命改変プログラム

ファーストなサイコロ

小さな勇気達の集い

「スオウ!!」


 そんな声と共に、杖に引き寄せられた自分を避ける様にして、無数の矢が分身へと飛んでいく。だけどそれでも分身は、その羽を器用に使って、矢を避けながら僕へと迫ってくる。
 そして矢での攻撃が止んだ一瞬、回転と同時にその翼を大きく広げて、氷の刃を飛ばして来た。この攻撃は一番楽でモーションも少なくさらには手数も稼げるから、実際は一人に使うよりこうやって多人数に使う方が確かに効果的な代物だ。


 今僕が落ちて行ってる地面には仲間達がもれなく居るんだ。あの分身からしたら、僕を狙ってついでにみんなも巻き込めるのなら都合が良いんだろう。
 だけど……そう易々とさせるわけ無い!! 何度も僕が打ち落として来たのを忘れたか? 今の僕にこの程度の数は苦じゃないんだ! 


 折角集った仲間達を、みすみす潰させるか。迫る地面から目を離し、僕は雷化したセラ・シルフィングに思いを乗せる。


「させる――っつ!?」
「ォァァァァァァァァァァァァァァァ」


 腕を振ろうとした瞬間、先に分身に動かれた。素早く畳まれた翼は空気を受け止めるのを止めて、ただその氷の重さを素早く落とそうとする。
 それはまさに鳥が獲物を狙って急降下するみたいな感じだった。セラ・シルフィングは重りと化した分身を受け止めるので正直精一杯。


 分身のくせに上手く両腕を防がれた。それにこの声……奴の空洞の様な口から漏れ聞こえる、言葉に成らない声が妙な寒気を醸し出す。
 これまでは柊の言葉にあわせてただ飾りの様に動いてただけだった筈なのに、今はちゃんと……じゃないが一応声らしき物を自身で発してる。


 分身と呼ぶのも実際おこがましい程の出来で、翼を与えられた人形ってだけの感じなのに、声を発するだけで不気味さ倍増だ。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 鳴り止まない呻くような声。防げなかった氷の刃はみんなの元へ落ちてしまっただろうか。だけどこのままじゃ、氷に続いて、自分までも落ちる羽目になる。
 分身のせいで加速されたこの状態で落ちたら、どうなるのか分からない。それにどうやらこいつは、ただでは落としてくれなさそうだ。


 不気味にゴキゴキと音を鳴らして、不自然な方へ曲がり出す首。そしてその不気味な音を出す口が僕の方へ向けられた。
 すると畳まれた背中の翼が輝き出す。周りを冷気を取り込む様にだ。そしてそれはどうやら、こちらに向けられた口に集まってるみたい……


「こいつ……洒落にならないぞコレ!!」


 ゼロ距離からの直撃……流石にこの残り僅かなHPじゃ持たない。絶対にだ。どうにかしないと。だけど無理矢理こいつは僕の雷化した体を掴んでる。
 それも信じられない力で。逃がす気は絶対にないようだ。でもそれでもやれることはまだある……それは自分の中で分かる。


 だけど、コレを今使う訳にはいかない。多分一回だけで、それは僕が思い描いてる事の切り札だ。ここじゃない。
 だけどここでやられても意味はない……どうにかして切り抜ける術を見つけないと。地面がそこまで迫り、臨界点に達した光は目の前で溢れ出すのを押さえられてるかの様に蠢いてる。


(来る!!)


 そう思った瞬間、共に落ちてきてた杖が一足早くに動いた。


「させない!! 我が杖よ!! 『サンダーペイン』」


 言葉を受けた杖が、その帯電してた雷撃を周りへと放出し出す。そして激しく弾けだした雷撃は臨界に達してた分身の攻撃を貫いて、その場で暴発させた。


 その瞬間、視界を覆う白い冷気と耳を襲った激しい爆発音……そして体にはその衝撃が伝わっ来た。だけどその衝撃で捕まれてた分身からは解放された。


「――っつ」


 何とか乗り切ったけど、だけどまだ全然ピンチ。このままじゃ更に勢いを増したまま地面に突っ込む事になる。こうなればこの力を地面に向けて打つしかない。
 そうすれば衝撃を緩和出来る筈だ。そう思い、僕は腕を振りあげる。だけどそこで再び冷たい感触が僕の腕を掴んだ。


「こいつ、また!?」


 首を動かしてそこを見ると、わかってはいたけど分身が僕の腕を掴んでる。でもいつまでも好き勝手出来ると思うなよ……今、お前が掴んでるのは片腕だけだ!!


「放しやがれ!!」


 僕は腕を掴まれたまま、もう片方を振り抜こうとする。きっと真っ二つに出来ると踏んでいた。何をする気か知らないが、確実に僕の方が速い。
 だけどその瞬間、僕の視界が揺らめいた。攻撃を受けたとかじゃない……この野郎、そのバカ力を利用して強引に僕自身を振り上げやがった。


 そのせいで態勢が崩れた僕の攻撃はあらぬ場所の地面に傷を付けただけ……てかこいつまさか……この単純な動作から何する気なのかがわかる気がする。
 振り上げた物は振り卸す物だろう……そして今の状況を考えると、きっとこいつはその手を放す。つまりは、地面に叩きつける気だ!


 こいつ、僕がこの勢いでの地面との接触を避けようとしてるのに気付いたのか? それともやっぱり、高見で見下ろしてる柊の仕業?
 どちらにしてもピンチは続く。振り上げた僕を、投げ飛ばすモーションに入る分身。その頃、僕の視界はグリングリン回ってた。おかげで狙いが定まらない。シルフィングをこいつの体のどこかにぶっ刺せれば、それを止められそうなのに……もしかして今の僕は極端に軽くでも成ってるんだろうか?


 雷化で自分自身がどうなってるのかイマイチわからない。もしかしたら、地面に叩きつけられたってどうって事はないのかも知れない。
 でも今、そんな意味のない賭に出る気はない。ここは絶対に落とせない局面だ! そんな二の次な検証はもっと余裕がある時に行うべき。


(投げられる前にシルフィングを……どこでもいい、翼でもこの氷の体でも!)


 だけどその時、どこかから何かが聞こえてくる。


「ぅぁぁあああああああ!!」


 それはどんどん近づいてきてて、そして白い冷気を突き破って現れた。


「スオウから離れなさいよ!!」
「リルレット!」


 現れたのはリルレット。そして構えてた剣を分身めがけて、振り抜いた。シャン――と小気味良い音が効果音か何かで響く。
 だけどそれは空振ってた。羽を広げた分身はリルレットの剣線の上へ移動してる。


「ちょ……そんなのズルっ……ここは私の見せ場だったのに!」


 なんか言ってるリルレットだけど、これは完全に奴に上に行かれた結果だ。こいつはこの羽で空中を自由に駆ける。リルレットだって見てるだろうに……でも、次のリルレットの言葉は、今度こそ絶対の物になる……そんな確信が感じ取れた。


「でも……しょうがないから譲ってあげる! そこの柊の劣化版! 飛べるからって下ばかり気にしてていいのかしら?」


 リルレットは指さして分身にそう言った。つまりは上から何かが来る……そう言う事か! 顔をあげると空から、三枚刃のナギナタを構えた、胴にアーマーをつけて衣装は和服の奴が迫ってきてる。
 後ろで束ねたポニーテールがこれ見よがしに靡いてた。


「リルレット! そう言う事は伏せて貰いたい!!」


 確かに彼が言うことは最もだ。不意打ちの意味がなくなる。てかこいつらはどうやってこの高さまで上がってきたんだ?
 まあ周りの突き出した氷を使えば出来ない事でも無いけど、そんな時間は無かったはずだ。すると、ナギナタ使いの後ろで何かが空に上がって行ってる。


 あれは矢? それも何か特殊な形してる。スキルでそうしてるのか、小さな矢がサーフボードの様な光で覆われてるみたいに見える。
 あれで空に上がったのか。


「てやあああああああああああ!!」


 気持ち良い声と共に、ナギナタ使いは落ちてきた勢いそのままに、分身の腕を切断してくれた。そして今度は同じ事に成らない様に、下から分身へと矢が降り注ぐ。


 今度はそんな攻撃を受けて、分身は羽を羽ばたかせて上空へと上がっていった。地面に近づいていたから、さっきよりも矢にも勢いが有ったからか、避けるのは止めたようだ。
 取り合えず一安心……じゃねーよ! このナギナタ使いもリルレットも、このまま地面に衝突する気か? もう地面はそこまで迫ってる。


「くっそ!!」


 僕はシルフィングを振り上げる。だけどその時、ナギナタ使いが手でそれを制してこう言った。


「安心せい。策はある」


 おお、なんか武士が居る……そんな思いが一瞬僕の頭をよぎる。すると少し下に居るリルレットが、地面に居る誰かに向かって叫ぶ。


「おねが~~い!!」


 するとその瞬間、下で何かが光って地面に透明な膜みたいなのが現れる。その膜は優しく僕たちを受け止めてくれた。


「うお……わっわ……」


 勢いそのままにトラポリンの様に弾む僕たち三人。だけど三回位跳ねると、その魔法は効果を切らしてそれなりの勢いで地面に落ちた。


「いてて……」
「大丈夫スオウ?」


 近くで上手く着地したらしいリルレットが心配そうにこっちに来るけど、まあこの位なら問題なんて無いだろう。HPにも影響は無い。
 だけど既に一分を切った様なHP残量だ。ここでグズグズはしてられないな。


「大丈夫。でもみんなどうして? 都合はいいけど」


 僕は立ち上がりながら全員へ顔を巡らせる。幾ら飛んでも見つからなかったのに……こんな揃って現れるなんて、予想外だったんだ。


「私と彼で探したの。スオウは思い通りに進めないし、柊にも狙われてる。もしかしたら万が一があり得ちゃう。だったら私達もやれる事をやろうって……それにね、みんな考える事は同じだったんだよ。
 誰もがスオウが戦ってるこの場所を目指してた」


 リルレットの言葉は僕の胸を強く叩く感じがした。グッと来たって言うのかな……みんなが危険を承知で初めから目指してくれてたってのはそれだけ大きい。
 僕はみんなをみくびってたのかも知れない。初めはこの状況に誰もが逃げ腰だった……でも集団の中で、それは変わったと思った。


 でももう一度個人で意志が決まるのなら、みんなが臆病風に吹かれてもおかしくないなんても思ったんだ。だってそれが普通だから。
 みんなが居るから、不安や弱気は分散される。それに伴って、一致団結した鋭気がテンションを上げる。まあ逆も起こってたけど、それでもギリギリで盛り上げてた。


 だけどそれが出来たのはあくまで集団だったから、一人だと自分が絶対だ。行動の全てに賛同するのは自分だし、そしてまた否定するのも自分自身。
 そんな中で誰もが、一番危険かも知れない選択を選んでくれた。自分が無事にここから出るには、これしか無いとの結論に誰もが達しただけかも知れない…でもその場で事の顛末をじっと待つ事と、自分も何かが出来るかも知れないと一歩を踏み出す事は全然違うんだ。
 だから僕はみんなに感謝しよう……精一杯、心の底から。


「ありがとうみんな……ほんとにさ」


 素直に僕はそう言った。するとみんなの視線が交差して、なんだか気恥ずかしい感じ。だけどそんな束の間は、上空の奴らによって壊される。


「ァァァァァァァァッァァァァ」
「来るぞ。またあの攻撃だ!!」


 そう言ったのは弓を打ち続けてくれた人だ。僕達が地上に降りてからも攻撃してくれてたみたいだが、分身の奴は射程外まで昇ったようだ。
 そして安全圏でその翼を広げて降り注がれる氷の刃。確かにまたと言うほど見飽きた攻撃だ。でもみんなからしたら厄介な攻撃。
 ここは僕が……と思ったら、もう一人のヒーラーの子が声を上げた。


「集まって!!」


 すると一斉にみんながその子の周りに集まって、身を固めた。そして中央のヒーラーが杖で何かを描き、魔法が発動する。
 それは四つの三角形の光の壁で、それらが空中で合わさる。頂点を併せて作られたその壁は、辺の場所が斜めに成ってる事を利用して、受け止めるんじゃなく受け流す様に氷の刃を防いでた。


 成る程、これなら範囲は狭まるけど強力な盾が張れる訳だ。流された氷の刃は、周りの地面に次々と突き刺さって行っている。
 でもそれを見た分身は更に多くの刃を放ち続ける。それに伴って、ヒーラーも苦しそうに顔を歪める。結局このままじゃじり貧・・あいつは分かってる。


 このまま僕が動かない訳がないと。僕はみんなに有る事を言おうと口を開こうとした…だけどその時、今一番頑張ってるヒーラーの子に微笑まれた。
 そして彼女は言うんだ。


「ありがとう…それはちょっと早いんじゃ無いかな? それにきっとその台詞は私達が言う方だよ。だって私達がここに来れたのは、君が頑張ってたから。
 万全じゃないその力でも全然諦めようとなんてしてなかった。私達は何度も何度も、そんな姿を見る度に、何かが出来るんじゃないかって思えてくるの。
 頼りないかも知れない、信頼だって積み重なってなんてきっとない……だけど君が求めてくれるのなら、私達も一緒に戦うから……だから一人で全部背負わないで!」


 そんな事を言う彼女の掲げる杖は震えてる。本当はきっと怖いんだろう。この戦闘は今までみんながLROで体験してきた物とは違う。
 もしかしたらだけど、何か取り返しの付かない物を晒してるのかも知れないんだ。でも彼女はそんな条件下で言ってくれた「一緒に戦うから」、その言葉は巡り巡ってた僕の思考を解放するようなそんな感じする。


 今の僕は余計な事を幾つも頭が次々に思考する。そこには不安な確率とかも有るわけだったけど、そんな物が吹き飛んだ。
 一人じゃない……でも僕は自分だけじゃ勝てないと分かってても、出来る事を求めてた。
 みんなの僅かな手助けだけで、後を全部背負おうと……それは巻き込んだ責任って事もあったけど、どうやらみんな僕のふがいなさにそれじゃ駄目だと思ったらしい。


「ああ、その通りだな。俺たちもちゃんと戦うぞ」
「うむ、リルレット達から聞いたが、我らを捜してたんだろう? 柊を倒す必勝手だて、聞こうじゃないか。ここまで来たら我らは運命共同体。
 遠慮など無用だ」


 二人のそんな言葉に後のみんながそれぞれ続く。それはただ僕の名前を呼んで居るだけの事だった。だけどその行為一つ一つが名前を呼ばれる前からずっと聞こえてた、カウントダウンの秒針の音を頭から消してくれる。
 体を巡る雷が、力強く弾け出す気がした。


 運命共同体……そこまで言われちゃ、遠慮なんてしたくても出来ないよ。おもいっきり、みんなを頼りにしようじゃないか。
 一人でやれない事も、集まれば出来る。それはLRO……いいや、全てのMMORPGで言えること!! 


「ああ……ならみんなに――」
「――雑魚がウロチョロと……止まってれば無事に返しても良かったのに……本当に人間の愚かさは感染するのね。彼らが死ぬのは君の責任よ」


 人の言葉に割り込んで来て、とんでもない事を言ったのは柊の奴だ。随分高い所に居るが、言葉ははっきりと聞こえる。


(責任……それにみんなは無事に……)


 一瞬駆け巡ったそんな思い。だけどそれは一瞬で吹き飛んだ。何故なら、彼らがそれを真っ向から否定したからだ。


「ふざけないでよ!! これは私達一人一人で決めた事なの!! 誰の責任でもない……寧ろアンタが感じなさいよ!!
 雑魚とかゴミとか、いつまでもそんな高い所から見下ろせると思わないでよね!! 私達は絶対に、アンタをそこから引きずり卸してみせるんだから!」
「ああ、その通りだ!! この行動は愚かなんかじゃないんだ! 勇気を振り絞ったんだよ俺達は! そしてそれが出来たのはスオウのおかげだ。
 確かに最初は逃げ出したかったけど、それじゃあ何も変わらないんだよ!!」
「うむ、ゴミや雑魚と呼ばれようとも、特別な力は無くとも、我らはそれぞれ信じて鍛えた力がこの手に有る!! みくびるでないぞ柊!」


 みんながそれぞれ上で見下ろす柊に宣言していく。その行為を柊は壇上で冷めたような目で見下ろすだけだ。でも僕は、迷わずに啖呵を切ったみんなが眩しく見えた。
 まるで勇気が溢れてるみたいにさ。


「いいですよもう。人が十分愚かなのは分かりましたから。だからそんな貴方達全員に、ちゃんと教えてあげるわよ。
 その選択が絶望を呼び込むんだってことを」


 すると柊の翼が輝き初めて、更に周りの柱がボコボコと膨れ出す。そして姿を現すのは、更に三体の翼を持った分身だ。
 だけどそれが何だってんだ。僕は今、体中を刺激する電流に身を焦がしてる。だからあいつに言ってやろう。僅かにでも動揺するみんなの間から静かに声を出す。


「それでも……僕達は勇気を捨てない。なぜだか分かるか柊? それは、勇気こそがどんな明日も開ける鍵だからだ!!」
「君の明日は永遠に来ない」
「そうか? 永遠なんて、それこそ人には有り得ない事なんだ! だからそんな言葉、信憑性の欠片もねーよ!!」


 その瞬間、三本の柱から生み出された分身が一斉に高らかに吠えた。一気に四体……みんなにあいつ等の相手をさせる訳には行かない。
 それは信じてないんじゃなく、やって貰わなくちゃならないことが有るからだ。


「あいつ等は僕が押さえる! だからみんなはこの柱を何としても壊してほしい。そしてそれが出来たら、僕の合図で一斉に――」


 言葉の途中で割り込んで来る分身共、そいつ等は盾を一気に破りやがった。猶予は無い……後はもう信じるだけだ。


「柱は頼んだ!!」


 その言葉と共に、僕はシルフィングでまとめて分身共を凪ぎ払う。そして飛んだ。みんなの言葉が何か聞こえたけど、こいつらをそこに居させる訳には行かない。
 そして二本目に到達した僕は丁度吹き飛んできた分身共に追い打ちをかける。


 だけど四体も居てはそう上手くは行かない。でも完全にターゲットは僕で固定された様だ。それでも一体、厄介な奴が居る。
 それは柊……あいつは意志で攻撃出来る。そして二対の翼が狙う先はやっぱりみんなの場所。僕はもう一度飛んだ。
 そして現れたのはみんなが頑張るあの柱。ラッキーだ。丁度奴の攻撃も来てる。


「うおおおおおおおおお!!」


 柊の攻撃を砕くと同時に、この柱自体に大きな魔法陣が展開される。すると下から、声が飛んできた。


「この柱自体の時間を遅延させました! これで自己修復機能は弱まったはず。でもそれでも私達じゃ時間が掛かり過ぎる!
 だからお願い! キッカケを作って!! そうすれば後は全てを出して砕いてみせるから!!」


 力強い言葉……キッカケか……向かい来る分身も、再び攻撃態勢の柊も気になるけど、今の僕なら出来る!! 振り向いた僕はシルフィングを突き刺した。


「これでどうだ!!」


 そして一気に上下に振り抜く。青い雷撃が走り、柱にはヒビが生まれる。修復は確かに遅くなってた。


「「「ァァァァァァァァァァ」」」


 後ろから聞こえるそんな声。そして下へ迫る砲撃。僕はそれらをたった二本の腕で迎え討つ。


「やらせない、絶対だ!!」
「いっけええええみんなぁああああ!!」


 下から聞こえる爆音の数々。それは全員が持てる全ての技と力と知恵と道具を使っての総攻撃の証。すると振り向かなくても分かる音が聞こえてきた。
 張り付く足から限界の証が伝わってくる。


 ピキピキ……バキキ……そして激しく氷が砕ける音が下方で響く。そして根本から叩き折られた柱は、大きく傾いて行く。僕は地面に落ちる前にもう一度飛んだ。
 光を失った後二本の柱。そして僕のたどり着いた場所が、鳥かごからの解放を意味してる。僕が立つ場所は、柊と並ぶ氷の先端。
 さあ残り十五秒の逆転劇の始まりだ!

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