命改変プログラム

ファーストなサイコロ

新世界の扉



「ようこそ、『ダイクラ』へ」
「ダイクラ?」


 何かの暗号か? と言うか、何で自分はこんな所に連れて来られたかわからない。堂々と宣言した彼女は先にその部屋に入って、何だかしきりに目で何かを訴えてる。
 後ろに居る奴はパソコンの画面から目も離さないし……結構大きな声だったし、聞こえてない筈は無いんだけどな。てか、あの後ろ姿は見覚えが……沢山のハテナが頭に浮かんでる中、私は取り合えず彼女がしきりに合図してる上を見てみた。


 何があるのやらと思ったら、そこには名称のついた札が無造作に貼られてる。意味不明な名称が堂々と書かれたその札は、よく見ると下にカッコで正式名称らしき物が見える。
 何々……


「ダイクラ……ダイバークランジェント・リーデヴァイブシステム研究会?」


 ついつい口に出して呼んでみたら、その瞬間彼女がハイテンションで私の顔面を数センチの距離で指さした。


「はい! これでダイクラがわかったでしょ? じゃあほら、君もこっち側へヘイカモ~ン!!」
「…………」


 付いていけないノリだった。と言うか、私的には何一つわかってない。でもこれだけは何となくわかった気がする。
 この部室と思われる部屋の中へ行くか行かないか・・それで今後の高校生活が決まりそうだと。下手に動けない……だけど取りあえずは気になった女の子が、誘ってくれてるんだから悪い気はしない。


 同じクラブ活動が出来るのなら。甘酸っぱい出来事がこれから起こっていくのかも知れない……そんな夢を見れる。
 だけど問題はその場所だ……デンクラってやっぱり何もわからない。せめて有意義な場所で有意義な経験が出来るクラブを希望したい。


 今後の為にも……私は大学まで見据えてるんだ。今の自分の順位では満足出来ないし、訳の分からない事をやりたくはない。
 私は必ず、自分自身で掴めると証明するんだ。持たない自分でも、望む物を掴めるって事を。だけど青春って奴に期待する年頃でもあるから離れがたい。
 だから取りあえず聞いてみた。


「えっとさ、全然わかんない。君が何をしたいのか」
「だから~責任よ、責任! つべこべ言わずにダイクラの一員に成りなさい! 言うとおりしないと、学校中に有りもしない噂を広めて、そうね~明日からの君のあだ名を『物見遊山』にしてあげるるわ。
 三年間を意味不明なあだ名で過ごす恐怖はないわ。高校デビューが間違った方へ転んだ哀れな奴にみたいに成っちゃうのよ。
 しまいには誰からも名前を記憶してもらえず。モノミーモノミーと呼ばれ、あだ名を略したあだ名を作られて学校の七不思議へと成っていく……それでもいいの?」


 目をキラキラ輝かせて彼女は随分自信満々に脅したつもりのようだけど……やっぱ全然わかんねーよ! やばい、この子の感性は自分が出会ったことの無いタイプだ。
 まあ要約すると、「君は責任とってダイクラに入る。でないと口も聞いてあげないぞ! 名前も覚えてやらないぞ!」みたいな感じだろう。


 まあそんな可愛らしい事ですみそうに無いけど、自分の脳内ではそう変換しておいた。デンクラね……実際色々気にはなる。
 後ろの奴とか、この部屋にある機材とか……それに彼女も。責任って言われても、こっちに非が有る訳でも無いんだけど、ここまで来たのは彼女との何かを期待してた……ってのもある。


「はあ~、それでも良いかって言われてもさ。別に私は誰かと打ち解ける奴じゃないし、勝手にそうなりそうだからどうでもいいけど……」


 本当に自分でも冷めた奴に成ったなと言ってて感じる。だけどきっとそうだ。今はそれこそ物見遊山で、積極的な奴は話しかけて来たりするけど、それも一週間もすれば終わって孤立するだろう。
 そんな物なんだ。だけど気にしたことなんかない。大きな物を手にするには、今はそれが必要とも思えないから。でもそんな事を口にした私に、彼女はそんなの関係無い感じに言った。


「あらら、じゃあ私がモノミーの友達候補に上がろうじゃないか。ほらほら!」
「モノミー言うなよ……てか何? その突き立てた人差し指は」


 彼女は本当にコロコロと表情が良く変わる。今は屈託無く笑ってるけど、あの脅しの時は意味不明な言葉でも計算高い女を出してた。
 何だかつかみ所が無い様な感じだ。てか初対面の私にモノミー言うか? もしかしたら友達って部分を意識して屈託無い感じを誘ったのかも知れないが、やっぱりモノミーはやめてほしい。


 それに友達候補って何? 友達に成ろうと言ってくれないのが微妙に残念というか……すると彼女は僕の言葉に、今度は真っ直ぐにこちらを見つめて柔らかく微笑んでこう言った。


「この指止まれ! 知らない? 『おっとも達に成りたい人、この指と~まれ♪♪』」


 そんな歌と共に私の瞳を見つめる彼女。ジーと見つめる彼女。絶対に何かを訴えてる。選択権……なのかなこれは。友達候補には挙がるけど、友達に成るかを決めるのは君だよ……そう言われてる様な気がした。


 星屑を散りばめた様な、深く黒い瞳。それに誘われる様に私の腕は動いた。そして彼女の細い指を包み込む。


「と~まった……」


 ハッとした所で、何かもの凄い恥ずかしい事をした気がする。高校生にもなって何やってるんだ。私は腕を放そうと思い、拳を開ーーこうとしたら彼女の瞳が野生の獣の様に光りその腕に待ったをかけた。
 しまった……そう思ったときには時既に遅い。


「つ~かまえ~た。私の友達=ここへ入部。選択したのはモノミー。嘘、偽り、裏切りは極刑よ。だって友達だものね!」
「――っつ!!」


 その笑顔は、後ろに般若が見えました。人生で初めて、女は怖い……そう認識した瞬間だった。




 禁断のダイクラ部室……そこはPCとそれに繋がるコード、そしてその関連の機材で天井まで埋め尽くされてる様な場所だった。
 中央に簡素な机。その奥にずっとタイピングしてる奴がいた。そして私はその簡素な机で入部届けを書いたんだ。


「で、ここって何やるんだよ?」


 尤もな疑問をぶつける私。何せダイクラだ。正式名称でも訳わからん。すると入部届けを受け取った彼女は、いきなりとんでも無いことを言った。


「う~ん別に。何もないかも」
「はあ?」


 何も無い? あれだけ強引に誘っておいて、やることがない!? ふざけるなだろ? あの時間は無駄意外の何物でもないじゃないか!


「おい、今直ぐその紙破り捨てろ」


 当然そうなる私。入部は取り消しだ。有意義の有も無さそうな事なんかやってられない。やることが無いだけに。だけど彼女はそんな私の言葉に首を振る。


「やー! そんなの認めません! モノミー友達でしょ? 裏切るの早すぎだよ!」
「モノミー言うな! それと私は裏切ってない! どっちかって言うとそっちだろ!」


 私は入部届けを奪い返そうと腕を伸ばす。だけど彼女はヒラリと交わす。すると得意気な笑みが見えた。腹立たしい事この上ないな。
 私は躍起に成って彼女を追い回す。それがしばらく続いてると、不意に言葉が聞こえた。


「出来た……」


 それはずっとPCに向かってる奴から漏れた言葉。すると突然彼女は止まって奴の方へ。


「ホント当夜? 完成?」
「完成じゃない。形が取り合えず出来ただけ。それでも体感位は出来ると思う……やる?」


 すると彼女はコクコクと素早く首を動かす。そして何かを奴はもって、二人して隣の部屋へ。気付かなかったけど、中から繋がる扉が有った。
 てか、二人とも私を置いてってる。しょうがないから、黙って付いてくと、隣の部屋にはベットがあってまた違う感じの機材が揃ってる。


 なんて言うか、病院みたいな。そしてそのベットに横たわる彼女。女の子が目の前でベットに居るってだけで結構ドキドキだ。
 と言うか、何の為にベットが? 思春期の男子高校生の想像が膨らみそうだ。私は必死に押さえつけるがな。私が自分自身と戦ってる間に、彼女は頭にトゲトゲが一杯付いたヘルメットみたいなのを被って横たわる。


 後、腕や足にも、何やらそのヘルメットから伸ばしてつけてる。そしてその本体からは複数のコードがコンピューターへと流れてる様に見える。
 後は何か脳波を計る様な機械も一緒に動いてた。そして奴は言う。


「行くぞ。ダイブ・オン」


 するとヘルメットが幾重にも光りだした。そして彼女は眠ったように動かない。気まずい時間が数分流れる。だけど奴は一度もこちらを見ることは無かった。
 ただPCと機材に集中してる。そしてヘルメットの輝きが失われると、いきなり彼女は目を覚ました。その体は心なしか震えてる?
 それに眠ってた人が起きる感じじゃ無かった。


「当夜! やっぱり天才!!」


 そう言った彼女はいきなり力強く奴に抱きつく。迷惑がってる様だけど、こっちは開いた口が塞がらない状況だ。どういう訳かまずわからないしな。
 すると勢い込んで奴に抱きついてる彼女と目があった。すると彼女は頬を染めて口を開く。言葉に出さなかったが、私にはわかった。
 絶対に「あっ!」って言った。今思い出した感じだ。


「そうだ当夜! もっとサンプル欲しいって言ってたよね。新しいダイクラ部員増やしたんだよ」


 そう言って彼女はこちら側へ。するとようやく、奴は私を眼中に入れた。なんだか自然と険しい目つきになってしまう。お互いに。
 てか今までで一番まともな理由言われた気がする。はっきり言うと「気に入らない」そう思い始めてる自分が居る。


「えっとね、彼の事は知ってるよね? 桜矢当夜、入学式で新入生代表をした人で、ここの存在意義」
「存在意義?」


 また大きな事を言われた。存在意義ってどういう事だよ。そこは「部長」とかが来る場面じゃ無いのか?


「う~ん、まあそれはおいおいね。取りあえず、自己紹介が最初。当夜、彼が新入部員の――」
「――モノミーだろ?」


 ガクッと膝が折れる私。何だその薄ら笑いは!


「誰がモノミーだ!! アンタ散々無視してた癖に全部聞いてたのかよ! それで今このタイミングで何だそれ! 狙ってただろ! 
 天才がおかしな事に気を回してるな!!」
「いや、あれだけ騒がしくしてるのを聞くなと言うのが無理なんだがな」


 うわ、この天才正論を吐きやがった。確かに思い返すと騒がしくしてたが、そうなるだろ!


「そんなのどうでもいいんだ! 問題は今までの完全無視だろ! かなり前から私の存在には気付いてたんだろ? それなのに空気の様に……そしてあの悪態だ!」
「ごめんモノミー、私が悪いの。当夜、天才だけど人格に問題有るから……ほら、天才って大抵どっかおかしいでしょ? だから許してあげて」


 彼女は奴の変わりに真面目に頭を下げる。だけど言い始めたのは彼女で、それを改める気は無いらしい。


「はは、僕も酷い言われよう何だけど……本人を前にして言うことかそれ?」


 確かに、奴は彼女に大抵どっかおかしい奴と思われてるらしい。それはそれでイヤな事だ。


「まあでも、折角だしやってく? お詫びの印。モノミーまだ入るか入らないかでモメて無かったっけ? どうせ何をやる所でも無いし、体験は良い判断材料に成るだろ?」


 何だ? ここではモノミー言うことがプチ流行してるのか? こいつら二人して改める気がまるでみられない。だけどこの時の私は否定する事を忘れた。
 何故ならさっきの装置を奴がこちらに差し出して来てるからだ。一体何を彼女は体験したのか、興味が無い訳じゃい。だけどこれを取ることは、何となくこいつの思い通りの様な気もする。


 さっき、彼女はそんな事言ってたし。だけど好奇心……そして天才の片鱗でも覗きたい私はそれを取った。


「何の道具だよこれ?」
「やってみればわかる。でも強いて言えば、もう一つの世界の扉……かな」


 意味不明だ。だけどここに来てそれを突っ込むのもそろそろウザい。彼女にも背中を押されて促され、私はベットに横たわる。そしてその言葉は紡がれた。


「ダイブ・オン」


 その瞬間、意識が何かに引っ張られる様な感覚と共に世界が暗転する。真っ暗な闇。しかし少しずつ何かを感じだした。
 肌を撫でるような優しい風の感じ、そして緑と花の香り? どこに立ってるかもわからないが、次は草が風で擦れる様な音も聞こえる。


 すると次の瞬間だ。一瞬暗闇の中に何度か閃光が灯ったと思って、目を閉じた後に開いた……するとそこには信じられない光景が広がってた。
 それはあのPCだらけの部屋じゃない……と言うか、目の前に広がる光景は既に室内ですら無い。そこは草原なのか、青々しい草が優しく揺れてる。どこまでも広がるそんな大地の果てには信じられない位に大きな木が、輪郭だけを見せてる。


 そして空は黄昏色を織りなし、羽ばたく度に光をこぼす鳥が飛んでいた。ここはまさしく異世界……それをリアルに私は感じてる。
 信じられないこんな事……同じ高校生にこんな物が作れるなんて……天才……その言葉が頭を支配する。すると突如、世界は暗転し再び引っ張られていく。


 目をあけると、そこは機械だらけの部室だった。覗き彼女は「どうだった?」と瞳を輝かせて聞いてくる。そして後ろの奴も、何かを待ってると言った体。
 だけど私は何も言えない。言いしれぬ敗北感とでも言うのか、まさに次元の違いを見せつけられた感じで言葉がでない。
 なまじ今まで優秀と言われてた分、優秀と天才の出来の違いを知ってしまった。


「ちょっと……今日はこれで帰る……」
「ええ? モノミー?」
「……」


 驚く彼女に無言の当夜。私は振り返らずにその場を後にした。






 与えられた者……なんだあいつも。そしてあいつ自身の能力は本物だ。今までの親に頼るクズとは違う。完璧……まさにそうだろう。
 あんな奴がいたら、どうしていいのかわからなく成るじゃないか。与えられた者共を見返して押し退けて、掴みたかった。
 だけど……勝てるなんて思えない。それからしばらくは教室でも目をあわさない様にした。彼女も何も言ってこない。けれど見てれば見るほどに、その理不尽さに腹が立ってくる。


 特別待遇で、それが当たり前みたいな態度何だ。自分が望んだわけじゃない、だけど周りがそうするみたいな。だからある日放課後ではち合わせた時、私は思わず当たってしまった。


「誰もいないし、モノミーって呼んで良いか?」


 そんななれなれしい態度にカチンと来た。


「何で! どうしてお前みたいな奴がいるんだよ! 人の努力を真っ向から否定する! お前はそれが当たり前何だろうが、その影で何人が食い物にされるか考えた事あるか?
 与えられた奴らに、私達の様な与えられぬ者は踏まれ続けなくちゃいけないのかよ! お前は私にとっては理不尽の象徴だ!!」


 完全な八つ当たり。いきなりこんな事言われて、怒ってもおかしくない。だけど当夜は、どこか寂しそうにこう言った。


「与えられた……か。なあモノミー、君は家族は健在か? 仲はどうだ?」
「別に……両親共に健在だよ。私は一人っ子だから大切にはされてると思う……って何の質問だよこれ!? 私が言いたいのはだな!」


 話をすげ替えられた? そう思ったけど、なんだかそんな感じじゃない。腹から沸き起こるイライラは止まらないんだ。
 だから言葉を続けようとした。だけど背中を向けて発せられた言葉に私は止まってしまう。


「僕は、君が羨ましい……普通であれれば、まだまだ子供のままでいられたのかな? 何も背負わずに居ても……誰かどこかの大人が助けてくれたのかな?
 ごめんモノミー。あの感想はいつでもいいよ」


 何なんだよ……何であいつがあんな悲しそうで、苦しそうなんだ。与えられてる奴らは、理不尽に幸せなんじゃないのか? それなのに……イライラと共にモヤモヤまで追加された。
 それからしばらくして、私は彼女に詰め寄った。これ以上、停滞してるとダメな様な気がしたんだ。だけど結局、あいつの事は教えてくれなかった。
 それどころかこう言われた。


「確かに当夜は天才。きっと将来ノーベル賞とか取ったりするんでしょうね。だけどモノミーは負けたくないんでしょ?
 ううん認めたく無いんだっけ? どっちでも良いけど、これだけは言えるよ。立ち止まってちゃ置いてかれるだけ。
 どれだけ離れてても、道は違っても、絶対に追いつけないって決めるのは自分だよ。やってもいない内から、負けを認めちゃうの?」


 そんな彼女の言葉が心を震わせた。だから私は思った。今がチャンスだと。あの天才の何かを少しでも吸収できれば、きっと役立つ。明日へ繋がると。
 だから私は改めて書いた入部届けを当夜の机に叩きつけた。これは宣戦布告だ。絶対に負かしてやる。そしてここから三人での高校ライフが始まった。




 それからの生活は今までの孤独な時間が減った。と言うかあいつ等がモノミーモノミー言うから、クラス中にその呼び方が蔓延しやがった。
 だけどそのおかげかどうか分からないが、喋りかけて来る奴は増えた。そして部活では相変わらず奴の天才ぶりを垣間見る毎日だ。


 凹んだり喧嘩したり笑いあったりの時間は目まぐるしく過ぎていく。そして打ち解ける中で聞いたのは当夜の事、この部活の事。
 当夜の事はショッキングだった。あの言葉の意味を知った。そして部活のことは殺してやりたいと思った。このダイクラは学校自体が、当夜を招く為に用意した場所らしい。


 そして学校とどこかの企業が提携して、何かをやらせてる……と言うことだ。つまりはこいつには既にスポンサーが付いてるって事だ。
 どうりでこの部室、やたらと機材が揃ってると思ったらそう言う事か。この学校の半分の電力を使ってるんじゃ無いかと思う程の機械の量だからな。


 それから二年は慌ただしくも充実した日々が過ぎていった。この二年で感じたのは、やはり天才と秀才の違い。そこには何か決定的な違いがある。
 だけど三年のある時期から、当夜は思い悩んでた。天才でも、ゼロから何かを生み出すのは用意じゃない。そして二年の間に状況は変わってたんだ。


 バックの会社が負当たりで経営を傾かせてると聞かされた。そのせいでこの計画は頓挫すると。学校は他のスポンサーを見つけてるけど、それも難しいらしい。
 なんせ「夢物語」だからだ。誰が高校生が誰も出来なかった新技術を開発出来ると思う? 二年間一緒にやってきた私や彼女は違うが、どっかの科学者気取りの奴らは荒唐無稽と、当夜が書いた論文を破き捨てたと聞いた。


 それに今までの会社以外に、そんな冒険をしようと言う会社はあがらない。天才だとは誰もが認めてる。だけどそれでも、歴史に名を残す物を生み出せるのは、その天才の中でも飛び抜けた超天才らしい。
 きっと当夜はそうなれる。だけどどこもそれを信じきれない。するとその時、彼女が頭を下げる。


「ごめんなさい。家のせいだよね。でも、パパもママも頑張ってる! 絶対に大丈夫だから!」


 そうバックの会社は彼女の両親の物。だから実際に一番大変なのは彼女だろう。だけどその彼女が頭を下げてる。


「そうかな。あの人には感謝してるけどシビアな人だよ。だからこそ切る物を分かってる」
「当夜! お前……」
「切らせなんてしない!! こんな事で終わりたくなんか無いもん!! 大丈夫……私にだって当夜の為にやれる事あるよ」


 意味深に言って彼女は飛び出していく。何する気だ一体? まただ……どうしようもない事が、理不尽と言う名を乗せて降ってくる。

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