命改変プログラム

ファーストなサイコロ

準備と用意が大切



「ご苦労だったよ、ミセス・アンダーソン。あの子を連れ戻してくれて」
「いえ、そんな……もったいないお言葉です」


 私は深く頭を下げる。そこに躊躇いなんか無い。私の目の前には、一人の青年……そう言える年のモブリがいる。私なんかよりもずっと若く……ずっと神に愛された存在。
 そんな青年は、さっきからパチパチ、パチパチと何やら植木の手入れ中のようだ。


「はは、そんなに畏まらなくても結構ですよ。自分なんて立場だけの存在ですし、きっと世界の為には、貴方の方が重要です」
「そ、そんなわけ!」
「そうなんですよ。だって考えても見てください。こんな場所で盆栽に現を抜かしてる私と、聖院の為に日夜精力的に動く貴女。
 どう考えても明確でしょう」


 青年はパチ、パチと何やら思案顔で盆栽というのと向き合ってる。あれはそう言うものらしい。なんだか木を大量に買いあさってると思ってたけど……私には全てが同じに見えてならない。
 と言うか、一体何をやってるのだろうか? でも、そんな疑問なんてこの人の前では些細な事。そこを私程度が指摘出来るべきもない。


「私はそれほど大層ではないんですけどね。まあ常々、世界平和は願ってますが……これはその布石ですよ」
「盆栽が……ですか?」


 また――そう思ったけど、今更過ぎるその事に、私は驚かない。だからもっと疑問を思った事を口にしたわけ。


「ええ、こうやって一つ一つの盆栽と向き合うと、真理が見えるような……そんな気がしませんか? 盆栽とは鉢の上に芽生える芸術ですよ。
 しかも自分だけが描ける絵画や彫刻とは違う、命を使った共同作業。そういう所が世界みたいじゃないですか」
「はあ……」


 実際、この人の会話の大半はわからない。緩いのか締まってるのか、極端なのよね。と、いうか一体どれだけの世界と向き合ってるのだろう。
 有に百以上、ここにはありそうな体なのだけど……


「ふふ、やっぱり数は大事だと思わないかい? こなすことは経験だよ。その中には必ずしも成功と言えるものは少ないが、それは決して無駄にはならない物だよ。
 そうは思わないかい? アンダーソン」
「失敗は成功の元ですか?」
「まあそうだね。失敗し続けられる側はたまったものじゃないだろうけど、成功するまで歩き続ける気概って必要でしょう。
 私達は常に、そうありたい物です。この世界には迷う人々が大勢ですから」


 いつの間にか盆栽の世界が、この世界に置き変わってた。まあこの人は、こっち側の為に、盆栽と向き合ってる……そう言う事なんだろう。
 回りくどかったけど。


「ミセス・アンダーソンは相変わらすおきついな。聖院の誰もがその活躍は認めてるのだから、もう少し肩の力を抜いても良いんですよ。
 そうしても今日明日で、世界が無くなる訳ないんですから。盆栽と同じ、気長にゆっくりと見守る事を覚えてはいかがです?」
「そうですね。それが出来れば良いんでしょうけど、生憎と私はジッとしてるのが苦手な質なんです。私は例え失敗しても、ハサミを進めていかないといけない……そう言う器の小ささです」


 私はそう紡いで、胸の十字架に手をおいた。そう、立ち止まってる事なんか出来ない。世界は救済を求め続けてるのだから。
 例え自分では決定的に世界を救える訳は無くても、手を伸ばす人々は絶えはしないのだから。


「まあ貴女がそう言う生き方しか出来ないのなら……私にはどうする事も出来ませんが……だけど勘違いしないでください。
 貴女は自分が思ってるほど、小さくなんてありませんよ。貴女は私なんかより、ずっと多くの人を救ってる。そこは間違いなく胸を張って良いことです」
「ありがたきお言葉です」


 そんなわけない。だけどこの人はそれを認めはしないだろうから、素直に受け取ることにした。しかし大それた言葉だ。この青年よりも、誰が多くの人を救えるというのでしょう。
 まあ盆栽に現を抜かしてる姿からは想像出来ませんが……というか、毎日これだけの盆栽の世話をしてるのでしょうか?
 いや、きっと世界を憂うよりは楽なのでしょう。そう思いたい。部屋一杯に降り注ぐ太陽の光。だけど上を見るとそこには水面に映り、フニャフニャとした光が映ってるだけ。けど遮る物はそれだけだし、木にとってはある意味ここは良い環境なのでしょうか。


 今私達が居る部屋は、大きなシャボンで包まれた場所。そして周りは水。ここはサン・ジェルクを覆う滝壷の更に下なのです。
 魚が周りを自由に動き回っていたりして、とても綺麗な場所。ここの水自体が鏡の用に透明度が高いから、とても遠くまで見える。
 そんな場所での秘密の会話。


「所で……あの子を助けてくれた方達の事ですが――」
「それなら私の自宅の方へ今は居るはずですが、何か?」


 青年は、今まで一定間隔で鳴らして来たハサミの音を止めた。そしておもむろにこう呟く。


「その中の一人……クリューエルとあの湖の【道】を開いた人物。彼の事が気になりますね。ちょっと会ってみたいのですが、呼んでもらえませんか?」
「何を冗談を。あれは危険ですよ。ついさっきも私とぶつかった所です」
「ですが、それは彼の優しさ――でしょう」


 確かにそれはそうだけど……でも変に彼を突っ込ませるべきじゃないと、直感が告げてる。


「確かに一度【道】が開きかけたのは問題ですが、それももう意味はない事です。クリューエル様は既に箱庭です。それに彼にも、これ以上関わるなといってあります。
 それなのにこちらから誘ってどうするんですか?」


 私の言葉に、青年は少し首を捻って考える。


「まあそうなのですが……話を聞く限りこれで諦めるとも思えないじゃないですか」
「それは……そうですけど……」


 確かに早々諦めるとは思えない。だけど諦め得ないだろう。何故なら――


「けど大丈夫でしょう。もうあの二人が出会う事は出来ません。貴方もご存じでしょう……箱庭が何なのか……どこにあるのか」
「そう……ですね~。確かにそうなんですが、本当に今、あの子があそこに居るのか、確認しましたか?」
「それは……どういう事です?」


 すると青年は再びパチパチし始めてこう言った。


「いえ、まあまだ居るとは思いますけど……ここからだと思いませんか?」


 なんだかさっきから意味深な言葉ばかり使う青年。いい加減引っ張りすぎだ。それにちゃんと確認だって行かせた。私だって元老院を信頼してる訳じゃないから。
 あいつ等は基本汚い。年を重ねて、皺の数だけ心が腐った連中だ。


「それはそれは大層な言いぐさですね。まあ概ね賛成ですが……まあそれは置いておいて、ここから何ですよ。ここからあの子の物語は始まる……そんな気がして成らない。
 だからきっとまだ終わりませんよ」
「そんな……だけどあの場所は不可侵です。彼らがたどり着けるとは思えませんけど」


 箱庭はそれだけの場所だ。それに今は普段よりも更に厳重になってる。冒険者数人でそこまでいけるわけがない。


「そうですね……だけどイヤな事とは重なったりするじゃないですか。元老院が何か動き始めてる様です。あの子が【道】を開いた事で、その力と存在を確信したのでしょう」
「元老院があの子の使い道を思いついたと言うことですか?」
「そう言うことです」


 確かにそれは不味い。あいつらが今まで手を出さなかったのは、持て余してたからだ。ここに来て利用手段を見つけたって事は、今まで金を使った分をまとめて請求される様なもの。
 何されるか……いや、どうせろくな事じゃないのは確かだ。


「聖院の総意は、あの子を隔離した上で、それでも見守る事じゃ無かったのですか?」
「その筈ですが、彼らはこう言うでしょう。『世界の為に必要な事』と。そして彼らは強引です」


 確かに、それに力も絶大。聖院も利権や権力が絡んで、随分と闇の部分が出来てしまってる。それは殆ど元老院側だ。
 私は彼に言われた事を思い出す。飼われてる……か、確かにその通りです。でも、それでも平穏で平和な毎日が送れるのなら……そう思ってた。
 でもどうやら、飼い主の都合が変わりつつあるようです。私は唇を噛みしめて、そして背中を向けます。


「気をつけてください。奴らは貴女の事を一番警戒してますよ」
「そんなことは知ってます。ですが、気に入らないじゃ無いですか。これじゃあまるで言いように使われただけ。丁度いいから、そろそろあの爺共にはこれを期に引退して貰いましょう」


 すると私の言葉を聞いて、青年は大きく笑い出しました。


「はははははは、確かにそれは良い。そうできたらどれほどいいか。期待してみましょう。気休めですが、これを」


 そう言って青年は一枚のお札をくれました。不思議な模様が描かれてるお札だ。この街にも沢山似たような物はあるけど……これには強大な力を感じる。


「これは?」


 私がそう聞くと、青年は大層肩を落として、そして大きく一息吐いてこう言った。


「それは私が恋い焦がれる女性に貰った物なんですよ。『これを上げるからもう来ないで』の言葉と共にね……」


 しまった……これはこの人の地雷だったようだ。それにしても、恋い焦がれるね……この様子だとまだ忘れてない様だ。
 そもそも結ばれる訳もない恋いなのに……まあ、だからこそ燃え上がるのかもしれない。若い内は障害が多いほどなんやそれと思うもの。


「良いんですか? そんな大事な物?」


 すると今度はニヤニヤしながらこう言った。


「いいんですいいんです、これで会いに行く口実が出来ます」
「ああ、そう言う事ですか。で、これはどんな時に使えるのですか?」


 そこが重要だ。かなりの力を感じるし、それにこの人が恋い焦がれるあの人のなら、相当だ。相当……よからぬ何かが封じられてる可能性がある。
 そもそもこの人を追い払う為に贈ったのなら、呪いでも込められてるのかもだし……


「なんなのかは私も聞いてませんね。だけど確信出来る、それはきっと君の役にたってくれるとね」


 それは何の保証もない言葉だ。だけど……この人の感は良く当たる。この人がそう言うならそうなのだろう。私はそのお札を懐にしまい、頭を下げる。


「ありがとうございます教皇猊下」
「その呼び方はやめてください。貴女と私の仲なのですからね」


 そう言って恥ずかしげに笑う青年。この目の前の青年こそが世界最大宗派シスカ教の現教皇。『第八十二代教皇 ノエイン・バーン・エクスタルド』その人だ。




「おーい、どうだよそっちは?」


 僕は大きな声を出して反対側に居る鍛冶屋へ言葉を送る。すると向こうも首を振ってるからどうやらダメっぽい。
 今僕たちは、ミセス・アンダーソンの家を出て、取り合えずクリエが連れ去られたであろう場所を探してるんだ。いや、まあセラが聖典使って見てたから大体はわかってるんだけど……いかんせん、警備の目が厳しい。


 だからこそ、こうやって複雑に絡み合ってる通路をみんなで歩いて、手分けして抜け道でもないか探してる訳だ。けど収穫はあんまり無いな。
 ここは地面じゃなく、水の上。足場も制限されるし、ごちゃ混ぜに作られた印象があるけど、どうやらちゃんと考えられてたみたいだな。
 やっぱり、クリエがつれて行かれた場所へ行くには、この一本道……それしか無さそうだ。


「ちょっと、また突っ走らないでよ」


 そんな事を言ったのは、僕と行動を共にしてるセラだ。どうやら僕がまた突っ走りそうな顔をしてたみたいだな。なんと失礼な、僕だって学習するっての。


「いかないっつの……今はな」
「今は、ね……」


 最後の所だけ、呆れた様に繰り返すセラ。するととんとんと耳に付けてる機械を指で叩く。多分シルクちゃん達の方も聞いてるんだろう。
 あの通信用の機械、僕壊したからね。まあでも、そんなに怒られなかった。セラにしては珍しく「今後気を付けてね」位だったよ。


「やっぱりシルク様達の方もダメみたいね」


 通信を終えたセラがそう僕に伝えてくれる。やっぱりそうか、まあ思ってはいたことだ。このあからさまな警備のやり方は、一本道だからって事なんだろう。


「了解……どの道、気づかれないで――ってのは無理っぽいし、こうなれば強行突破を提案だな」
「あんたは……本当にそんなのばっかりね」


 呆れた様に首をフリフリするセラ。なんだその態度。お前はクリエが心配じゃないのかよって感じだ。きっと今頃、泣いてると思うんだ。
 てかなんで僕のペアがセラな訳? だから今一番気まずいって言ってたのに……みんなの好意何だろうけど、正直キツい。
 テッケンさんはシルクちゃんと、鍛冶屋はノウイとそれぞれペア組んで行動中だ。みんながここに戻ってくるまで、まだあるな~。


「他になんか代案でもあるのなら聞いてやるけど」


 僕は嫌味っぽくそう言ってやった。するとセラは僕と同じ方向、つまりはこの道の先にある建物を見つめてこう言った。


「そうね。私達は自由に動けるんだし……ミセス・アンダーソンに協力して貰うってのはどうかしら? 面会を希望するのよ」


 なんか、セラにしてはまともな事を言ってるじゃないか。確かにその手が無い訳じゃない……けど――


「ダメだな。それはもう前に釘を刺されてる。僕達の様なただの冒険者が気軽に会える、どっかの看板娘じゃないってね」


 そうなんだよね。しかもミセス・アンダーソン本人が言ってたし……頼むくらいで会えるとは思えない。それにもし例えあのおばさんが許可しても、元老院の爺共はそうはいかない気がする。
 つまりは、どの道僕らの取れる行動の選択肢は多く無いって事だ。無理矢理にでも突き進むか……諦めるか。でも、諦めるなん選択肢は当然却下な訳だよ。


 そんな事したら、僕死ぬしね。まあこの道が有ってるのかなんて全然まだわからない訳だけど、今は目の前の状況をどうやって乗り越えて行くか……それしか無いだろう。どうやって金魂水を使うかなんて情報は、未だにあがって来ないしな。


「看板娘じゃないね。まあそれなら、もっとスマートに行けばいいのよ。わざわざ昼間に動く事無いでしょう? 夜を待ちましょう」


 僕の言葉で、意見を却下されたセラは、直ぐに代案を出してきた。まあ確かに昼間よりは夜の方が潜入とかはしやすそうでは有るけど……単純な問題が。


「忘れがちだけどさ、僕にもタイムリミットが有るわけだよセラ。なるべくなら、急ぎたいじゃん」
「そう言えば、そうだったわね。でも、急いでも失敗したんじゃ意味ないわ。善は急げって言うけど、いそがば回れって言葉もあるわ」
「まあ、そうだけど……」


 どっちも方便だろ。それにやっぱり僕の事情忘れてるし。こっちは命人質に取られてるんだ。急ぎたくもなる。五日だよ、五日。たったそれだけの期間で、誰も知らないアイテムを、あの神様が望む形で使用しなかいけないんだ。
 どんな無茶ぶりだよ。よく考えたかなり曖昧だぞ。僕が不服そうにしてると、セラは更にこう続ける。


「あんたは既に一回失敗してるじゃない。それなら、次がラストチャンスだと思った方が良いわ。その次はきっとない。
 確実なんて物はないけど、不安要素はなるべく排除しなさい。それこそ、時間が無いからこそよ」


 セラがスゴいまともな事を言っている……そんな気がした。珍しい事もあるもんだ。こいつが嫌味もまじえずに、マトモな事を言うなんて……まあありがたいけどね。
 そしてそんな会話をしてる内にみんなが集まってきた。


「さてどうするかだね」
「取り合えず現状を確認しましょうよ。クリエちゃんの居場所は変わらないんなら、急ぐ事はないと思いますけど」


 テッケンさんにシルクちゃんが、戻ってくるなり早々にそう告げる。すると反対から鍛冶屋とノウイもそれぞれの意見を述べてくれるよ。


「それは楽天的じゃないかシルクちゃん? 俺的には、元老員って奴らが暗躍してる気がするな。ミセス・アンダーソンも奴らに踊らされた可能性だってある。
 そもそもあんなに急いで、あのガキを俺たちから放した理由は何だ?」
「確かにそっすね~。そこら辺は歩いてる時にも語りあったんすっけど、どうにもしっくり来ないっすよね。それにそもそもっす――」


 そう言ってノウイはこの通路の建物を指さす。


「――あれが箱庭って所っすかね? スオウ君の見たらしい物と違うくないっすか?」
「…………確かに」


 言われてみればそうだな。この道の先にあるのはなんか小屋っぽい建物のみ……あれじゃあ僕が見た間取りとも全然あわないじゃん。
 それに箱庭と呼称するには余りにも陳家だよなあれじゃあ。じゃあ、一体アレは何だ? クリエは本当にあそこに居るのかって疑問が沸いてくる。
 でもどれも全部、確認出来ない事には何ともいえないな。


「あれが箱庭じゃないとしたら……クリエって子はどこに行ったのよ?」
「それは何とも言えないっすよセラ様」
「転送場所って事はないかな? ここは魔法の国。それに区画間を便利に移動するためにも転送装置が付いてるし、岸に行くためにも、それがあるのなら……」
「確かに、無くないね。あそこはただの転送場所って事か」


 みんながどんどんと意見を行って結論を出していく。そこに僕的には反論の余地はない。確かにそう考える方がしっくりくるしね。
 転送か……確かにそれはあり得る。魔法の国だし、秘密の場所くらい幾らでも有りそうだもん。


「まあ、転送場所って言う事で一応良いですけど……どうします? 今直ぐ突っ切りますか? このメンバーなら、あの警備でも行けますよ」


 一刻も早く駆けつけたい僕としては、もう居てもたっても居られない状況だ。だけどやっぱり、みんなはそれに反対っぽい。


「だから、夜まで待ちなさいよバカ」
「そうだね、今ここで暴れるのはちょっと……」
「夜なら、自分が先行偵察できるっすから」
「確証はやっぱり無いですしね。なるべく見つからない様にした方が良いですよ」
「まあ、どうしてもと言うのなら、止めはしないがな。一人でいけよ」


 なんかみんなが僕に冷たい気がする。結局夜まで待とうってのがみんなの総意らしい。僕が不服そうにしてると、シルクちゃんが慰める様に、肩に手を置いてこう言ってくれる。


「大丈夫です。クリエちゃんは大丈夫な筈ですし、チャンスを待つのは勝つために必要な事ですよ。それにやっぱり私達はまだ部外者って感じです。
 もっと情報を集めましょう。夜までにだって出来る事は沢山有りますよ」
「まあ、確かにそうだね」


 なんだか長丁場に成りそうだし、みんな一端解散して、再集合の方が良さそうだ。もうリアルでも夕方くらいだし、このままLROに居たんじゃ、夜通しに成るかも知れない。
 流石にそれは体がやばいよ。お腹も減るし、催す物も有るしね。てな訳で、僕達はアンダーソン邸に戻り、夜に備える事に成った。ちなみにオバサンはやっぱり帰ってない。


「じゃあ、二十二時位で良いんだっけ?」
「そうですね。それまでは各自判断でお願いします。二十二時にここに再集合で行動開始です」


 僕達はシルクちゃんのそんな言葉に頷いて、おのおの姿を消していく。取り合えずみんな一端落ちる様だ。まあここまでも十分ぶっ続けだったからね。
 僕もウインドウを呼び出してログアウトを押す。視界が消えていき、意識が引っ張られるような感覚。そして目を開けると、そこには見慣れた天井が無機質に僕を出迎えてたよ。


 さて……と、取り合えず飯だな。僕は良い匂いに釣られてキッチンへ降りていく。

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