命改変プログラム

ファーストなサイコロ

炎天下なんかに負けない



「ねぇねぇ秋君、あれから連絡無いけどスオウ君は大丈夫でしょうか?」
「う~ん、大丈夫だろ……と言いたいけど、アイツって厄介ごとを引き寄せるからな。今頃あのヤクザと抗争しててもおかしくないかも」


 手の中にある缶をささやかに振りながら、俺は隣を歩く美少女へと視線を向ける。なんかこうやって歩いてると自分達がどう見られてるのか気になる。ちゃんと彼氏彼女に見られてるのだろうか?
 それとも姉弟? 愛は雰囲気大人っぽいからあり得そうだ。もしもそうだとしたら、道行く人達に「彼女」だと宣言して回りたい位のテンションに実は上がってる。
 だってやっぱり綺麗なんだよな。クラスにはいないよこれは。愛を見てると、日鞠でさえ子供っぽく見える。
 暑苦しい風になびく細い髪。日傘を支える華奢な指とか、思わず握りしめたくなるくらいだ。そして大きく空いてるけど、上品さを残してる胸元の鎖骨なんかたまらないね。さらにはそのフワフワした服が、寄り一層のお嬢様感を醸し出してて、道行くオタク共の顔が面白い。
 勝ち誇れるぜ。いや、マジで。俺の目には輝いて見える。


「ふっふふふ」


 思わず笑いがこみ上げてしまう。それくらい俺は有頂天になってる。この殺人的な太陽の日差しも、愛を薄着にするために照らしてくれてるのなら、ある意味グッジョブだよ。
 だけど、雪の様に白い肌を焼くのは止めてほしい。そこだけは太陽の野郎が憎いな。


「何に笑ってるの? ねえやっぱり合流したほうがいいんじゃないかな? 私達あれから、アイテム一個しか見つけてないんだよ」


 俺が不気味な笑いを発してたせいか、愛に突っ込まれてしまった。しかも合流ね。俺的にはあんまりそれはしたくない事だな。
 一応スオウの奴は気を遣ってくれたんだろうし、その気遣いを無碍には親友として出来ないと言うか……


「それにやっぱり危ない目に遭ってないかも心配です。秋君心配じゃないの?」
「それは……」


 愛が眉を下げてこっちを見てる。その表情を一枚写真に収めて起きたいけど、今そんなことをしたらきっと怒られる。だって愛は真剣に言ってるんだから。
 まあぶっちゃけ、心配はしてる。当然だろ。親友なんだし、責任だって一応は感じてるし……それに感謝だってスオウにはしてる。
 俺が今こうして愛と歩けるのはアイツのおかげだ。だから心配しないわけがない……けど、実はさっきからずっとスオウスオウと愛の口から出るのが、ちょっとね。
 こう……もやもやした感じがあるんだよ。わがままだってわかってるし、自分が小さいとも思うけど、なんだか嫉妬してしまう。


 一緒に歩いてる筈なのに、スオウの名前を発する度に、アイツの事を考えてるって思えてしまう。でもそれを表に出したらきっとダメだってのもわかってる。
 愛の事は良く知ってるんだ。そう言う男はきっと嫌いだ。俺だから許されるなんて……まだそんな大層な事思えない。付き合い出したら付き合い出したで、嫌われない様にする事に気を使ったりするんだって最近知った。


「心配してる……当然だろ。けど、一個じゃアイツにバカにされるかもしれないし、取り合えずもう一個位アイテムをゲットしてから連絡しようよ」


 俺は一番正しい答えを見つけた筈――そう思った。これならスオウの心配もしてるし、一緒に居られる時間も保てる。まさに一挙両得の知恵だ。
 俺って天才かもとか思えるぜ。


「う~ん、バカになんてしないと思うけど。二人はそんな仲じゃないでしょう? お互いに信頼してる。違うの?」
「違う違う、信頼って……まあ愛らしいよね。その見方はさ」


 流石世の中の黒い部分に極力触れてない感じが漂ようだけはある。一番の人生経験はLROで起きたことって、この前聞いたからな。
 まあ確かにあれは壮大で、人生の中で一回切りでいいような体験だったけど、一番がゲームでの事って……なんか寂しいよな。
 まあ庶民の俺にはわからない事情が金持ちの世界にはあるのかも知れないけどさ。家族との思い出とか無いのかな? 
 こっちには結構あるんだけどね。特にスオウと日鞠、あの二人に出会ってからはそれなりに刺激的な日々だったからな。
 まあそれは追々ということで、今は何だっけ? 俺とスオウの野郎が信頼しあってるって事だったっけ。俺は首を傾げる愛の視線に応える様にこう言った。


「俺達の……ってか男同士って簡単に貶したりするよ。足引っ張り合ったりなんて、アイツとは良くやったし、信頼って言うか、絡まったたこ糸みたいな感じで、もう解くのも面倒だからずっと連んでるんだよ。
 俺達はそんな間柄」
「でも、本気で貶し合ったりしてる訳じゃないよね? スオウ君も秋君も。冗談だってわかってるから、通じてるから、それでも一緒に居れる。
 いいです。そういうの……なんだか男の子って感じで」


 優しく微笑みかける様なそんな笑顔。俺は心のシャッターを何度も切った。これは永久保存確定だよ。一瞬心臓が喉から飛び出るから思った。
 思わず唾を飲み込んで、何とかそれは免れたけどかなり危なかった。やっべー俺の彼女世界一可愛いかもしれない。


「どうしました秋君? さっきから惚けてる事多いよ。暑さにやられたとか? 休憩しよっか? 日射病になったら大変です」


 そう言ってお姉さん風に気遣ってくれる愛。いやー別に熱にやられたんじゃないんだけどね。


「大丈夫……これはさ、その……日差しじゃなく、愛の笑顔にやられただけだから」


 うおおおおおお! 言っちゃったぜ。実は一度言ってみたかったんだ。俺の言葉を受けた愛は、少しだけ固まって、そしてそっぽを向いた。もしかしてハシャいでたのは自分だけだったのかな?
 そう思い、ちょっと不安に刈られる。だけど小さくささやかだけど、耳に心地の良い声がポツリと聞こえたよ。


「バカ……なんて事を往来で言うんですか……」


 ズッキューーーーン!! とその台詞に胸を貫かれる。てかおいおい、俺の彼女可愛すぎだろ。核兵器よりも強力なんじゃねーの(俺限定で)。か弱く喋るその姿も、恥ずかしげに頬を染めるその横顔も、全てが最高だ。


「本当だ。本当に俺はそう思ってるよ! 愛は誰よりも可愛いって。いや、綺麗だって!」
「バッ!? だからここは往来です! あんまり変な事連呼しないで!」


 白い日傘をクルクル回して怒った姿も可憐だ。怒った姿まで愛はほんわかしてるよ。まあこれは怒ってるって言うよりも、恥ずかしがってるだけだろうけど。
 実際マジで怒ったら愛だっておっかないからね。まあそんな事が無いように努力するけど。


「もう、急いでアイテムを見つけなくちゃなのに、秋君がおかしいことばっかり言うから、全然進みません」
「いやいや、俺は思ってる事を素直に口に出しただけだよ。思いってのは口に出さないと伝わらないらしいからね」


 そんな事を良く日鞠が言ってた。まあでも、前は自分の内面を他人にベラベラ喋るなんてバカのやることだろ――と、思わなくも無かったけど(日鞠の事はある意味で尊敬してるけど)、今はそれがちょっと嬉しい様な、楽しいようなだ。
 恥ずかしさはやっぱりあるけどな。


 すると俺のそんな言葉を聞いて、少しだけ前に進んでた愛が立ち止まる。日差しを受け止める白い日傘が、風景から浮かび上がってクルクル回ってる。
 そしてそんな日傘の向こう側から、こんな言葉が聞こえた。


「伝わらないかな……私も秋君の事……だい……」
「え?」


 最後の方が良く聞き取れなかった。てか言わなかったのかも。俺は愛の顔を覗き込もうとする。だって聞き取れなかったけど、あの流れで行くと『大好き』とかが入るんじゃね? 
 それは是非とも聞きたい。けど……


「なんでも無いです! 今のは忘れて!」


 そう言って愛は日傘で俺がのぞき込むのをブロックする。だけどそうされるとイタズラ心が沸いてくるといいますか、きっと真っ赤に成ってるであろう愛の顔が見たくて堪らない。
 だから俺は、回り込んだりして色々やってみる。


「おりゃ!」
「だから止めてって」
「ならこっちから!」
「させません!」
「これならどうだ!」
「しっしつこいですよ!」


 むむむ……流石は愛。全てを完璧にブロックされた。ドジッ子なのに妙に運動神経良いな。矛盾してない? まあ愛の場合はオンとオフが激しいって感じなのかも知れない。LROでは大抵オン状態だったから、リアルで知り合うまでドジっ子属性があるとは知らなかったしな。
 まあだけど、俺はそんなドジッ子の部分も含めて愛を愛せるけど。当然だよな。愛すべきドジっ子。日本は古くからドジッ子を愛してきた国民だ。
 ドジッ子最高だよ。そんな事を思ってたからか、それともちょっと激しく戯れたせいかわからないけど、クキっと足を捻って地面を踏み外した愛。


「おっと!」


 俺はとっさに愛を体全体で受け止めた。端から見たら、胸に飛び込んで来たみたいな感じだったかも知れない。愛の顔が俺の胸に触れて、俺の右手は愛が日傘を持ってる手を握りしめて支えた。そして左手は肩の所に添えてる。
 凄いアクシデント。ビヴァドジっ子! 


「あ……ありがとう」
「別に……こっちこそありがとう」
「え?」


 頬を染めてる愛の顔に疑問符が浮かぶ。まあ俺のありがとうの意味は知らなくていいよ。このシチュエーションにありがとうだからね。
 これだけ近くだと、愛の香りが漂って来る。サラサラの髪が汗で額にくっついてるのもわかる。なんかこうちょっとエロいよな。女の子のそう言うの。
 しかもいつだって男を狂わせる様な香りを漂わせてるんだから。美少女って罪だよな。往来の真ん中だけどギュッとしたい。


「秋君、そろそろ離れよう。流石にこれは……」


 そう言ってくる愛はキョロキョロしててこれまた可愛い。周りの目が気になるんだな。確かに頭では離れなくちゃとわかってはいるんだけど……いかんせん体が離れたくないと言ってる。
 しかもさっきから胸がドキドキで息も自然と荒くなって来たかも。


「ハァハァハァ……」
「秋……君?」


 身の危険を感じたのか愛はちょっと強引に離れようとする。けど、俺の力の方が強いから離しはしなかった。やばいな、マジでこの愛の香りに狂いそう。


(抱きしめたい。抱きしめたい。抱きしめたい。こうガバッと抱きしめたい!!)


 そんな思いが募り募る。そして欲望に理性が負けた時、俺はきっと愛にとっても恥ずかしい思いをさせる。させてしまう。そう思った。
 けどその時だ。携帯から響く音色が、俺の理性を引き戻す。


「スオウ。アイツどんだけタイミングいいんだよ!」


 助かったけどな。取り合えず中身を確認。


「スオウ君からですから? なんて書いてあるの?」


 そう言って愛が隣からのぞき込む様にしてくる。自然と密着する形に成ると、どうしても気になる部分が触れてしまう。
 そう……それは胸だ。小さな画面を覗き込むために、愛は一生懸命つま先立ちで来てるから、その胸が二の腕部分に当たるんだよな。
 なんて幸せタイムだ。メールの内容が頭に入って来なくなる。そんな俺に変わって、愛が内容を読み上げた。


「え~と、上手くやってるか? 愛さんと二人きりでもおかしな事するなよ。健全にいけよ健全に。愛さんってどこか世間知らずっぽいからって、休憩がてらホテルとか……秋徒、お前ならやってる筈だ! ――――ホテルって休憩するために入る物何ですか? 私はてっきり宿泊目的だけの物だと思ってました」
「あははははは、いや。俺もこいつが何を言いたいのかさっぱりわからない。暑さにでもやられたんじゃないかな」


 なんて事を書いてるんだアイツは! ホテルとか! てか健全にと言っといた後に、ホテルを力強く確信してる物言い……こいつは全く俺を信用してねぇな。
 てか、マジで愛はそっち系のホテルの事知らないのかな? まあお花屋さんや自販機で驚いてた位だからね。一体どこの世界で暮らしてたのやら。
 花屋では「家の方が一杯お花あります」って言ってたし、自販機は「存在位知ってます。でも、買ったことは無かったんです。だって小銭って持ち合わせてないし、それに野外に晒されてる物だから、衛生面は大丈夫なのかなって」そんな感じだったな。


 真正のお嬢様発言だよ。だけどそんな彼女が年下で、一般人な俺と出会って付き合ってるんだから世の中何が起こるかわかんないもんだ。


「この、おかしな事ってのは何なんでしょう? ちゃんとイベントしてるの? と言う探りかな?」
「いや、それはそのままの意味だと思うけど……」


 くっ、なんか恥ずかしい。自分が恥ずかしい人間だと、愛の様な純真な人間を見ると思えてしまう。てかマジで、完全密封された様な世界にいたんだな。
 そう言えば愛って、LROで出会ったときから、そう言う話は一切しなかった癖に、気安く触れては来てたな。それって結構危ないと思うんだけど。
 勘違いする奴ら多分に多そうだろ。でも愛にとっては「???」なんだよ。どうしてそうなるのか理解できない。そもそも異性を意識してる行動では無いからな。愛にとっては。
 本当に彼氏としては心配になることだよなこれは。愛の容姿でサワサワされたら、大抵の男はときめくぞ。取り合えず、俺以外にはそう言うことが無いように少しずつして貰おう。


「おかしな事っていうのはだな……だからイヤラシイ事なんだよ。キスとか?」
「キスはイヤラシイの? 海外では挨拶だよ」


 やっぱりハテナを浮かべる愛。


「ええ~と、ほら唇同士でする奴。接吻だよ接吻」
「私は……好きな人同士でやるのは素敵だし、憧れてたけどな」


 今度はなんだかシューンと肩を落として落ち込む愛。ま、まさか俺とのキスにそんな夢を抱いてくれてたのかな? だけど俺がキスはイヤラシいんじゃ! とか言ったせいでその夢を潰したとか……そんな感じ?
 いやいや、違うんだ。本当は俺だってイヤラシイなんて……てか、いやらしくてもしたい物はしたいじゃないか!


「いや、俺だって別にいやらしいってだけの行為とは思ってないよ。当然」
「あは、そうですよね。良かった。お付き合いとかしてみたら、一度はやってみたい事だったんです。でも秋君がイヤなら、諦めないとかなって思っちゃってちょっと悲しく成りました」


 そういって間近で微笑む愛の唇を凝視する俺。形の良い唇だよ。それにツヤツヤしてるし、柔らかそうだ。グロス? リップ? 良くわからないけど、とにかくキスってのを意識すると……どうしてもそこに視線が行ってしまう。
 てか、そこまで考えてたのか。もう少しであの唇が遠ざかる所だったじゃないか。そうなったらスオウの野郎を殴っても殴り足らないよな。


「秋君?」


 愛の声でハッとする。流石に唇を凝視してたからおかしく思われたかな。てか、改めて考えると近い。これはなかなか気恥ずかしくなる近さ。


「ちょ……ちょっと暑い」
「ああ、ごめんなさい」


 流石にこの往来ではな。さっき間違い犯しそうに成ったし、理性が保ってる時に離れる事に。もったいないけど、これからが俺達にはあるんだ。


「秋君、スオウ君からのメールの続き。まだありますよ。実はそこからが本題じゃないんですか?」
「え? ああ、そうなの?」


 全然気づかなかった。何どうでも良いことメールしてるんだと思ったけど、こっちが本題か。
「え~と、何々――」




「どこにメールしたのよ無限の蔵。情報を取ってきてくれた頼りに成る人?」


 そんな事を良いながらハンバーガーを頬張るメカブ。あれから僕達は場所を移動して、某有名ファーストフード店に来てます。ここは涼しくていいな。
 冷房ガンガンだよ。地球を犠牲に人は今日も文明を駆使してます。まあだけど、既に文明無くちゃ僕も生きてけないよな。
 夏に冷房が無いなんて考えられないもん。僕はシェイクをジュコジュコ吸いながら、メカブの対面の席に座って机に広げた地図を見る。
 紙媒体の地図はここに入る前にコンビニで買いました。


「頼りには成るけど、そいつとは違う奴だよ。まあだけど今はあんまり邪魔したくないんだけど、一応それじゃ向こうも気を使うだろうからね。
 こっちから『お願い』しとく事にしたんだよ」


 そうお願い。二人の邪魔をしない程度のお願い。


「お願いって何かわかったの? 地図まで買っちゃって、雰囲気作りかと思った」
「なんの雰囲気だよ。考えてる様に見せたいだけだとでも思ったのかお前は。ちゃんと考えるために買ったんだ。どうやったってスマホの画面じゃ小さいだろ、二人で見るには」


 僕はそう言ってあわせて買ったペンを取り出す。そして傍らにはスマホを置いて、画面の地図と同じ様に書き込みしてく。
 その間にもメカブはハンバーガーをパクパク。少しは手伝おうという気にはならないのだろうか。まあ良いけどね。


「で、お願いって?」
「別に何もわかっちゃいない。けど、これまでの事を教えて、そっち方面でも出来そうな事やってみて~ってな感じ。何かわかるとしたらこれからだろ」


 よしよし、これでOKだな。まあ流石に地図が大きすぎた感が拭えないけど、手頃な倍率の地図なんて売ってないんだよね。
 イベントの対象区域は秋葉原という街全体。それを地図上で赤いペンで囲んだ。そして地図ギルドのブリームス側の情報も書き込んで、大体はこんなもんだろう。


「それで何かわかるの?」
「わかるように努力するんだよ。食ってばっかいないでちょっとは手伝え」


 本当に、さっきからバクバクバクバク、その細い体のどこにハンバーガーが収まってるんだ? 既に潰された包み紙が四個位に成ってるんだけど。


「今は休憩中。それに私は難しい事考えたくない」


 なんて身勝手な……まあ勝手に現れて勝手に手伝ってくれてるんだから、文句を言う筋交いもないんだけどさ。てか、痛い事は次々に考えつく癖に、肝心な所でその脳は使えないんだな。


「……たく」


 僕はため息をついて、地図を見据える。何かあるはず何だよな。攻略出来ないゲームなんて無いはず何だし。あの宝箱があった通路と同じ様な場所で、わかってる所にも印つけた。
 これ全部で同じように浮いた宝箱があるってハゲは言ってた。でもそれってそもそもどうなんだろう? 一つが現れたから他のも現れたのか? それとも元からそこにあったのだろうか? 
 その宝箱の一つで良いのか、それとも全部を開けないとお宝は手に出来ないのか。それかもっと別の何か……可能性が多すぎるよな。
 僕が頭を悩ませてると、なんか画面をテコテコ歩く奴が……


「うん、まあこんなもんで我慢しよう☆」
「お前……シクラなのか?」
「そっ、デフォルトシクラちゃん登場☆ アプリ起動の時しか干渉出来ないの不便だし、乗っ取ってみた」


 侵略された……僕のスマホが敵に。なんかアプリで画面を動き回る奴があるけど、そんか感じの二等身キャラにシクラは成ってる。


「で、何の様だよ。どっちみち黙ってろよお前」


 バレると厄介なんだからな。すると小さな姿で腕を組んで不遜にこう語る。


「ふっふー私が凄いアドバイスをしてあげるわよ。ヒントってのは大抵言葉に隠れてるわ。LROにしては単純なNPCだし、昔のRPG風だもん。
 そもそも、何を指して人を食うなのかなって私は思うけど」
「何を指して?」


 どういう事だ一体。食う、か確かにその表現はオカシいけど……でもだから何だ?
 僕は思考を巡らせる。その時、画面を歩くシクラが何かを受信した。


「メールだよ☆ メールだよ☆」

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