命改変プログラム

ファーストなサイコロ

氷上に綴る真実



 冷ややかな冷気が頬を撫でていた。周りで自然を模して奏でる森のささめき、影の揺れ、それらが一気に遠くなる程に、僕は柊が放った言葉だけに耳と全身の感覚を注ぎ込んでいたんだ。
 だって……何て言ったアイツ? 『命改変プログラム』だと? 何でこいつがその言葉を知っている? それは当夜さんが僕に伝えた、セツリをLROから解放するためのキーワードの筈だ。


「お前……今なんて? 命改変プログラム……どうしてそれを……」


 僕は震える声で柊に真実を求める。それを知っているのもそうだけど、奴が言ったのは厳密には違ったんだ。『真』その言葉がついていた。
 それこそ本当に、僕にとってはどう言うことだって感じ。『真』って事は『偽』とかあったりしたのか? 僕が教えられて、求めてる命改変プログラムはどっちなんだ?
 それとも全く別の物……って事はないよな。


(分からない)


 今の僕には何も。だから柊の奴に喋らせる必要がある。アイツは……いや、アイツ等は僕が知らない事もきっと沢山知ってるんだろう。
 それこそ、本当に命改変プログラムの事まで。


「その反応。やっぱり君は知ってるんですね。命改変プログラムの存在を」


 柊は顔を傾けて、少し妖しい笑みを作ってそう言った。幼さが残る顔してると思ってたけど、今の格好であんな顔されたら妙に色っぽく見える。
 けど今は、他の事で胸がドキドキだからイチイチときめいては居られない。


「知ってる……って程じゃないかもだけど、聞かされた。てかお前のその台詞、そのまま返すぞ。お前こそ何でソレを?」
「愚問ですね」


 僕の言葉に軽くそう言った柊は、何だか扇子の感じを確かめる様に開いたり閉じたりしてる。けどその動作がイチイチ僕達を警戒させるんだ。
 だってあの扇子が奴の攻撃の鍵で、その動作がいろんな事のキッカケって分かってる。だから意味の無いようなその動作でも警戒してしまう。


 すると不意に服が引っ張られる感触に気付いた。端っこ方をクイクイと申し訳なさそうな程度の引っ張り具合。視線を向けるとそこにはリルレットが僕の服の裾を引っ張ってた。


「何?」
「何じゃないよ。さっきから私たち置いて話が進んでる。何なの命改変プログラムって? そんなの初めて聞いたよ。仲間なんだから、ちゃんと教えなさい。
 ねえみんな。知りたいよね?」


 すると周りのみんなも頷いた。そう言えば、リルレット達が知ってる筈ないよな。あんまり人に話す事じゃないと思ってたし。
 てか誰かに話したっけ? って感じ。まあせいぜいアギトやシルクちゃんやテッケンさん、そしてサクヤ位にしか言ってなかった気がする。


 でもサクヤは元から知ってたんだっけ。アイツも実際、全部を知ってそうな感じはある。でもサクヤも全部は一気に喋らないんだよな。
 まあだから、僕が知ってるのは本当に名前とそのプログラムの効果位。あんまりリルレット達に深く聞かれても、答えられる知識も持ち合わせちゃ居ないんだけど、もう言っちゃった事を隠す事もない。


「さっきも柊に言ったけど、僕もあんまり詳しくない。ただ命改変プログラムって言うのが、セツリをリアルに戻すために作られた物だって事だけだよ」
「成る程、セツリちゃんを通して出てくる共通のワードって事なんだ」
「まあ……」


 リルレットが何気に言った『共通』って言葉が引っかかった。別におかしくはないし、リルレットの言うとおりだと思う。
 僕達が同じ良く似た言葉を知ってたのはセツリを通してだ。でも何か、柊が言った『真』の意味……それが共通に待ったを掛けてる様な気がする。


 だって僕の知ってる命改変プログラムは柊達の目指してる事とはきっと違うんだ。奴らはセツリをここに閉じこめて置きたいんだからな。
 そんな事を思っていると、僕達の会話を聞いていたのか、柊が間に言葉を割り込ませて来る。


「君は命改変プログラムが、ただの脱出用プログラムだとしか考えてないのね」
「何?」


 どういう意味なんだそれは? 奴の扇子からこぼれ落ちていってる白い冷気の固まり。それを何となく視界に捉えながら、僕は柊を見据える。


「ねえ、君はマスターにその事を聞いたんじゃないかしら?」
「マスター? 誰だそれ?」


 そんな名前の奴は僕の記憶には無いけど。LROには特徴的な名前の人達も沢山いるけど、まだマスターさんとは出会ってないな。


「ああそうですね。この言い方じゃ分からなくて当然。開発者ですよ。もっと具体的に言うと桜矢当夜です」
「……そうだけど、何でそう思ったんだ? 当夜さんは今……」


 僕は言葉を濁す。てかこういう事はそう安易に口には出来ない。でも柊の言ったことはただの推測じゃないだろう。何だか確信めいた物を感じるし、とっても淡々としてるよアイツは。


「別に、マスターが起きてるとか生きてるとか死んでるとか、どうでも良いことです。ただ、命改変プログラムの存在を私たち以外で知ってると成ると限られますから。
 後、君にわざわざ教えてあげるっていうのも他じゃない、マスターがやりそうな事です」


 その瞬間、どうでもいいとか言ってる割に、柊が『マスター』と口ずさむ声が何だか切ない……そう気付いた。それにマスターって名前以外の名称でもあるってさ。
 例えば師匠とかも海外ではマスターって呼ぶし、達人とかもそう。それに映画やマンガなんかでは、人から生み出された意志有る物はそう人を呼んだりする。


 だから柊が口ずさむマスターはそっち系なのかも。柊達はシステムの外に居るけどプレイヤーじゃない。なら誰かに造られた訳で、意志有る物なんだ。


「ふうん、で? 当夜さんに聞いてたら何だっていうんだ?」
「わからないかしら? 頭はあんまり良くないの?」


 む……何て失礼な事を普通に言う奴だ。何か無駄に純粋な感じで言われたから余り否定出来ないじゃないか。せめてこう言うのが精一杯。


「別に、悪くもないから良いんだよ」


 それは有る意味、普通って事だ。可もなく不可もない点数を稼いでます。リアルの僕はここ程、パッとはしないんだ。


「開き直ってるのね。まあいいわ。私が言いたいのは、あの子の為の脱出用プログラム何てのは建前だって事」
「建前?」


 まさに何だそれって感じだ。


「建前じゃ日本語としておかしかったかしら? なら一部にするわ。この世界からあの子を放つ事……それは命改変プログラムの本質のたった一部分だと言う事よ」


 パン――と閉じた扇子が開かれた。目が覚めるような音……じゃなくて今度は言葉。でもそれはまだ信じ難い事だ。
 こいつらはどこまで何を知ってるんだ?


「考えてもみてよ。あの子には二つの選択肢が有った。この世界に留まる選択と、君が言うリアルへと帰還する選択。
 あの人にとって妹は全てと言っていい存在。だからこそ、幸せの形の選択を委ねて後悔のない……出来ない、唯一無二の事にも保険を掛けたの。
 どちらを選んだとしても、あの子が寂しくないように」
「それってつまり……命改変プログラムには二つの選択肢、そのどちらにも対応した機能がある……そういう事か?」
「うん、なかなか聡いじゃない」


 褒められた。でも聡いとかのレベルじゃないよな。あそこまで言われて気付かなかったらバカだろ。って待てよ、なら僕はバカにされてるのか?
 扇子で口元覆ってる柊は、実は笑ってる? 


(けど、それにしても……だ。確かに最初に柊が言ったように、その可能性に気付いても良さそうな物だったのかも)


 そう心で思うと何だか落ち込むな。セツリをリアルに返せるんだって分かって、僕はただ喜んだだけだったけど、それってその時の喜びって自分の事……だったんだなって今なら思う。
 でも当夜さんはいつだってセツリの事を想って考えていたんだ。どんな形でも絶対に幸せに……そう感じれる様にしようとしてたって事だよな。
 自分は絶対に戻って来て欲しいと考えた筈なのに……


「二つの選択肢のそれぞれの保険。じゃあそれが何だか分かる? ヒントはあの子が求める物ね」


 おいおい、何だかクイズ形式なって来やがった。柊の奴も結構ノリノリじゃないか。もっと物静かなのかと最初は思ってたけど、やっぱりシクラと姉妹何だな。
 てか「知りなさい」そんな風に訴え掛けて来てるようにも捉えれる。まあそれならもっとすんなりと教えてくれれば良いんだけどな。


 こっちだって教えてくれるんならありがたいんだ。だからこそ、どんなに回りくどくても付き合わなければいけない。
 でも実際、この問題は結構簡単だ。


「保険か……それって帰還側なら僕で残留の方ならお前達って事だろ? セツリの奴、一人は嫌みたいだからな。
 いや待てよ。お前達が人じゃないなら、こっち側の保険もそうなのか? ならサクヤがそうなるのか」


 だってどんな奴なのかも分かったものじゃないプレイヤーの誰か――なんて不覚定過ぎるだろう。それじゃあ当夜さんだって不安いっぱいの筈だ。
 なら柊達と似てるような存在でセツリを溺愛してるサクヤが浮かぶ。アイツはセツリに帰って欲しいと願ってる。だから保険の条件に合うだろう。
 だけど僕の答えを聞いて、柊は首を振る。


「三角ですね。後から余計な事を言わなければ丸だったのに。まだ良く理解してないみたいですね」
「なんだよそれ。間違っちゃいないだろ? セツリがここを選んだ時の為の存在がお前達なら、外を選んだときはサクヤだろ?」


 すると柊はちょっと複雑な顔をしてこう言った。


「確かにアレも保険の一つではあるわ。けどアレじゃ駄目なの」
「駄目?」
「だってそうでしょう。アレがあの子にそれを選択させれるかしら? それはきっと、いえ絶対に無理だもの。いくらアレが耳元で叫んでも、それだけじゃあの子は選ばない。選べない。
 マスターが求めたのは、あくまであの子が選んだ世界を共に歩ける存在だもの。だから君が正解よ」


 成る程、そう言う事か。確かにサクヤの言葉だけじゃセツリはもう一度リアルに戻ろう何て考えないだろう。だってもしもそれで戻ったとしても、セツリは一人なんだ。


 そんな世界に、きっと意味なんてないんだろうからな。でも……それじゃサクヤって何なんだ? いや、普通に元々のセツリの御世話をするための存在なのか。
 帰すとか何とかの役目の方が寧ろ後付け。


「僕が正解か……でも何か期待に応えられるか怪しいけどな」
「何言ってるのスオウ! きっとセツリちゃんは偶然の中の当たりを引き当ててる。それらの運を無駄にしちゃ駄目だよ」
「リルレット……」
「女の子の運ってとっても大事何だから。毎日占い観て一喜一憂するほど! だから二人の出会いは奇跡なの!」


 何だか異様に熱く語られてしまった。それも僕が、さっきの失敗をちょっと思い出して弱気になったせいかな。運か……セツリにとって、僕がその役目を担ったことが果たして幸運だったのかは正直分からない。


 だけど男にだって運は大事でさ。少なくとも僕からしたら、LROを初めてセツリと出会えた事……それは思い返せば幸運だ。
 光花が咲き乱れるあの空間で、ベットに眠るセツリを見つけてから、僕のLROでの冒険は始まったんだ。あの出会いが無くちゃ、僕にとってLROはLROじゃないんだ。そう思う。
 訳分からない事を自分で言ってるけど、そう言うこと。


「奇跡ね。その奇跡ももう終わってるわ。だから諦めればいいのに」


 ため息つきながら柊が元も子も無いことを言いやがる。その言葉にカチンと来たらしいリルレットを僕は腕を出して制し自身で声を上げる。


「奇跡が終わったって別に良い。もう一度始める為に僕はアイツを追いかけてるんだ!」
「そう……だったよね。そんな君だから、シクラは面白いって言ってたんだっけ。だけどね、私達も役割があるの。託されたその役目……はついで何だけど、思い描く世界の為にあの子はやれないな。
 それに私達も幸せになって欲しいって思う気持ちは本物なのよ」


 柊は胸に置いた扇子で心を表す様に、それを優しく包み込む動作をする。こいつらが本当に、その保険の為の存在ならその気持ちが無いって訳でも無いと思う……けど、相入れない思いで有ることに変わりはない。


 僕はセツリに死んで欲しくないからリアルへ戻って欲しいと考えてる。だけど柊達は、例え死ぬとしても夢の場所に居ることが幸せだと考えてる。予想だけどね。
 そう間違っちゃいないだろう。その確執は簡単には埋まらない。だって命は一個しかないんだよ。こいつらはそれが分かってるのかと、僕は思う。


「お前等だってセツリの事をちゃんと考えてるのなら、それは生きて欲しいって事じゃないのかよ!? リアルに戻ったって、ここに来れなく成るわけでも、無くなる訳でもないだぞ。
 でもこのままずっとLROに居続けたらセツリの体は持たないんだ! どっちがアイツの為かなんか明白だろ!?」


 柊達がここでセツリを幸せにしたいと言っても、それはセツリが一度リアルに戻ったって出来る事だ。きっとその筈で、その可能性位こいつらなら分かってるだろう。
 でも、僕のその言葉をこいつらが受け入れた事はない。柊には初めて言ったけど、シクラの奴だって随分セツリをここに留まらせるにこだわってた。


 だから無駄なんだろうとは思う。けどそれでも、こいつらが自我を持って感情を育んで、誰かを愛おしいと思えるのなら、届く事だって有るかも知れない。
 それに言葉を紡ぐ事を最初から放棄したら、口の必要性なんて無いし、そしたらもう力でのぶつかり合いしかなくなる。


 一番単純だけど、一番効率の悪い事。それをリアルの言葉で言えば、戦争とかに成るんだ。でもやっぱり柊から帰ってきた言葉は期待に答えない。
 やっぱりそれがこいつらの総意なんだろう。


「あの子の為ね。でもそれは君の一方的な考えでしょ? だからこそあの子は君を拒否したんだから。そこら辺を分かってない様じゃ、もしもあの子にたどり着けても結果はきっと同じだと思う。
 あの子の為……何て散々考え尽くされてるのよ。マスターがそれこそ、『天才』と称された頭を四六時中使ってね。
 それに、君の浅はかな思いがどこまで追いつける? きっと全然全く無理よ。幸せの定義なんて、結局誰かが与える物じゃないもの」
「それは……」


 言い返す言葉が出てこない。そうだよなって思う。天才が考えた事に比べたら、僕の考え何て浅はかさの極みだろう。だって僕は子供で、ただの高校生だ。
 当夜さんの考えなんて及ばないし追いつけない。だってそうだろ? 僕には『フルダイブシステム』も『ライフリヴァルオンライン』も作れっこない。


 でも、それじゃあ、それってつまり……リアルじゃセツリを幸せに出来ない……そう当夜さんは考えたって事じゃないか。
 いや、それもちょっと違うような……僕は頭を振って考えを振り払った。


(本人が居ないのにこんな考察、意味なんてない。それよりも……だ)


 僕は前を見据える。そこには危ない格好をした、僕より少し年下っぽい女の子が白い冷気の中に佇んでる。けど、幼いって言っても、その表情に幼さなんて微塵もない。
 その姿で既に完成された様な雰囲気。人間とは違う存在だから、そうなり得たのかも知れない……それが、僕の敵だ。


「確かに、柊が言うように幸せの定義なんてそいつの物だ。誰かが願った事なんて、押しつけにしか成らないのかも知れない。
 でも……大切に想う人の為に幸せの方法を考える事、それを伝えること、そしてそのための行動……全部しょうがない事なんだ。
 人が幸せを感じる瞬間は勝手でも、そこに至る道は一人じゃ開けない。そう思いたいだろ」
「人は勝手に幸せを感じて、身勝手に不幸に陥るって事? 随分寂しい事を言うのね。結構意外よ」


 寂しいか……でもそれはちょっと違うと思う。確かにそりゃあ、勝手身勝手言えば寂しいよ。でももっと違う思いが隠されてるだろ。
 それこそ繋がりとか思い合いとかだ。


「そういう事じゃない。考えてもみろよ。一人じゃいけない幸せの場所だぞ。振り返れば、きっと一人じゃ無いって事だよ。
 まあ誰もがそれを願って手を貸してくれる分けたわけじゃないかも知れない。けどそんな何気ない繋がりも思い合いだろ。
 世界が回る条件だ」
「世界が回る……だなんて。少なくともリアルはそんな綺麗な事だけで回ってなんか居ないわよ。それならLROの方がよっぽど綺麗。
 だからあの子には綺麗なこの場所が似合うでしょ?」
「似合うことと、生きることは違うだろ。僕は何言われようと、アイツを生かしたいんだ!」


 そう、だから間違いを犯しても追いかけてる。諦められないのは、セツリもその気があった筈だからだ。あの時見せた涙も言葉も、それを証明してる。


「諦めてくれる気は無さそうね。言葉で済めばそれが最良だったんだけどな。汚れるの嫌だし。でも、これを聞けば君の考えも変わるかも知れない」
「?」


 これ以上何か有るのか? 柊の奴はこれまでの妖しい笑みから外見相当の、素直な感じに微笑んでる。まあそれが返って不気味何だけどな。
 どうすりゃいいのよ! とか突っ込まれそうだが、こればっかりは仕方ない。こいつらは何やっても、恐怖の対象だ。


「私達の究極の目標。それはマスターの考えも越えた事かも知れないわ。それはまさに『真の命改変プログラム』その神髄。
 私達はねスオウ……あの子の為の、全く新しい世界を造ってるの」
「世界……だと!?」


 いきなり随分壮大な事を言い出した柊に、僕は開いた口が塞がらない状態だ。セツリの為の世界の創造? 今時そんな事、映画やマンガでもやらないぞ。
 それに命改変プログラムの神髄ってどういう事だよ。真の方がこいつらの使う部分ってのは分かったけど、それが世界を造るって事になるのか? てか出来るのかだ。


「そう、私たちが何でNPCに自我を目覚めさせてるか考えてよ。私たちが何でアルテミナスを攻めてるかも。その全部には意味があるわ。
 無駄な事なんて、基本私たちはしないわ。シクラくらいね。シクラは私たちの中でも一番情緒豊かで、ある意味人間らしい子だから」


 人間らしい……確かにシクラはそんな感じがある。この柊に比べたら、年相応に遊んでます! って感じだった。てか全てに意味がある……か。
 最初に出会ったのがシクラのせいで、そこら辺も実は遊びとか思ってたのは間違いか。世界を造る為に、全ては必要な事だと言う。
 NPCを目覚めさせて、三強の一国を落とす事。


「あの野郎のせいでこっちは随分振り回されたけどな。確かに人間らしいって意味じゃお前よりシクラだよ。それでもアイツのやってた事も無駄じゃないのなら……世界を造る事に必要な事か。
 NPC……アルテミナス……正直に言えば世界を造るって事自体が想像出来ねーよ」


 だってそうだろ。世界って何だよ。一高校生は日々の生活に精一杯なんだ。特にこれまでの僕は、ただ目の前の状況を突破していく事しか考えてなかった。
 そしてその先でセツリを救える筈だって思ってた。だけど、いつの間にかいろんな思いが絡み合って遂に世界まで……放された手は結構遠いと感じてしまう。
 そしてその艶やかな唇から放たれるは、衝撃の世界想像。その方だ。


「そっか、なら教えてあげる。この世界の住人は自我を持って解き放たれる。そこに余所者なんていら
ないのよ。私達が作り出す世界はLROと言う世界の人からの解放!」

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