって明らかに金髪とか腕にタトゥーとかしてるのが目に付く。なんかやけに僕の事を睨んでるし、その周りでちょっとワタワタしてるのは一般人だろ。
 そうだった……敵はブリームスにいる奴らだけじゃなかったんだ。まさかこれってリアルでも戦えって事? 信じられん苦行だな。


「無限の蔵!」
「来るなメカブ。お前が来たってどうにもならないだろ」


 僕は後ろから駆けつけようとしてたメカブを制する。下手に人質にされてもかなわないからな。けど、これは問題だよな。
 ブリームス側ではバカラさんが戦ってる。リアルでは僕も戦えって事なのだろうか? でも流石にこれが想定されてたとは思えない……訳もないかも。
 僕たちはそれぞれ違う勢力についてる。って事は、やっぱりプレイヤー同士の衝突もイベントの設計内か。けどこれは理不尽だろ。
 こっちは一人でやってるのに、向こうは部下共を使っての妨害工作なんて……ヒドすぎる。


「ヒュー格好良いねぇ。いつまでそんな格好良いこと言えるか、見せてくれよぉぉ!!」


 爛々と目を輝かせてこちらに向かってくるチンピラ共。流石に今回は一人でどうにか出来る数じゃない。かと言ってやっぱり逃げる事も出来ないんだよな。一体どうすれば……僕はチンピラ共の攻撃をいなしながら突破口を考える。かんが……える?


「うおっちょ! お前等ズルっ――」


 なんか周りからドカバカと手足が飛んでくるんだけど。しかもなんか体が重い。反応が一歩遅れるというか……足が妙に引きずる感覚。
 まさかずっと感じてた痺れの影響か何かか、僕の売りはスピードなのに、こんな足じゃサンドバックも良いとこだ。


「おらおらおらおら!! どうしたそんな物かよお前は!! 聞いてたのと随分違うな!」


 無茶いうなよな。こっちは一人で連戦してるんだ。雑魚の癖に数に任せて取っ替え引っ替えで立ち回ってるお前たちとは違うんだよ。
 けどそんな事を言い返す余裕すらない。流石に囲まれた状態でやられると絶対に死角が出来るわけで、すべての攻撃に反応出来る訳もない。
 いや……こうなれば逆に考えるしかないのかも。目指すべき所はたった一つだ。後ろに回った奴らなんかそもそも気にしなければいいんじゃないか? 背中を蹴りまくったり、後ろから頭を打たれたり、そんなの全部無視して目の前の一人を突破すれば、僕の目的はやり遂げれる筈だ。背中を丸めて顔を腕でガードしてた僕だけど、こんな負けしかない我慢は早々に切り上げるべきだと判断する。
 とりあえず、目の前の奴を一撃でぶったおす事を考える。


「なんだか思ったより全然楽勝だな!!」


 そんな言葉と共に、後から衝撃が走る。思わず態勢が前につんのめる。鈍い痛みが背中に……とうかそこかしこにあるわけだけど、僕はこれを足がかりにする事にした。
 今の僕の状態じゃ、自分の思ったとおりに体も動かせない。なら、向こうが加えてくれた力をそのままきっかけにするだけだ。


「おいおい、こっちに倒れて来ても通行止めだぜ!!」


 そんな言葉と共に、目の前の奴が大きく腕をふりかぶるのが見えた。つんのめった僕に併せて、その拳をたたき込む気なんだろう。
 指輪がはまったその拳で顔面を殴られたらさぞかし痛そうだ。けど今この瞬間は僕とこいつは一対一も同然。僕の視線はこの前の奴一人に捧げた。
 力なんていらない。ただ狙った所に拳を伸ばす――それだけでカウンターってのは成立するんだ。
 頭を傾けて拳を紙一重で交わす。耳に空気を切る様な音が聞こえて、暑苦しい風が一瞬吹く。そして同時に伸ばした腕に感触が。
 ゴツゴツした感触。骨通しがぶつかった痛み。僕の拳は目の前のチンピラの喉を貫いてた。


「かはっ!?」


 そんな声とヒューヒューという変な音が耳に届く。喉に走った衝撃での呼吸不全とかだろ。体から力が抜けるように膝を地面につくチンピラ。
 その課程で僕はこういってやったよ。


「通行解除ってことで」


 僕はすぐさま足を動かし前へ進む。既に投げれる距離だ。カメラを向けて機械の姿を映してタップ! 卵形の武器が宙を舞って大仰な機械へと張り付いた。そして、青白い電流と火花を散らして、機械を包んだ。


「やったか?」


 僕は白い煙が充満してる画面内を見据える。すると、後から盛大にタックルをかまされた。


「この野郎! 舐めた真似しやがって、動けない様にするぞ!!」
「っつ……」


 油断した。たった一人しか倒してないのに、攻撃が決まった事に浮かれたかも。くっそ……思わずスマホを手放したじゃないか。これじゃあ機械がどうなったかわからない。


「どっけよ! チンピラ共!」


 そう言うけど、僕の態勢は圧倒的に不利だ。なんてたって背中に乗られた状態。これじゃあ反撃のしようがないぞ。そう思ってると、無造作に髪を鷲掴みにされて、反るように持ち上げられる。
 これはかなり痛い。髪の毛がプチプチ言ってる。


「言葉には気を付けろよガキ。どっちの立場が上かわかってんのか?」


 耳元でそんな声が聞こえる。けど……それがどうしたって言ってやりたい。臭い息をかけんじゃねーよ。


「僕はどんな立場だからってお前等よりも下になる自信はねーよ」
「ああ、そうかい!」


 そう言うと顔面に衝撃が走った。どうやら地面に叩きつけられたらしい。こいつら……ここまでやるとかマジでクズだな。既にゲームを越えてる。
 血の滲む視界の先で、野次馬になってる人達が青ざめてるのが見える。まあしょうがないよな。その反応は当然だろう。


「よ~~く見とけよお前等! このイベントのアイテムは俺達が取るんだ! 邪魔しようとする奴はこいつと同じ様にこう! こう! こう! なるんだよ!!」


 ガンガンガンと三回も連続でアスファルトに叩きつけられた。頭がクラクラする。鼻血だってきっと出てるだろう。流石にこれはヤバいかも。
 反撃する力も無いし……助け……なんて物に期待出来るほど楽観的でもない。リアルにはヒーローなんていないって僕はしってるよ。
 誰が好き好んで見ず知らずの他人を助けようとする? そんな物好きはそうそういないんだ。熱気が沸き立ってる様な地面と接触してると、このまま体が溶けるんじゃないかと思えてくるよ。
 でも溶けた後に直ぐに再構成出来るのなら、それも悪くない……とか変な考えが頭に巡ったりしてなんかヤバいな。まともじゃないかも知れない。


「む……無限の蔵を放せええええええええええ!!」


 呆けてた頭がそんな声に引き戻される。視線を向けると、そこにはどこから調達したのか、細長い棒……じゃない、紙のポスターか何かを丸めた物を振り回すメカブが居た。けど、そんなのでどうにか出来るわけもない。彼女はあっさりと突き飛ばされた。
 そしてその反動で溢れたスマホの一つが僕の所へ……これしかないと僕は思った。僕は地面で操作して一つの電話番号をタイピングする。

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