命改変プログラム

ファーストなサイコロ

正攻法で挑む場所



「なっ!? どうして!」


 その場に立ち尽くした僕は、思わずそんな事を言ってしまう。でも言わずにはいられない。だって道が無いんだ。昼間、一度ここに来たときは確かにあったのを確認してるのに……今はその道がぽっかりと消えてしまってる。
 あたかもこれが通常の様に……


「これは一体、まさかこんな事になるなんて」


 この街を一番理解してるであろうテッケンさんまでもが驚愕を露わにしてそう呟いてる。もしかしてこんな事になるのは今回が初めてなのかも。
 僕達が辿ってきたイベントの成果とかさ。だけどそんな思いを否定する様な事を、シルクちゃんが言う。


「そんなに自分を責める様に言うこと無いと思います。ここはこれまでそんなに重要じゃなかったし、もしかしたら夜にはこういう風になる仕様だったのかも知れません。
 それを誰も気付かなかっただけ――ってのも考えられますよ」
「確かにここはこれまでイベントでもクエストでもミッションでも使われた事はないが……でもそれでも気付かないなんて……」


 なんだか相当ショックなのか、テッケンさんはかなり落ち込んでる。そこまで落ち込む事でも無いと思うけど……別にこんな事では誰もテッケンさんを責めたりしない。
 LROの街はかなり広いし、全てを把握する事の方が難しいはずだ。するとその理由っぽいことをテッケンさんはポツリと呟く。


「ここは……この国は故郷も同じなんだよ。それなら知っておきたいじゃないか。そうしないと、素晴らしさをちゃんと伝えられないし……」
「別に誰もそんな事頼んでませんよ」


 ズバッとシルクちゃんがテッケンさんの言葉を一刀両断した。一番親しいからか、シルクちゃんはテッケンさんにはフランクだ。
 冗談を言い合える間柄。けど、テッケンさんがそこまで郷土愛に溢れてたとはね。まあこの人らしいといえば、この人らしい。
 でもここで落ち込んでる暇はないんだ。


「テッケンさん、考えようですよ。これで一つまたこの街を知れたと思ってください!」
「それは……まあ良いけど、どうするんだい? あそこに行けなきゃ、何も出来ないよ」


 確かにその通りだな。僕達は遠くで浮かび上がる小屋を見つめる。昼間ならここに道があって、簡単に行き来が出来たのに。
 今やあの小屋がとても遠くに見える。だけどそこで意味深な笑いを浮かべる奴がいた。


「ふふっふふふふ……みなさんお忘れじゃないっすか? 自分の『ミラージュコロイド』ならこの程度の距離、目と鼻の先。いや、鼻の穴と穴位に近いっすよ」
「ノウイ……」


 なんか意味不明な言葉だったけど、まあ言いたいことは伝わった。それに確かにノウイの自信は納得出来るものがある。それは自分達の体験だ。
 それを鑑みればミラージュコロイドなら確かに、道が無くったってあそこまで行けるはずだと思える。


「確かにノウイ君のそのスキルならあそこまで行けそうだね。ありがとう、ふがいない僕の為に」
「そんな……大袈裟っすよ。それに自分にはこんな事位しか役目ないっすから。全然畏まる事無いっす」


 丁寧にお辞儀までしてくれるテッケンさんに向かって、ちょっと照れくさそうにノウイは言った。そして小屋の方を向いて、ご自慢のスキルを発動させる。
 夜闇に現れる幾つもの鏡。それらはノウイの意志で動き出す。道が有った筈の場所に、数枚の鏡を直線に並べるノウイ。


 まああたかも見えてる様に言ってるけど、実際はかなり目を凝らさないと鏡は見えない。それだけ闇の中とけ込んでる。
 この周りの灯籠の明かりのおかげで何とかうっすらとは見える程度。


「よし、これで大丈夫な筈っすよ。この程度の距離なら、三枚も連れねば十分っす。後はみんなも知っての通り、一瞬っす」


 自信満々にそう言い放ったノウイ。まあ、自信があるスキルだから当然と言えば当然だ。有る意味、確かにノウイはこれだけって気も……しなくはないからな。
 でもこれは、これだけでも十分に価値有るスキルだけどな。ミラージュコロイドには一杯助けられてるしね。先のアルテミナスの時も、そして飛空挺でもだ。


「よし、何が起こるか分からないから、覚悟だけはしとけよみんな」


 僕はそうみんなに声をかける。そして各で手を繋ぎ始める。別に手じゃなくてもいいけど、まあ団結を示す意味でもここは手だね。
 ノウイに連なる様にしないと行けないから、そうしないしとミラージュコロイドでは飛べない。だから手を繋いでノウイに引っ張って貰おうって訳だ。


「では、行くっす!!」


 そう言ってノウイが手前の鏡へと僕達を引っ張って飛び込む。すると一気に視界が流れた。同時にもの凄い勢いが体を襲う。
 でもそれさえもほんの刹那と思える時だった。


「ついたっすよ」


 そんな声が次の瞬間には耳に届いてる。気付いてみると、僕達がさっきまで居た所が見える位置に居るな。ここはどうやら、あの小屋の屋根っぽい。
 ホントに一瞬だった。ちょっと呆気ない位だ。速すぎたから、脳の処理が追いついてない。


「大丈夫っすかみなさん? 誰も振り落とされてないっすね」
「振り落とされるか。てか、何で屋根?」


 僕は必死に頭の回転を取り戻して、ようやくそこをつけれた。だって屋根って……入れないじゃんか。煙突なんか無いんだからな。


「それはあれっすよ。だってほら、下には立つ場所がないっす」
「え?」


 僕はノウイの言葉の真偽を確かめる為に屋根の上から下の方を落ちないようにのぞき込む。すると確かに、そこには床ってものが無かった。
 なんだかこの小屋、浸水しててもおかしくない気がする。


「マジで下は水じゃん。どうやって潜入すれば良いんだよ?」


 またしても難問だ。壊せる物ならそれでも良いんだけど……無闇やたらにぶっ壊すのも……な。そもそも町中のオブジェクトは桁違いの破壊力を有してないと壊せない、元々が破壊不可が当たり前の代物だ。


「大丈夫です!」
「シルクちゃん?」


 すると今度はシルクちゃんが自信ありげにそういった。そして傍らを飛んでるピクに「お願い」と頼む。するとピクは一鳴きして、優雅に飛んでいくじゃないか。


「おお、これなら!」


 成る程、ピクは飛べるからね。それに扉を開ければ、強引なやり方なんて取らずにすむ。なんだか僕達、チームワークが出て来てないか?
 そんな事を思ってる間に扉が開く――事はない。あれ? なんだかピクは扉部分で悪戦苦闘してる。なんだか体を当てたり、一部分を噛んで引いたりを試みてるけど、扉が開かないご様子。
 てか、よく見たらこの小屋……ドアノブじゃないじゃん。


「ピク、それはきっと横に滑らせるタイプの物だよ。襖と同じ感覚でやってみて」


 確かにシルクちゃんの言うとおり、あれはスライド式だろう。日本の古い家って大抵そうだしな。日本式って事何だろう。
 でもそれがピクにとっては大敵だった。なんせスライドドアなんて知らないんだ。だから、理解できないよう。実際ピクってどれだけの学習機能がついてるんだろうか? 謎だな。
 屋根の上でピクへの指示に試行錯誤を重ねて、悪銭苦闘する事数分。たまたまカララと衝撃か何かでドアが少し開いた。その隙間を足がかりに、ピクはようやくスライド式のドアを攻略した。


「ふう、大仕事だったねピク」


 そんなシルクちゃんの言葉に、一際甲高く鳴くピク。それは仕事終わりの叫びに聞こえたよ。てか、こっちも結構疲れた。
 だけどここからが本番だな。開いたドアの向こうに光の類は無い様子……ここはアクロバティックに屋根から室内めがけて飛ぶか。
 そんなに難しい事じゃない。けど、僕が真っ先に行こうとしてたら、そこでストップかけられた。


「ちょっと待ったスオウ君。ここからだよ。ここからは何が起きてもおかしくない」
「分かってますよテッケンさん。だからって臆してる場合じゃないでしょう」


 別に時間を気にしてる訳じゃないけど、なんかソワソワしてしまう。道がなかったり、ドアをなかなか開けなかったりで、手間取ってるからね。
 ついつい先走る気持ちが出てきてしまうんだ。だけどテッケンさんは冷静にこの場の考察を述べる。


「臆する訳じゃないよ。だけど君が真っ先に飛び込むのは止めた方がいいってだけだよ。先陣は僕達が切った方がいい。その方が安全だ。
 どんな罠が有るか分からないんだ。突然の攻撃が不可避だったらどうするんだい? それをまともに受けて、一番ダメージを残すのは君だよ。だけど僕達なら、そんな事はない。
 幸いシルクちゃんがいるしね。君と違って僕達は何度だって蘇ることが出来る。それを利用しない手はないだろう」
「それは……まあ確かにそうですけど……」


 確かにテッケンさんの言う事は尤もだ。僕が一番ダメージを残すってのもそうだし……罠にはまってしまうのは確かに避けたい所だな。
 けど、誰かを犠牲にするような事は心が引けるっていうか……


「何を迷ってるのよ。これは役割と同じでしょ。アンタは死んじゃいけないの。アンタが死んだら私たちの頑張りや努力自体が水の泡なのよ。
 もうちょっと自覚しなさい。アンタの盾に成る気はないけど、安全確認くらいはしてやるわよ」


 セラはそういうと、ふくれっ面のまま屋根を蹴った。フワリと広がるロングスカート。そしてその姿が僕達の視界から一瞬消えた。
 なんて行動の速い奴。多分テッケンさんが一番に行こうと思ってたんだろうに、セラがあっさりと抜き去ったな。セラは小屋の少しの出っ張り部分とかを上手く使って、体を反転させながら、最後には見事にドアの内側に入り込んだ様だった。
 その動作は華麗で流麗、流石セラって感じ。眺めてる分には白鳥みたいな奴ではあるんだけどね~触れ合ってると、色々と痛いんだ。


「セラ君、どうだい? 大丈夫かい?」
「てか、唐突過ぎるんだよお前の行動は。ありがたいけど、いきなりは行くなよな」


 僕とテッケンさんがドアの方へ言葉を掛ける。だけど……あれ? なんだか一向に返事がこない。毒舌も文句も、事務的報告すら何故かセラは紡がない。
 すると鍛冶屋がポツリと険悪な表情で呟いた。


「おかしい……何かあったな」
「何かってなんだよ?」
「それは勿論、多分良い想像は出来ないな」


 確かにこの状況で良い想像は出来ない。すると今度は目が点なエルフが動いた。


「セ……セラ様!」
「おい、ノウイ! ちょっとまっ――――」


 僕の言葉が終わる前に、押さえきれなく成った感じでノウイはミラージュコロイドを動かした。そして一瞬でその場から消え去る。
 僕達は急いで再び扉の方を見た。


「ノウイ! おいノウイ!?」


 必死に呼びかけるも反応はない。まさか……一体どういう事だ? これじゃあまるでそこには居ないみたいな。


「これは……やっぱり何かあるみたいだね。ちょっと待っててくれたまえ」


 そう言って今度はテッケンさんが立ち上がる。


「どうする気ですか? 中の様子確認出来ます?」
「ああ、やってみるよ」


 シルクちゃんの問いかけに、自信を見せて頷くテッケンさん。既に二人がどうにか成ってるからな、それを確認しないことには迂闊な行動は取れない。
 なんだかあれだな……沢山の明かりがある方から聞こえる祭り囃子の音が、ちょっと不気味に感じてしまう。二人は変な場所へと誘われたんじゃないかってさ。送られる筈の魂に紛れ込んじゃったとか……まあ本当のあの世へ二人が行くことは無いだろうけど……僕ならともかくね。


「テッケンさんも気をつけてください」
「ああ、わかってるさ」


 そう言ってテッケンさんは屋根の縁から飛び降りる。クルクルと回るテッケンさんは、扉の上部の縁に手を掛けて、中に入る事無く、その場で停止。
 成る程、確かにあれなら安全に中の様子を伺える筈だ。


「どうですかテッケンさん? セラ達は無事ですか?」


 僕のそんな問いかけに、テッケンさんの声はなんだか微妙に重々しく返された。


「何も……見えないよ。セラ君達どころか、中の様子が全く持って見えない。まるで闇が広がってる様な……」


 何も見えない? 確かに今は夜だし……明かりも点ってない室内はさぞ暗いだろうけど……周りには灯籠が一杯浮いてる。
 それなら、奥は無理でも手前位は照らしてそうな物だけど……


「ちょっと待っててくれ、調べて見るよ」
「調べるって、中へ入ったら二の舞ですよ」
「大丈夫。ここで十分さ」


 そう言うテッケンさんは片手で自分の目の部分を隠しだした。一体どうする気? と思ってると、シルクちゃんが説明してくれたよ。


「彼はスキルを豊富に持ってますからね。きっと千里眼を使うんでしょう。千里眼は基本遠くを見るための偵察用スキルだけど、スキルの熟練度が増していくと、違う物も見えるって聞きます。
 だからきっと、テッケンさんはその違う物を見る気何でしょ」
「違う物……か」


 この場合は中がどうなってるかって事だよな。千里眼なら、普通の目では見れない物が見えるんだろう。期待出来そうだ。
 てか思ったけど、全然警備の奴ら居ないよな。あんなに昼間は行業しかったのに……道が無くなるから安全だと思われてるのか? でもそれでも一人も居ないってのはね。


 まあおかげでこうやって堂々と屋根に居られる訳だけど。
 屋根の上で色々と頭を巡らせてると、中を覗き続けるテッケンさんから声が届く。


「見えたよ。だけど……これは……」
「どうしたんですか? 見えたって何が?」


 僕は焦り気味に言葉を紡ぐ。あんな奴でもさ、一応は僕だって心配してるんだ。中がどうなってたのか気になる。


「いや、これは言葉のあやだね。見えたのは中の様子じゃないんだ。見えたのは、この小屋には複雑な魔法陣が幾重にも張り巡らされてるって事だよ」
「それって……まさかトラップって事ですか?」


 僕のそんな言葉にテッケンさんは「おそらく」と答えてくれた。だけど千里眼でもどんなトラップかまではわからないし、当然解除とかを出来る訳でもないという。


「ようは、飛び込んでみるしか無いって事ですか?」
「そうだね。セツリ君達を助けるにはそれしかないかも知れない」


 屋根の上に残った三人の間で、僅かな沈黙が流れる。生ぬるい夜の風が吹き抜けて、次々と灯籠をこの場所へ誘ってるような……


「どうするんだ?」


 そう紡いだのは鍛冶屋。だけどどうするか、か……そんなの決まってる。


「行く! ここで引くなんて選択肢はない。罠だろうが何だろうが、乗り越えて行けばいいだけだ」


 そう言う事。正攻法でぶち破ってやろうじゃないか。それに既にセラ達は罠に飛び込んでるしな。放っておく事なんか出来ない。


「よし、じゃあ行こう!」


 そう言ってテッケンさんが扉の内側へと消えていく。そして次にシルクちゃんとピク。


「遅れるなよ」


 そう紡いで鍛冶屋が続く。僕は必然的に最後と成った。良し、僕もさっさと行くかな。そう思って屋根の縁に足を掛ける。
 するとその時だ、何か……何かを背後に感じた。僕は首を捻って背後を見る。するとそこにはまたもアイツがいるじゃないか。


「クリエ? どうして……いや、何で?」


 流石にちょっと不気味だぞ。屋根の反対側にクリエが佇んでる。音もなく、体をやっぱり青い光に僅かに包まれて……そしてやはり虚ろな表情だ。
 あれは本当にクリエなのか……二回目ともなると怪しく思えてくる。


「クリエ……か? 本当にお前何だよな?」


 僕はそう呟きながら、体をそちらに向ける。複数の灯籠の明かりと、クリエ自身の光でなんだか、おかしな場所へ紛れ込んだ様な感覚が起きるな。
 実はもう罠にハマってるとかさ……だけどこうやって向かいあっててもどうにも成らない。僕は僅かにクリエへ向かって歩進める。
 すると


「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」


 再び何も聞こえない口の動き。クリエは確かに何かを喋ってはいるようなのに、相変わらず耳まで届かない。一体何を喋ってるんだ?
 なんだかもどかしいな。するとその時、一際強い風が吹きすさいだ。僕はその風のせいで一瞬目を閉じた。そして再び目を開くと、そこにはもうクリエの姿は無かった。


「なっ!? またか……」


 僕は一応クリエが居たはずの場所まで行き、下も覗き込んでみた。もしかして、水へ落ちたのかも……とかの現実的な事を期待して。
 けど……やっぱりクリエの姿は見える範囲のどこにもない。これは……どう考えても消え去ったとしか思えないな。何なんだ一体? 幽霊? 生き霊? 
 でも、なんだかアレだな。まるで僕が一人に成ったタイミングを見計らってた様な……そんな感じだ。僕にしか見えない? それとも僕だけにその姿を晒してる? どちらにしても何か意味がありそうだ。


「何を……言ってたんだろう」


 それが気になって仕方ない。だけど考えてもわかならないな。まず全く聞こえないし。取りあえずいつまでも僕だけここに居るわけにはいかない。僕は反転して扉の方へ向かう。そして屋根から飛び降りてドアへと上手く入る。
 でもどうやら、僕の描いてた室内ってイメージと大分違う。てか、室内って言うよりも通路っぽいし。いや、明らかにこれは通路だろ。
 なんか洞窟の様な場所なのか? 薄暗いけど、見える程度にはなんか明るい――


「あっほら、スオウ君が到着してますよ」


 って思ったらこれはこの場所の仕様じゃなく、どうやらシルクちゃんの杖の明かりらしい。それに良く見たら、みんないるし。


「遅れるなと言っただろう。何してた?」
「別に、ちょっとクリエとな」


 そう言うと鍛冶屋の奴は「また妄想か」とか言いやがった。けど、今は何もいえないな。あれが妄想とは思えないけど、何かって言われても答えれないし。


「またクリエちゃんに会ったんですか?」
「ええまあ、でもやっぱり前回と同じですね。ちょっと目を閉じた間に消えてました」
「ねえ、それってやっぱり……幽――フガッ!」


 僕はあからさまに不気味な声を出そうとしたセラの口を押さえつける。不謹慎な奴だ全く。


「それ以上言うなよな。てか、ここは? 何でこんなダンジョンっぽい所に居るわけ?」
「どうやらこれがあの罠の正体みたいだよ。僕たちは問答無用でこの空間に飛ばされたって訳だね。まあだけど、ここはどうやら普通に存在するダンジョンでは無いみたいだ。
 地図にもないし……もしかしたら、あの部屋の空間をねじ曲げて作ってあるのかも知れない。それならこの先はクリエ様の所へ続いてるのかも知れないよ」


 成る程……そう言う事か。なら取りあえず進むしかなさそうだよな。なんかもの凄く湿気っててベチャベチャした所だけど、テンション上げて行こうじゃないか――って思うと、地面がウネウネ動き出す。
 そしてなんだか泥の塊みたいなモンスターが登場した。


「なんだこれ!?」
「ああ、こいつはさっきから何度も出てきてるわよ。アンタが来るまでに、既に十数体は倒したわ」


 ようは幾ら倒したって意味ないって事かよ。ダンジョンっぽいとは思ったけど、やっぱりダンジョンなんだな。


「全員揃ったし、ここに止まる必要はない。進もう!!」


 テッケンさんのそんな言葉に僕達は頷きあう。ぬめる地面を蹴って前へ。モンスターをけちらしながら、暗い通路の奥を目指す。
 この先にきっと、クリエが待ってる事を信じて。


(待ってろよクリエ。今、行ってやる!!)



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