命改変プログラム

ファーストなサイコロ

似てる想いの違う道

「ア……ギト様? 幽霊じゃない?」
「はは、それならどっちかって言うと、幻とか幻覚のほうがあり得そうじゃないか? まあどっちにしろ、俺はまじもんだけどな」


 そう言って俺はいつも通りの笑顔と、もっと存在をしらしめる為に受け止めたセラの華奢な肩を強く抱いてやる。だけどそんな努力をやってる俺を、何故か更にボヤケた様な瞳でセラは見つめてた。


「アギト君!」
「ん、シルクもサンキューな。みんなも勿論、頑張ってくれた」


 俺がセラを抱えてる方へ急いで走ってくるみんな。かなり驚いた顔してたが、ようやくそっちもこの状況を受け入れてくれたらしい。
 まあ突然だったからな。無理もない。




 目を覚ますと、俺は無骨な背中に背負われてた。何だか随分変な目覚め方だとか、鎧がゴツゴツしてて痛いとか、決して快適な目覚めじゃなかった。
 でも、散々心配させたであろうみんなに文句何か言えないさ。ここは取り合えず、一言発して目覚めた事に気付いて貰おう。そう思った矢先、シルクの叫びが耳を突いて来たんだ。


「セラちゃん!!」


 そして誰もがそちらへ集中してた。俺を担いでる奴も体を向けたから肩口からその光景が見えたんだ。そこにはあのままの姿のガイエンが黒い腕をこちらに向かって振り上げてた。
 そんな中、燃え盛る炎を背にセラは一人でガイエンに突っ込んでたんだ。その瞬間、ゾクリと背中に嫌な汗が伝った。


 あのガイエンを見たからか、それともセラの姿があの瞬間の俺とダブって見えたからか……取り合えずセラが自分を犠牲にしようとしてる事はわかった。
 あいつはみんなの為に……そして期待とかを裏切った俺を、それでも信じてくれてた。セラの声が聞こえる様な気がしてた。


 必死に恐怖を押し殺して叫ぶ声。その思いは一瞬届いたかのように思えた。だけど元からそれはガイエンの誘い。あの程度、奴にはダメージには入らない。
 そしてセラはカーテナの理不尽な力をその身に受けて、風に飛ばされる照る照る坊主の様に勢い任せに体が宙を舞ってく。


 俺はその瞬間、抱えてくれてた奴を踏み台に一気にみんなを飛び越えた。唐突なその動きに誰も声を上げられない。視線だけが俺を追ってるのがわかる。
 俺は前しか見てなかった。一気に駆け出して向かうはセラの方だ。


(間に合うかじゃない……間に合わせる! 絶対に!!)


 たぎる炎が俺の影を揺らめかせてた。感じる風は煙混じりで焦げ臭い。夜空の光より、周りの炎が光源に成ってるタゼホは、もう火が回ってない所なんて無さそうな程だった。




「どうして……」


 近づいてくるシルクがそんな声をポツリと漏らす。それってどうして蘇生魔法が今更って事だろうか? う~ん言えない。
 無意識下とは言え、自分で拒否ってたなんてさ。だけどそれに返す言葉は必要じゃなくなった。何故なら、突然燃え盛る建物が潰されて高い火柱が夜空へと向かって立ち昇ったからだ。
 いや、その現象その物よりも、それを誰がやったのか・・その事の方が大きいか。


「アギト……今更起きてきて、何する気だ?」


 そんな言葉を向ける奴……俺は舞った火の粉の中にたたずむガイエンに目を向けた。本当に不気味な姿してる。悲しくなるくらいにさ。
 ドス黒い肌に赤い瞳。白くなってしまった蒼かった奴の髪は長さも異常な位に延びてる。だけどそれが地面に落ちる事はない。何かの力で常に浮いてる感じ。


 そして一番の変化はやっぱり下半身。足は無く、へそから下、腰の辺りがすっぽりと丸くなって浮いている。その球体の中心にカーテナの姿。
 ほんとにもう人とは思えない姿。でもあれは上位種何だってさ。


「三度目の正直……今度こそお前を止めに来たんだよガイエン」


 俺はセラをシルクに任せてみんなから数歩前へ出る。そして背中に手を回し、槍をその手に掴み取る。地面に飛び散った建物の破片が僅かな炎を心許なく灯してた。
 炎の明かりって上手く表面を照らさない物だ。シルエットばかりが強調される様で、だから余計にあいつ等が不気味に見えてた。


「お前が私を? どれだけ立ち向かおうと無駄だよアギト。それはお前が一番良く分かってるんじゃないか? 絶望を見ただろ……大人しく死んだままならもう一度、そんな辛い思いをせずに済んだのにな。
 お前の仲間は理解してないのか? お前がもう何の力も持ってないと。まあ持ってても、お前では私には勝てんがな」


 ガイエンの声が夜の空気を振るわせる。奴は俺に負ける可能性なんて一欠片も持ち合わせちゃいない。それも当然と言えば当然だがさ。
 奴はカーテナをその身自身に宿してる。それだけで、アルテミナス内なら最強だ。もしも俺にナイト・オブ・ウオーカーが有ったとしても、カーテナには及ばない。


 だからガイエンが今の俺に負けるなんて考える事があり得ない事。でもガイエンが言いたいのは、そういう事だけじゃないんだろうな。
 あいつはカーテナを持つ前にも俺を追いつめたんだから、俺の弱さを知ってる。そこら辺だろ。


「私達は! 力だけでアギト君の事を見て何かない! 貴方は力に溺れすぎてるから忘れてるのよ!」


 何も言えなかった俺の後ろから叫ばれたそんな言葉。それは意外にもシルクが叫んだ物だった。力だけじゃない……その言葉は素直に嬉しいが、困った事に俺は心も結構弱いんだ。


「はは、君は知らないんだろう。そいつは逃げ出したんだよ。信じてくれた人々を残して姿を消した臆病者。私も力だけでは言ってない。
 そういう弱い奴だと言ってるんだ」


 ガイエンの言葉に、俺は反論する言葉がない。テメーのせいだろって言っても、逃げたのは事実だ。最後に逃げ出す事を選んだのは俺自身。
 あいつはその課程に干渉したけど、結局は俺の結論。それを誰かのせいにすること事態が負け惜しみだ。だけど今度は、シルクに支えられてるセラがその口を力強く開いてくれた。


「それでも……アギト様は戻って来てくれた。それはきっとあの頃から成長したからなのよ! ずっと苦しんでたに違いない。
 けど、もう一度を決意したこの人を、否定なんかさせないわ!」
「セラ……」
「嬉しかったです。あの時『行こう』そう言ってくれた事が」


 優しく微笑むセラの笑顔が胸を打つような気がした。あの時ってのは水かけ祭りの後の事か。ハイテンションで俺の前に唐突に姿を現したとき・・そう言えば、スオウのシルフィングを折ったのってセラだったよな。


 でもシルフィングの事は置いといて、あれはセラなりの気遣いだったのかも知れない。逃げ出した俺を追いつめない用に、気負わせないようにと思っての行動。
 あれはよく考えたら、かなり救われたよ。怖かったからな、俺の事を知ってる奴に会うの。でもそれらをセラは吹き飛ばしてくれた。


 こんな俺でも、まだ必要としてくれてるんだって思わせてくれた。そして今なら……そうセラが言うとおり成長したと思ってた。


 俺はセラに安心をもらったから、もう一度ここに来れたんだと思う。それなのに……俺は未だ役立たず。けどだけど、先にこれだけは返したくなった。


「俺の方こそ、あの時迎えがお前で良かった」


 今更だけど……セラには感謝してもしたりない位だ。あれからもずっと、アイリの側に居てくれたんだからな。それに侍従隊だって、きっと親衛隊に対抗して作ったんだろう。
 何も俺は言わなかったけど、セラはセラでいつかこんな事が起こると思ってたんだな。俺の素直な言葉に、セラは更に深く優しく微笑んだ。


 攻撃を受けたり、今までの大変さで結構ボロボロなのに、この時の笑顔のセラはそんなの気にならない位に光って見えた。


(何やってんだよ俺……直ぐにブラツいて・・心配かけて……決めたんだろ、沢山の自分とさ。あれだけを胸に抱いて迷わず行けよ)


 足下にあった木の燃えカスを勢い良く踏んだ。更にもう一歩出るためだ。燃えカスは折れて、その折れた赤い所から、火の粉が舞い上がる。
 暗い闇を背負う様なガイエン姿の姿が佇んでる。その周りに数十人の同じように肌を黒に変えた親衛隊の面々。奴らはガイエンによってそうさせられてるのだろうか。


 そいつ等の目も、ガイエンと同じように暗闇で赤く光ってる。それは不気味で、人と言うより獣の輝きの様な気がした。
 獲物を狙う、肉食獣の様なさ。だけどそのどれにも押し負ける訳には行かない。


「アギト、今度こそお前に諦めをくれてやる。私の夢は止まらんよ」


 そう言うガイエンにあわせて、後ろの親衛隊が展開していく。逃がす気はない。もう俺を逃げ出させる必要すらアイツにはないんだ。
 ここで俺たちを断ち切って、手に入れる気だアルテミナス。あたかも俺達がグラウドその場所から弾いた様に。


「夢……か。神様に成りたいんだよな。世界を統べる神様にさ」
「ああ、アルテミナは私の覇道の足掛かりにすぎんよ。なあアギト、今の私なら神もまんざら夢物語じゃないと思えるだろ?
 この姿、この力! まさに神への足掛かりを私は掴んでいる!」


 喚起の声で、両手を大きく広げて叫ぶガイエン。そんなガイエンの感情に呼応するかの様に、奴の足下に落ちてる影がワナワナと揺らめいていた。
 でも確かに、今のアイツはただのプレイヤーとは違う。あの姿は明らかに異常……進化してるのかどうかは知らないけどさ、でもあれは……


「そうか? 俺には神より魔王に成ろうとしてる様にしか見えないぞ。一度冷静になって鏡見てみろよ。そしたら自分が落ちてるのか、昇ってるのかわかるだろ」


 本当にそれをお勧めするな。ガイエンも親衛隊も全員まずは鏡見ろってさ。まずあの姿を初めて見て、すんなり受け入れた事が驚愕なんだ。
 親衛隊共も感覚が麻痺してるとしか思えない。LRO……ゲームだからそんな深く考えないにしても、何の驚きも無いなんておかしい。


 一度全員、自分を見つめなおして色々思い出すべきだ。だけど力に酔ってる奴らは得てして、他人の言葉には耳を貸さないと言う特性を持ってた。
 結局は親玉であるガイエンをどうにかするしか、誰も止まらない。


「はは、お前には理解できないだろうなアギト。言っただろう、この姿はお前達エルフを越えた上位種だと。既にお前と私では存在自体が違うのだよ。
 お前達の価値観で見てる私は異常だろう。だがそれでいい。畏怖を感じて畏敬を芽生えさせる事ができた時、私は神と呼ばれる存在に成ってる筈だからな。
 それこそが私が目指す世界の神だ! 今、この瞬間の差をもっと感じろよアギト。お前と違って私は足踏みも迷いもしない! だからたどり着く速さも場所も、お前とは全くの別物だ。
 お前が感じる以上の高みに、私は行ってるんだよアギト」


 その瞬間、俺の頬を風が僅かに切った。そして一瞬の内に、後ろにあった民家か何かがバラバラになって吹き飛んだ。強引に引きちぎられる木々の音や、直撃後に巻き起こった凄まじい風が嵐の様にうねる音が、直接鼓膜にたたき込まれる様に感じれた。


 血が出ない頬を、それでも拭う。無惨に散った瓦礫を見てもそれが家だったとはわからない位にボロボロだった。前を向くとガイエンが黒い腕をこちらに向かって突き出してた。あれが原因か。
 でも何の為に、わざわざ外してカーテナを打つ必要があるんだ? ガイエンは俺を見て得意気に口元をつり上げる。ああなるほど。


 これは証明か。自分が俺よりも遙か高みにたどり着いてるって誇示。だけどそんなの、家をぶっ壊さなくたってわかってる。その力だけはって事だけど。


「どうだ? 全てが無謀に思えたか?」


 そんなことを言うガイエンは、今度は別の方の拳を握り締めてる。これだけで終わるって言う脅しのつもりか。でも生憎だな……ここにその程度の事実で足を抱え込む奴なんて、もういない。
 確かにさっきの不意打ちにはみんな驚いたが、今はも回避から攻撃に転じるまでの動きを頭でシュミレートしたり、勝ち方を模索してる筈だ。
 諦めや絶望を顔に浮かべてる奴なんて一人もいない。


「はっ、何言ってんだガイエン。お前こそ、俺達を理解しちゃいない。無謀? そんなの初めから覚悟したことだ。お前のその力だって分かってた。
 なんせカーテナは俺達三人が一番知ってる筈の事だろ。
三人で勝ち取った武器と力……そして国だったんだから。なあガイエン……さっきまで俺は、過去を見てたんだよ。一年前の事だ。
 お前との出会いから、あの日までのさ……長い夢」


 俺は拳を構えるガイエンから、あえて視線を外して空を見た。今カーテナの力が放たれたら、俺は間違いなくもう一度戦闘不能に陥るだろう。
 蘇生魔法は生き返ったとき、HPを全快にしてくれる訳じゃないからな。敵と対峙してる中、無闇に詠唱は行えないし……よって俺のHPはイエローゾーンだ。


 だけどそんな危険を犯してでも、伝えたかったんだ。今、もう一度振り返ったあの日の事を。月の無い夜。そして下から燃え盛る炎の明かりで、夜空は黒さが目立ってた。
 所々にそれでも星は見えるけど、心惹かれる程の輝きは一つもない。周りの炎が円を描いて、その炎が視界の端で空を切り取ってる。


 そんな炎の額縁に納められた夜空はボヤケてて、光ることを許されない……まるで囚われの星々の様だった。月がないから、負けてしまう小さな光……それは俺達もそうだったんじゃ無いかって思う。


 アイリは、月では収まらないかもだけど、いつの間にか俺達二人にとってそんな存在だった。カーテナをグラウドに渡せない――そう言ったアイリに引っ張られて俺達は行動を起こしたんだ。


「自分の情けない結果をもう一度見直したか。それは酔狂事だなアギト。で? それが何だ? 私のせいで狂ったとでも言いたいか?」


 ガイエンの嫌みな声も夜空の黒さに溶けて行くようであまり気にならない。俺は空に手を掲げて、親指と人差し指で円を作ってそこにない月を作る。


「そんなんじゃねーよ。もしもなんて考えるだけ無駄な事だろ。俺達は出会って、再会して……まあ再会はお前が仕組んだ事だったけど、それからの日々にどれだけお前の思惑があったかなんて、どうでもいいんだよ」


 月はアイリ……ガイエンにとっては俺達の行動は思惑通りだったんだろう。でも自分の心とかは思惑とは裏腹に、そんな月に惹かれてたんだよな。
 俺達は二人とも小さな星だった。暗闇の中で自分だけでは己さえ見ることが出来ないそんな星。隣に居たのが月だと知った星と、月を越えた太陽になりたい野望の星だった。


「どうでもいいだと? 全てを奪われてそんな言葉を口に出来るとは、お前……本当は諦めてるのか」
「まあな」


 そんな言葉を口にした途端、周りから鋭い視線が飛んでくる気がした。でも諦めるって今の事じゃないんだ。


「勘違いするなよガイエン。俺が諦めたのは過去だけだ。あの頃を幾ら悔やんでも、時間は絶対に戻らないし、今が変わる訳じゃない。
 過去の過ちは未来でしか正せないだろ。だからここでは諦めたりしちゃいない」


 俺は月の明るい心を支えたかった。そんな光の中はスゴく居心地が良かったからだ。でも光を知った分、闇に恐れを感じた。
 楽しいことはそこにしかないと、思って執着してたんだ俺も。


 そしてもう一方の星は、野望の為に月を越えたがってた。だけどいつしか気づいたんだろう。月の光が自分には必要で、特別な事に。
 二つの星と月は、共に沢山冒険をした。そのどれもが笑える思い出。


「なあガイエン。俺は気付いたんだ。あの頃を振り返ってさ。あの頃……カーテナを手にする前、三人で良くダンジョン巡りやってたとき、お前何だか楽しそうだったてさ」


 その瞬間、少しだけガイエンから動揺が見られたのを、俺は見逃さなかった。僅かだけど、赤い目が元の色を取り戻した様に見えた。


「そんなこと……私にとっては全部はこの日の為の布石でしかない。楽しい? 相変わらずお前は愉快でムカつく子供の頭をしてる。
 覚えてるさ、あの頃の事は。だが私が思ってた事は、お前達二人とも、脳天気で煩わしいって事だ。ムカムカしてたさ。特にお前の顔を見る度にな。
「あっそ、その割には楽しそうに俺へ突っかかって来てたぞ。けどでも、初めて俺がお前から本気の怒りとか、そう言うのをまともに感じた事があったんだ。
 それはあの時……俺がアイリに貰った力を見せた時だ。そしてそれから……お前何か、前より冷たくなったよな」


 野望の星から月を取り上げたのは俺だった。少なくとも、奴はそう感じたんだろう。それにその時には、アイリの指にはアレがあった。誓った指輪が光ってた。
 月を無くした星はガムシャラになったんじゃないか。そして同じ場所に入れると思ってた星の方も、次第に違いを思い知っていったんだ。
 俺達は互いに、月に憧れた星だったんだじゃないか。そう今なら思う。


 俺の言葉に、ガイエンはいつの間にかその腕を卸していた。あの時を思い出してでも居るのか、俯いたその顔はこちらからではよく見えない。


「だけどそれからもお前が絶対に間違った事をしてたなんて俺は言えない。アイリの為、アルテミナスの為でもあったんだろ? 
 エゴもワガママもそして野望もあったけど、それらを抱いたお前から逃げ出したのは俺だ。アイリを残して……逃げ出した。
 正直最初は自己嫌悪、そしてお前を恨んだよ。けどこの一年、いろんな奴に会って見つめた。そして親友が真っ直ぐに進むのを見て思ったんだ」


 指で作った月を放す。そこにはやっぱり月はなく、ぽっかりと黒い空が広がってる。あの頃の慟哭を見せるようなそんな空。
 だけど紡ぐ言葉にそんな感情はいらない。あの頃に縛られた今日を越える……その決意をもうしてる。ガイエンの白い髪が風でそよいでる。
 不気味な位、奴は静かだ。でもそれは聞く気に成ってる事だと勝手に解釈して俺は言葉を紡ぐ。


「お前も、お前の道を進んでるだけだったんだ。それも必死にさ。そうするしか無くなったんじゃないかって。お前は自分が神になっても、アイリを側に置くと言った。
 それがお前の思いで、夢で……俺への復習、じゃないのか?
 今なら真っ直ぐにお前と向き合える。あの頃認めなかった友として。復習でも何でも、受け止めてやる。それにお前はやりすぎだ。
 友達と今は思うからこそ、その立場で俺はお前を止めてみせる!!」
「言いたいことはそれだけか?」


 俺の宣言の直後、ガイエンからそんな言葉が放たれた。そして次第に肩が大きく揺れだして、奴の声がここを満たす。


「くくっはっはははははははははっはは!! 友だと? 復習だと? 私が貴様の様な負け犬をいつまでも気にする訳がない!! 思い上がりも甚だしいぞアギト。
 私は何にも縛られてなどいないさ! 我が覇道! お前ごとき器で止められる物なら、止めて見せろ!!
 友など何など言わず、アイリは俺の物だと叫んでな!!」


 天に突き出した奴の腕の先に、夜の様な闇が集まっていく。俺は槍を構えてお望み通りの言葉をくれてやる。


「ああ! 幾らお前でも、アイリだけは渡せさねぇ!!」


 放たれる黒い球。それと同時に親衛隊も動き出した。全面対決……全てをかけた総力戦。これできっと本当の勝者が決まる。
 

「命改変プログラム」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く