命改変プログラム

ファーストなサイコロ

偉き人、遠き子



 部屋の窓から外を見る。すると市街の方から聞こえてくる祭り噺が、今はもう聞こえない事に気付いた。どうやらイベントは終わっちゃったみたいだな。
 結局は良く見れなかったまま終わってしまったな。結構綺麗だったのに。だけど流れて行った灯籠の明かりは遠くの方でうっすら見える。
 それがなんだか祭りのもの悲しさを語ってるような……街の明かりも、祭りが終わったって結局は提灯だから、なんだか不思議に見える。暖かい色してるよ提灯。
 ほんのりとしてると言うかさ……


「何を黄昏てるんだい?」


 そんな言葉と共にお茶を持って現れたのは小さなモブリ――の中でも偉い偉い教皇様だ。そんな教皇様にお茶を持って来させるなんて……僕も大概恐れ多いことやってるよ。
 まあ僕が頼んだ訳じゃないけど、僕はお盆からお茶を受け取り、一口すする。


「黄昏てるって訳じゃないけど、なんだか周りの灯りがもの悲しく見えますよ。あの映像もそうだったけど……ミセス・アンダーソンや、シスターの事も」
「確かに……世界は未だ悲しみに満ち溢れてる」


 悲しみか……今までLROの歴史とかにはあんまり興味が無かったけど、ちゃんと息づいてるんだよな。僕たちプレイヤーは結局どこまで行っても余所物で、それはやっぱりゲームとしてここに降り立ってるから何だろう。
 LROをゲームとして楽しむ上では、この世界の成り立ちとかの歴史は、味付け程度にしか成らないもん。別にそんなの無くてもモンスターと戦うだろうし、最強とかを目指したり、自分がやりたい事をやれる。
 僕達の中では結局ここの歴史なんて、刻まれてないからね。設定でしか無かったもの……その筈なんだよ。本当にあの映像の様な事が起こった訳じゃない。だけどここで生きるNPCにとってそれは本当で、真実で……ちゃんと起こったこと。


 僕達はエゴなのかな……自分達が見てきた物だけを歴史としたいのか……そんなわけない。LROにはLROの歴史があって、僕達は今まさに、そんな歴史の一ページを刻む冒険をしてるんだと思う。
 何回だって、そして誰でもが出来る物もあるけど……これはきっと違うよな。僕の右腕を浸食してる呪い。クリエの背中に刻まれてる証……これは誰もが気軽に首を突っ込める物でも無いだろう。
 よくよく考えたらおかしなクエストだよな。誰もが出来ないのなら、これは一回切りのクエストなのかな? まあクエストの体裁を取ってるだけで、クエスト欄に実行中として表示されもしないんだけどね。
 誰の為の何の為の出来事を僕達は刻んでるのか……普通のクエストやミッションの様に、これも結末は決まってるのかな? 
 まあ既に普通じゃないし、先を考えるのも頭痛く成るだけなんだけど……これからって奴を考えない訳には行かない。命だって掛かってるしね。


「だけど救いはありますよ」


 教皇様は開けはなった窓から吹いてくる風にあたりながらそう紡いだ。救いね……


「それはやっぱり信仰って奴ですか? 信じる者は救われるとか」
「そう言いたいけど、違います。救いは誰しもの心にあるものですよ。諦めなかったり、進み続ける心……一人が歩けばみんなも歩く。止まらなければ誰かの救いに誰もが成れる……そう思いませんか?
 信仰なんてのは、そんな心を少し支えるだけの物で良いんですよ」


 なんだか……初めてこの人が立派に見えた瞬間かも知れない。そんな事を言ってる時のこの人の顔は、今までの教皇らしからぬ物とはちょっと違った印象だったよ。
 強いんだけど、怖いとかは全然ない。強く優しく包み込む包容感と言うか……それが教皇に必要なものなのかも知れないな。
 国の指導者と違って、誰かを導いてる訳じゃない……いや、信者を導いてる存在の筈だけど、でもそれって今日明日が突然変わる物じゃない。
 それに教えは基本変えないだろうしな、法律とかと違って。だからこの人がやってる事は、指導じゃなく教義なんだろう。聞いてもらえればそれで言い、後はその人の受け取り方次第。
 僕は風に揺れるお茶の表面を見る。するとそこには自分が居るよ。リアルと変わらない姿をした自分が写ってる。


「誰かの救いに誰もが成れる……か、そうであったらいいいなとは思いますよ」
「そうであれるよ。だって君は救おうとしてるだろう。過酷な運命を背負った小さな命を。君が信仰という教義を必要としないのは、自分で道を決めれる強さと、進む強さをきっと持ってるからだね。
 普通は何かに支えて貰わないと、見えない最初の一歩は踏み出せない物だよ。生きてると何気無いことで挫けそうになるからね」


 生きてるね……確かにこの人も生きてるよな。NPCの枠を越えた奴等が最近出て来すぎ。てか、僕はそんな大層な人間じゃないけどね。
 僕だって挫けるし躓くし……自分一人でここまで歩いて来ちゃいない。信仰なんて無くても、僕には頼りに出来る仲間が居ただけだ。そして今ここに入れるのも、二人の犠牲のおかげ……強くなんか無い。僕が弱いから、救えない物が増えていく。


「そんな顔しなくても良いんですよ。誰もを救うなんて、土台無理な話です。それでも救おうと思える事に、私は意味があると思います。だからそう思って傷ついてるのなら、それだけで十分ですよ。
 シスターも、アンダーソンもきっと」


 最大宗派の教皇さまが無理だとはっきり言うのはどうかと思うけど……頭ではそんな事、わかってるよ。誰もを救いたいなんて、ある意味それもエゴだよ。
 それにちょっと気付いたかも知れない。僕は本当は誰を救いたかったのか。真っ先に来るのはクリエだけどさ、同率で自分が居るよ。
 きっとこの道の先には、この呪いを解く鍵があると思ってやって来たから当然言えば当然だけど、自分主体に考えたら、それって二人を生け贄にしたも同然じゃないか。
 都合が言い様に考えてただけ……それに気付いた。


「僕はやっぱり……そんな立派な考えは持ってないみたいです」
「そんなに自分を卑下する事はないと思いますけど……」


 教皇様はそんな風に言ってくれるけど、別に卑下してるだけじゃない。生け贄でも犠牲でも無駄になんてしないさ。思いは受け取ったつもりだし……クリエは助ける。それは絶対だ。


「まあ立派で居られなくても、みっとも無くても、もう引くことなんか出来ないですけどね。それは相手が元老院でも貴方達でも同じですよ」
「ノーヴィスと言う国を敵に回しても構わないと?」
「もう既にそんな状況なんで、それも今更ですよ。それに貴方はクリエはやっぱり箱庭に閉じこめておいた方がいい派でしょ?」


 それならさ、結局味方とかそんなんじゃないだよ。実際ミセス・アンダーソンとだって何回か戦ってるし、箱庭では利害と目的が一致しただけだ。
 まあでも、敵って訳でも無かった訳だから、こんな面倒な思いになってるんだよね。最後に立ち会うって重荷を背負う事なのかも知れないよな……その人が生きた思い、その人がやりたかった事。
 見てしまったら無碍になんて出来ない。


「はは、まあそうだけど……ずっと隠すのはよくよく考えたらもう難しいかも知れないね。元老院が狙ってるのなら、いずれそこもバレるだろう。
 今までは聖院全体で隠してた訳だからね。内側から探されたらどんな場所でもいずれは見つかるだろう。それを考えると、君達は丁度良いのかも知れない」
「丁度良い?」


 丁度良いってのもなんだかあんまりな言い方な感じじゃないか。まあ本格的に協力してくれるんなら、教皇以上に都合の良い奴はいないけど。


「あの子、クリューエルはどこかに行きたがってるって聞いています。今回抜け出したのもそのため……ならどこか遠くに行って貰うのも悪くないと思いましてね。
 例えばそう……月へとか?」
「――っつ! あんたどうしてそれを?」


 それは誰にも言ってない筈だけど……クリエから聞いたのか? でもクリエを囲んでたのは元老院だったよな……だけどその元老院だってそんな事は口にしてなかった。
 まあもしかしたら知ってるのかもだけど、それを後ほかに知ってたのはシスター位。
 なんだかやっぱり教皇を名乗るだけはあるって事か。


「別に私は教皇ですから、大抵の事は知ってますよ。元老院が何をしようとしてるかはまだ掴んでないですが、存在が許せないからといって、どう利用しても良いわけはない。
 あんな小さい子を……それは常識でしょう」
「常識を語る割には、クリエを箱庭へ閉じこめるの良いんですか? あれだって十分常識に反してますよ」


 僕のそんな指摘に苦笑いを漏らす教皇。


「それはそうですね。私達大人の都合をあの子に押しつけてるだけですから。でもこれでもあの子には楽しく生きれる様に配慮してたんですけど……それじゃあ満足は出来ない様ですね」
「当然だ。元老院と同じ事を言ってるよ教皇様。辛くたって遠くったって、クリエはきっと諦めない。そしてもしも諦める日が来たら、それはきっと大人の責任だよ。
 夢を見れない世界に満足なんて誰がする? そんなのは無難に生きて、無難に生きる事を選んだ大人だけだろ」
「手厳しいね。無難に生きる事も難しい物なんだけど……世界の八割はそんな人で溢れてるよ」


 僕の子供っぽい言葉に、大人な言葉を返す教皇様。だけどやっぱり教皇にそれを言ってほしくない。てか、自分より小さくて愛らしい姿してるから、なんだかな~って感じだよ。


「でもそれでも……子供のうちは、世界は夢や希望でいっぱいだって事で良い。あいつにはきっとそんな夢みたいな物しかないんだよ。
 邪神と女神の力を併せ持ってるとかどうとか知らないけど、アイツはアンタ達の神様じゃないんだ。すがっていい相手でも、利用していい奴でもない」


 どんな力を持っていても……僕が見て言葉を交わしたクリエはやっぱりただの子供。自分のやりたい事をガムシャラに目指して、夢をキラキラした瞳で語る……そんな普通の子だ。


「夢や希望に満ちた世界でいい……ですか。確かに神経質に成りすぎてたのかも知れないですね。あの子はあれから一度も強大な力は使ってないですし、もしかしたら普通に、ただの子供としても生きられたかも知れない」
「生きられたんじゃない……生きられる、じゃないのかよ。まだ何も終わってなんかないんだからさ。クリエもアンタ達もまだ生きてるのなら、今からだって取り返せる筈だろ。
 クリエを神の遺産みたいな目で見ないで、ちゃんと見てやれよ。クリエ自身をだ。それは……シスカ教のトップである、アンタの責任だと僕は思う」


 揺れるお茶に立つ一つの茶柱。窓から流れる優しい風。周りが滝なだけあって、マイナスイオン一杯そうな風だよ。雲の切れ間から覗くちょっと欠けた月は黄金色に輝いて、眼下の世界を心許なく照らしてる。
 どう足掻いても太陽には勝てないけど、月は月で良い仕事をしてるはず。どっちかじゃなく、どっちも大事。世界だって、誰かじゃなく、誰もがきっと特別であれる筈。
 生きてここに居ることも、生きてなくてもここに存在してる事も、やっぱり特別な事だよ。
 僕の言葉を受け取った教皇は、天の高い位置にある月を見る。そしてポツリとこう言った。


「責任ですか。これ以上あまり背負いたく無いものですけど……まあクリューエルは軽そうですよね」
「アイツは確かにちっちゃいけど、背負うっておんぶすれば良いものじゃないぞ」


 何? 今のは教皇なりの冗談か何かだよな。


「承知してますよ。確かに本当なら、私が出るべき事だった筈。背負うという事は、その人の全部を抱え込む事ですから、やっぱり何かと理由を付けて逃げてた私の責任ですね。
 大変な事をやるのが偉い人達の役目だと言うのに、いつしかその立場に酔ってしがみついて、大儀の意味を取り違えた人達が多く成りすぎたのか知れない。
 元老院の年寄りも……そして私も」


 なんだか寂しそうにそう呟いた教皇様。権力に酔うね。仕方ないと言えば仕方無いのかも知れないけど……誰もがそんなわけないって信じたい事でもある。でも人なんて大抵調子良い生き物だから、先生とか様付けとかされて崇められると、ついつい調子に乗って勘違いしてしまう。
 どこでだってそれも変わらないな。リアルにだっているよな。特に政治家とか……大抵腐ってる奴等だ。ある意味元老院だってそんな立場だろうし、やっぱりって感じだな。
 でも、この目の前の小さな教皇がそうだとはあんまり思えない。護衛だっていないし、身の回りの世話をしてくれる侍女だっていない。
 お茶は自分で入れて、布団だって運んでくれた。それは権力に酔った奴はしないだろう。随分庶民染みてる教皇だよ。


「今からでも遅くないですよ。貴方が変えれば良い。それが出来るでしょう貴方なら。なんたって教皇なんだから」
「教皇なんて見せ物小屋の珍獣と同じような物ですよ。元老院にとってはね。私は体が良いから担ぎ上げられた虚像なんですよ」


 吐き捨てられた様な言葉が、夜の空に放たれる。なんだかこの人は……生きるって事をしてない様に思う。それがなんだか腹立たしくて、僕は思わず頭を鷲掴みにして強引にこちらを向かせた。


「ふざけるな! 虚像か実像かなんか知った事じゃない。シスカ教の信徒は誰の言葉を聞いてるんだ? 誰の言葉を待ってるんだ? それはアンタだろ! 元老院じゃない! アンタは間違いなく、教皇なんだ。ノエイン・バーン・エクスタルドをもっと誇れよ。アンタはさっきこれ以上背負うのが嫌とか何とか言ってたけど、実はまだ何も背負ってなんかないんじゃないか?
 世界中の信徒と、繋がれて来た歴史を背負ってる奴が、珍獣と同じなんて言うわけない」


 僕の言葉に、教皇の瞳孔が揺れてた。てか、こんな事言って打ち首もんだよ。だけどこの人の考え方は……この小さなモブリが変われば、シスカ教はもっと変わるんじゃないかと思ったんだ。
 元老院が教皇よりも幅を利かせるってのもおかしいしね。


「私は……」


 震える様な声を出すノエイン。だけど何かを紡ごうとして、そのまま俯いた。なんだか……やっぱり教皇っぽくないよな。
 考え方とか、行動とかじゃなく……雰囲気がそうなのかも。若いからって言えばそれまでだけど……この人の周りには威厳とかがない。
 それはやっぱり本当の意味で、このシスカ教って奴を背負ってないから……そんな物、嫌なら放り投げ出す事を進めたい程だけど、この人はどうなんだろう。どう思ってる?


「貴方はその立場が苦しいんですか? なら辞めた方がいいと思いますよ。まあ僕が言うことでも無いんだろうけど」


 なんにも知らないからね。でも何にも知らないから言える事だってある。誰も言わないことをズバッと言える。だけどノエインは首を横に振るよ。


「私は……嬉しかったですよ。自分が選ばれて……だってそうでしょう……教皇ですよ。でも何をやればなんて、どうすれば良いのかなんてわからない。
 世界を平和にするやり方なんて、誰も教えてはくれません。教義だけでは足りないんですよ。でもそれでも……私が祈らなくてどうします? 私は教皇なんですよ。
 祈りが届く事を信じなくてはいけない。それが信者の為では無いんですか? 例え珍獣でも見せ物でも、それを見せるのが教皇の役目です」


 たった一つの出来ることが祈る事……それじゃそこら変の人たちと何も変わらないと思うのは僕だけか? きっと違うだろう。
 教皇ってもっとうこう凄い感じってのは勝手な思い込みなのかな。でもさ、これだけは僕でも言える事があると思う。今までの経験から……これだけはハッキリ言える。


「教皇……いや、ノエイン……酷な様だけどさ、祈るだけじゃ世界は何も変わらない。祈ることが悪いなんて言わないけど、結局何かを望む様に変えたのなら、自分で動くしかないんだよ。
 それでも絶対に自分が望んだ結果が得られる訳じゃないし、失敗するかも知れないけどさ、祈りを信じるのなら踏み出すことをしても良いんだよ」


 神様に届いてたとしても、きっと神様は何もやっちゃくれないだろう。嫌いな奴を殺してくれないし、都合の良い世界には成らない。
 まあノエインの場合は、自分の事って訳じゃないんだろうけど。


「踏み出すことですか……ミセス・アンダーソンは良くそういう事をしていましたね。そう言えば」
「はは、確かにあのオバサンはパワフルだったよな」


 ミセス・アンダーソンはある意味、体現してたのかも。あの人は自分の進む道は自分で切り開く……そんな感じだったもんな。
 でも……そのミセス・アンダーソンももういない。居るけど、目を覚まさない。だからこの人がやらなきゃいけない。
 するとその時、寝室や鉢落ち部屋とは違う襖が開いて、みんながようやく出てきた。


「出来たっすよ! 完璧っす!」


 テンション高げにそう言ったノウイの手には四角い形をした灯籠がある。四角い骨組みの周りに、紙を張って各の模様や絵を描いたりして、中に明かりを灯せば完成の簡単な灯籠。
 シルクちゃんやセラ……後ほかみんなもその腕に自身で作った灯籠を作って後ろから現れた。


「さて、じゃあ行きますか教皇様」
「ああ、そうだね」


 僕たちは会話を打ち切り立ち上がる。僕も実は作ってたから、それを持って早速移動だ。何も出来なかったけど、せめてこのくらい。




 着いたのはお社の最下層の場所。湖と接してる部分だ。木材が噛み合わせた様に成ってて上手くドーム状に組まれてるその下に僕達は来てる。
 折角だから僕達も灯籠流しをやる事にしたんだ。アンダーソンやシスターの為にね。


「じゃあ、みんなで一斉にね」


 そんなシルクちゃんの言葉で全員水面に灯籠を置いた。そして祈りを込めて僕達は手を離す。すると灯籠はゆっくりと、社の出口へと進んでく。
 淡い光を携えて……儚い光を夜の闇の道しるべにして。


「あの灯籠って最後にはどうするの?」


 僕は何気にそんな事を聞いてみる。だってずっと湖に浮かせとく訳には行かないよな。リアルでは川から海へと出ていく訳だけど、ここじゃそうは行かない。


「最後には湖の一カ所に灯籠を集めて、魔法の一斉照射で焼き払う。それが最後の日の目玉イベントだよ。リアルと違って、ここでは三日間はやってるからね」
「なるほど……」


 それは大層迫力があるだろうな。炎で浄化とかそんな感じかな。僕が灯籠を見送ってると、後ろから背中を突く感覚が……振り向くとそこにはセラが。


「なんだかあの人元気無くない? アンタ何したのよ?」
「何って別に……ちょっとした会話だよ」


 そうそうこれからの事とかね。まあ確かにノエインはちょっと元気ない感じになってる。するとそこにテッケンさんが――


「教皇様、どうですか? ちゃんと作って起きました」


 そう言ってテッケンさんはもう一つの灯籠を出す。


「ああ、ありがとう」


 そう言って灯籠を受け取るノエイン。でもその時、鍛冶屋がおかしな事を言う。


「おい、それまだ流して無かったのか?」
「そうだけど、それがどうかしたのかい鍛冶屋君?」


 テッケンさんを始め、僕達全員鍛冶屋を見る。何事だよ全く。まあどうせ、鍛冶屋の事だからくだらない事だと思うけど。


「いや……今流した灯籠は既に七つじゃなかったか?」
「「「え……?」」」


 僕達は七人。だから一人一個ずつで作ったはず……えっえ? 時季的に心霊現象って奴? するとどこからか声まで聞こえる始末。


『いや……まだ、逝きたくないの……』


 そして全員の頭に耳鳴りが響いたかと思うと、LROという世界が暗転した。

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