命改変プログラム

ファーストなサイコロ

掛け橋の続き

 部屋から出ていく面々を見送りながら、僕は高い高い天井を見上げた。結局は情報が上がってくるまで何も出来ないって事……でもそれで大丈夫かって思うんだ。
 するとそこにアイリが近づいてこういってくれる。


「大丈夫ですよ。家の情報網は凄いんですから。大抵の事はわかります。連戦が続いてるんですから、少しだけ休んだらどうですか?」
「休むって……たった五日しかないんじゃじっとなんてしてられないよ」


 そうたった五日。別にアイリの言葉を信じてない訳じゃ無いけど、ただ待つなんて事が出来る程の余裕はない。ましてや休むなんて無理だよ。
 まあアイリもそんな事わかって言ってそうだけどさ。


「そうですか。まあスオウ君はそう言うと思ってました。ですが宛があるのですか? 無闇に動き回られても困りますけど」
「メールがあるじゃないですか、情報はそれでくれれば良いですよ。どんなクエストかもわからない今は、それで良いじゃないですか。
 そりゃ僕は情報集めとかやった事無いけど、このアイテムを持ってるのは僕だけです。情報が上がらない事だってありますよね?」


 僕の言葉にアイリは苦い顔をした。ちょっと眉を潜めて、それでも可愛い顔を見せる。


「確かに考えたくないけど、今まで一度も現れてないそのアイテムが発生条件なら、あり得ない事ではないかも……どうするのですか? もしそうだったら間に合わない可能性だって……」


 その言葉に残ってる人達ともども沈黙が部屋を支配する。遠くで何かカンカン聞こえる音だけが断続的に響いてた。


「アイツは……テトラは僕ならやれるって言ってた。それはある意味、僕にしかやれないとかなのかも知れない。どこをどう行けば良いのかなんて全然わからない。
 少しはヒントをやれってアイツには言いたいな」
「結局は何も宛はないって事でしょう」


 横から割り込んできたセラが、グサリと来る言葉を言いやがる。まあ確かにそうなんだけど。僕はなんとはなしに、自身に浮かび上がる紋章を見つめる。手の甲だけだったそれは、もう既に手首に進出しだしてた。


 こうやって進んでる様を実際に見ると、実感が沸いてくるな。冗談とは思っちゃいなかったけど、強さの為に命を懸けるのも大変だ。
 するとそこで、ぽつりとこんな声が横から聞こえた。


「その模様……何かどこかで見たような……ちょっと甲の部分を見せてくれないかい?」
「ええ、良いですよ。何かわかるのなら尚更です」


 そう言って僕は、机に乗ったテッケンさんへ手の甲を向ける。難しい顔をしてそれを見つめるテッケンさん。これでなにかわかれば良いけど……けどそんなに甘くはない様だ。


「う~ん、どこかで見た様な気はするんだけど、出てこないな。済まないスオウ君、手間を取らせて」
「いえ、別にそれは良いんですけど……八方塞がりですね。やっぱり情報に期待するしか無いのかな。
 それかRPGの基本に立ち返って、町を巡ってNPCに聞きまくるとかどうでしょう?」


 やっぱりRPGはそうやって進めて行くものだしね。でもこの提案は直ぐに却下された。


「アンタね、宛も無くNPCに聞きまくるって一つの町にどれだけNPCが居ると思ってるのよ。小さな町でも五十は普通に居るわよ。
 アルテミナスなら三百位は居るわ。その人数に会話が変わるまで聞き込むと成ると、五日じゃ全然足りないわよ。それこそ宛もなく出来る事じゃない」
「それはそれだけど……」


 でもそんな事言ってたら何も出来ないじゃん。やれる事をやるなら――ってやっぱり三百は無謀か。一つ二つ位の町しか回れないのなら意味はないかもしれないしな。


「テトラ神の事はよくわかってないですからね。対に語られるシスカ神の事なら、ミッションやクエストで偶に出たりしますけど……」
「テトラとシスカか……」


 アイリのそんな言葉を聞いて呟く様にそう言う僕。ゲームだからってそこら辺は無視しちゃいけないことかも知れないな。
 ここに生きてるアイツ等には、ちゃんとした記憶があるんだろう。それなら……


「攻めてみるのはそこら辺しか無いのかも」
「二人の神を調べるって事ですか? まあ確かに、意味は無くはなさそうですね。スオウ君の話では、テトラ神は何かを望んでる様ですし、その金魂水で何が出来るのかの謎はそこにあるかも知れません」


 するとそこで再び小さな手が上がる。


「それならアルテミナスよりも、『ノーヴィス』の方が良いんじゃないかな?」
「ノーヴィスって? 国ですか?」


 僕の何気ないそんな言葉に、リルレットの横に居るもう一人のモブリが吹き出しやがった。


「ブッ……お前マジで言ってるのか? 本当に何も知らないんだな。少しはこの世界の事知っておけよバカ。ノーヴィスってのは俺達モブリの国の事だよ。
 そしてそここそが、シスカ信仰発祥の地なんだ」
「へえぇ~ってお前に言われるとなんかムカつくな」


 エイルが得意気にしてると腸が煮えくりかえりそうだ。大げさだけどさ。けどそうか、モブリの国ね。


「てかシスカ信仰とかあるの?」


 まずそこ初耳だ。すると少し困ったような笑顔でシルクちゃんが説明してくれる。


「OPでも流れた筈ですが……シスカ神は五種族の生みの親ですから、信仰に成ってもおかしくないですよ。このLROの世界での最大宗教がシスカ信仰です。
 その総本山もノーヴィスにあります」
「なるほどね」


 確かにそこなら二人の神のいろんな話がありそうだ。少なくとも騎士の国のここよりは、テトラに近そうな気はするな。
 あれ? でもあいつは邪神だったっけ?


「邪神のアイツの話もあるのかな? そういうのって消されてそうな感じじゃないか?」
「そこは大丈夫じゃないでしょうか? シスカ神とテトラ神は切っても切れない関係で描かれてますから。それに悪が無いと正義は際だたないじゃないですか」


 おお、シルクちゃんがなんか小悪魔っぽい事言っている。なんだかドキドキしちゃうな。まあでも、それなら迷う必要ないか。


「ノーヴィスか……行ってみる価値はありそうですね」
「よし、そうと決まれば早速出発だね!」


 テッケンさんがノリノリで机から飛び降りる。僕もイスから立ち上がった。そしてアイリに向く。


「え~とまあ、自分に出来る事を僕達はやります」
「そうですか」


 頷く様に目を閉じてくれるアイリ。するとそんなアイリの肩を抱く奴が来た。そのまま自分の胸に引き寄せる様にしたのはアギトだ。
 おーおー見せつけるじゃないかアギトの奴。


「まあこいつは勝手に進んでいく奴だから……こっちはこっちでやれる事をやろう。俺は行ってやれないんだから、勝手にのたれ死ぬなよ」
「当然」


 アイリはアギトの腕に抱かれてちょっと照れくさそうだけど、嬉しそうだ。こうやって見てるとアギトが年上に見えるけど、リアルじゃアイリの方が年上なんだよな。
 なんだか複雑だな。なんかアギトが同い年に見えない。変な余裕を感じるよ。


「セラ、スオウを頼むよ。俺の代わりにさ」
「いえ、そんな……お目付け役はお任せください」


 アギトに対しては相変わらず礼儀正しい奴。僕とのこの態度の差は何だろうか? まあ初めからなんだけど……


「さて、貴方達はどうするんですか?」


 セラは、まだ座ったままのシルクちゃん鍛冶屋、それとエイルにリルレットに声を向けた。真っ先に立ち上がったのはシルクちゃんだ。


「私は行きますよ。ちゃんと協力すると決めてますから」
「ありがとうシルクちゃん」


 ん? そう言えばさっきから何か足りない感じがしてたけど、それがわかったぞ。


「そう言えばピクはどうしたの? 見当たらないけど?」


 そう、シルクちゃんの側には桜色の小竜が居るはずだ。だけど今はその姿が見えない。ピクがシルクちゃんの側にいないなんて、なんか物足りないな。
 いや、一人でも十分完成されてるけどさ。


「ピクは中庭で待っててくれてます。ピクがいるとみなさんの気が散っちゃうかなって思ったので」


 ふむ、まあ目立つしね。僕は「そっか」と答えた。


「んで、鍛冶屋は? お前今までどこにいたんだよ?」


 そんな僕の失礼な問いかけ。だけどほら、知り合いだし。仲間だしね。でもあの戦争の時、鍛冶屋の野郎がどこにいたか記憶に無いんだよね。いや、一緒にアルテミナスに来たはず何だけどね。
 ここに居るって事はさ。すると鍛冶屋は、腕組みをしたまま、その顔に刻まれた模様を濃くするようにこう言った。


「失礼な奴だ。俺はちゃんといたさ。最初から、そしてこれからも。俺は武器にしか興味はないが、お前の側には良い武器が集まってくるからな」
「それは……一緒に来るって事か?」


 重々しく頷く鍛冶屋。面倒な奴がここにもいたよ。まああの戦いの時に、どこにいたのか忘れてる僕としては、突っ込みにくいけどね。
 そして最後に、僕は仲良し二人組へと目をやった。それはエイルとリルレットだ。この二人こそ行き当たりばったりだからな。


 あの戦いに参戦したのだって偶然みたいな物だったし。まあアホの偶然だったけどさ。危ないと言われてたアルテミナスにのこのこやってきたんだからな。
 でも、この流れで来た以上、聞かなかった失礼だしな。エイルの奴もうるさそうだし、リルレットだけで十分だけど、まあ二人に聞くさ。


「で、お二人さんはどうするの? てか、これからも僕達に関わるの?」


 まずはそこからだよね。そうなら覚悟が必要だ。また同じ様な事が起きないとも限らないし、それに……僕達といるともう一度奴らとぶつかるのは避けられない。
 シクラに柊、それにその姉妹とガイエンから出てきた黒い奴だ。あんな戦いをこれからもし続けていく覚悟。エイルは分かってるだろう、それがどういう事か。


「関わるのかって、随分蚊帳の外の様な言いぐさだなスオウ」
「だってそうだろ、二人はまだ本格的に関わってる訳じゃない。これから先も一緒に来るなら、それは覚悟も必要だ。
 でも、まだ二人は後戻り出来る。ここでストップ掛けれるよ。普通にこれからもLROを二人で楽しんでいける。その選択権をその手に持ってる」


 それは僕には無かったものだ。巻き込まれるままに走り続けたらさ、いつの間にか落っことしてたよ。でも二人はそうじゃない。
 その手にはまだ選ぶ権利がある。


「僕は別に『来るな』とも言わないけど、『来てほしい』とも言わない。それを決めるのは二人だよ」


 二人は黙ってる。これからをきっと考えてるんだろう。普通に楽しくLROをやりたいのなら、来ない方がいい。それに取りあえずも止めた方がいい。そんな生半可な気持ちじゃ、どうなるか分かったものじゃないからな。


 テッケンさんやシルクちゃんや鍛冶屋は、ある意味ベテランだからそこら辺は心配なんてしてない。寧ろ向こうが僕の事を心配してるだろしさ。
 でもリルレットもエイルも、僕と変わらない程度の時間しかLROをやってない筈だ。だから……少し不安だろ。まあ二人はあの戦いの時よくやってくれた。リルレットもエイルも、どちらかが欠けてたら、あの結果は変わったかも知れないって程にさ。
 だけど……だからってこれからも戦い続けなくちゃいけない義務なんて二人にはない。


「来てほしいも言わないか……この薄情野郎」


 そんな言葉がエイルの口から漏れた気がした。別に来てほしくない訳じゃないけど、それはズルい気がするんだ。僕は命を懸けてる。それじゃあ命懸けの頼みだよ。
 それこそ重荷だろ。そう言うのは誰にも背負わせちゃいけない物だ。
 すると沈黙を破る様に、肩を震わせながらリルレットが場を破る。


「私達は――」
「だめだリルレット! もっと良く話し合おうよ」


 するとそれを制したのがエイル。エイルはジッとリルレットの目を見つめてる。その気迫に負けたのか、リルレットは再び椅子に深く座った。
 なんてリルレットは言おうとしたのだろう? いや、それは多分、エイルの言葉が示してる。それとも、どちらにしても良く話し合おうって事だったのかな。
 するとここでアイリが歩み出てきてこう言った。


「良く話し合う事は大切ですよ。出発までみなさん準備もあるでしょうから、その間に考えをまとめてはいかがでしょう?
 そうですね三十分後位にまたこの部屋に集まって頂けますか?」


 三十分……あれば二人も十分かな。僕達は反論の余地も無いから頷く。最後はエイルとリルレット。


「分かりました。その間に決めときます」
「はい、ちゃんと二人で話し合って」


 二人はそう言ってくれた。そして各解散する。三十分後ここもう一度集まるためにね。みんなやっぱりそれなりに準備が必要なんだな……と、僕は脳天気に思ってた。
 だって、僕はせめてアイテムを自分の部屋で整理するくらいしか無いよ。まあ、あの戦いでいつの間にかアイテムがどっと増えてたけどさ、殆ど売ったしね。
 三十分、僕が一番暇なんじゃ無いだろうか?




「どうするかな~」


 僕は一人呟き、外が見えるテラスにもたれ掛かってる。上から見ると、まだ出来てない建物とかが一杯見える。傍目にはもうかなり復興してると思ったけど、こうやってみるとまだ出来てない所も結構あるな。
 慌ただしく行き交う人が一杯だ。だけど……誰も彼も生き生きしてる。そう見える。スレイプルの集団とかも居るな。


 顔に模様を刻んだ種族ね。鍛冶屋の同類。アイツ等は職人タイプだからアイリが呼んだのかも知れない。すると後ろに人の気配が、僕は何気に後ろを確認しようとすると頬に熱い何かがかすった。


「へ?」


 なんだか頬から赤い液体が流れ出てる様な……こんな所に敵? と思って勢い良く剣を抜き去り振り返る。するとその襲撃者の姿を見て再びおかしな声が出た。


「は?」


 そこに居たのはメイドメイドメイドの人たち。みなさんセラと良く似たメイド服を着てらっしゃる。そんな、この世界に暴力メイドがこんなに大勢? とか思った。その真ん中のメイドさんの手には見覚えがある細長い武器が握られてるし……
 そして僕を攻撃したであろうそのメイドは、凄い睨みを効かせてこう言うんだ。


「よくも……よくもセラ様を誑かしたなこの人間風情が!!」


 ジャキーンと周りのメイド達全員が同じ武器を構える。その瞳には余すことなく全員に殺意が見える……気がする。てか僕の肌はその殺意を感じて鳥肌が立ってるよ。
 何がなんだか分からない。でも取りあえず変な誤解を解いておく方が良さそうだ。


「ちょっちょっと待てよ! 誑かしたって僕は何もしてないっての! アイツが勝手に付いてくるとか言い出したんだ! 僕は何も言ってない!」
「何もしてない? 当然です!! 何かしてたらその口が開く前に喉を切り裂いてますよ! でも分かってるんです。貴方がセラ様に泣きついた事!
 あの方は優しくそしてお強いから、貴方の様な雑魚でも命の危機と分かれば放ってはおけない。そんな優しさを利用してると!!」


 ……今なんて言ったよこの子? 余りにも想像からかけ離れた言葉だったから、脳が理解しなかった。だから僕は、今にも一斉に投げつけて来そうな態勢を取るメイド軍団の烈火の勢いにも関わらず、手を前に出して制止の合図。
 そしてこう聞いた。


「えっと……ごめん。なんだか良く聞き取れなかったんだ。特にセラがどういう奴かの部分ね。そこら辺もう一度お願いします」


 するとその問いに、攻撃態勢のまま答えてくれた。


「たく、良くお聞きなさい人間!! セラ様は強く、お優しい立派な方なのです!! そんなあの方の優しさにつけ込んでの暴挙……アイリ様は騙せても、私達は騙されません!
 地獄に堕ちろや!」


 最後の所の言葉は、歯をギチギチ鳴らしそうなヒドい顔で言ってた。女の子にあるまじき顔だよ。けどそれよりも僕はこいつらに言いたいことがある!
 でもこれを言ったら殺されるかも知れない。けど、言わずに死ぬよりましさ。僕は一斉に武器を投げようとするメイド部隊に向かって、大声で叫ぶ。


「ちょっと待て!!」


 するとガクッと勢い削がれる彼女たち。けど、闘志までは削がれてない。鬼を殺す程の顔で僕を睨んでるよ。


「言っときますけど、命乞いしてもだめですから。私達を止めたいのなら、今ここでセラ様からは手を引くと宣言なさい!!」
「だから何の話してるんだよお前達は!! そんなの全部誤解だっての!! 僕がセラを誑かす? はっ、あり得ないね。
 そんな時間が有るのなら、シルクちゃんの方が全然良い!! 女の子らしいし、可愛いし、何よりもお淑やかだし!! どっかの暴力メイドとは雲泥の差なんだよ!
 あいつが僕に吐く言葉と来たら、暴言暴言また暴言。愛情の欠片も感じねーよ!! そんな奴をどうして誑かすっていうんだ!?
 頼まれたってお断りだ!!」


 言ってやったぜ。見ろ見ろ、この呆然としたメイド部隊の顔。まあここまで言えば、誤解は解けた筈だろう。よかったよかった。


「ふ~ん、そんなにシルク様の方が良いんだ?」
「それは勿論。彼女は守ってあげたいタイプだもん。それに比べてセラと来たら、アイツは絶対に肉食タイプ……いや、それよりも質が悪い食虫植物的な何かだと僕は思――――――」
 あれ? さっきシルク様とか言わなかった? それにこの声、さっきまで話してたメイドの子じゃない様な。なんだかとっても聞き覚えがある。
 僕は恐る恐る、その声の主を捜したよ。すると彼女達も気づいたんだろう。わざわざ開けなくても良い道をあけやがる。そしてそこに居たのは、見間違う筈もない奴の姿。


「悪かったわね。シルク様ほど、私は可愛くもお淑やかでも無くて。頼まれたって誑かす気にも成れない、そんなメイドで悪かったわね……」
「セ……セラ……」


 思わず唾をゴクリと飲み込んでしまう。メイド軍団より一人のメイドの方が迫力有るってどういう事だよ。いや、これは今までの植え付けられたトラウマのせいかも。
 セラはセラで、ワナワナとメイド服を震わせてるし、細長の耳が鋭利な刃物にまで見えてきそうな程に尖ってる。


 するとセラは大胆にも、太股までそのスカートをあげるじゃないか。でも生足チラリにドギマギしてる場合じゃない。
 だってそれがどういう事か、そこに何が有るか僕は知ってる。目の前で展開される四つの聖典。それが桜色の光を目の前で収束させていく。


「おい……それは、ちょっ……不味いだろ……いや、セラ様、ごめんなさい!!」


 すると光の向こうに僅かにセラの顔が見えた。怒りに震える瞳。だけど潤んでる様にも見えた……と思った瞬間、セラは勢い良くこう言った。


「地獄で後悔してろ!!」


 放たれる桜色の光。それは一筋の光となって空へと消えた。




 そして三十分後――部屋に戻った僕は注目の的でした。そして開講一番、アイリが責任を感じる様な声でこう言った。


「三十分の間に一体何が?」
「はは……ちょっと星に成ってきただけですよ。気にしないでください」


 みんなの顔にはハテナが浮かんでた。だけど一人怒りマークをこめかみに張り付けた奴が、頬を膨らませてそっぽを向いた。
 あんの野郎……もう少しで冗談じゃなくなる所だったんだぞ。いやマジで。


「たく、相変わらずアホな奴だなお前って」


 するとこの空気を切り裂いて、エイルの奴がそう言った。そしてみんなが二人へと視線を移す。そう、ここで答えを聞くんだ。


「うるせえ。で、どうするんだよ?」


 僕のその言葉に、エイルはリルレットと頷き言う。






「僕達はいかない」






 と。

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