命改変プログラム
変わらぬ世界?
僕達は全てを背負って、間違いだと非難されても、これを選ぶしか出来ないと悟った。誰も犠牲になんてさせないために……誰もが楽しめる夢の場所を守るために、僕達はまだ終わる訳にはいかない。
調査委員会? 上等じゃないか。どれだけ正しい大人の意見でも、僕達は僕達の正しさを見つけるだけだ。エゴと言われるだろう。ワガママだと罵られるだろう。
誰の賛同も得られないかも知れない。だけどそれさえ覚悟の上だ。僕達は取り戻したいんだ。それぞれの大切な人達を。
それは誰になんと言われようと、諦める事は出来ない事で、正しいことが立ちはだかっても乗り越えると決めた。それで良いんだとさ。
ワガママで、いいんだってさ。調査委員会もう動いてるらしい。そしてその結果を発表するのが取り合えず一週間後と佐々木さん達は言ってた。
なんか早急じゃないか? いや、LROは叩けば埃が出ると思われてるか。てか叩いて無くても、悪い噂は出てる。セツリや当夜さんの事も蒸し返せばそうだし、リアルとゲームを取り違えたりもそうだろ。
食事とかだってそうなんだ。LROで食べた気に成っても、胃に何かが入るわけじゃない。過激なダイエットに使う人もいて、栄養失調で倒れる人も居るらしい。
こうやって考えれば、LROって問題多いんだ。自己責任の部分も勿論あるだろうけどね。モラルの問題。だけど対策は必要。
佐々木さん達は、LROにあんまり干渉出来ないみたいだし、せいぜいメンテナンスくらいとか、イベントクエストの追加とか……その程度。
とても管理者側とは思えないな。それもそもそもの問題にされそうだ。まあだけど、そこら辺は僕が考えても仕方ない事だ。
僕は僕のやることをしないといけない。それがLROの為に成るはずだから。最初にそれを決めて、歩き出したのは僕だから……最後までいかないと。
それが責任でもあるだろう。どうなるかなんて分からないけど、こうありたい願いを込めて僕は進むと決めたんだ。それがきっと、僕がLROに見た夢を開く鍵。
「ダイブオン」
そんな魔法の言葉を紡ぐと、体と精神が離れる間隔が来る。そして落とされるんだ。真っ逆様に僕と言う精神体は意識の海を落ちていって、次第に光が見えてくる。
すると感覚が取り戻されていき、向こう側の体が僕と言う精神を受け入れる。光が服と防具になり、腰に二つの剣が現れる。
それに手を触れると、僕はこちら側に来たと感じる。一歩を踏み出し、大きな扉を目指す。そういえばこの扉、シクラ達が移動とかに使ってたのと同じだな。
あの戦いで、僕達がアルテミナスの上空に投げ出された扉。そして誰もが最初に踏み出す時に開く扉。後はログイン時に、こうやって開く事になる扉。
この扉の向こうが、誰もが夢を見る世界『ライフ・リヴァル・オンライン』。通称LRO。それが広がってるんだ。
僕達の冒険の舞台で、剣と魔法が存在するファンタジックな場所。出来ないことが無い世界。起きえない事が起こる世界ともいえるかも。
一体どういう技術で造ったのやら。だけどやっぱり、この向こうには夢があるんだろう。魅了される人が無数に居るんだからな。
出会って、助けられて、仲間が出来た。だけどまだ、本当に取り戻したい奴が、この扉の向こうに囚われてる。この大きすぎる扉の開け方をわからなくなって……怖がって、逃げて……僕のせいでこちら側を信じれなくなった。
迎えにいかなきゃ成らない……たとえ拒絶されたって、何度でもさ。おかしいと思われるかも知れない。そこまでする事は無いと、言われるかも知れない。
アイツはもう、そこでいい……そう思ってるのだからと。甘すぎてわがままなアイツは、そちら側を選んだ。逃げ続けること、その先に何が待ってるかもわかってる。でも思うんだ。いや、僕はわかる。
それでもさ、アイツは死を覚悟して、向こうを選んだ訳じゃないって。だからやっぱり今の状況も逃げただけ……そうだろセツリ。
でもさ、それもある意味では仕方ないのかもと思う。アイツは歩き方を知らない。付いてくる事は出来るし、引っ張られる事も出来る。けれど、自分で歩くことは出来ないんだ。
自分で歩くって事は、真っ暗な場所で自分の道標を信じないと進めない。でもアイツはさ、自分を信じるって事を忘れてる。
ずっとベットの上で、一人では何も出来なかった期間が長すぎた。どれくらいかは実際知らないけど、多分相当前からなんだろう。
出来ないことが仕方ないと、そしてそれが許された。自分に何が出来るのかなんて、わからなく成って当然だ。そしてそんな日常に戻りたくなんかないんだ。
意味が見いだせない……生きてる意味が。でもそんなの誰だってそうで……なんで自分が生きてるのかなんてわからない。自分に何が出来るかなんてわからない。
僕ら辺の年頃の奴らなんて、進路だ将来だとかでそれを無理矢理にでも模索しないといけない時期だよ。そして取り合えず大学とかだろ。
セツリをそこまで責めれるか? 曖昧なんだ誰だって。誰だって仕方ないって思う。いろんな事から、誰もが逃げてるよ。
でも……絶対に逃げられない物がアイツには迫ってる。死って奴だ。早すぎだろいくらなんでも。でもアイツが自分で歩き出せれば、それを延ばせるかもしれない。
せめて普通の寿命くらいには。僕は生きてほしい。生きれるのなら、そうあるべきだと思う。まだまだ全然歩き方を知らない奴で、自分からそこに張り付こうとしてるけど、誰もが見捨てても僕は手を伸ばすよ。
その手を引くよ。太陽の下まで連れ出すよ。生きさせたい、知らせたい……まだまだアイツの知らない事が、リアルには沢山あるんだから。
それこそアイツは、何にも知らない。諦めるのは全然早いって、どうやっても教えてやらねば成らないじゃん。
ガゴンと、扉の片側を押して光が漏れだしてくる。溢れるほどの光を踏みしめると世界が姿を現してくる。喧噪が息づいてくる。
「待ってろよセツリ」
そう呟いて、僕はLROに再び降り立つ。
「あれ?」
意気揚々で長々と心情を吐露したのは良いけど、なんか思ってた場所と違う気がする。ここってアルテミナスか?
僕はてっきり次に入る時はアルテミナスって思ってたんだけど……よくよく考えたら、ゲートクリスタルの設定を変更する前に僕って落ちてんじゃん。
いやそもそも、ゲートクリスタル事態があの時はぶっ壊れてた筈だけどね。だからいつもと違う感じで、プレイヤーが空から降ってきてた訳だし。それこそ流星群の様にさ。
てなわけで、ここはアルテミナスじゃない。ようはあの日、タゼホを目指す前に僕達が身を潜めてた町だ。なんだっけ? 確か中立地域の町なんだよな。
後ここと同じ様な町が二つ有るとか聞いたな。僕は何気に指を二本立てて、右腕を振るう。するとウインドウが姿を現した。
ウインドウを操作して、もう一つ画面を表す。メインウインドウの傍らに現れたそれは地図だ。まあ地図と呼べる程、まだ僕のは埋められてなんか無いんだけどね。
この世界の姿を現す輪郭があって、そこに示される情報は僕が通った場所だけだから、まだまだ全然世界は広いことがわかるよ。
「でも……それにしても……」
いや、前々から思ってたけど、LRO広すぎじゃね? それなりに大冒険を繰り広げて来たはずだよ。なのにたったのこれっぽっちかよ!
三分の一位はあるよ……な? まあ種族間の国もまだまだあるし、それに暗黒大陸と呼ばれてる部分もあるから、まあやっぱりこんなもんなのかも。
それにこの町が囲む様に配してる地域、その内側も特殊だって聞いた気がする。それもそれは世界の丁度中心部分に成るわけだけど、どう特殊なのかは僕は知らない。
そっち側に目を向ける暇は無かったしね。あの戦いが終わったからか、なんだか前よりも人の行き来が激しくて、喧噪が騒々しく成ってるな。
ゲートクリスタルは大抵、出入り口の所にあるから、良くわかる。さっきからひっきりなしに人が走り去っていくよ。
まあ、元々ここは拠点とかに成る町でも無いんだろうけどさ、なんだか素通りされてるみたいで悲しいな。前の時はアルテミナスから溢れた人達もそれなりに居て、騒々しくもあったけど、ここまで行き来が激しかった記憶はない。
この町の先で何かあったのか? とも思ったけど、別に向こうに向かうのが多いわけじゃなくて、アルテミナス側に向かう人達も多い。
まあアルテミナスに向かってるのかは知らないけどさ。ゴタゴタしてた問題が終わったから、通りやすく成ったのかもしれない。
「う~ん」
地図を見ながら僕は唸る。よくよく考えたらさ、僕は一からセツリを探さなくちゃいけないんじゃないかと思うんだ。この広い世界からさ。
いや、そもそもこの地図の上に居るかどうかも怪しいんだ。先の戦いで僕は奴らのフィールドを体験した。そこはこの地図には無い場所だ。
扉の向こう側とも言うべき場所。僕はあいつ等から先手を取ることが出来ない位置に居る。奴らが動いて、僕らも動く……そう成るしかない。
だけどこれだけ広いんだ、向こうが僕に出会わない様にすることは幾らだって出来てしまう。なんせあいつ等、あの巨大な扉を使って移動出来るのなら、距離なんて関係ないように思えるじゃん。
それとも向こうが絶対的にこちら側に来なくちゃいけない様にしむければいいんだけど……そんな訳にもいかない。
「はあ」
考えは一旦中止だ。そこら辺は一人で考えたって仕方ないことだろう。みんなで考えた方がきっとずっといい。地図を閉じ、ウインドウを閉じようーーとした時、僕は有ることに気づいた。
(あれ?)
そう心の中で呟いたとき、冷たい声が僕に届いた。
「ちょっと、なに呆けてるのよ。私が迎えに来てあげたんだから、頭を地面にめり込ませる位に感謝しなさいよ」
「――あ?」
たく、登場から早々ときつい言葉を吐くこのメイドは、本当にメイドだろうか? こんなメイドは僕なら直ぐに解雇する所だよ。
全く持って、癒しって奴を提供しないメイドもある意味斬新かも知れないけどさ、毒を食らう側には居たくなかっったよ。
まあメイドの格好してるけど、こいつは実は暗殺者らしいというかみたいだから、メイド服はカモフラージュ程度しか無いのかも。
人は見かけによらないって言葉を利用してるよな完全に。
「何よ、何か文句でもあるわけ?」
僕の反抗的な「――あ?」にすかさず、そう返す所がこいつらしいと言うか……まあここまで言ってもまだ分かってない人の為に言っておくと、この毒舌メイドはセラです。
たく、不機嫌なのかどうか知らないけど、数日ぶりに無事帰還した僕に対して応対酷くないか? 別に熱烈歓迎を期待してた訳でも無いけど、初っぱながあれじゃ僕でも少しは傷つくよ。
「そりゃあるね。お前ね、ちょっとは僕に対して優しさを発揮しても罰は当たらないぞ。幸せ逃げねーぞ」
「あっそ、アンタにやる優しさなんて、犬に食べさせた方がまだまし」
ヒド! なんて事を言うんだこいつ!! 優しさが枯渇したら、世界はきっと酷いことに成るんだぞ。人に優しくって言葉を知らないのか?
少し乱れてる様な髪を仕切りに気にしながら、セラは言葉を紡いでる。なんだろう……なんかいつも以上にキツいのはその乱れた髪のせいか?
たく、あたらないで欲しいよな。
「なんだよそれ。折角協力しあって、仲間気分だったのに、酷すぎだろ。犬にやれる程度の優しさなんて、こっちから願い下げだ。
そもそもなんでセラなんだよ」
「なに……アギト様とかが来ると思ってたわけ?」
うん? なんだか異様に声に迫力が付加されたのか? 変な威圧感を感じる。
「まあ、それが妥当だろ。それかテッケンさんとか、シルクちゃんとか……お前は結構予想外だよ」
「はっ……テッケンにシルク様? 一体どんな夢を見てるのやら。あんた自分がどれだけのVIP待遇されると思ってるわけ?
庶民でしょ、平民でしょ、カスでしょ? 図に乗る前に自分の立ち位置を再確認してみなさいよほらカス」
おいおい、どこが不味かったんだ? 完全に怒らせたっぽいぞ。なんで庶民・平民と続いた後に凄まじいランクダウンしちゃうわけ?
「いやいやいや、流石にそこまで言われる筋合いねーぞ!
それに僕だってあの戦いは頑張ったんだぞ。カス呼ばわりは酷すぎだ!」
僕は必死に、自分の尊厳を守るために戦うぜ。言いたい放題にセラを放っておくと、その内存在を消されかねないからな。
突然「アンタ誰よ?」とか言われたくない。
「ふん、何も守れなかった癖に」
セラはそう呟くと、フンッと勢い良く顔を背ける。てか、それを言うか? あんなボロボロになったのをバカらしいと言いたいのかコイツは?
流石にこれは本気で怒って言い場面じゃ無いだろうか。久しぶりに顔を合わせて数分で、かなり険悪なムードが漂いだしてる。
「何も守れなかったって……じゃあお前はどうなんだよ! お前一人だけで、何かを守りきれたのかよ!」
僕の言葉にセラは、胸の前で拳を握る。そしてそのままその拳が「うるさ~い!!」の声と共に突き出された。
「がはっ!?」
鼻に直撃した拳。僕は後ろにひっくり返った。沢山の人が行き交う路上で、女の子のパンチを受けて、盛大にヒックリ返るなんて、恥ずかしすぎる。
「いきなり手を出すなんて……お前な……」
「私だってね、このままじゃいけないって思ってるわよ。でもそれをバカにしたような言い方で返されるのは勘に障る。何か問題でも?」
セラの奴はそう言うと、悪びれる事もせずに、寧ろ逆に尊大に胸を張りやがった。正直言って、流石に殴る行為にはキレかけてた僕だけど、その態度と言葉に唖然とした。
だめだコイツ……元の性格が凶暴過ぎるんじゃないのか? バカにしたような――とか言ったけど、それを先にやられたのは僕だし、言うなれば問題はありまくりだ。
でも、その尊大な態度がさ、セラな訳だよな。なんか僕だけに対してこんな感じだけどさ、ああこいつってこんな奴だったな~とか思うと、なんかどうでも良くなってきた。
てか呆れてきた。ここで疲れてどうするんだよって。セラの奴は、毒ばっかり僕に吐き続けるけど、それなら機嫌を取っとかないとある意味、自分の身が持たない訳だよ。
売り言葉に買い言葉は、僕達の相性上永遠に終わりそうに無いしね。
「問題……だらけだけどもういいよ。悪かった。悪うございました! 折角お迎えに来ていただいたのに済みません。
セラが来るなんて思って無かっただけです。でもまあ、意外だったから、嬉しかったよ」
まあ、最初の言葉がもっと普通だったなら、素直に成れたんだけど……あれじゃあ無理。セラにとって、あの対応が僕に対する普通かも知れないし。
そう考えるとやっぱりムカつくけど、ここはダメだ。僕達は今から、アルテミナスを目指さなきゃいけないんだからな。
無駄に時間を潰してる訳にはいかない。でも二人でって、今から気が重い気もしなくもないな。
「そ……それならそうと早く言いなさいよね!」
そっぽを向いてそう言ったセラは、暑いのか仕切りに手で風を顔に送ってる。確かにリアルの季節を追ってるから、今はこっちでも暑い季節なんだろうけど、そこまでじゃない様な。
地域差って奴なのか、暖かい程度だ。怒ったから興奮してたのかも知れない。わざわざ僕が妥協した言葉にも、不機嫌そうに返したしな。
ほんと、面倒な奴だ。どうにかしてこの心に残ったモヤモヤをぶつけたいよ。
「さ、早くいくわよ。アイリ様達が待ってるからね。てか、そもそも何でアンタはここに戻ってるわけ? あの時消えたのは、HPが尽きたって事だったの?」
「それは……自分でも良く分からないけど、ここに戻されたって事はそうなんじゃねーの? ただ落ちただけなら、あの場所にいれたはずだからな」
そう考えるのが妥当……でも、それなら、僕も良く生きてたなって事になる。まあ完全に次、HPが尽きたら終わりだ……とか分かってる訳でもないし、たまたま大丈夫だっただけかも知れないから何ともいえない訳だけど。
でも……何かあるのかも知れない。目覚めることが出来なくなる何か……もしかしたら、そんな恐ろしい鍵があるのかも。
だって偶然って事にするにはなんだかって気がするんだ。実際僕は、HPが無くなってたかどうかも分からないんだけどさ。ここに居るんならその線が濃厚な訳で、ガイエンやセツリ達との違いがあるかもって思えてしまう。
「ま、生きてたのならそれだけで儲けもんでしょ? うだうだ考えるよりも、馬車馬の如く働きなさいよ。それがスオウの役目でしょ」
「馬車馬って……」
もうちょっと言い方があるだろう。儲けてる気がしなくなるじゃんか。まあ確かに、今ウダウダ考えても結論は出ないだろう。
とにかく今は立ち止まらない事が重要。そう決めた筈だ。この周りを流れ続けるプレイヤーの人達。その人達がどうなるかもう分からないんだ。
ワガママを通す決意はしたけどさ、やっぱり誰も巻き込まれて欲しくなんかない。だから立ち止まってなんか居られない。走りながらでも考える様に成らないとだ。
「ほら早くしなさいよ。今日中には着きたいんだから」
「ん? えっとさ、どうやってアルテミナスまで行く気な訳お前?」
僕の心に一抹の不安がよぎる。だって今日中ってなんだよ。そして案の定、セラの奴は信じれない事をぬかしやがった。
「勿論、走ってに決まってるでしょう。当然じゃない」
「待て待て待て! どんだけ距離あると思ってんだおい! ここからアルテミナスってタゼホよりも遠いじゃん」
タゼホだって言っちゃうとそれなりに遠かったんだ。それでもノウイのミラージュコロイドで短縮したから、あんなもんだったけどさ・・アルテミナスまで走るって、急いでるんだから、転送屋でも捕まえた方が速いだろ。
幸い一杯人居るし。
「ああ、アンタ知らないんだっけ? アルテミナス今転送出来ないから。あの戦いの影響なのか、アルテミナスに転送をすると、全然違う場所へ飛ばされる状態なのよ。
だから走るしか無いってわけ。たく、大丈夫でしょ? HPも全快の筈だし、全力疾走を百回も繰り返せば……」
おい今、なんて言いかけたコイツ?
「ねえ、なんでHPが削れてる訳?」
セラは、僕を見つめて怪訝な顔でそう言った。普通はゲートクリスタルに戻された時点で完全回復するものだから、それは当然の反応だ。
僕もなぜって思ってた所だしね。でもこれもよく分からない。その転送の不具合と同じ種類なら良いんだけど……でも僕には、なんとなく思い当たる事があるんだよな。
「多分だけど、リアルの体のせいかも。まだ傷治りきってないし……逆に影響してるとか……」
確証なんて無いけど、そう思えてしまうから仕方ない。そしてそんな事を聞いたセラは、僅かに心配そうな瞳を僕に向けてくれた様な気がする。
「そっか……まあでも、ゼロに成らない限り死なないでしょどうせ。引っ張ってあげるから行くわよ!」
「うおっ……お前な!?」
「何? 嫌だった?」
僕の手を掴み走り出したセラ。何て奴だ何て奴だ何て奴だ! だけど……
「いや、変に同情されるよりも楽でいいや!」
そう言うこった。しっかりと握られた手。草と大地を踏みしめて、僕達はアルテミナスを目指す。
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