命改変プログラム
氷の牢獄
暗く底が見えないほどの湖に僕は落ちて行ってる。拒絶されたその腕を伸ばしたまま、水をかき分ける気にもなれないでいた。
(セツリ……)
振り向きもしなかったなアイツ。僕のせいか……届かないのかなもう。だけど……まだ上を見上げれば僅かな光がそこには見える。
ユラユラと揺れるこの世界の太陽の光。きっとゆっくり優しく流れて筈の時間が有ったんだって、ここに来て思ったよ。
セツリがそれを望んだことだって、誰にも否定出来る事じゃないのかも知れない。特に家族でも無い僕なんかはさ。
自分の人生だ……好きにさせれば良いのかも知れない。けど人は一人じゃ生きてなくて……でも、アイツはまだ一人きりだと思いこんでる。
もうそんな事絶対に無いのにさ。少なくとも僕達はそう思ってるんんだ。だから強引でも何でも、関わったからにはこっちは見捨てられない。
(助けたい)
そう思う心をまで拒否はさせない。今はまだ届かなくても、間違って無いと思うなら、諦めたらダメなんだ。本当はさ……もっと違う形でここに来れたかも知れない。
前にサクヤの映像で見た、暖かな場所であれたかも知れない……のに、去っていったアイツは寂しそうだった。僕のせいでだ。
でもだから! やっぱり自分しかダメなんだと思う。二対の流星の剣セラ・シルフィングが風を呼び、僅かな光をここまで届けてくれる。
(まだ流れてる。風はきっと届くよな)
想いを感じる様にセラ・シルフィングは応えてくれる。示す道はまだ続いてるって言ってくれてる様だ。
(行くか……)
握った二対の剣。僕はその剣を水中で振り切った。続けさせるために、諦めないで追いかけよう。だって僕達が頑張って来た旅の終わりはこんなんじゃない。
こんなの絶対に認めれる訳がない。
水面に大きな水柱が昇る。それは僕が振り切ったシルフィングの影響だ。真っ二つに分かれた水が風によってへだたれてる。
そんな中に僕は居た。暖かな日差しが惜しげも無く降り注ぐ。見上げると真っ青な空が広がってる……けど、あの大きな扉はそこにはもう無い。
閉じた事で消え去ったようだ。これでまた、追いかけっこの始まりか。でも、ここにはまだ足がかりが居る。
「あ~あ~、派手な復活。でも良かった。あれで終わりじゃ面白味が無いですもの。もっとあがいてみなさいな。そしてそんな貴方を木っ端微塵に潰してあげる」
その声は割れた水面の向こう側から聞こえ、僅かに見えるその姿……きっと柊だな。やっぱり僕の事を潰したくてウズウズしてるようだな。
別に嫌われる事をした覚えはないけど、きっとセツリ関連何だろう。
奴は水面を歩くことが出来るから、水面に立つこと何てお茶の子さいさいか。でも丁度いい、だって最後の望みの綱が柊だからな。こいつだけは逃がせ無い、聞きたいこと、知りたいことが山ほど有るんだ。
「足掻いてやるよ。足掻いて足掻いて……僕はもう一度セツリを取り戻す! だから、お前を倒す!!」
湖の底を蹴って割れた水を駈け上がり水面にあがる。でも僕は水面に立つ事は出来ないし、泳ぎ系のスキルも持ち合わせちゃない。
だから反撃を食らわない程の一撃を叩き込んで、態勢を立て直す時間が絶対的に必要だ。水面から空中にまで飛んで柊の姿が見える。十四・五歳の容姿で、ヒラヒラした服にあの扇がミスマッチに見えて仕方ない。
でも柊が持ってるから許される? そんな感じが有るのも事実。けど厄介だからなアレ。攻撃の原理がわからない。でも何であれ、今はただ思い切りの一撃をぶつけるだけだ!
「食らええええええ!!」
シルフィングに風と、そして電気が宿る。これで奴を水中にまでたたき落とせば、それ相応のダメージが期待でき筈だ。水は電気を良く通すからな。
だけどその時、柊はあ扇子を俺に向けた。慌てた様子も無く、奴は優雅に扇子を回してクルリと自身も回る。その瞬間だ。俺の視界も同じように回りだしたのは。そして気付いた時には水中へ落とされてた。
しかも自分で発生させてた電気で思わぬダメージを被った。電気による感電は直接的な自身の攻撃……ではなく、能力と現場の相性に寄る二次効果。だからしっかりとダメージとして通りやがった。
「ぶはぁ!」
防具や服……それに武器もやっぱり重いな。でも全て重要でどれが掛けても困る代物。何とか顔は引っ張り出した物の、このままじゃ溺れそうだ。
てか、どうにかして陸に上がらないと不利すぎる。
「スオウ!」
その時陸の方から聞こえた声。それはリルレットだ。けどみんなも地に伏せてる状態に見える。どうやら柊のあの不可解な攻撃にみんなやられてしまってる様だ。
あれだけの人数差をも物ともしないだなんて……これじゃあマジで、今の場所で戦うのは自殺行為に等しい。シクラのそうだったけど、こいつ等はLROというゲームに乗っ取った戦い方をしない奴らだ。
まあだからこそ『裏側を知る者』なんだろうけど。ようはそれって反則だ。でも俺たちはその反則的な力に挑まなきゃいけない。でなきゃたどり着けないんだ。
諦めないと決めたのなら、こいつらにも勝たなきゃいけない。
「あらら、折角生かして置いたのに邪魔する気なのね」
そんな事を言う柊の頭上には魔法の光が有る。あれはソーサラーの魔法……それがまっすぐに柊めがけて降り注ぐ。結構大きな魔法だ。
避ける事なんか出来る訳ない範囲。それに術者は遠く、今までの様に、届く前に何かやる何て出来ないだろう。これなら!
「甘いのよ。本当にね」
その瞬間真っ直ぐに落ちていた魔法がネジリを伴って曲がった。そして僕の方へ落ちてくるじゃないか! なんて事しやがるんだアイツ!
「うおおおおお!!」
僕は必死に泳いだ。重い体を引きずって必死にさ。でも魔法は迫る迫る。そして高い水しぶきをあげて水面へと落ちる。その瞬間、再び高い波と共に僕は水の中へ引っ張られた。
「がぼぽぽぽっ……」
口の中へと進入してくる水が苦しい。アイツ・・何でもあの扇子通りに操る事が出来るのか。魔法ま
でその対象なんて、どうやって攻撃を仕掛ければいいんだ?
くっそ、本当に反則的な奴らだ。ああいうのが後三人位いるんだっけ? イヤになるな。一体何者何だろう。
気になることは山ほど有るけど、けど今は――
「がっはがは!!」
水面に何とか出て空気を貪る様に吸う。マジで危なかった。やっぱり水中はいろんな意味で危険だ。
「どうしたの? 苦しそうですね。丁度いいからもっともっと苦しんでみる?」
そう言って向けられる扇子が異様に怖い。いつの間にか側に歩いてきてた柊は良く見たら汚れ一つ無い。さっきまで一人で多数を相手にしてた奴の格好とは思えないな。
それだけ圧倒的だったって事か? みんな確かに強いはずなのに……それでも届かないのかよ。俺は抵抗するようにシルフィングを交差させて構える。
けどそれは何の意味もなく、柊が扇子をクルリと回すと、僕の体も同じように逆さになった。つまりは足が水面から出てる状態。当然、いきなり奪われた空気に軽くパニックだ。
きっと相当間抜けな格好だろうな。でもこっちは必死に体を動かそうとしてる。だけどどう足掻いても頭が上へ行くことはない。
(あ……やばい……暴れたせいで酸素が足りない……)
くっそ、こんなふざけた攻撃でやられるなんてあり得ない。歯を食いしばり、薄れゆく意識の中でシルフィングの片方を水面の柊に向けて振りあげる。
届かない訳がない……だってシルフィングは風を纏う剣なのだから。もう一度水ごと切り裂いてやる。そんな気概を胸に振るシルフィングは、僕の思いに応えてくれる。
刀身から生み出る風は水の中でうねりとなって柊へと向かう。水面から飛び出す時には、風は水をも巻き込んで強力な一撃となっていた。
そこにセラを冠する事で得た雷撃まで重なりあえば、三つの特性を複合させた攻撃へと相成る。
(届け!)
僕はそう願いながら、攻撃の行く末を見守る。柊は向かいくる攻撃を前に、一度扇子を畳みそして再び開く。いつものモーションにワンテンポ加わった動き、けど後は同じだ。
迫る攻撃に向けて扇子を振るうとたちまち攻撃が分かれる。風のうねりと雷撃、そして水。三つの力の内、風と雷撃の二つは扇子の動きのせいであらぬ方向へ曲げられた。
けど水だけはそうじゃない。ただの水柱だけど、確実にそれだけが柊の扇子の影響を受けてなく見え、そのまま向かってる。
「濡れるのはいや」
けれどそう言った柊には最後には届かなかった。奴は再び畳んだ扇子を開いて、クルリと回して今度は逆側に凪ぐ。すると水柱は風に煽られでもしたように、柊を避けて湖へと帰っていった。
「残念。苦し紛れの攻撃も届かなかったわね」
確かにそうだ。でも苦し紛れの目的は達してる。奴に支配されてたこの体……柊が扇子を畳むと同時に自由に成れた。
それにさっきの行動の意味……あの「畳む」という動作は『リセットとスタート』を意味してるんじゃないか? 対象のリセット、そして変えた対象への力の干渉のスタートだ。
そして思わぬ収穫が、あの力は一度に二つまでにしか影響しないって事だ。まあまだ確証は無いけど……それとも相手の力への干渉なのかも知れない。
さっき影響を受けなかった水は、セラ・シルフィングの力じゃなくて、いわばその干渉で起きた余波みたいな物だ。
だからって線も無くない。でもどちらにしろこれは使える。この湖から脱出するためにさ。
「一つではだろ? じゃあこれならどうだ!!」
僕はそう叫ぶと、水面で両手のシルフィングを振りかぶる。それに伴って再び風が――って水がついてこない? いや、片方は水も伴って再び柊に向かってる。けどもう一方は風と電気だけ……
(どういう事だ? 腕の振り方が不味かったとか?)
ただの干渉だけにシステムが補ってくれてる訳じゃないから、そこら辺は技術なのかも。右は利き手だから良いとして、問題は左だな。
てかそんな事を考えてる間に、柊は一線で両方の風と電気を退けていた。残ったのはやっぱり水柱。同時に二つしか……なんて事は間違いか。
「幾らこんな見窄らしい技打とうと、私の固有スキル『天扇』には及ばないわよ」
『天扇』――それが柊の振るう力の名称。固有スキルってつまりは奴だけの唯一無二って事か。それって『バランス崩し』と同列クラスじゃないか?
まあカーテナ程派手じゃないし、いろんな特性があるって訳でも無さそうだけど、そう言えば攻撃スタイルが似てる気もする。
相手に触れずに倒すところが特に……
「くっそ!」
水柱も足蹴にした柊はこちらに扇子を構えようとしてる。またあの攻撃に捕らわれたら、逃げれるかわからない。僕は息を大きく吸い込んで、水中へ潜る。
その瞬間、僕の頭上ではあり得ない事が起こってた。
(水が……握り潰されてる!?)
どういう事かはわからないけど、特定の範囲の水が握られた様に細く成ってる。しかもその間にくり貫かれた場所へ水が入ってこない。何なんだろう……水の中からのせいか、何かが見える。
握りつぶされた水は細く空へ延びて、それを成し得る空間の形成。それは丸い……丸い!? まさかあの扇子を回す動作……何かが見えかけたその時、水面を踏みしめる音と共に握られた水の横から柊の姿が見える。
そして何故か水中にまで届くあの音……パチンと扇子を閉じるあの時の音。それと同時に戻りゆく握られた水。その陰で柊が扇子を開くのが見えた。
(やらせるか!)
僕は再び両手の剣を振りかぶる。そして今度はそれと同時に岸に向かって泳ぎ出す。分析も大事だけど、生きることも大切だ。
結構な収穫はあったし、今は同じ大地を踏むことが大事だ。そうしなきゃ、やっぱりこいつとは渡り合えない。
(だけど、やっぱ重い)
思うように進めてるのか正直わからない。成るべく顔を出さない様にしたいけど、酸素が無限に持つわけ無くてどうしても息継ぎは必要だ。
けれどきっと柊もその瞬間を狙ってる。それに向こうは水面を歩いてるんだ。その気になれば走れもするだろう。泳いでる僕が逃げきれるのかさえ危うい賭。
幸い、奴の攻撃は受け身の姿勢が多いから水中にまで届かない様だけど、奴だけの固有スキル……あれだけとは到底思えない。
(うぐ……そろそろ息が……)
上からどこまで見えてるのか知りようが無いけど、何も対策を練らずに顔を出せばきっとそれまでだ。奴の天扇は初動作なら軽く振るか回すだけで事足りるからな。
無茶を承知でやってみるか!
ゴボボボボ……左右の足をバタつかせ、更に湖の深くに身を沈める。かき回された水が泡となり、暗い場所から光がいっぱいに広がる水面へと上ってく。
この湖、今まで特に表現しなかったけどかなり綺麗。透き通った水は地上から見たら空をそのまま写した様に蒼かったし、水中でも結構な深さまで光が届く。
そして透明度に差があるのか、水中での演出なのかは知らないけど、雲の切れ間から雨の後に伸びる様な、光の線がここでも見れるんだ。
それはまさに幻想的で、もっと自由に泳げれば空を飛んでるみたいに成れるのかもしれないと思うほど。まあだけど今はそんな感慨に思いを馳せてる余裕は実はない。
この水の透明度がある意味怖いし、少しでも光の届かない場所まで泳ぐ。そして後はここから一気に空気と陸を目指して上昇する訳だけど、その間にダミーを幾つも出さなきゃな。
(気を引ければいいんだから、今までの様な繊細な力のコントロールは抜きで行くぞ!)
途中で溺れちゃ意味がない……だけどどこに上がるかも悟られる訳にも行かない。僕は力の限り水を蹴りながら、左右の剣をそれぞれデタラメな方向振り続ける。
幾多も発生する風のうねりは水面で派手な音を立てて舞い上がるだろう。そんな幾つ物ダミーの中に紛れ込む。それしか今の僕に出来る事はない。
体中の酸素が腕と足に取られて行くようだ。次第に水が膜の様に感じれてくる。上に進むにはその膜を破らないと行けないみたいなさ。
水面はもうすぐ……だけど既に腕は鉛の様に重かった。とてもじゃないが動かせない……武器を手放さないようにするので精一杯。
最後に打てた風は四つ……その中に紛れ込めなきゃ意味がない。
(動け……動け足!!)
捕らえれない事を祈るしか僕には無かった。水の中に沈まない様にじゃなく、上へ上がるために足を振る。そして光が溢れる様に成ってる水面の水を押し上げて、僕は大きく息を吸い込んだ。
その瞬間真っ青な空なのに雨が降ってる事に気付いた。きっとそれは僕が仕掛けた風のせいだろう。今もこうやって空から水が落ちてくるって事は、多分間に合ったんだろう。
体全体に空気が満たされていく感覚。こんなにも空気を美味しいと感じたのは初めてだ。濡れて体が冷えてるからか、この日差しも異様に気持ちいい。
だけどいつまでも顔を出してる訳には行かない。直ぐにでも再び潜って陸を目指さないと、どこで柊に見つかるか分かったものじゃない。
「ん?」
そう思ったとき。不意に落ちる影が僕の日差しを遮った。そして同時に聞こえる岸からの叫び声。
「スオウ! 上!!」
「上?」
リルレットの声に吊られて上へ顔を傾けたその時、既に通過した影からの日差しで目が眩む。そして静かに伝わる水の波紋、靡く髪……僅かに映る鶯色のその扇子が誰が舞い降りたかを示してる。
「どうしてくれるのよ」
視線だけで追いかけてたその姿にコンマ数秒遅れて、首が付いてきたとき、そんな言葉が聞こえた。けど僕は何も言うことが出来ない。だってこの近さはヤバい。
「貴方の攻撃に汚染された水、ちょっと掛かっちゃった。汚らわしい」
その言葉に僕はゾクリと総毛立つ。何だか柊は静かに怒ってる? ちょっと掛かっただけじゃないのかよ。汚らわしいなんてかなりの拒絶反応だ。
これはかなりヤバい……こういう静かに怒るタイプって怖いんだ。そしてその時、柊は今までしなかった事をした。
「消毒しなきゃ……そう君も」
そう言って僕を見る柊は扇子を閉じる。それは明らかに無駄な動作。その動作無しで僕を捕らえれた筈だ。なのに何故?
(けど今は!)
そんな事を考えてるより先に動く事が先決。さっきから体中のアラートが鳴り響いてる。「ヤバい、逃げろ」てさ。
だから僕はこの一瞬で再び水中へ。天扇は敵を認識出来なかったら命中率が下がる。てか水中とは相性が悪い様だし、そこまでもう岸とも離れてない。
後は一直線に岸を目指せばいい。
「天扇二の舞・粗氷」
何だ? 水中に輝く何かが見える。それがそこら中に……
(これは氷?)
その氷が無数に水中に・・いや、水中だけじゃない。上を見ると乱反射する光が幾つも見える。それに次第に光を遮る、白い煙の様な物も……
(――っつ!? 何だこの多さ!)
少し目を離した隙に水中の氷は大量を通り越してる。それにさっきより一つ一つの粒が大きくなってる? これは……不味い!!
そうとっさに判断して上を目指す。だけどその瞬間、体に触れた氷が大きさを増した。そしてそんな氷は上下左右からまだまだ迫る。どこにも逃げ場なんて無い。
(くそ!)
僕はシルフィングを振ろうとした。けど動かない……見てみると既に大量の氷に覆われてる。しかも連結……いや、結合しあっていってる。
足にも、腕にも、頭にも、氷の粒が当たり膨れ上がってく。
(これはダメだ……)
そう心が告げている。八方塞がりとはこの事。これって全身が覆われたらもう死亡って事なのか? 冷たさを通り越して痺れしか感じ得ない体に成っていく。
HPは……分からない。このままじゃ本当に眠るように終わってしまいそう。でもイヤなんだ。けどこの眠気に勝てそうにない。
視界が薄らいでいく。全ての感覚がこの体から離れていってる様な感覚。もしかしたら死ぬのかも知れない。本当の意味で……けどその時、遠くで何かが聞こえる。
「……ざけないで! ……たす……てよ! あの子の事……きらめないんでしょう!」
何て言ってるか分からない。良く聞こえない。同時にガンガン成ってるのもうるさいんだよ。でも……次第に通ってくる。僅かに入ったヒビ割れから、伝えたい言葉が僕の耳へと。
「ふざけないでよ! エイルを一緒に助けてよ! あの子の事、諦め無いんでしょう!! だったら、そんな所で寝るなスオウオオオオオオオオ!!」
氷の中で、意識がつなぎ止められる。実際は寒いし痛いし、もう良いかなって思いたい。けど、僕にはまだ、僕を信じてくれる仲間がいるんだ。
もう湖はスケートリンクみたいに成ってる事だろう。指一本動かせない状態……後は僅かな顔周りだけ。でも……それでも僕はまだ生きている。
なら……足掻いてやろうじゃないか。命尽きるその瞬間が今では無いとさ。運命とか言って受け入れず、地面を這って泥水をすすり、後ろ指刺されようとも歩みを止めちゃ行けないんだ。
願う場所はやってきてはくれないから。それだけは絶対の真実で真理だから……自分で近づいていかなきゃダメなんだ。
目を閉じて瞼に映そう。願う風景とそこにいるべき人達を。すると心に勇気が沸いてくる。冷えきった体に、そんな勇気が染み渡る。
勇気は力に……力は未来を繋げてくれる。僕は心で紡ごう勇気の言葉を。
(イクシード)
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