命改変プログラム
道すがらの事
町を離れて、僕とセラはアルテミナスを目指して、フィールドを駆ける。快晴の空は澄み渡りどこまでも青く、そびえる様な入道雲は、リアルには無いくらいに大きいかも知れない。
時々変な形の鳥も飛んでるしな。ここでなら、あの雲の中に空飛ぶ島があっても実際不思議じゃないよな。まあそう言う話は聞いたこと無いけど。
頬を撫でる風は暖かくて気持ちいい。自然の香りって奴がするよ。新鮮な空気の味。いつもと変わらないLRO。まさにそんな感じだ。
まあだけど……そんな悠長な事を言ってられたのも最初の内だけだけどね。
「はぁはぁ……」
息がやばい。ものの十分くらいでそうなった。
「はぁはぁはぁはぁ……」
足取りフラフラ。酸素を取り込んだ側から、酸素が出ていくよ。三十分位の事です。
「ぜっはぁ! がぁっは……ぐわばっぐわばっ」
「もうなんなのよさっきから? その不快な息づかいやめてくれない。なんかイライラするのよね。殴るわよ」
おいおい、ちょっと待てよ。幾ら何でもセラの奴、涼しい顔し過ぎだろどう見てもさ。おかしいあり得ない。草原から森を抜けて、今は岩礁地帯を駆け抜けてるのに、何でそんなに平気そう何だよ。
「おっまえ……な、ふざけるなよ!」
僕はそう叫んで急停止。てか倒れた。ドス~ンと空を見る形に倒れ込んで、大量の空気を体に送り込む。そこへ不満そうなセラが僕に影を落とす形で見下ろしてくる。
「なっさけない。この程度でなに疲れてるのよ。ヘタレねまったくアンタって」
たく……コイツは本当に楽しそうに僕を蔑むよな。わざわざ悪口を放り込む必要なんて無いだろうにさ。全く、セラと二人きりなんて体と心の二重苦だよ。
てか岩がゴツゴツしてて痛いななんか……冷たくヒンヤリしてるのは気持ち良いけど、寝心地悪い。
「うるせー、どう考えてもお前が異常だろ。あれだけ走れば、ゲームでも疲れるっての」
別に自分の体を実際に走らせてる訳でもないからさ、実際どう疲れてるのかは自分的にも疑問だな。だけどLROは忠実だからさ、走れば普通に息切れするし、HPは減りはしないけど、疲れるって感覚は確かにあるはず何だよ。
なのにセラの奴はペースを落とす事も、息切れした様子も無いって絶対になにか隠してる。
「え? なにアンタ、まさか自走してなかったの?」
「何だよ自走って?」
僕の言葉はそんなに間抜けだったのか、セラの奴頭を抱えてるぞ。そしてウインドウを表示させて、なにやら操作し始めた。
「自走ってのはね。自動走行モードよ。予め目的地を設定して、実行すると後は勝手に足が動いてくれるわよ。しかも体力の精心負荷を無くして最高速度で走り続けられるんだから便利でしょ?」
「ああ、成る程~って、そんなの使ってて、よく僕の事を蔑めたなお前!? ズルじゃんかようは!」
僕は必死に抗議するよ。
「別にズルくは無いでしょ? 知らない方が悪いのよ。LROは果てしなく広いんだから、リアルと全てが同じ条件なら、足だけで走破なんて出来っこ無いじゃない。
勉強不足を棚に上げないで頂戴。教えてやったんだから、寧ろ感謝されてしかるべきなんじゃない?」
「うぐ……」
セラの癖にまともな事を言うじゃないか。確かにそんな便利機能なら、説明書を読めばわかったかも知れないけどさ、僕は取りあえず体験する派なんだよ。
説明書は後々読んでくタイプなの。まあ今の今まで、その存在すら忘れてたけど。だが、セラも僕の様子を見て、ちょっとは同情心でも芽生えたのか、「ほら、ウインドウ出して」って言ってきた。
やってくれるって事だろうか? まあ取りあえず、他人にも見える様に可視化モードをオンにして、ウインドウを渡す。
「サンキュ」
「ふん……」
ピッピと何やら操作してくれるセラ。よくよく考えたらウインドウを誰かに渡すってそれなりにリスクがあるって言うけど、コイツは大丈夫だろうか?
まあ知り合いだし……知り合いの中でも一番信用出来ない奴でもあるし……ダメじゃね? そんな思いが沸いてくる。
赤茶けた岩礁地帯で、僕は設定の完了を待つ。まあ珍しいセラの親切(?) だし、ここで余計な事を言うと、また口論に成るかも知れない。
信用できないけど、セラはまああんまり人道的に反する事はしないだろう。加減を知らない毒を吐くけど、境界線ってのは知ってるだろ。
まあそこら辺を上手く渡りそうだから怖いんだけど。下からセラを見つめてると、不意にセラが「あれ?」って言う疑問を呟いた。
「どうした?」
僕がそう言うと、何だかいぶかしむ様な目を向けてくるセラ。何だろうか? 設定間違えたとか? まあそんな感じじゃ無いけど。
取りあえず、息も整ってきたし、僕も起きあがろうとする。けど、それを征する様に、最後にパパパって何かを操作してセラがウインドウを差し出してきた。
「ほら、設定はしてやったから感謝しなさい。後は『自走、アルテミナス』で実行ね」
「ああ、助かった。で、さっきの『あれ?』はなんだったんだよ」
僕はウインドウを受け取りながらセラに聞いた。やっぱり気になるからな。
「別に、アンタが余りにも貧相な防具しか装備してない事に驚いただけよ」
「悪かったな貧相で!!」
そんな事にあれ?って思ったのかよコイツ。てか見た目でわかるだろう。僕の装備が防御力あるように見えるのか?
殆ど初期装備のバージョンアップでしかないからな。今更なんだよ今更。まあ流石にこの装備にも限界って奴を感じだしてきてるけど。
シクラ達の攻撃をまともに受けたら、三回位でやられそうだ。僕はだけど、セラの格好も見て言ってやる。
「けどお前も、あんまり人の事言えない格好だろそれ? 防御力とか貧相そうじゃんメイド服なんてさ」
「フ……愚問を」
何だその悪の幹部みたいな台詞は。セラは大きく胸を張って、白い手袋に包んだ手を胸の所に持っていく。それこそどっかの鬼母がやりそうな格好だ。「ホーホッホホ」とか叫ばないよなこいつ。
「このメイド服をアンタのその初期装備バージョンアップ版と同じにしないでよね。素材なんて全て超貴重で、一着一着が職人の手によるフルオーダーメイドなんだから。
アンタの装備の十倍以上は頑丈よ」
「マジかよ!?」
そのメイド服ってそんなにスゴい物だったの? 確かに良くできるよな~とは思ってたけど、まさか職人の手によるものだったとは……恐れ入ったよ。
「まあ私のは、その中でもプラスが付く一品物だけどね」
更に胸を張るセラ。まあ侍従隊のリーダーなんだろうし、そうなんだろうな。プラスが付くだけで、値段の桁変わるからね。
なんて贅沢な装備。流石国って言う物に支えられてる側だよ。そんな装備を十数人配ってる訳だからね。
「は~そのメイド服がね」
僕はジーと下から上まで見回す。白と黒(いや藍色?)を貴重としたロング丈のメイド服は、言っちゃえばオーソドックスな物だ。でもだからなのかな、なんか歴史を感じるな。
歴史って程の物はないだろうけど、雰囲気でさ。でも足下はブーツなんだな。動きやすい様にだろうか?
「な何よ。あんまりいやらしい目で見ないでくれる?」
「なにがいやらしい目だよ。そんな目するかっての」
堂々と見せつける様にしてたのはどこの誰かってんだ。急に腕を回して、顔を赤らめるなんて、理不尽だぞ。あれだな、女子の見せパンなる物と同じだな。
あれって絶対に見せつけてやがるのに、見たら見たで「何見てんのよ!」とか「うわ見られた」とか「超キモいんだけど~」とか言われるんだ。
訳が分からん。女子って基本、男からしたらズルいよな。
「さて、これで楽に走れるし急ぐか」
僕は地面に付けてた場所をパンパンと叩いて立ち上がる。
「誰のせいで止まったのよ。ねえ、そんなに苦しかったの?」
ん? 何を言い出すんだセラの奴。見ててわからなかったのか? しょうがないから教えてやるよ。それでこれからはもっと僕を労れ。
「滅茶苦茶苦しかったっての。心臓も体の節々までな」
「ふ~ん。そこまで苦しかったんだ。やっぱり……」
「?」
なんだやっぱりって。その後も口は動いてたけど、声にはしてなかったのか聞き取れなかった。
「まあいいわ。早く行くわよ。もう止まらないからね」
そう言って、セラはゴツゴツした岩を蹴る。たく、相変わらず速いなアイツ。あんな走り難そうな格好で、どんどん遠くに行きやがる。
けど、今度は負けないぞ。疲れ知らずなら、速さには自信があるんだ。
「え~と確か……自走アルテミナス、実行!!」
その瞬間、グンッと足があがった。体が何かに支配される感覚。そして一気に地面を蹴る。おお、スゴいぞこれ。でも……なんだか……
「スッゲーやりづらいんだけど!?」
追いついたセラにそんな言葉を投げかける。てかさ、心と体が別の動きをするって、なんだか無理あるような感覚だ。
体力は減らなくてもなんだかきつい。
「馴れよ馴れ。馴れると便利なんだから。まあでも……」
「うん? おい、どこ行く……」
セラの奴は突然僕から離れていく。なんかその前に一瞬前を見てた様な。この状態って別にどこ向いてても足が勝手に進むから、まあ便利っちゃ便利なんだけど……アイツどうやって横に逸れたんだ?
てか何を見た? 僕は離れてくセラから目を離して前を向いた。するとそこには、大きな岩……いや違うな。岩がゴツゴツとまとわりついてる様なモンスターがそこにいる。
しかも一体じゃないな。三体位、二メートル大のモンスターが前方に見えた。
「おいおいおい、アイツ逃げたな!」
くっそ、別にやられるだなんて思わないけど、急いでる今は、なるべく戦闘は回避したい所だ。このまま行くと、直ぐに奴らに見つかるだろうし、僕も少し道から外れて――――――――――――――――――あれ?
「しまったああ! 止まり方聞いてないし!?」
僕の意志を受け付けない足は、グングングングンと体を前へと進めていく。頼もしすぎるよこれ! 今や僕の足は、一つの命令を実行し続ける機械の様だった。
目の前に迫るモンスター計三体。奴らは僕の存在に気づき、その無骨な口を大きく開いて、雄叫びをあげた。岩の様な口が開いての叫びだ。なんかそれだけで重かった。
なんなんだろうかこいつ。まとわりついてる感じって言ったけど、岩自体が集まって出来てるモンスターなのかな?
けど、岩が隙間なく存在してる訳でもないんだよな。つなぎ目は黒く、そして目が赤く光ってる。その黒い所が本体で、岩は主に防御と攻撃に使う感じなのかな?
岩自体がモンスターなら、岩の部分に目とかあるもんじゃないか? 岩で体を作ってるとでも言うのか……なんか不格好。
人なのか熊なのか、よくわかんない形だし……三体に共通してるのは、二足歩行はしてるって事くらいか。後は微妙に形違うんだよな。
まあだけど考察してる間に、襲い掛かって来る岩の腕が三本見えた。単純な攻撃。やっぱり見た目ほど、強いって訳でも無さそうだな。
でもさ、強いとか弱いで、攻撃を防ぐかどうか決めてる訳でもないんだ。取り合えず来る物は打ち落とすべきだろ。
「わわっまじかよ。武器さえ抜けね――ゾボラヒ!!」
戦闘態勢にも入れぬまま、僕は三体のモンスターからの攻撃を食らった。後半の言葉、岩に殴れて思わず口から漏れでて来た言葉だ。
結構な衝撃……同時じゃなく、次々に腕が刺さったから、衝撃も三回あった。しかも前に走りながらだったから、その痛さはハンパない。
十メートル位は吹っ飛ばされたね。岩場に体を叩きつけられる事も苦痛。鼻から流れ出る赤い水滴が、岩場の亀裂に吸い込まれていく。
【強制戦闘状態に入ったので、自動走行は中止されました】
頭の中に響くそんな声。はは……おかしな事にさ、もしかして攻撃を受けた時も、受けた後の今までも、足って動いてた訳?
自分の体に、自分の感覚が戻っていく中、ヒョコッと遠くの岩に立ってるセラがこんな事を叫ぶ。
「ああ、そういえば自走中は戦闘不可だからね。てかただ道に沿って走ってれば、モンスターにぶつからない訳ないじゃない。バーカ!」
「――っつ!? 本当に性格悪いなお前!! 遅いんだよ何もかも!!」
ブチっとなったね。額の血管が怒りマークを模して現れてたかもしれない。だけどセラの奴は悪びれる事なく、こう言った。
「性格の事なんてアンタに言われる筋合いないわよ。それにアンタには、口で伝えるより直接体に染み込ませた方が、忘れずに済むからいいじゃない。
別に私は、ちゃんと伝えようとしたんだけど、タイミングが悪かったのよ」
「伝えようとしたなら伝えろよ! 無言で走り去りやがって、お前のその体にもこの痛みを刻んでやろうか!?」
鼻血だらだら流れる顔で僕は叫ぶ。いや、叫ばずにはいられない。だって何が体に直接~だよ。僕はそんなにオツムが弱い奴じゃない。
セラにはモラルって奴を直接叩き込みたいよ。
「出来るのなら相手に成ってやっても良いけど、でもその前に、熱いラブコールが向けられてるわよ」
クスリと笑ってそう言うセラ。なんて邪悪な笑み。僕だけがそう見えるのかも知れないけど、アイツは小悪魔なんかじゃない、悪魔だよ。
なんか悪寒がしたも――ドス! ガンガンッゴロゴロオオオ……
(おいおい、ドデカい岩が僕の頭を掠めて転がってるぞ)
悪寒じゃない、冷や汗がやばい。いやいや、ダメだろアレ。一歩間違えば、こう頭がプチッ……と成ってたよ。トマトを地面に落とした光景が広がるとこだよ。
後ろを岩が飛んできた方に顔を向けると、三体のゴツゴツしたモンスターがこちらに猛然とダッシュしてる。そして自身の岩を取り外して投げて来やがる。
「ふん、一発殴らせてやっただけでもありがたく思っとけばよかった物を――」
僕はゆっくりと立ち上がる。ちゃんと視界に入れればあんな岩、当たる訳もない。てか、かなりアイツ等狙いが荒い。
本当に僕を狙ってるのか? ってな位だ。さっきのは奇跡的な一投だったみたいだな。奴らの岩はどうやら無限に生えてくるタイプらしく尽きることがない。
でもこれなら、驚異なんて呼べないよ。それに実際、今の僕なら、岩くらい切れるんじゃないかって思うんだよね。
けど丁度いいよ。準備運動には成るだろうこいつらもさ。ラスボス(セラ)の前の前菜だ。今日と言う日に、僕を襲ったのが運の尽きなんだよお前たちは!
僕は迫り来るモンスター三体に体を向ける。そして腰に差してあるセラ・シルフィングへ左右の腕をクロスさせて向かわせる。
体を少し前傾姿勢にして、柄に触れる程度に手を添えたとき、一番前に来てたモンスターが再び、その太く大きな岩の腕を振り被った。
まともに食らえばそれなり痛い攻撃。だけどその瞬間、僕は倒れる様に前に出て、奴の狙いをズラす。触れるか触れないか位の位置を岩腕が勢い良く走っていく。
そしてダンッ!! と力強く地面を踏みしめ体を支え、僕は二対の剣を引き抜いた。
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!」
その瞬間、響きわたった断末魔の叫び。モンスターの体にはクロスの斬痕がくっきりと残ってる。まずは一体だ。
「――今の僕は機嫌が悪るいんだ」
まさに完全なるクリーンヒット。それにLROの攻撃判定はただ単純に攻撃力でダメージを決めてる訳じゃないから、たまにはこういう事も起こる。
攻撃のスピードに、それぞれのテンションも影響するし、武器と敵との相性とかもある。まあこの場合いはスピードがかなり優位に働いたかな?
だってこいつら遅いもん。あれだけの戦いを経て、完全雷化のスピードの中でも敵を捉えられた僕には、止まって見える。
まあそれは言い過ぎだけど、スローには見える。ハッキリ言って、こいつらは遅すぎる。攻撃力はそれなりだろうけどさ、どれだけ大きな力も当てれないと意味なんて無いんだ。
消えながら後ろに倒れ行く様までスローで見えるな。と、そんな余裕な感じで見てたら、いきなりクロスの傷口から黒い血しぶきが大量に舞い上がった。
「何!?」
青空に吹き上がる黒い雨。それは……おかしな事だろ。
「「ぐがあああ!!」」
そんな光景に目を奪われると、後の二体も迫ってきてた。また、ご自慢のパンチ。同時に迫るその攻撃を避けながら、今度は岩と岩のつなぎ目の黒い部分を僕は攻撃する。
体を回転させ、ひねって飛んで、奴らがパンチを伸ばしきる前に、僕は見える黒い部分を一度は切りつけた。すると今度は、体中から血しぶきが噴き出すじゃないか。
いや、正確には僕が切った部分から血が吹き出してる訳だ。
「――っつ!」
僕は余りのその血の勢いに顔をしかめる。てか、返り血なんてレベルじゃないぞこれじゃあ。全身墨汁を掛けられた虐められっ子みたいに成ってる。
そしてようやく収まったと思ったら、そこには黒く成った岩が残ってた。消えたのは中身だけって事なんだろうか? そもそも血っておかしいんだけどな。
LROはその表現をしないようにしてる筈だ。実際、セラ達は、服とか破れはしても、血は出ない。モンスターだってその筈だ。まあ一部の例外……僕とかはその類じゃないし、シクラ達もそうだ。ガイエンも、深く繋がる様に成ってからは流してた筈だ。
でもそれは条件付きだった筈。こんな白昼の堂々とした場所でって……特別なモンスターだったのか? 僕はそう思って残った岩に手を触れる。
別に黒いだけで他の岩と変わらない様な感じだけど……するといきなり、僕の手は岩から弾かれた。バシンってな感じで。
「ちょっと気をつけなさいよ。得体の知れない物にそう易々と触らない! LROには呪いって状態異常もあるのよ。その類のトラップだったらどうするの」
「お前な……心配してるのか、怒ってるのかどっち何だよ」
僕の手を叩いたのは案の定セラだった。安全な所に居たくせに、安全を確認したら戻ってくるなんて薄情な奴だ。
「両方あっちゃ悪いの? それにしてもさっきのモンスターは何だったんだろう?」
「なに、ここには居ない類の奴だったのか?」
僕はてっきり、ここに生息してるモンスターだと思ったけどな。いかにも岩礁地帯に居るって感じの奴だったし。
「あんなのは居ないわ。少なくとも私は知らない。こいつなら知ってるけどね」
そういってセラが指を指したのは、あのモンスターの残骸だ。正確には岩だ。これが何だって?
「この岩事態が、モンスターなのよ。岩になりすまして通りすがり冒険者を襲うタイプね。まあ雑魚なんだけど。腕とかもあるじゃない」
「これ、腕なのか? つまりは、さっきのはこいつらの集合体か?」
「う~ん、そんな話は聞いたこと無いけど。それにアンタが切ったのはこいつらじゃないじゃない」
おお、流石にセラは目が良いな。
「まあ本体っぽい黒いのを切ったからな。あの黒いのが強性的に、こいつらを使ってた?」
「……実は――」
考え込んでたセラの口から、何かが漏れようとしたとき、どこかからか、ガララと岩が崩れる音が聞こえた。僕とセラはさっきの仲間でも居るのかと周りを警戒する。すると今度は声が聞こえて来た。
「うおお~い、誰か助けてくれ~」
なんとも情けない声だった。僕とセラは、その声のする方に歩み出す。少し岩場の方へ行くと直ぐにその声の主は見えてきた。
どうやら、さっきモンスターが投げてた岩に直撃した不幸な人が居るようだ。
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