命改変プログラム

ファーストなサイコロ

絶望の光



「さあガイエン、絶望の幕開けよ☆」


 そう呟いたシクラは、その場に残されたアイリへと手をのばす。捕まれた細い首、そして持ち上げられるアイリは顔を歪める。


「がっ……っは……っ!」
「アイリ!! やめろ! それ以上……くっそアギト!」


 アイリの苦しげな声と、ガイエンの怒号。アギトはそんな言葉を受けて、無理矢理にでも態勢を立て直して走り出す。


「やめろぉおおおおおおおおお!!」


 アギトは一刻も早く……その思いの丈を槍に込めて投げ放つ。空気を弾け飛ばせて、新たに成った槍がシクラへとまっすぐに向かう。
 加速して行ってる様な感じの槍は、物の一秒位でシクラの背へと迫った。でもその時、横から割り込んできた白いメイスがアギトの槍を阻んだ。


「「「ヅオオオオオオオオオオオ」」」
「なっ……こいつら!!」


 それはカーテナによってぶっ飛ばされてた悪魔共の叫び。ここに来て、悪魔共が立ち上がって来やがった。


「ふふ☆ 今の瞬間だけは褒めてあげる。もう枷なんて外してあげる。おもいっきり暴れなさい」


 その言葉の後、悪魔共の目が一瞬光った様に見えた。そして地面に埋め込まれてた一体と、外壁まで飛ばされてたニ体が、こちらに向かってくる。
 ヤバすぎる……悪魔を三体も相手にしながらだと、いくら何でもアイリの救出何て出来ない。せめて、ここで立ち上がった一体の間しか……走って来る二体に参戦される前にどうにかしないと。


「走れアギト!! 一体の今の内にきゅうしゅ――」


 地面を蹴ったその時、思わぬ所から炎の攻撃が地面すれすれを飛んできた。僕はとっさに体を前方に飛ばす。何とか避けた物の、その攻撃は不幸にも軍の一部へと着弾した。


「しまった……そう言えばまだ居たか」


 僕は視線を炎が飛んできた方へ向ける。するとそこにも山があるような黒い陰の中で、一際光る赤い光があった。そうだった……悪魔は全部で五体居たんだ。最初にアイリに潰されたのが一体で、続けざまにニ体外壁へ飛ばした。
 その次にアイリが潰したのがコイツ……シクラが意気揚々と乗ってた奴だ。そして残り一体が、ガイエンを捕まえてる奴。


 でもこいつは戦闘には参加しなさそうだから、どうでもいい。だから全五体で、実質ここで参戦するのは四体。どっちにしても厄介過ぎる数だ。
 それにこの場にもう一体が既に居るって事が大問題。一体なら、一人で翻弄する位出来ると踏んでた。その間にアイリの救出をって事だった。


 でもそれがニ体と成ると、数人を割かなきゃいけないのは明白だ。でもそれじゃ、アイリを助けれる確率がまた一つ減ることになる。
 元々、確率は低い。それをこれ以上落とす何て……それこそ無謀だ。


「くっ……アギト、スオウ君! ここは二班に分かれるしかない! アイリ君救出するのと、悪魔を引き受ける側とだ!」


 どうやら、テッケンさんも同じ様な事を考えたらしい。でも、それじゃあ多分無理だよ。無難なことは確かに正攻法かも知れない。
 確率を半々にする事は、生き残る為の上策かも知れない。でもその半々が、元の五十の更に半だとしたらどうだ? それじゃあたったの二十五パーセントだ。


 それじゃあ、どっちに転んでも報われない。だから僕はこれを言う。偏ったやり方でも、出来るかも知れなくて、元の確率から一パーセントの自分が消えるだけでいいのなら、一番確率としては上にあるやり方だ。


「ダメだ! それじゃあアイリを助ける何て出来ない! 僕達全員で行ってこの有様……半分何て積もらない塵、シクラに向かえる山に何て到底成らない」
「じゃあどうする!? アイリを見捨る気かお前!!」


 アギトが僕に掴みがからんばかりの勢いでそう叫ぶ。僕はそんなアギトの声に背を向けて、二体の悪魔へ向き合う。


「そんな訳ねーだろ。行け。コイツ等の相手は僕一人で十分だ!」
「それこそ塵にすら成ってねーよ!!」


 何て失礼な事を言う奴だ。憤慨だな。悪魔が二体程度なら、うざがられる蚊くらいにはなれるわ。だから僕は言ってやる。


「十秒だ」
「あぁ?」
「後のニ体がここに参戦しても何とか、それだけはイクシードで稼いでやる。だから、無駄口叩いてないでさっさと行け!!」


 目の前の悪魔ニ体が、次の攻撃を仕掛けてくる。巨大な二つのメイスが同時に振り下ろされて、実際みんながその攻撃範囲の中に入ってた。


「イクシード!!」


 その言葉を紡いだ瞬間、風の渦がセラ・シルフィングに宿る。そしてそれを使って、アギト達をシクラの方へ強引に吹き飛ばす。


「スオウ! てめぇ!!」
「スオウ君!!」


 吹き荒れる風の向こうから何人もの声が聞こえた。でもそれに応えてる暇はない。直ぐに頭上から二つのメイスが降って来たからだ。
 重苦しい音が辺りに響く。でも僕は潰されて何かいない。風を纏った僕はいつもの三倍は速い!! あの一瞬でも、今の状態なら強引に抜けられる。


 風のうねりに、セラが付いた事で今は雷撃も加わってるんだ。威力増強した攻撃で、メイスの一部を破壊して、飛び出した。


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 腕の動きにあわせて付いてくる、刀身に纏わせた風のうねり。それはとても長いから、この巨大な悪魔だって斬り裂ける筈だ! 


「「グオオオオオオオオオオオオオオ!!」」


 効いてる! そう実感させる断末魔の叫び。でもまだまだ。まずは動きを封じる事が先決だ。この巨体の動きを止めるにはやっぱり、ガイエンがしたのと同じように足だろう。一番ある意味狙いやすいしな。
 僕は両手の剣を、内から外へ振り抜いた。それに呼応して、しなりながら風のうねりが悪魔の足へと向かっていく。


 そして同時に、その悪魔共の片側の足をスパッと斬り裂いた。イクシードだからだろうか、案外脆いかも知れない。
 地面に倒れてくる悪魔ニ体……動きは止まった訳じゃないけど、僕は視線をアギト達へ向ける。するとそこには、何やらシクラとアイリの周りに、数字の羅列が回ってた。
 何だあれ? とも思ったけど、思い当たる物がある。


「あれが……コードか?」


 事ある毎にシクラも柊もその言葉を口にしてた。あいつ等はコードを操る事で、反則的な事を色々と出来るみたい何だよな。
 そしてどういう訳か、今はそのコードにアギト達の攻撃は阻まれてるみたいだ。状況は全然芳しくない。活路を見いだす所か、どんどん窮地に追いやられてる感じだ。


「そんな脅えた顔しなくてもいいのに。ちょっと刺激的にしてあげるだけ。私のために、その体使わせてね☆」


 そう言ってシクラはアイリのコードに何かを施す。アギト達にそれを阻む事は出来なくて……でもその時、アイリ自身が動き出した。


「わた……しは……貴女の……思い……通りには……ならな…………い!!」


 そう呟いたアイリは、握りしめてたカーテナを振るった。でもそれは、どうやらシクラへ向けた物じゃなかったようだ。
 その瞬間に攻撃を受けたのは、悪魔の一体。それもガイエンを捕まえてた悪魔だ。カーテナの凄まじい攻撃に、拘束が解かれるガイエン。


 地面に何とか、無事に落ちたけど、そこに悪魔が手を伸ばす。今のガイエンには武器がない……そこにテッケンさん達が救出に来た。
 だけどガイエンの奴は、その隙に走り出してる。どこかって? そんなの決まってるアイリの方へだ。


「だ……め……お願い……逃げて……」
「ふざけるなアイリ!! 私が……私だけが逃げれるか!!」


 コードの壁にぶつかるガイエン。だけどその黒い腕を必死に、コードの隙間に捻り込んでる。


「うおおおおおおおおおお!!」
「やめろガイエン! 武器も無しでどうするんだ!!」


 ガイエンの行動にアギトがそう言った。確かにガイエンのやり方は無茶だろう。でもガイエンは直ぐに、こう言い返したよ。


「なら貴様のその槍を貸せ!! 何を貫く槍だそれは!!」


 何を貫く……その言葉にアギトは槍を強く握りしめた。アギトだって諦めてたからんな事を言った訳じゃないだろう。
 アイリを助けたくて、ガムシャラにその槍を散々振り回した筈だ。でもそれでもアイリへの道は開けなかった。でも今のガイエンの言葉で、アギトは何かを見つけた様な顔で、ガイエンと二人で槍に手を掛けた。


「ふん、お前に言われなくてもわかってるよ。でしゃばってんなよ。アイリは俺の女だ」
「今はだろう。直ぐに気づくさ。お前のヘタレ具合にな」


 ようやく二人で協力するのかと思いきや。何だか罵りあってないかあの二人。でも……顔は真っ直ぐその物。二人は同じ動作で槍を引き、そして二人同時にこう叫んで、槍を突き放った。


「「言ってろ!!」」


 コードの数字が不鮮明な感じにノイズが生じる。新たなるナイト・オブ・ウォーカーの力……これなら辛うじて抜けれるかも知れない。
 そう思った矢先、僕の後ろで多大な熱が膨張したのに気づく。振り返るとそこには、仲良く地に伏せたニ体の悪魔が協力して炎の玉を作ってた。


 その大きさは単純に倍……なら威力も倍なんだろう。おいおい、洒落に成ってねぇぞこいつら。だけどそれが放たれる事はなかった。
 何故かと言うと、その炎の固まりは、後ろから二本のメイスに突かれたからだ。えっと、どういう事かと言うと、こっちに走ってきてた更にニ体の悪魔……そいつ等が自身のメイスに、その炎を纏わせたんだ。


(最悪な状況だな)


 まさに逃げたく成るような光景だよ。計四体の悪魔が僕の眼前に君臨してるんだからな。その内のメイスに炎を宿したニ体が間髪を入れずに向かってくる。
 僕は一瞬だけ後ろ横目で見つめたよ。そこには今も頑張ってるアギトとガイエンが居るし、テッケンさんやシルクちゃん達も、後一体の悪魔と対峙してるんだ。
 僕は口元を少しつり上げて「ハハッ」と声を漏らした。


(退くわけにはいかないよな)


 そんな思いのこもった笑い。ここから先に行かせる訳にはいかない。せめて十秒と言ったしな。なんとまあ見栄を張ってしまったもんだ。この通り四体揃ってからの十秒って何? 
 僕は今、自分の口走った言葉の重みを実感してる。だけどそれでも、セラ・シルフィングに宿る風は、強く激しく渦巻いてる。


 それぞれの方向から迫る、炎を宿したメイス。熱量まで加わって、届いてないのに既にHPが僅かに削られてる。僕はそんなメイス二つに向かって、それぞれ左右の風の渦を向けた。
 こっちは二本持ってんだ。手数の多さで張り合うしかない。まあそれでも、二本負けてるんだけどな。向こうは四体でメイスは四本。こっちは両の手の二本だけ。


 でも……これがずっと信じ続けてきた僕のスタイルだからな。どんなに不利な状況でも、切り抜けれるとしたら、この二刀流以外に僕にはない。
 二つのメイスと、風のうねりがぶつかり合う。するとその瞬間、一瞬炎が大きくたぎったかの様になって、その勢いが僕自身を襲う。
 セラ・シルフィングの風は別に無くなってない。なのに、僕に掛かるダメージが肥大してる。


「つっ……何だコレ?」


 勢いが増した炎と共に、メイスが迫ってくる。わざわざ風の唸りに沿ってだ。いや、風が勢いを増したメイスに流されてるのかも知れない。


「くっそ!!」


 僕はとっさに風を地面の方に向ける。風のうねりは炎から離れ、波を打つように地面に刺さる。するとその反動か、僕の体の方が空へと浮いた。
 迫って来てたメイス二つの間を抜けて、僕は高く高く舞い上がった。まあメイスとはかなりの至近距離だったから、かなり炎の熱が熱かったんだけど、それでも直撃よりはずっとましだ。
 だってメイスに砕かれた地面からは、土さえも燃えてる様な感じだ。自分があそこにいたら、きっと骨まで残さず燃え散らかされたかも知れない。


 おぞまし過ぎる。だけどそんな最悪を乗り越えて、今僕は夜空へと飛び出した。とっさの行動だったけど、これは思わぬ幸運だ。今、僕の眼前には、無防備な頭を晒した二匹の悪魔の姿がそこにあるのだから。
 こんな絶好の位置からの攻撃なんて早々出来るものじゃない。特にこの悪魔みたいな、巨大モンスターじゃあさ、せいぜい足下を飛び回るのが普段はやっとだ。


 だからこそ逃せないチャンス。僕は無防備なその頭部へめがけて剣を振るう。唸る二つの風が、眼前に聳える巨大な頭を捕らえた……と思った。


「なっ!! ……ちっ」


 思わず舌打ちが出てしまう。忘れてた訳じゃない。数の違いってのはこういう事だ。チャンスを潰す機会も、チャンスを作る機会も、数が多い方がやりやすいって事。
 状況を説明すると、僕の攻撃はさっき足を切った悪魔に止められたんだ。立ち上がってる所をみると、やっぱりこいつら、自己修復機能でも付いてるらしい。


 時間が掛かるらしく、あんまり性能が良いとはいえないかも知れないが、でもそれはやっぱり十分な驚異だ。てか、僕の攻撃を止めたのは足を切った“ニ体”の内の“一体”だった訳だ。
 て事は、同時に斬った筈のもう一体も当然復活してるはず。すると耳にバササ……と言う音が届いた気がした。音の方向は更に上。まさかとは思うけど、僕は顔を更に高い空へと向ける。


 するとそこにはやっぱり居た! 炎を蓄えてる悪魔の奴だ。でも……高過ぎだろあれは。確か少し前に悪魔が飛んだけど、あれは飛んだって言うよりも、浮いたって感じだった筈だぞ。
 なのに、あの悪魔はどうだ? 同じスペックじゃないのか? と疑問を感じざる得ない程の高さだ。あれはもう飛んでるよ、間違いなく。


 て、そんな戦慄を覚えてる間に、悪魔の奴は口元の炎の塊を放出する。ぐんぐん迫る巨大な炎の塊……いや、これはもう壁かも知れない。近づくにつれてそう思う。
 しかしこれは――


(ヤバい!!)


 その感覚がハンパない。僕の中の危険信号が脳を壊す程に鳴り響いてる。空中で、周りには悪魔が三体も居て、さらには頭上からは炎が迫る。
 普通だったら詰んでるぞこの状況。そして今まさに、危険信号が、終了のブザーに変わろうとしてる。眼前に落ちてくる炎の塊は回避不可……それを告げてた。


 だけどその時だ。落ちてくる炎の側面から何かが飛び出してきた。そしてその何かは光る羽を羽ばたかせて、僕の服を嘴で摘んで救出してくれる。


「おわ!? なん……だっ……おい!」


 しどろもどろになる言葉。いや、あんまりにも突然だったから、状況が理解できない。すると聴き馴れた声が、僕の頭の端から端を通り抜ける。


「何だ……何て……そんなの、私にも分からない……」


 その声は、たった数時間前に別れた筈の声なのに、妙に懐かしく耳に沁みて来る。その姿は、僕の位置からはほとんど見えないけど、それだけで誰かは分かる。
 それにこの鳥も、僕は知ってるはずだ。間近で見て確信したよ。どうりであの時、シクラを助けたあの時、感じた筈だ。


 分からないことの悲しさと、申し訳なさをさ。光る鳥は一気に上昇して、更に上を目指す。だけど不思議と、風圧とかで苦しくなったり痛くなったりしないんだ。
 どこまでも心地よい風のそよぎと、暖かな温もりが常に自分の周りにある感じ。嘴で摘まれてるだけの僕がそう感じるのだから、背に乗ってるアイツは多分世界最高峰のファーストクラスの座席に座ってるも同じだろう。


 まあそれでも、僕もリムジン気分には成ってるよ多分。乗ったこと無いけど。
 そんな考えを一人でしてると、不意に上昇が止まった。そしてゆっくりと、今度は旋回しながら落ちていく。その速度は本当にゆっくりで、まるで羽毛がただただ下に流されていく様な感じだと思う。


 多分、リアルとは違う星空がとても近い。月がないからか、星々の煌めきが一際強い印象を受ける。
 阻む物の無い空の上。そこは宇宙みたいだった。限りなく広がる星の海だ。そんな星の海を、今僕は笹の船に乗って、織り姫と川下りをしてるのかも知れない。
 そんなアホな事を思わず連想してしまう様な、一瞬にして思考が切り替わる光景だった。




 だけどそんなトリップ状態は直ぐに回復せざる得なかった。何故なら、地上から強烈な青紫色した如何にもまがまがしいってな感じの光が天を突いて来たからだ。


「何だ!?」


 そう呟いた僕だけど、この光からはコレまでとは全く違う悪寒が、体の内面から沸き立たせられるような感じがしてた。ようはとてつもなくイヤな感じって奴がビシビシと伝わってきてたんだ。
 下を見ると、そこでは僕達を追おうとしてる悪魔が必死にピョンピョン跳ねてた。なんとアイツ等、ジャンプ力凄いんだ。これで飛んでたと思った真相が分かった。


 その位置まではジャンプできるみたいなんだ。そして滞空するために羽を動かしてた訳だ。だから飛んでた様に見えたけど、実はただのジャンプだったってオチ……ってそこじゃねーよ!!
 僕は更に視線を移して、光の出所に視線を凝らす。青紫の光が伸びる周りにはアギト達の姿が見える。じゃあこれはシクラ? アイツならやりかねない。
 でも耳を澄ますと聞こえてくる声がある。それは必死に叫ぶアギトの声だろう。


「ガイ……エン! おい!!」


 ガイエン? これはガイエンなのか? 光の中心はよく見えないから確認しようがない。でも僕はあることに気付いた。アギトの奴……誰かを抱えてる? それにその足下には黒い物が溜まってる。
 青紫の光で照らされてるから気付けた事……そしてそれが何なのか……僕は知りたくないと、頭で思った。その時、この鳥の背に居るアイツがポツリと言葉を発する。


「もう、終わったのよ。スオウも気付いてるでしょ、この光の意味を。この国は終わるわ。だからお願い……今ここでログアウトを押して」


 ただゆっくりと落ちていく空の上で、そんな言葉が静かに溶けていく。何で……どうして……僕には分からない事が多過ぎる。


「何で……お前がそんな事を言うんだよ。捨てたんだろ。選んだんだろシクラ達を!! それでも追いかけて来る僕は迷惑な奴だろ!?
 なのに何で……お前が僕にログアウトを促すんだ? どうでもいい存在じゃないのかよ。寧ろ、今殺すべきで、あの時助けるべきじゃ無かったはずだ。違うか?」


 僕は見えないそいつに向かってそう言った。色々とさ、責めてやりたい事があったんだ。鳥の上のそいつはがどうしてるのか僕に知る由も無いけど、何となく震えてる気がした。きっと下唇を噛みしめたりしてる。


「言ったじゃん……分からないって!! 何で何て言わない出よ! 私は……私は確かにスオウから離れたけど……だからて死んで良いなんて……思えない!! から。
 短い間だったけど楽しかったもん。そんなスオウを殺すまでなんて……だから促すの! 例えもうあえなくなっても、今ログアウトしないとスオウはだめ!
 そうしないと、本当に死ぬよ。私には分かる。分かるの」


 震える声でそう紡ぐ見えないアイツ。その言葉は敵を騙そうとかしてる声じゃない。まあ騙すにしてにもやり方がおかしいけどさ。


 でも……死か。直で言われると結構きついよそれ。だけど困ったことに、僕の中では返す言葉は決まってる。そこは揺るがない、絶対の物。
 LROを初めてその日に出会った彼女をさ、どうにかしてやりたい……そう思ってるから、逃げる訳にはいかないんだ。


「なら僕は、自分で証明してやるよ。お前が恐れてるいろんな物、僕が薙ぎ倒す事が出来るってさ。その選択を否定するためにな。
 ログアウトはしない。この国も潰させない。それが僕の今の選択だ!!」
 

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