命改変プログラム

ファーストなサイコロ

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 僕の覚悟を打ち砕く言葉……そしてそれは、スズリさんにはきつい言葉だった筈だ。空は黒く、空気が淀んでるこの場所で、実は結構信じれない事をセラは言ったんだ。


「死んでも戻れないって……なんだよそれ? 普通はゲートクリスタルに戻る筈だろ?」
「だからここは普通じゃないわ」


 しれっと言い放つセラ。淀んだ空気が淀んだ風に流されて、周りの木々の葉をざわめかせた。それと同時に、どこからか変な声も聞こえて来て、不気味さが一層増す。
 てか、ここは分厚い雲で覆われてるから、時間の経ち具合がわからない。なんだかもう結構経つような気もするけど……どうだろうか。


「そんな……それって……」


 狼狽えるスズリさんはジリジリと後ずさってた。そして震える声でこう言う。


「それじゃあ、僕の様な初心者はどうすれば? いえ、お二人でも倒せない敵がいたじゃないですか! それじゃあ僕達……どうすれば?」
「「…………」」


 黙り込む僕とセラ。確かにどうすればいいのかわからない。普通の手段じゃ入れない場所……そして普通の手段じゃ出れない場所……


「なあセラ。でも、出てきた人は居るんだろ? 未開の地だからって、何もこの一年誰も入らなかった訳ないし。少なくともお前のその発言は、どこかから得た情報だろ」
「まあそうだけど……確かにチャレンジャーは居るわよ。それこそ第一線の攻略組なんてのはそうでしょうね。だけどあいつ等、情報なかなか落とさないのよ。
 だからこれは探索ギルド、まあ地図ギルドの情報ね」


 なるほどね。地図ギルドはLROの世界全てを把握する事を目指してるとか聞いたことある。そんな人たちなら、確かにここを無視するわけないよな。


「んで、その人達はどうやってここから出たんだよ」


 僕のそんな質問に、セラはちょっと難しい顔して頭をひねる。


「う~ん、なんて書いてあったかな? 確かこの情報って、その地図ギルドの人のブログで読んだんだけど……」


 ブログね。てっきりそういう情報が頻繁に交換されてる場で得た情報かと思ってたよ。


「まあ大抵は情報サイトでやりとりするわよ。でも見逃せない情報ってのはどこにあるかわからないでしょ? なんせLROは三百万のプレイヤーが居て、日夜増え続けてるのよ。
 そこには一人一人、全く違う物語があるんだから」
「物語ね。セラにしてはロマンチックな言い方じゃん」


 まあそれは最近感じたよ。僕がセツリと出会った様に、きっと他の誰かも何かに出会ってるんだと思う。僕がたまたまセツリだっただけで、他の人は別のかけがえの無い出会いをしてるんだ。
 アギトが一年前にアイリに出会った様に、物語はそれぞれに紡がれてる。だからこそ、セラはそんな物語を知る事で、自分にとって有益な何かを取り出そうとしてるのだろう。


「他になんて言えるのよ」


 なんだか拗ねたように顔を逸らすセラ。まあ確かに物語りか。


「で、そのブログにはなんて書いてあったんだよ」
「は、早く教えてください!」


 スズリさんが震えを我慢して声をあらげる。必死だな。まあ僕らも必死な筈なんだけど、彼が異様に狼狽えてるから、僕らはそれなりに冷静で居られるのかも。


 というか、そろそろ慣れて来たよ。LROは既に僕の中では何が起こってもおかしくない世界だからね。一体今の彼と同じ位で、どんな経験をしてきたよ。
 それを考えれば、たかが暗黒大陸だね。一応ゲーム性に沿ってる場所の訳だし、脱出方法は必ずある。


「う~ん、そうね。確か穴だって……」
「「穴?」」


 僕とスズリさんの言葉が重なった。てか言葉が端的過ぎるんだよ。穴って何だ穴って? 言葉が足りない。僕達二人の頭にはハテナが浮かぶ。でも何故かセラの頭にもそれが見える様な……


「ああ穴って書いてあったのよ。確か空に穴がぽっかり空いて、そこに吸い込まれて出れたとかなんとか」
「はあ? それってマジなの?」


 空に穴って……けどセラは自分の記憶を信じてこう言った。


「マジよマジ。確かにそう書いてあったわ!」


 すると今度はスズリさんがその言葉をもっと突っ込ませる。


「じゃあ、その元々の信憑性はどうなんですか? 信じれる人の話なんでしょうか?」


 なるほど、確かにそれは重要だ。嘘かいてる奴だっているかもしれないし、僕と同じ程度の経験の奴では信じれないよな。
 出来るなら、一年位の実績を希望するね。だけどそこには自信があったようだ。セラは直ぐに返してきた。


「それは大丈夫よ。だってこのブログの人は、有名な地図ギルドの団長だもん。だから信憑性って所は信頼できるわ」
「な、なるほど、確かにそれなら……でも空に穴って?」


 僕達は一斉に暗く蓋をしたようなセラを見上げた。まあ地図ギルドのしかも有名なギルドの団長ともあろう人の言葉なら、確かに信憑性は十分なんだけど……空に穴って……


 まあ最近デッカい扉から落とされた僕としては、別段信じない訳じゃないよ。何があったっておかしくない、それがLROだし。
 でも問題は――


「その穴は、自分達で発生させる物なのかどうかだよ。自然現象なら、ポイントを絞ってそれの発生を待てばいいんだろうけど、自分達でアイテムか何らかの条件発生させると成ると……かなり難しいよな」


 だってここは暗黒大陸……しかもヒーラーもいないし、スズリさんは初心者だ。難易度が高すぎる。


「それは流石にどうかわからないわね……そうだ! 画像取ってた筈だから、ちょっと探して見る」


 そう言って、セラは待機モードに入った。片膝を地面に付いて、体を自然体で丸めた感じ。これはヒーリング状態とも言うけどね。
 これをやると、ゆっくりだけどHPを回復出来るんだ。だけどこれやってると完全無防備状態だからね。ただの回復用途なら問題ないけど、待機状態となるとセラは多分違うことをやってる筈だ。


 なら攻撃されたってあいつは気づかない。僕達が守ってやらないといけない。まあだからこそ、フィールドでこうなる時は、一人の時はやれないよ。
 これもまた助け合いだ。長時間やるときなんかは、入れ替わり立ち替わりやっていくって聞いたことがある。でもここでやるとはね。


 言っとくけど、またあのゴリラクラスの敵が来たら、守りきれるかわからないからな。まあでも、ここから進むためには、その画像は必要かも知れない。今の僕達は指針が欲しいんだ。
 どうして良いかわからないから、進むための道しるべが欲しい。


「僕達……無事に帰れるでしょうか?」


 不安そうにそう呟いたスズリさん。彼には実際悪いことをしたと思うよ。こんな事になるならさ、あの時やっぱり見捨ててたのが正しい選択だったのかもとか思ってしまう。
 だってそうだろ? ここは彼には早すぎる。実際僕だって普通に考えたら早いよ。でも僕には今までの経験があるから、そんなに怖がらないけどさ、彼はここには来て怖がってばっかりだ。


 このままじゃLROを嫌いに成るかも知れない。まあ僕の現状は別にして、スッゴいと思うんだよねここ。だから彼の出鼻を挫いてしまった事が悔やまれる。
 最初は光一杯であるべきだったのに、こんな光が届かない場所なんかに連れてきてしまった。少なくとも、僕が余計な親切心を発揮させたせいだよこれは。


 セラが言うとおりに見捨てたら……たら……でも、それはやっぱり今考えても無理だったと思う。僕達が見捨ててたら、スズリさんは確実にやられてただろう。でもこんな所に来ることは無かった。
 だけどあのまま僕達が見捨ててやられてたら、きっとイヤな印象しか残らなかっただろう。ここから出れなくてもそうなるかも知れないけどさ、少なくともまだ、結論を出しては居ないはずだ。


 あそこで見捨てて、それっきりだったなら、挽回のチャンスないわけだしね。LROがイヤに成るより、まだ僕達には初々しい初心者にこの世界の楽しさとかを伝えることが出来るはず。
 冒険なんだ……この体験もそう思える様に成ればいい。すればいい。それなら問題なしだろ。誰も何も後悔しなくて済む。だから僕は無駄に胸を張って言ってやろう。
 これ以上スズリさんを不安にさせない為にもさ。


「大丈夫ですよ。きっと、いや絶対に帰れます」


 根拠なんて何もない。けれどそう出来ると思ってないと行けないだろ。ここはたださえどんよりしてるんだ。それに気持ちまで引っ張られたら、出来る事も出来なくなるよ。


「本当ですか?」


 でもスズリさんは僕の答えをどうも信じれない様子。それはこの不安気な声でわかる。まあ早々この状況で楽観的になんて成れないか。
 彼は一番自分に自信がないんだもんな。初心者で、モンスターなんか倒したこともないレベルだろう。それがいきなりこんな最上級の場所へ飛ばされちゃかなわないよな。


 だけど今の僕には根拠のない自信を見せる位しか出来ない。それもゴリラ倒せなかった僕じゃあんまり説得力も出ないんだろうけど、言い続けてやるよ。
 僕はまだ玄人なんていえないけどさ、スズリさんよりは先輩なわけだし、自信をもっとかないと。


「本当本当。どうにか成るよ。今までだってそうだったし、セラが戻ってきたら何か掴めるよ」
「そうだと良いんですが……」


 まだまだ不安そうなスズリさん。まあただテンション上げれる訳もないよな。絶望に打ちひしがれないだけ、僕は役目を果たしてると思っておこう。
 つい数十分前まではもの凄く目を輝かせたのに、今はここの空の様にどんよりしてる。思い様によってはこれってかなり貴重な体験なんだろうけどな。


 でもそれを感じるには、ここから出る必要が有るのかも。彼にはここを貴重な場と思える余裕が有るわけもないからな。
 上方から落ちる滝の音がうるさく響く。なんだか気まずい沈黙が流れてしまう。何か話した方がいいんだよな。周囲の警戒も怠らない範囲で気を使わないと。


 先輩ってのも楽じゃないな。今までは、目指すべき目的の為に、自分よりも経験がない人なんて考えられなかったから分からなかったけど、いつもアギトとかはこんな苦労をしてたのだろうか?
 まあ僕とアイツは知らない仲じゃないし、こんな気まずい空気になることも無かったわけだけどさ……まあでも、ヒヤヒヤするって所は一緒かも知れない。


 スズリさんがゴリラの前に立ったときは、関心もしたけど、本当にヒヤヒヤしたもん。それを思うと、アギトの奴には悪い事をやってたんだなって……まあ僕の場合はしょうがなかったんだ。
 だってセツリの事は放っておけなかったしな。


(それにしても……)


 ここの滝って、見ててもなんだか心洗われないな。気持ちも良くならないし……まあ原因は分かってるよ。それはここの水が黒いからだ。
 普通の滝なら、LROでもマイナスイオンとか感じるよ。でもここの黒い滝にはそういう浄化要素が全くない。寧ろ臭気を放ってるよ。


「うう……」


 鼻を思わず押さえる僕。息は整ったけど、流石に馴れはしないなこの臭い。


「あの……」
「うん?」


 その時、予想外な事にスズリさんの方から話しかけてきた。まあ話し掛けてくれるならありがたいよ。こっちは話題がなくて困ってたんだ。


「お二人はこういう事には慣れてるんでしょうか? 失礼かも知れないですけど、あんまり深刻そうじゃないというか……」
「あぁ」


 どうやら僕の頑張りはふざけてるようにしか写って無かったようだ。まあそこまでは言ってくれてないけどさ、ようはもう少し真剣にって事だろう。
 これでも真剣なんだけど……色々と気苦労してるんだよ。やっぱりスズリさんは思ってたよりも思い詰めてたって事だろうか。


「別にふざけてる訳じゃないですよ。この状況が不味いって事は深刻に受け止めてます。まあそう見えるのは、言うなれば経験の差ですよ」


 ちょっと得意気にいってみた。


「経験ですか……そうですね、僕は取り乱し過ぎなのかも知れません」


 スズリさんは伏せたような瞳で、近くの岩に腰を下ろす。そしてそこで一つ大きく息を吐き、続けてこういう。


「でも……聞いたんです。今LROはおかしく成りつつあるって。そのせいで、ここでの死は本当の……リアルの死に繋がる……そんな風に……」
「なっ! それって……」


 僕は思わず一歩彼の方へ詰め寄ってしまった。でもそこで踏みとどまる。だってそれは噂……それ以上を出ちゃいけないことだ。
 サービスを停止されない為に、噂で無くちゃいけない。それに事実、スズリさんも聞いたってしか言ってないし。一応安心だけど、彼には僕の反応が引っかかった様だ。


「どうしたんですか? まさか……本当に?」
「ははは、そんな訳無いですよ。ゲームでの死がリアルに繋がるなんて、そんなのおとぎ話でしょう。有るわけないない」


 僕はいかにもバカバカしいように受け流す。あからさまに不自然だったかも知れないけど、そこは大目に見てほしい。
 でもここで、スズリさんは鋭い意見を飛ばしてきた。


「けれど、この噂の中心は君ですよね? それに最近のアルテミナス事変の時に、犠牲者が出たって事も聞きました。本当何ですか!?
 スオウ君なら知ってるんじゃないんですか? 居たんですよねそこに!?」
「う……それは……」


 なんだか結構調べてる? いや、僕の事を具体的に知らなくても、そんな噂は結構前から流れてた筈か。アルテミナスの事も、かなり話題に成ったはずだし、初心者の彼が知っていてもおかしくないか。
 でも、そんな噂は大概が噂で済ませてると思ってたけど……多分普通に今までやってきた人たち、あの場に居なかった人達はそうなんだろう。


 だけど、彼は違う。ようやく始めたLROでまことしやかだけど、誰もが口にしてる噂を耳にすれば、そんな事も有るかも知れないと、足りない知識のせいで思ってしまうかも。
 現に彼はそうなってるし……まだ何もわかないから、先にここに居る人達の言葉を鵜呑みにするのも当然と言えば当然なのかも……


 そういえば彼がまだ一度もモンスターを倒してなさそうなのって、もしかしてその噂のせいも有るのかも。その噂が出る前の人達よりも、スズリさんの様に最近始めた人達は、その噂のせいでいらない不安を持つことに成ってるんだ。
 まあ、いらない不安かは……実際よくわからないんだけど。ガイエンは事実、ああ成ってる訳だし。でもそれを認める事は出来ない。それが僕達が決めた約束ごとだ。


「どうなんですか!? 本当に安心していいんですか!? 噂の様な事実は無かったんですよね!?」
「ああ、無かったよ……」


 なんだか異様な雰囲気を纏いだしたような? スズリさんの勢いがこれまでとは違うぞ。確かにそれが事実だったら彼にとっても大変だろうし、わからなくも無いけどマジでこの勢いは怖いぞ。
 彼は下ろしてた腰を上げてズンズンとこちらに向かってくる。無かった言ったのに……


「本当に本当にですか?」


 超至近距離で見開いた目で迫られる。何だこれ? いや、誰だこいつ? 本当にスズリさんか? なんか食いつき過ぎじゃないか? 
 この目……何でこんなに血走ってるんだよ。噂だと思ってない? 思おうとしてもない? そんな訳ないだろ。非常識な事を、誰が早々信じるよ。
 いくら初心者だからって……そんな事もあるのかな~位だろ。でも、この人は何かが……僕は冷や汗垂らしながら頷く。するとスズリさんは、顔を伏せる様に下へ向けて僕から数歩離れてくれた。
 ひとまず安心だ。そう思って胸を撫で下ろす僕に、彼はまたとんでも無いことを言い放つ。


「なら、証明してください。貴方ならそれが出来ますよね? だってこの噂は、貴方から始まった筈なんですから」


 何言ってるんだ? そう思ったよ。証明って一体……するとスズリさんは自身の剣を抜き去る。何の変哲もないただの剣。初期装備のそれだ。


「どういう事ですか? それ……どうしようって言うんですか? 危ないですよ。まだ慣れて無いでしょう」
「大丈夫ですよ。ただその胸を突き刺す位は出来ます」
「は?」


 なんて言ったよこの人? なんだか突き刺すとか聞こえた気がするんだけど?


「気のせいじゃありません。だって確かめるには殺さなきゃ――でしょ?」


 そう呟いた彼は、切っ先をこちらに向けた剣で突っ込んでくる。そのあまりの豹変ぶりに、僕は上手く対応出来ない。きっと弾く事は簡単だった筈だ……でもそれさえも出来なかった。
 何が起こってるのか……理解できない内に彼は突っ込んでくる。そして――


「何やってるのよ!!」


 目の前で弾かれた切っ先が宙へと舞い上がる。そして彼が座ってた岩へと当たって地面に落ちた。驚異って訳でもないけど、訳のわからない状況は防がれた。僕は思わず、その場に腰が落ちてしまう。


「セラ……」


 僕の情けない声に、セラが睨んだ様な顔を向けて来る。そしてスズリさんには更に凶悪な視線を向ける。明らかに敵意って奴を醸し出すものだ。


「どういうつもりかしら? こいつは私の獲物なんだから勝手な真似しないでくれる。そういうスキンシップは私しか許されてないのよ」


 おい……誰もそんな事許した覚えねーよ。何堂々と宣言してんだ。


「ははは、誰も貴女の立場を取ろうとは思ってませんよ。僕はただ、確かめたかっただけです。本当に彼が死ぬのか」


 スズリさんもズバリと言いやがった。セラは僕ほど優しくねーぞ。一発位で済めば良い方……まあ僕の為にどこまでやるかは知らな―――


「ふ~ん、じゃあ確かめてみなさい。ただし自分の体でね」
「ぐふっ!?」


 いきなりセラがスズリさんへ掴みかかって地面に押したおす。思ってたよりもかなり荒々しいよこいつ。そして手の中で回す棒状の針をどうする気だ。


「ふん!」
「うおおおおおおおおおお!!」


 普通に刺したああああ!! しかも抜いては刺し、抜いては刺ししてる。どれだけ残酷なんだあいつ。


「あああああ……あれ?」


 不意にスズリさんの悲鳴が疑問へ変わる。そしてセラは馬乗りに成ったまま笑ってる。


「気付いた? パーティーの仲間内じゃ幾らさしても殺せないわよ。だから無駄なの……そんな事やる前にこれ見なさい」


 セラはウインドウを開き僕達に見つけてきた物を見せてくれる。それは黒い空に、更に黒い穴があいてる画像と、暗黒大陸へと同じように落とされた人達数人分の日記? ブログって奴か? それを日付と時間と文章だけを表示した簡易版? 
 それを見る限りは、確かにセラが言うとおりのらしいとわかる。


「確かに穴だな……」
「でしょ、私の言うことはいつでも正しいわ」


 流石にそれはどうだろうかと思わざる得ないけど、確かにこの画像と文章を読む限り、これが脱出の鍵らしい事は認めざる得ない。
 そうやってセラが持ってきた物に目を通してると、汚い地面に倒されたままのスズリさんが、空を見上げて思いがけない事を言う。


「あの~、その画像の穴ってあれに似てないですか?」
「「はあ?」」


 僕達は訝しげに空を見る。すると確かに、この画像と同じ現象が今まさに起きていた。黒い空にぽっかりと開いた黒い穴……それがまさに顔を出してるじゃないか。


「行くわよ!!」
「あの……僕は……」


 セラとは対照的な声を出すスズリさん。それの意味を直ぐに察して、僕は走りながらこういう。


「何やってるんですか? 置いていきますよ」
「……は、はい!」


 スズリさんもようやく走り出す。色々な事は置いといて、今はまずあの穴を目指そう。

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