命改変プログラム

ファーストなサイコロ

夜空の叫び



「よし、見つけたぞ! ノウイ頼む!」
『了解っす』


 耳元から聞こえるノウイの声。これであいつが直ぐにここに駆けつけてくれるだろう。僕達は僕達の役目を果たさないとな。
 僕達の目の前には家族連れらしいモブリが三人。部屋の隅に固まって震えている。ミッションの為か、構造は同じだけど、解放されてなかった部屋や場所が解放されたこの船は更に広く感じる場所へと成ってた。


 そしてそこかしこに蛇の様な首で翼を生やしたモンスターが溢れる様にいて、この場所にも当然いやがった。今にもモブリに襲いかかりそうなその敵へ、僕達は一斉に飛びかかった。でもここにはセラも今は居ないんだ。
 罵倒されずにすむから良いけど、どっちみちヘマはやれない。なんてたってこのミッション……かなり無茶な設定だ。


 ミッションスタートの通告と同時に僕達は真っ先にこの船へと飛び移った。そしてウインドウに出てた数字を見て驚いたよ。
 減りゆく数字はカウントダウンだろう、そしてその下には0に斜線が入り23とあった。多分その数字は助けるべき救助者って事だと一発で悟った。
 いやいや、23って多すぎだろ。だけど突っ込む暇さえ無かったよ。だってカウントダウンが刻む数字はたったの十分しか無かったんだ。


 足を止める訳にはいかなかった。僕達はまず甲板の敵を一層して、そしてテッケンさんの作戦通りに動く事に成ったんだ。
 そして今に至るこの状況。モンスターを背中から切り刻み、テッケンさんが締めの一撃を食らわせる。それほど強いって訳じゃないモンスター。
 でもこいつらは鳴く前に倒した方が良いんだ。何故なら、その鳴き声には仲間を引き寄せる特性があるから。流石に雑魚でもワラワラと狭い通路に集まられちゃやりづらいし、僕達はまだまだ奥へと進まないといけない。


 ミッション開始から既に五分は経った。もう半数以上を助けたけど、あくまでも全員助けきるのが目標だからな。でも僕達はこのモブリ達を船まで戻す役じゃない。その役目の奴はきっともうすぐーー


「お待たせっす!」


 はぁはぁと息を切らしてノウイが鏡から現れた。流石ミラージュコロイド、連絡してからここに来るまで十何秒しか経ってないぞ。早い早い。


「大丈夫かいノウイ君? かなりキツそうだけど?」
「大丈夫っすよテッケンさん。何てたってこの分野なら得意中の得意っすからね。任せてください。その人達も直ぐに脱出させるっす」


 そう言ってノウイは親指をグッと立てる。本当は結構疲れてるだろうに……けど、ちょっと休んでてなんて結局はいえないんだけどね。
 だってこのミッションをここまで順調に進められてるのは誰でもない、ノウイのおかげなのは間違い無いからだ。てか、ノウイが居なかったら半数近くでタイムアップになってもおかしくはない感じだと思う。


 だって本当なら護衛を兼ねて僕達はこの船を行ったり来たり何往復もしなくちゃいけない筈なんだ。でもそれがとある裏技で必要ない。それこそノウイが持つ『ミラージュコロイド』というスキルなんだ。


「じゃあ失礼します」


 ノウイは僕達の脇を抜けて、NPCの元へ。そして彼らをかつぎ上げると、その場に鏡を展開させた。そして通路にも斜めに配置。実はその先の角にも既に鏡はある。


「それじゃあ探索の方お願いしまっす!」
「おう!」


 そう言ってノウイは鏡へと消える。そよ風さえも立てずにノウイは消えて、僕達が部屋を後にしようとする時には『無事にお届けしたっすよ』という連絡が入る。
 それは驚異的な速さ。信頼が置ける事の現れだ。だって今度は五秒も経ってない。まあ主要通路にはずっと鏡が配されていて、来る所は別々でも帰るべき場所は一つだから、その違いだろう。
 どうにかして位置情報も送れれば良いんだけど、今の所逐一報告するしかないからね。けど――


「本当にテッケンさんの言うとおりにノウイが大活躍しましたね」
「ふふん、そうだろう。彼のあのスキルは貴重だよ。何よりも移動できるのが自分だけじゃ無いというのが最大の利点だよ。
 それに彼の回避能力ならいくら敵が密集してようと関係ないからね」
「まあ確かに、避けることと逃げる事に関してはプロですもんねアイツ」


 プロって言うか、プロフェッショナルだね。ただ単に正式名称に変えただけれども……まあでもテッケンさんのアイディアは素晴らしかった訳だよ。


「こういうのは行きは探すのに、帰りは守りながら進のに時間を取られてしまう物だよ。そして大抵時間はギリギリに設定されている。
 だけど僕達は探す側、ノウイ君が救出側と分けるだけで効率は倍以上だよ」


 確かにテッケンさんの言うとおりだな。今はあのノウイが頼もしく見えるもん。倍なんてもんじゃない気もするし、本当にノウイ様様って感じ。




 僕達は薄暗い通路を走りながら、扉を片っ端からあけていく。だけどモンスターはいれど、NPCの姿は見えないな。
 するとズズ~ンんと言う揺れが起こった。


「なんだか感覚が短くなってきてないか?」
「そうですね。そう言えばそんな気もします。イヤな感じもするし……」


 シルクちゃんにそう言われるとなんだか怖いな。だけどその時、ピクが通路の奥へ向かって「ピーピー」と吠えた。


「何か……来る」


 鍛冶屋の奴がそんな言葉を呟いた。すると高速で僕達の間を何かが通り過ぎる。ギュン! ってな感じで。
「え? 今のって――」
「聖典?」


 僕の言葉にシルクちゃんが続いた。確かにあれは聖典だ。通り過ぎたと思ったら、僕達を確認してか後ろをふわふわと漂って来てる。


「ピクークピーーピー!!」


 だけどそんな中まだ叫び続けるピク。すると聖典を見ていた僕とシルクちゃんに、テッケンさんと鍛冶屋が同じような事を言う。


「二人ともそっちじゃない、前だよ前!」
「お前等、後ろを気にしてる場合じゃなさそうだ。ピクの警告はそっちじゃない」


 そんな二人の言葉に、僕とシルクちゃんは同時に前方へ視線を向けた。すると薄暗闇に浮かぶ大量の金色の目がこちらを睨んでる。いや、睨んでるだけじゃない。蠢いてるよ。


「うげっ」
「きゃ」


 僕とシルクちゃんはそれぞれにイヤな感じの声を出す。だってそれはあまりにも大量だ。通路いっぱいにモンスターが巣くってる。
 僕は自分の耳元に指を向けて、耳に装着した機械を押さえてその向こうに居る奴へとこう言った。


「おい、何やってんだよお前……」


 すると直ぐにこの状況を作り上げた奴から声が返ってくる。


『何って聖典を使っての内部探索でしょ。しょうがないでじゃない、いちいちモンスターどもを相手になんかしてられないんだから!
 私が聖典を使って真っ先に通路を調べてるからアンタ達は、無駄足踏まずに済むのよ。感謝されても、文句言われる筋合いは無いわね』


 こんの性悪メイドめ。別に謝ってくれるなんて期待なんかしてなかったけど、もうちょっと言い方って物があるだろう。
 理屈も理由もわかるけど、言葉の選択は重要なんだよ。一言軽く謝るだけでも出来ないのかよ。まあ僕に対してする分けないか……だってセラだもん。


 ここで言い争ってても仕方ない、取り合えずここまでやった仕事の結果を聞こうじゃないか。確かこの奥は最深部――動力炉だった筈だ。


「はいはい、もういいよ別に。で、この先には居るのか?」


 僕のそんな言葉に、セラはつんつんする声で答える。


『居るわよ一人。多分彼女で最後ね』
「最後? 確か後四・五人いなかったっけ?」


 だってさっき助けた三人で十八人目位だった筈だけど。


『このミッションやってるのは私たちだけじゃないでしょ。他のプレイヤーでもそのくらいは出来るわよ。まあ正確には今ノウイが向かってる筈だから、まだ十八のままだけど、確実にその先に居る奴で最後よ』
「なるほどな」


 確かにノウイが向かってるのなら、直ぐに救出数は二十二になるだろう。それなら後はこの先の一人だけ。残りは三分位……これなら


『あっ、急いだ方がいいわよ。動力炉にはモンスターが溢れてるから、そこに出てるのもまだ一部なのよ。今は他の聖典で引きつけて、NPCを聖典の防御で守ってるけど、たった二機のシールドじゃそんなに持たないわ』
「お前――それを早く言えよ!!」


 かなり深刻じゃんか。時間もそうだけど、中の方はまだそんな事に成ってるのかよ。通路に出てる奴らだけじゃ無かったのか……


『ふん、冒険者なら常に最悪のケースを考えて行動してなさい。特にアンタの場合はね』
「なんだそれ!?」


 誰の格言だよ。それに僕にとっての最悪は結構こいつにもたらされてる気がする。くっそ、通信越しに文句を言ってる場合じゃないな。


「とにかく急ごうか?」
「ええ、そうですね!!」


 僕達は通路一杯に押し込まれてる様なモンスター共へ突っ込む。テッケンさんは小さな小刀を振り回し、鍛冶屋はご自慢の大槌を使って敵を凪ぎ払う。
 そして僕は二対の剣で一気にモンスター共の懐まで入り込む。そしてその過程で切り刻んだ奴らをこのスキルで止めを刺す。


「サンダーブレイク!!」


 青白い雷撃が薄暗い通路に激しく響く。でも、どうやら動力炉までは届かない。うるさい声を響かせるモンスター共はまだまだそこにいた。
 たく、こういう奴らを一掃する為にセラの収束砲撃は使ってほしい。まあここにいる一機じゃどうしようも無いけどさ。


 それにセラは今回は探索係。それも役割分担って奴だ。アイツの聖典は先行探索にも向いてるからな。聖典の視界はセラも共有出来るみたいだし。
 だからアイツは、今は甲板で聖典を操る事に専念中だ。アイツはアイツでちゃんと仕事したわけだし、ここでアイツを頼るのも癪だな。
 僕達は僕達の役目をやらないと。見つけてくれた……でもそこへ行く道が塞がれてるのなら、僕達はノウイがそこへたどり着ける様にしないとだろ。


「うし!」


 鮨詰めのようなこのモンスター共を僕が一掃するとしたら、これしかないよな。


「イクシード!!」


 迫り来る壁の様なモンスター共へ風のうねりをぶつける。かまいたちにやられた様にスパスパ切れていくモンスター共。このまま一気にこの通路を抜ける!


「僕が道を開きます! ついて来てください!!」
「よし!」「はい!」


 テッケンさんとシルクちゃんが同意の意を言葉で示してくれる。でも鍛冶屋は頷くだけ。わかりにくいんだよ。まあでも口を開く度に罵倒する奴よりはマシか。
 後ろに付いてくる三人と一匹に当たらない様に風のうねりをコントロールする。これがまた狭い通路ではやりにくい。普通に木造の壁とか壊れて行ってるしな。


 だけどこれはしょうがない損害だ。もしも修繕費が請求されたらミセス・アンダーソンに払ってもらおう。そんな事にヒヤヒヤしながらも、一方的にモンスター共を凪ぎ払ってると、通路の先の所で密集してるモンスター共が何かを吐き出してるのが見えた。
 それは緑色した不気味な息? いや……これは……


「毒か!?」


 しかもHPを減らすタイプじゃなく、神経毒っぽい。一番前にいて、一番動いてた僕だからこそ、その毒を一杯吸ってしまってた。
 ガシャンと音を立てて左側のセラ・シルフィングが手から落ちてしまう。痺れる様な感覚……毒のせいで力が入らない。
 くそ、後はあの毒を吐き続けてる奴らの所を抜ければ動力炉だと思うのに……なかなか考えてやがるじゃないか。


 奴らは狭い通路で確実に毒を届けてやがったんだ。しかも大量の仲間を目隠し代わりに使ってまで確実に。動力炉に行かせたくないってのもあるんだろうけど、広い所で使うよりも効果的で効率的ってのをわかってる。


「私たちにも……毒が……」


 後ろから聞こえたそんな声。どうやらシルクちゃん達にもそれは回ってる様だ。それはそうかも、今効果が出てきてはいるけど、あいつらのあの様子からしてずっと吐き続けてるみたいだし、僕達が最初にこいつらの群に飛び込んだ時から、この毒を吸い続けて来てた筈だ。
 それがここに来て効いてきて、さらにはもっと濃い濃度で体を縛るって感じか。別に僕だけならやりようが幾らでもあったんだけど……シルクちゃんまで動けないのは困るかも。
 この様子だときっとテッケンさんと鍛冶屋も同じ状態だろう。


「やられたね。シルクちゃん、魔法でどうにか出来ないかい?」
「やってみま――あっ」


 カクンと膝が折れて地面に膝が付くシルクちゃん。まあこの中じゃ一番デリケートっぽいからね。繊細そうというか。その分セラとかなら意地でも倒れなさそうだよな。
 そんな事思ってると、僕も膝がガクガク成ってきたかも。流石に二本とも武器を落とす訳にも行かないから必死に右手のセラ・シルフィングは握ってるんだけど……そろそろ握力がやばい。
 そんなに強くないと思ってたけど……かなりこれは強力だ。


「シルクちゃん大丈夫?」
「はい……大丈夫です。こんな事もあろうかと準備は万全ですから。ピク」


 そんなシルクちゃんの声に答えるのは桜色の小竜だ。シルクちゃんのすぐ傍でピクも辛そうに床に横たわってた。だけど何とか「ピー」とご主人様の声に応えてる。
 だけどその時、前方からバサバサと聞こえて「キシャーキシャー」なる不気味な声が近づいてきてた。どうやら一体が集団から出てきたようだ。
 動けなくなった僕たちをいたぶろうって魂胆か? 流石モンスターらしく意地の悪いのやり方だ。するとそんな一体へ向かって走る光線が一本。見事に命中したそれに、思わずたじろぐモンスター。
 そして続けざまに二・三本の光線が放たれる。
「ギャギャギャ」
 と不気味な声が響く。すると聖典が僕たちの頭上を越えてさらにそのモンスターへ向かって攻撃を仕掛ける。


「セラ……」


 なるほど、そういえば付いてきてたなアレ。それに聖典は生物じゃないから毒なんて効かない。ナイスだセラ。


「今だよシルクちゃん。聖典が奴らを引きつけてる間に頼む!」
「はい……ピク、ストックNO4をリリース」
「ピー」


 シルクちゃんの言葉に、倒れ込みながらもその片羽を広げるピク。そしてそこから一枚の羽が舞う。それを震える腕で掴んだシルクちゃんはこう叫ぶ。


「解放『リカバリー2』!!」


 すると羽が光輝いて弾け飛ぶ。そして解放された魔法が魔法陣を描いて発動される。どうやらリカバリー2は範囲魔法の様だ。
 魔法陣が足下に現れて、その中の僕達全員の状態異常を回復してくれる。痺れる様な感覚もあっと言う間になくなった。


「よし!!」


 僕は床に落ちていた一本を取り走り出す。僕が掴んだことで再び風のうねりが発生した二対の剣で、まずは毒を吐き続けてる奴を潰すことにした。
 セラ・シルフィングを突くように出して、真っ直ぐに風のウネリを飛ばす。直ぐ前で聖典と対峙してた奴を真っ先に巻き込んで伸びていくウネリ。そして突き刺さったのを確認すると、二本のウネリを体を回転させる事で操って周りのモンスター共も一斉に風に巻き込んでいく。


「やりすぎだよスオウ君」


 毒を吐き続けてたモンスター共を一掃した光景を見てそういったテッケンさん。まあ通路が半壊しちゃったから無理無いかも知れないな。だけどほら、仕方ないじゃん。
 なんだっけほら……え~と、


「勢い余っちゃって」
「それは反省ではないよね?」
「そ、それよりも急ぎましょう! 思わぬ所で時間食っちゃったんだし!」


 僕はテッケンさんの追求から逃れる為に走り出す。まあ急いだ方がいいのは確かだし、それ以上しつこい事はテッケンさんも言わなかったよ。
 半壊した通路を抜けて僕達は開けた感じの動力炉に到達した。そこの中央には青い光を放つ大きな機械(?)とその周りには大量のモンスター。


 そしてそいつ等に立ち向かってる……というか引きつけてる聖典が数機。ここから見たところ、他に誰も見えないけど、聖典が戦ってるんならここには助けを待ってる人が居るはずだ。
 既に残り時間は二分を切ってる。こいつらの相手をしてる場合じゃない。


「まだこんなに……」
「大概だなここも……大丈夫シルクちゃん?」
「はい、リカバリーは完璧なので」


 繊細なシルクちゃんを心配する僕。だけどシルクちゃんは自分の魔法に自信ありげだ。確かに僕の体調も最初より良くなってる位だし、シルクちゃんはヒーラーとして一流だからね。
 その自信は頷ける。だけどどうしても心配に成っちゃうんだよね。だってシルクちゃんは僕の周りの女子の中で、一番女の子女の子してるんだ。


 守らないと、という思いが募るよ。まあ大概こっちが支えられるんだけど。そこら辺はヒーラーとして流石だよ。
 青い光に照らされて、さらに不気味さを増したモンスター共はギャアギャア呻きながら聖典を追っている。聖典に気を取られてる今の内に目的の人を見つけたい所だな。


「取り合えず一周してみれば速いかな」
「いや、それよりも良い方法があるよ」


 僕が走り出そうとしたのを制するテッケンさん。すると上を見てニヤリする。僕を見上げてる……訳じゃない。何が? と思ったら上方を僕達に付いて来てた聖典が飛んで行った。


「なるほど」


 あの聖典は付いてこいって言っている。セラはその人の居場所を知っているんだから、僕達を案内してくれる気だろう。


「よし行こう!」


 僕達は聖典の後を追って走り出す。入り口から反対側、動力炉の隙間みたいな所の両側に二機の聖典がシールドを張って展開してる。って事はこの奥に最後の救助者が居るはずだ。


「おい、居るんだろ。助けてやるから出てこい」


 僕は隙間の奥に向けて呼びかける。すると奥の方からゴソゴソと音がしてか弱い声が聞こえて来た。


「だ、誰です? 私はもう、あそこに戻りたくない。大丈夫です。私はこんな所で死ぬ気は無いから放っておいて!」
「放って置いてって……」


 流石にそういう訳には行かないんだよな。それにこの人、もしかしたらクリューエルとか言う人じゃないだろうか? あそこに戻りたくないとか言ってるし、イベントとの話と繋がるよな。
 まあそんな事より、今は脱出最優先だけど。


「どうやって助かるんだよ? このままじゃこの船と一緒にバラバラに成っちゃうぞ。手とか足とかちぎれて血が一杯吹き出しちゃうんだぞ。それでもいいのか?」
「うっ……そ、そんなのいやあああああああああ!!」
「うお!?」


 僕の脅す言葉に耐えきれなくなって飛びでて来たのは小さなモブリの女の子だった。その子が勢い良く僕の胸へとぶつかって来たよ。
 だけど驚きはしたけど痛くは全然なかった。だって僕が知ってるモブリよりもさらに小さい。これが子供サイズって訳なのかな?
 そう思ってると耳にセラの声が響いてきた。


『もう一分切ってるわよ! ノウイが直ぐ着くから急いで脱出しなさい!!』
「了解」


 セラにそう答えて、僕は胸にしがみつく小さなその子を優しく抱え込む。


「大丈夫、ちゃんと助けてやるよ」
「……うん」


 ぎゅっと捕まれる感覚がある。さてと、まずはこの大量のモンスターだな。その時、出口の方から声が聞こえる。


「大丈夫っすかみなさん!? 急いでくださいっす!」
「わかってるよ!」


 僕達は襲いかかるモンスター共の中を走り出した。直ぐそこにノウイは居るはずだ。だけどその時、奴等は動力炉その物に攻撃を仕掛け出す。そして――


「スオウ君手を!!」
「ノウイ!!」


 僕達が手を伸ばしたその瞬間――青い光が部屋一杯に溢れて全てを呑み込んだ。

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