命改変プログラム

ファーストなサイコロ

夜空の上で



「ぬああああああああああああああああ!!」


 流れる光の中、僕はそんな叫びを上げていた。あらがえない力、それが僕達をどこかへ誘ってる。何なんだこれ?
 確かに「セツリを追いかける」そう誓ったから、別段困る訳でもないけど、こういう絶対的な物は肌に合わないんだ。


 それにやっぱり叫んでるのは僕だけじゃない。周りを見ると、リウレットやその他諸々も、結構同じ様に叫んでる。
 訳がわからないのは誰もが同じということだ。状況を説明すると、『楽園』に居た僕達は、そこにあった巨大な扉に吸い込まれた訳だ。


 もの凄い勢いだったからさ、掃除機に吸い込まれていくゴミの気持ちが少しわかったよ。つまりはここはあの扉の内側な訳なんだ。
 そして僕達は今も、その力に寄ってこうやって、変な空間を流れてる訳だ。何なんだろう……見た感じは違うが、ドラ○もんに出てくるタイムマシンの空間にちょい似てる。


 僕達は時間を遡ってる訳じゃないだろうから、時計が歪んだりしてないけど、周りには無数の光の粒……金平糖の様な物が散らばってるんだ。
 どこに誘ってるのかは分からないが……ここは多分、セツリも通ったんだろう。なら今、あらがえない力で引っ張られてる先には……もしかしたらアイツがいるのかも知れない。


 その可能性は絶対に0じゃないだろう。同じ扉の中に消えていったんだから。大絶叫と共に、そんな期待も僅かに胸の中にあった。
 すると遠くの空間に光の線が入るのが見えた。それは何だか見覚えがある感じだ。丁度、僕達を吸い込んだあの扉が開く時にも、隙間から同じ様な光がこぼれてた気がする。
 もしかしたら、あそこが終着点? そんな僕の読みはどうやら当たってた。どんどんと僕達はその光の線が入った場所に近づいていってる。


 まるでそう、吸い出される様にだ。次第に線だった光が面に成っていってる。それもやはり、楽園で見た扉が徐々に開いていく時の感じに似てた。
 扉と扉同士が繋がってる……そんなイメージの移動方法なのかも。ならあの光はどこかで扉が開いてるんだろうな。それはLROのどこかなのか……それとも、柊達の様な裏側か……不安は尽きないな。


 みんなもきっとそうなんだろう。柊に戦う気は無いみただが、だからってこれで終わり……な、訳ない。この出来事は、まだ畳むには早いんだ。
 僕は光の面に吸い込まれる直前まで、そいつの背中を見据えてた。一番前で、馴れた様にこの海を泳いでた柊、その華奢な背中を。


 するとまあ、得意の何かを含んだような笑みを返された。光の面に、先に消えていく直前でさ。それが何を意味してるのか……確かめる間もなく、僕達も光の面へと入ってく。


「うあっ……」


 目を閉じた筈なのに、強烈な光が瞼を通ってまで眼球を襲う。そして不意に暗さが戻った時、僕はその異常に気づいた。
 それは――


(受ける風が違う?)


 ――って事だ。今までは前方からかき分ける様に風を受けてた。だけど今僕は、なぜか下からその風を猛烈に感じてる。
 パッ――(瞳を開く)


「うおいおおおおおおおおおおお落ちてえええるううう!!??」


 まさしくその叫びの通りに僕は落ちてた。地面に向かって真っ逆様。これは冗談に成らない高さだ。


「ああああの野郎! 今直ぐに殺そうとしてんじゃねーか!!」


 完璧に騙された。今の私じゃ無理的な事を言ってた癖に、やること残虐過ぎだろあの女! ――って、そう言えば柊は? 
 アイツは僕達よりも先にここに出た筈だ。後ろから次々に聞こえてくる絶叫は取りあえず置いといて柊を探す。
するといた。


 柊はどうやら、ミニチュア版みたいな氷の羽を生やして優雅に降りて行ってる。なんて便利な物を持ってるんだ。どう手を伸ばしてもアイツには届きそうもない。
 手を下さずに僕を殺す気……な訳ないよな。寧ろアイツはこの程度で僕が死ぬわけ無いと思ってるんじゃ無いだろうか。


 アイツがプライド高いのは先の戦いで分かってるし、嘘とか付くような奴でもない。シクラとはタイプが違うからな。
 気にも止めずに降りていくのは、多分変な自信の現れだ。


「まったく……迷惑以外の何でもないな」


 誰も彼もが、自分達みたいな裏技を持ってると思うなよ。だけど言っても届きはしないだろう。
 柊はもう、点の様に小さくなってる。地面も目の前だろう。
 空に開いた巨大な扉。その光が僕達を照らしてて、暗い夜の地面は良く見えない。でも遙か下方には町並みがあるのはわかる。


 LROの町は真っ暗にはならないからな。まあまだまともな、LROの部分にいるのか怪しいところだけど。でも見覚えのある形……の様な気がし無くもない。
 だけどそれもよりも問題なのは……


(なんだ? あの地面に沢山広がってる赤い光は?)


 なんだか不気味に見えるその光は、消えたり現れたりしてる。あそこにいるのは生き物なのだろうか? 嫌な空気が漂ってる気がした。
 そして僕が地面に目を向けてると、一際背後で光が増した。


「うん?」


 何が起きたのか確かめようと、この猛烈な風に流す様に体を回す。そして態勢を入れ替えた時、不意に僕の体に影が落ちたーーと思ったら、何かが降ってきやがった。


「ぐあ! てーな、何だこれ! どきやがれ!!」
「ああああああああああああ!! 死ぬ死ぬ!! あの野郎何しやがった!!」


 耳元に届いたお互いの声に、ほんの刹那の間僕達は考えた。そして簡単に出来てきた答えがこれだ!


「お前アギトか!? 重いんだよこのデカ物!!」
「てめえスオウか!? 何で俺たちが一緒に夜空をダイブしてるのか説明しろ!!」


 知るか……と言いたいが、答えはきっと視線の先の空にある。そこにはもう一つの扉が現れてた。てかこいつ、自分がどこから放り出されたか、それすらも分かってないのかよ。


「ああ~もう! 絡まってくんなよ暑苦しい! どうやらお前達も僕達と同じようにあの扉から吐き出された口だろ。
 向こうで扉に吸い込まれたんじゃないのかよ? そこら辺、覚えて無いのか?」
「扉……そうだ……あの時……」


 青ざめるアギトの顔。いきなり空の上だったショックで飛んでた何かが戻ってきた様な感じ。吸い込まれる事さえも気に出来ない程の事でもあったのだろうか? 
 そしてポツリと……


「ガイエン……」


 と呟いた。その瞬間、見開いた瞳で僕の体を土台にでもするかの様にして、体を起こし周りを見始めるアギト。そして狂った様にブツブツと何か言ってる。


「アイツは……あのクソ野郎はどこだ? よくも……よくもよくもよくもよくも……ガイエンを! 大っ嫌いだけどなあんな奴……それでも……やっとだったんだ……やっと!! っつ……」


 それ以上は言葉に成らないのか、聞こえてこない。だけど扉の光に、何かが照らされ見えたのは確かだった。水滴の様な何か……ただの夜空だったら、きっと絶対に見つけれなかったであろうその滴。
 それが事の重大さを語ってる気がした。こいつがここまで取り乱すんだ……尋常じゃない。しょうがないから文句は言わずに、僕も周りに視線を巡らせる。


 どうやら、アギト達も合流しただけあってそれなりのプレイヤーが、パラシュート無しのスカイダイビングに興じてる様だ。
 至る所から叫び声が聞こえる。あの扉の光が届く範囲ならまだ顔が分かるけど、次第に光が萎んできてた。全員が出終わったから、扉が閉まり始めたのかもしれない。


 これじゃあ、探すたってな……てかそういう状況じゃきっとない……いいや絶対ない。確かガイエンってあのいけ好かない奴だ。
 僕は殆ど知らないけど、印象的にそんな奴。てか確か、アギトはそのガイエンと決着をつけてたはずじゃ無いのか? 色々と分からない。アギトの様子からして、相当切迫してるのは伝わるけどね。


 けれど実際、それは僕達もそうなんだ。刻々と地面は迫ってきてる。このままじゃ、例え見つけても何か出来る前に終わってもおかしくない。
 それは最悪だ。助ける助けないの以前の問題。目的があるなら、死ぬわけにはいかない……それが大前提。だけど今のアギトはどうやらそれも見えてない。


 最初はただ空に放り出されてパニクって、その後思い出した怒りで周りを忘れてる。そしてこういう時に限って、あの女は嫌味ったらしく現れるんだ。探す必要何か無く、面白そうな方向へ向かう様に、常に周りをかき乱す女……それがシクラ。


「あれ~何だか人数多いと思ったら、スオウ君じゃん☆ 君の役目はあそこで終わる筈だったのに、こんな所で何してるの?」


 何してるときたよコイツ。すっげームカつく。誰のせいでこんな大変な思いしてると思ってるわけ? それは確実に目の前のコイツと、妹の柊のせいだろうが! ――とまあ言いたい。
 だけどここで僕まで取り乱すともうゴチャゴチャだ。どうにも出来ずに地面に埋まりそうだから我慢するしかない。


 てかコイツ、今どこから現れた? 周り見たって、落ちてくる輩しか居なかったのに、一瞬でこんな近くに……掴めない笑顔でヘラヘラと。


「僕はまだ、終わるわけにはいかない!」


 取り合えず伝えた事は伝えておく。すると一瞬、アホの様な笑顔の中に、妖しい光が見えた気がした。コイツのこのアホさは演技だろうと思ってるから驚きはしないけど、あの一瞬でもシクラからは妙な冷たさを感じた。


 変な不安を心の隅に植え付ける様な……そんな感じの僅かな物。だけどその一瞬の変わりようが怖いんだ。
 そして落ちて行く中で僕は気付いた。シクラが無造作にぶら下げてる荷物にだ。それはどこかで見た鎧……でも髪の色も肌も何か違う。


 だけど上にのし掛かってるアギトの表情を見れば一目瞭然だ。全身をワナワナと震わせて、形相をして歯を食いしばってるそれは、怒りを抑えてると言うよりもため込んでる……そんな感じだ。
 間違いない。こいつがガイエンだろう。そして更に、僕はあることに気付く。


(あれは……血?)


 そんなまさか……そう思ったけど、奴の胸から広がってる黒い染みは、そうとしか思えなかった。でも……そうだとしたら今のガイエンはヤバいだろう。
 どこまでシンクロ率が上がってるのかは分からないけど、あれだけ血を流して大丈夫な訳がない。どういう理屈で、リアルとLROの死を直結させてるのかは良く分からないけど、だけどそれを感じた事が僕にはある。


 だからあのHPであの傷はヤバいよ。ヤバ過ぎだ。ある程度HPがある状態なら、多少無茶やってもいきなり死ぬなんてあり得ないだろうけど……今まで感じてきた経験から言うと、HPが減るごとにリアルが近づく……そんな感覚があるんだ。
 だからあれは……


「あははは☆ やっぱりスオウ君はどこかひと味違っちゃうね☆ 私もちょっと惹かれるな~。ヒイちゃんみたいに味見してみようかな~☆
 コイツと違って役目を終えないスオウ君に、私がご褒美でもいいかもね~☆」


 こっちの深刻差なんて欠片も気にしてない風のシクラ。実際コイツはガイエンの事なんて気になんてしてないんだろう。それに役目って……意味深なその言葉が僕は気になる。
 つまりはシクラがガイエンをこうしてる事は、その役目ってのに関係があるからだろうから。それに僕の役目って何だ? だけどそれ以上の言葉を許さない奴がここにいた。


「ガイエンをっ……ガイエンを!! 放しやがれ!!」


 そう叫んだアギトは炎を纏わせた槍を勢い良く横に凪いだ。それだけの距離にシクラはいた。だけどシクラは空中で自在に動ける様で、ヒラリと回って距離を取る。
 そしてこっちは、アギトがおもいっきり槍を振るものだから態勢がグチャグチャだ。ただでさえ足場なんて無いのに、上下が入れ替わり立ち替わりで世界が回ってる。


「うあああああああ、このバカ野郎!」
「しっかり支えてろ、今度こそアイツに俺の槍を届かせる!! 届かせる!!」


 こんな状態でなおもアギトは血走った目でシクラを見据えてた。よっぽど……なんだな。僕はそう思った。


「ああ~もう、いきなり攻撃するなんて酷くない? もうビックリ、超ビックリしちゃったよ☆ まあそんな炎、掠りもしないし掠ったところで私には効きもしないけどね☆
 分を弁えなさいよ。君もちょ~~~とは面白かったけど、やっぱり君の親友の方が遊べそうよね☆ それとね、コイツは元からこうする気だったから怒らないでよ☆」
「――っつ!! きっさまあ!!」


 激高するアギト。だけどそれは当然だ。シクラのあの言い方で怒らない訳ない。いや、あれはワザとだろう。何か妙に感に障る言い方をしてたもん。
 それは余裕の現れで、楽しみでも見つけようとかしてる感じなのかも知れない。シクラとしてはさ。だけどそれは人として・・やっぱりムカッとくるよ。


 アギトの気持ちだって分かる。ガイエンを誰か僕がもっと親しい人物に入れ替えれば、きっと同じ様に僕も成るだろう。
 でもここじゃあ余りにも不利すぎる。空中と言うフィールドは僕達には無いんだ。だけどそれでもアギトは諦めない。


 離れたシクラの方へ槍を構えて、炎が更にいきり立つ。何やろうとしてるのかは分からないけど、それ逆転出来るとは僕にはどうしても思えない。
 だからアギトが何かをする前に、僕は炎がたぎる槍を掴み叫ぶ。


「やめろアギト!!」
「邪魔すんなスオウ!! アイツをあのままにしておけるか!! こんな事に成るために頑張ったんじゃ無いんだよ!! 俺は……俺は!!」


 アギトの思いに呼応するように、炎が僕の腕を焼こうとしてる。幾ら仲間でHPが減らないと言っても、深くLROと繋がってる僕はそれはもう痛い。
 マジ半端無い位に。だけど行かせる訳にはいかない。だってあんなの挑発だろ。シクラが反撃しようと思えば、この場で僕達全員を倒す事だって出来そうだ。


 大袈裟なんかじゃなくて、柊という同じ存在の力を目の当たりにした僕だからわかる。その位の力を持ってる奴らなんだ。
 こんな不利な状況で行かせたらどうなるか……少なくとも最高の想像は出来ない。だからどんなに痛くて熱くても、離す事は出来ないな。


「……っつ! 状況をよく見ろ。こんな空の上で、アイツと並べれるとでも思ってるのか? 言っとくけどな……アイツ等は反則のオンパレードだぞ!
 軽い気持ちで行ったら、お前もガイエンの二の舞だ!! そんな事にだけはしたくない! 助けたいんだろ? ならまずは落ち着けよ。チャンスはある。アイツ等がここに僕達を連れてきたんだ。
 用があるんだろ? ならケリは地上でつけようぜ」


 僕は視線を下に送る。そこには沢山のプレイヤーと、大量のモンスターが見えた。それだけ地上に近づいてるって事だろう……ってか、ある意味見たくない光景が広がってた気がするな。
 だけどそんな思いは顔に出さずにアギトを見る。でもアギトはずっとシクラの方を向いたままだったようだ。


(この野郎!!)


 と言いたい。人が折角良い案を示してやってるのに見もしないとはどういう了見だ。てかそろそろマジで手がヤバい。消し炭に成りそうだ。感覚が無くなってきたぞ。
 取り合えずこの炎を引っ込めようぜ。うんそれがきっと良い。


「俺は……」


 ポツリとそんな声が耳に届く。目まぐるしく位置が変わるから、今は顔が見えない。だけどその声は、少しだけ平静を取り戻してる様にも聞こえた。
 これはいけるかも知れない……そう思った。


「俺は、何だよ?」


 言葉を促す僕。実際そろそろ、どうやって地上に降りるか真剣に考えないと危ない。だから少しは落ち着いたの確認した――――――――――


「俺は! 飛ぶ!!」
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 何言ってるのアギトの奴? てかいきなり炎たぎり過ぎ。手だけじゃなく、肩口まで消し炭に成るよこれ! どうやらアギトは、この炎を推進力にでもする気の様だ。
 確かにこれだけの勢いならどうにか前には進めそうだが、先にも言ったとおりそんな次元の相手じゃない。アイツはアホに見えるけど、この戦いを仕組んだ張本人なんだ。


 きっと想像以上に腹黒い。だけど今のアギトはそんな事どうでもいいんだろう。友達がピンチなんだ……駆けつける理由なんて、それだけで十分な筈だ。
 そんなの分かってる……分かってるけど……


「――って、超あっちーよ!! 熱すぎだろ!! つうか痛い痛い!! 何か肉の焼ける臭いがするわ!! お前は親友を丸焼けにする気か!?」
「なら離せよスオウ!! 俺が助けなくちゃダメなんだ!! アイツは俺が!!」


 それはつまり僕はセツリを助けないといけない事と同義なのか? てか、コイツ僕が絶対に手を離すと思ってるよな。
 そういうことか……コイツを止める良い方法が思いついた。僕は更にもう一方の腕も炎の中に突っ込んでやる。


「ぬあああああああああっちイイイイイイ!!」


 ジュウジュウと肉を焼いたときの音が脳に嫌に響いて来やがる。不味いな、これからは焼き肉とか食べれそうに無い。同情しちまうよ。豚さんや牛さんや鳥さんにさ。
 これは辛い……だけど、行かせる訳には行かないんだ! 本当に助ける為に、ここでアギトが飛び出しちゃダメなんだ!!


「お前! バカか!? 何やってる!?」
「何って……見たらわかんだろ? お前に燃やされてやってんだよ……へへ」


 痛すぎで自分でもおかしく成ってる……そう思った。だけどこれしか無いだろ。今のアギトを止めるには。目を見開くアギトは、炎が次第に浸食してる僕を見てどう思ってるんだろう。
 別にどっちかを選ばせたい訳じゃない。そんなキモい事は望んでもいないし……でも、今のままじゃダメだと分かる。そんな甘い相手じゃないんだから。


 僕は炎に包まれるも、強くしっかりと槍を掴み言い放つ。もの凄くヤバそうな汗が滝の様に出てるけど気にはしない。
 それは僕にとっても見据えた先のコイツは親友だからだ。


「僕は放さない……絶対だ。親友を燃やし尽くす気があるのなら、やってみろよアギト!!」


 僕の言葉を受けて、アギトは狼狽えた。仰け反る様に少しだけ成った。そして視線が僕とその向こうに居るであろうシクラとを行き来してる。


「……っつ!!」


 そんな声に成らない声が漏れた瞬間・・たぎっていた炎が消えていった。いろんな感情を押さえ込んで、ようやく止まってくれた様だ。


「お前……バカか。自分がどういう状況かわかってるだろ。それなのに……」
「はっ、別にアギトが気に病む事じゃない。僕が勝手に燃えただけだ」
「はは、そーかよ。なら……もう二度とやるな」


 そうアギトは一度も顔をまともに見せない。人の勇士をもっとちゃんと見て欲しい物だ。たく……すると後ろから気に障る笑い声が聞こえてきた。


「あははははは☆ やっぱりスオウ君は最ッ高だね☆ ほんと予測もつかないよ。やっぱり君と遊ぶのは楽しい☆ そうだね~下でまた会えるよ☆
 決着……かはわからないけど、もっときっと面白い事待ってるから☆ それにあの子もいる。ご褒美に会わせてあげるよ☆」


 あの子? それはつまりセツリ! アイツもここに? それは益々死ぬわけにはいかない。


「ぜってーだぞ!!」
「約束ね☆」


 ムカつく事にその笑顔は分かってても魅力的だ。遠ざかるシクラ。そして近づく地上。さあもう一踏ん張り行ってみよう。大丈夫、僕等は一人じゃない。
 どんな状況だって、仲間達と乗り切れない事なんて無いんだ。月のない夜の下、闇の覆う世界を許さない為の戦いが、僕達のこの国での最終決戦だ。

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