命改変プログラム

ファーストなサイコロ

封じられた牙



 真っ白な冷気の中に奴は佇んでた。氷を砕いて飛び出して来た僕たちに何をするでも無く、ただそこでその姿を見せつけてる。
 冷気を放つ白と薄い紫が混じりあった扇子を手に、氷で作られた様なその花の姿……いや、ドレスなのかな。花は装飾。


 けど装飾を越えた量ではある。腰から無数に伸びたそんな花は床へかなり広がってるし、頭にもワンポイントとしてついてる。
 邪魔に成らない様に括ったのか、今はサイドアップって奴か? けどそんな下半身のボリュームとは正反対な位に上半身がかなり無防備な状態になってる。


 鎖骨も肩も大胆に出てるし――てかそんな問題じゃないな。氷が体を這って、それが胸の膨らみに届いてるだけ。細い氷が背中にも回ってそうだけど、氷の周りは皮膚を浸食するように成ってるんだ。


 腰のかなり際どい部分から胸に向かって出てる氷。下半身のあの豪奢なドレスはその氷が厚みを増した感じなのか

 てか、柊の華奢で可憐とも思えるほどの白い肌に張り付くあの氷……かなり危ない感じだ。
 実際あれって、角度変えれば中身が見えるんじゃね? とか思っちゃう。


(いやいやいや、それはあり得ないだろ!!)


 そういう劣情にLROは厳しいんだ。限りなくリアルだからこそ、そこら辺は分別を付けてるんだろう。だからきっと見えないよ。


「スオウ……」


 何だか横から少し声色が落ちた女の声が……僕はなるべくそちらを向かない様に気をつける。だって絶対に冷めた目で見られてるもん。


 見なくても分かる。きっと僕だけじゃないのに。てか、男なら思わずには居られないだろ。一瞬でも考えない分けない。
 けど同時にゾクッともしてた。自身を氷に包んだあの姿。あれがきっと本気の証だろうから。綺麗な中に棘がある。そんな女性がここには沢山で、良く学んだからな。




「さむ……」


 仲間内の誰かがそんな事を呟いた。そう言えば吐く息が白く成ってる。柊は不気味な程微動打にしないからこっちも動きずらかったけど……これって。
 僕は剣を握る腕を少し動かしてみた。


「!――堅い」


 体全体がそんな感じ。冷やされてるんだ、この冷気に。気づかないほどゆっくりと、でも急速に。僕たちは気付いてなかっただけで、柊から攻撃されてたんだ。
 いかにもアイツらしいじゃんか。自分が手を下さずとも倒すってさ。汚れるのが嫌いらしいからな。でもそんな簡単にやられてたまるか。


「みんな、これ事態がアイツの攻撃だ。動かなきゃ凍らされる。僕が正面から行くから、援護頼む」


 僕の言葉にみんな頷いてくれた。モタモタなんてしてられない。動こうとしたことで事態の深刻さに気付いた様だ。
 てか早い奴は足下が氷にくっついてたりしてる。派手に凍らせるだけじゃ無いわけだ。剣を構えるだけで体の節々からパキパキと音が聞こえる。


 僕の体も思ってた以上に影響を受けてる。そんな時ガシャンガシャンと重い音が後ろで聞こえた。振り返るとそこに落ちてるのはそれぞれの武器。


「腕が……」


 そんな声が呟かれてる。どうやらこの冷気で腕の感覚が無くなってるらしい。遅かったのか? 


(いや、まだ間に合う筈だ!!)


 風が僕の周りに集い出す。イクシードは継続してる。だから一気に、こっちに引きつける。その間に暖かくすれば感覚も戻るはずだ。
 竜巻の様に白い風が自身の体を包む込む。そして足に力を込めて……


「行くぞ!!」


 自身の周りの風を二つに分けて刀身へ。イクシードでスピードもかなりアップしてる状態なら、柊まで一瞬だ。そう思ってた。
 けど、僕の体は動かない……


「何……だ……これ?」


 首も動かない状態。視線を這わせると見える範囲でも白く成ってるのがわかった。それは柊の体を這ってる氷と同じ。
 これはつまり、今までの比じゃないスピードで僕の体が凍ったって事か? でもどうして……すると、今まで微動打にしなかった柊が、顔を上げて妖しく笑った。


「ふふふ、どうしてって顔してる」


 まさにその通り。それに氷が顔にまで来ていて、口が動かせない。問いただしたいのに、それさえ出来ない何て。


「スオウ。ちょっとどういう事よ!!」


 するといきなり後ろから聞こえた元気一杯な声。リルレットが横に来て、柊に向かってそう叫ぶ。何だか随分軽快に動けてるように見えるな。
 こっちは症状が進んでるってのに何で? 


「あらら、雑魚が粋がっちゃって。別に私は何もしてないわ。今まで通りにしてただけ。でもスオウが凍って、貴方達が動けてる……その違いは明白でしょ?」


 僕が凍ってリルレット――達? が動けてる理由。達って事は後ろの方も回復しつつあるのか? でもだから何でだよ。
 勿体ぶった言い方しやがって・・明白な理由、それが何か分かれば苦労なんてしない。腕の先で吹き荒れる風の唸りが耳の近くで聞こえてる。


(これをぶつけられれば……あの氷全部砕いてやるのに)


 けどそんな事は、今の状態じゃ夢のまた夢。


「何もしてないわけ……スオウどんどん白く成っちゃってるよ」


 自分の全身は見えないけど、リルレットがそう言うんならそうなんだろう。本当に何で僕だけ? イクシードがこんな冷気何かに負ける筈が……


「分からないかな? その自信満々のイクシード、寒いでしょ?」
「!!」


 その瞬間、まさかって考えが頭を貫いた。いや、だってイクシードは僕の切り札なんだ。でも、柊の奴がただ冷気を出してるだけで、僕のこの状態の間にみんなが動けるって事は、本当にそうなのかも知れない。


「何言ってるのよ? 寒くしてるのはあんたでしょ!!」


 そんな風に叫ぶリルレットの声が聞こえる。けどその時、さらに違う声が後ろから聞こえてきた。


「違う、風だ! イクシードが生み出す強力な風が、奴の冷気を巻き込んで彼の周囲だけを著しく冷ましてるんだ!」


 そう、僕も同じ事を思ってた。「寒いでしょ」と言われたとき、この頼ってきた風が脳裏に浮かんだんだ。風に寄って奪われる体温は安くなんてない。
 それが冷気をはらんで、しかも周囲までもそれだけで体の機能をおかしくさせてる状態なら奪われる体温は想像以上。


 吹雪の状態とも変わらなかったのも知れない。みんなの症状が軽く成ったのは、イクシードがそこら中の冷気を巻き込んだ風を作ったから。
 それを一身に受けてた僕がこうなるのは当然か。


「風って……それならイクシードを解けば大丈夫って事だよね?」
「ええ、後は自分が元の状態まで回復させて見せましょう」


 そう言う二人の会話が聞こえて来てた。だけどイクシードを解くって事がどういう事なのか……それは切り札を無くした状態で柊に勝たなきゃいけないって事だ。


 それがどれだけ困難か……イクシードはだって僕の心の支え。道を切り開いてくれる絶対的な力。
 そりゃあ、イクシードだけで来た訳じゃないけど、使えるか使えないかで心の余裕が違ってくる。


「ほら、聞こえてるでしょスオウ! イクシードを止めて!」


 リルレットの声は確かに聞こえてる。だけど僕の苦悩は止まらない。だって、イクシード無しで奴に勝てるか? イクシードは乱舞の機能を模して効率化し使用時間を延ばしてるから、その分再発動までの時間が乱舞より長くなってる。


 その時間は十分……普通のボス戦なら何十分もかかるらしいからチャンスはあるかも知れない。だけどそれはちゃんとバランスに沿ったボス戦の話だ。
 みんなで頑張って、ちゃんとやれば確実に倒せると保証されてる敵。けど……今僕たちの前に居る奴はそうじゃない。


 バランスを無視した存在で、それだけの力を有してる。それは今までの攻撃で証明されてるんだ。そんな相手に十分……次があるか何て分からない。
 それに今からの十分は長過ぎる。セツリを追いかけたいのに、それじゃ遅いんだ。だけどこのまま氷漬けにされる訳にも勿論行かなくて……のし掛かる不安から、僕はイクシードを手放せない。
 そしてそれを見破ってる様に柊が口を開く。


「出来ないわよね。だってイクシードはあの子に辿り着くのに必要だもの。その前に私を倒すためにかしら? それが無くなったら自信も無くなる」


 技同様冷たい言葉が刺さってくる。自信も無くなるか、言ってくれる……当たってるけどな。


「そんな事! ……でしょスオウ!?」
「じゃあ何で風は消えないの? イクシードを手放すのが怖いからよ」


 そんなやりとりが行われてる間にも、僕の視界には氷が浸食して来だしてた。時間がない……イクシードは思うだけで止める事は出来る。
 けどそれでいいのか・・イクシード無しでやれるか?


「それは、確かにイクシードが使えないのは痛いけど……でもここでスオウが倒れたら元も子もないよ!」


 それはそうなんだけど、前に進めなくても意味なんてない。このまま凍るのも、柊の先に行けないのもイヤなんだ。
 だから……どうすればいいのか分からない。


「そうだ、ソーサラーの魔法ならイクシードを止めなくても暖かくすることが出来るんじゃ?」
「それです!!」


 そう言って二人は後ろに何かを言っている。この際、動けるようになってイクシードも手放さないで良いのであれば何してもいい。
 炎系の魔法をぶち込んでくれって気概だ。どうせHPは減りはしない。


「行くよスオウ!!」


 後ろからそんな声が聞こえてきて、光源が前に影を向ける。もう来てる筈だ。


(頼む!)


 僕はそう祈りながら心だけで身構えた。だけどその魔法が僕に当たることは無かった。幾ら身構えてても衝撃なんて一つも無い。どういう事だ?
 撃ったはずだよな? すると後ろからリルレットの声が聞こえた。


「なっ……そんな! あの程度じゃ駄目みたい。もっと強いのお願い!!」


 一体何が? 僕には前しか見ることは出来ないから分からないけど、想定外の出来事が起きてるみたいだ。撃ったはずの魔法が当たらなかった……まさか柊が?
 だけど奴の武器である扇子は振られる事は無かったはずだ。じゃあどうして?
 真っ白い冷気が周りを流れてく。僅かに吐く息までそんな冷気と大差なく感じれる。


(どうして何て僕が考えても、どうにも出来ない事か)


 今の僕には仲間を信じるしか出来ない。遠慮なんて良いからおもいっきり……きっとやってくれる。




 そして今度は頭上から熱源が降ってきてる。これはさっきの炎の壁? いや、違う。もっと攻撃的になってる。てか大きい? 


「「「いっけえええええ!!」」」


 三人のそんな声が鼓膜に伝わる。これは相当自信あるんだろう。確かにこれだけの炎の魔法なら確実だ。柊も動かない様だし。
 もの凄く余裕の顔で佇んでやがる。体が動く様になったら一瞬でこの風、全部返してやる。そう思ったけど


(あれ? 炎は?)


 周囲に落ちていく僅かな残り火は見える。だけどさっきまで頭上に落ちて来てたあの炎は何処へ? 


「そんな……」
「まさかこれ程だなんて・・後はないのですか?」
「俺が持ってる炎系ではあれが精一杯なんだ。でもあれでも結構な魔法なのに……」


 一同が肩を落としてるような会話が聞こえてくる。それは僕も同じだ。あれだけの魔法が掻き消えるなんておかしい。
 やっぱり柊が何かしてるとしか。けどその時、僕の瞳はある現象捉えた。それは掻き消えた魔法の炎の一部が舞い落ちてるとき、それが風に巻き込まれた瞬間に消えていった。


(まさか、魔法が届かない理由って……)


 僕がその可能性に気付いたとき、リルレットが僕の前に進み出て言った。


「あのねスオウ、無理みたい。放出型の炎は全て手前で消されちゃうの。イクシードの風で」


 まさにそれはさっきの光景と同じ事が起こってたって事なんだ。イクシードの強力さがこんな所で裏目に出るなんて……けど、いつもあれだけの炎を消す何て事が出来るかは疑問だ。
 きっとこの条件下だからだ。今イクシードが纏う風は冷気何だ。だからあれだけの炎をかき消せるだけの力がある。


 まさか柊の奴、分かってたからあんなに余裕だったのか? いや、そもそもこうなってからは全てが奴の狙い通りだとしてもおかしくないと思えてくる。
 この冷気の充満も、そもそも僕がイクシードを使うことを分かってたから打てた対応策。まんまと僕はそれにはまったんじゃ……だからこそ、何もしてこなかったんだ。
 僕がイクシードで自滅すると分かってたから……何かそれって


(すっげー悔しい。柊の手のひらで踊ったのかよ僕は。そして今も……)
「お願い! イクシードを止めて!! それしか無いよ!」


 リルレットの顔が膜掛かった様に見える。既に顔の半分以上が凍ったのかも知れない。なまじ見えない分、怖い。いつ自分が凍りきってしまうのか……それを考えるとさ。


「さあもう諦めなさい。イクシードがなければここは抜けない。分かってるでしょ? それどころかイクシードが無いと君はただの初心者。
 そんな初心者には万の一つも可能性何て無い。頼ってきたイクシードに邪魔されて、惨めに手放しなさい。そして無力の中で立ち止まるの。
 そしてくれると助かるわ。だって私汚れるの嫌だもの」


 そう言って優雅にワンターンする柊。氷のドレスが光を反射して煌めいてる。もう勝った気満々だな。でも確かに、僕はイクシードが無かったら初心者だ。
 こうやって熟練者の中で対等以上に居られるのはこの力のおかげ。『乱舞』が僕を選んでくれて、『イクシード』が更に昇華してくれたおかげだ。


 そんな二つの繋がりは大きく強いと思ってた。だけどその繋がりが今思わぬ問題となって立ちはだかってる。イクシードの先をやるには先にイクシード事態を発動させてることが条件。
 だからイクシードが十分間使えないって事は、その先の力も使えないって事。


「スオウ! あんな奴の言うことばっかり気にしないで! スオウはイクシードがなければ何も出来ないの? スオウの信頼って結局そんな力だけだったの? 
 それじゃあ私たちは何なのよ! 何の為に私たちを求めてたの? イクシードだけで勝てるのなら、私達なんていらないじゃない!!」
(リルレット……)


 確かにリルレットの言うとおり、僕はみんなの力を元から頼ってた筈だ。そうじゃなきゃきっとここまでこれ無かったし、もっと早くで力尽きてた。
 確かにこれじゃ僕はみんなよりイクシードを信頼してるみたいかも。


 するとリルレットが凍り付いて行く僕の頬に手を添える。その瞬間リルレットの手にも氷が這っていくのが見えた。このままじゃいけない……けどリルレットは気にせずにこう続けた。


「確かにイクシードはとっても強力で、きっとこれまでもスオウの道を一杯切り開いてた力だから、それが戦闘中に使えなくなるのが怖いの分かるよ。
 私達はそんなイクシードには成れないもの。けどね、私達は力を合わせる事が出来るの! 私達それぞれ、きっとそんな強くないけど、合わせた力は絶対にイクシードにも負けないよ」


 そう言って最後に優しく微笑むリルレット。その笑顔になんだか怖がってた自分がバカみたいに思えてくる。みんなを無理にでも引き留めたのは僕なのに……必要だって言ったのに、今がその時じゃ無くてどうするんだ。


 絆とか思いの力とか、僕はそれを知ってる筈だ。イクシードだから倒せるんじゃない、負けない思いが集うから道は切り開くんだ。


(もう、いいか)


 そう思った。イクシードには少し休んでもらってもさ。みんなとなら、きっと倒せる。全員無事に元のLROに戻るし、その時はセツリもエイルもきっと一緒だ。
 いつかここに笑って戻れる様に・・そう願ったじゃないか。今は無惨な氷の世界に成っちゃったけど、全部終わればまた元通りになるだろ。
 楽園なんだ。きっとここはセツリのさ。そしてそれを願って作った人の。






 風が次第に弱まっていく。自身の周りに集っていた風が周りに拡散して行ってるんだ。そして風が収まると同時に炎の魔法が容赦なく打ち込まれた。


「ってっててって――あっちーだろ!!」
「あ」
「お」


 思わずあがった僕の叫びに一言づつ言葉を漏らすリルレット達。すると僕を撃ちやがったソーサラーがぞんざいにこう言った。


「喋れる様になったな」


 まあ確かに一気に体はホッカホッカだけども!! 確かにさっきまでは容赦なく撃って来い! とか思ってたけど、このシーンでやっちゃうか。
 何だか風が冷気を周りに流していって、幻想的に成った中で佇む自分とリルレットが絵になってたのに……一気にこれじゃコントだろ。


 せめて一声欲しかった。まあでもこれで、ようやくまともに戦える。まともかは実際微妙だけど、体はまともに動く様になった。


「ホットアーマー!!」


 そんな言葉が聞こえたと思ったら、今度はその暖かさを包むような魔法が施された。後ろを向くとヒーラーのアイツが補助系魔法をしてくれたみたいだ。


「今のこの場所は氷雪地帯と同じ様なので……最初の時は気付くのが遅れて申し訳ない」
「いや、いいよ。しょうがなかったし、これはありがたい」


 これで冷気に凍らされる心配はなくなった。ちゃんと対応できれば結構やれる物だな。流石は熟練組。便利なスキルを一杯持ってる。
 一礼をして後ろに控えるヒーラー。何か執事みたいだな。まああそこが定位置なだけだけども。


「信じてくれてよかったよ」
「何のことだよ? 僕はいつだって仲間の事は信じてるさ」
「むう~何よそれ!!」


 リルレットには軽口で返してみる。まあ本当に助けられた訳だけど、何か気恥ずかしかった。するとその時、甲高い音がこの場に響いた。
 目を向けるとそこにはヒイラギの姿。あの音はどうやら、地面を踏んだ音か? まあアイツにとってはどっちを選んでも余り大差無いんだろうけど……だがこっちの方が面倒なのかな。


「あらあらあらら、私も舐められた物ですね。薄っぺらい繋がりとかで勝てる何て思われちゃってるんですから、ホント心外です。
 あのまま凍っておけば、この先の絶望を知ることは無かったのに……やっぱり貴方はバカですね」
「ああ、別にバカでもいいさ。最近それも悪く無いかなって思ってきたし。立ち止まって何も出来ない奴より、仲間を信じて進み続けるバカがいいんだ」


 僕はそう宣言してやった。すると柊は扇子を音を立てて畳んだ。それは今までの行為から考えると、次の攻撃に入る動作。そして柊は短くこう言う。


「あっそ」


 そして腕を前に振って開かれる扇子。すると真っ白な壁が迫ってきた。いや、あれは冷気の嵐だ。


「「「うああああああああ!!」」」


 あっという間に視界が真っ白に変わる。そして吹き荒れる冷気の中で煌めく小さな氷。それが体に当たって大きく成っていく。


「またこれか!」


 どうやらつくづく凍り漬けにしたいらしいな。そんな中で聞こえたリルレットの声。


「スオウ! イクシードが無くても出来るって所、アイツに見せようよ! 併せて!!」


 その瞬間リルレットのスキルの光が見えた。実際何を合わせれば良いのか何てわからない。けどここはやるしかない。


「いっくよおお~バサラ!!」
「雷放!!」


 二つの色の違う雷撃が冷気の嵐に放たれた。それらは絡み合いそして大きく弾け飛ぶ。その衝撃で嵐も冷気も拡散していった。
 そして雷撃に当てられた氷がきらめき僕らの周りを落ちていく。


(やれる!)


 僕は心でそう確信して、自慢の剣を奴に向ける。「覚悟しろ」と言わんばかりに。

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