命改変プログラム
私と聖典の戦い
「まだまだあああああ!!」
襲い来る黒い無数の影をかわしながら聖典は空を駆ける。時間がないの。止まるわけには行かない。何としてもシルク様を向こう側へ通さなくちゃ!!
そうしないと……全てが終わっちゃう。さっきガイエンはアイリがこっちに向かってるって言った。どういう事か分からないけど、それはきっと最後のピースだよ。
私には幕を閉じるにはまだ早い様に感じる。だからもう一度立って貰わなくちゃ! アイリが来たとき、ナイトが地面に伏せたんじゃ絵にならないからね。
だから何としても通して貰う!!
タゼホの空がガイエンの闇で更に黒く成っていく。炎さえも押さえつける圧倒的な闇。その計り知れない影の数に聖典がまた一つ……一つと流星となり散っていく。
「無駄だよセラ。確かにお前は強く、聖典は素晴らしい力だろう。だが、今の私には届かんよ。単純にパワー不足だ」
「あっそう! そんなのは結果が出てから言いなさいよ!!」
更に速く! もっと速く動いて聖典! 闇に捕らわれない位のスピードを! 余裕をかますガイエンの鼻を開かす為にも限界のその更に先へ!!
漆黒の空に数本の光の筋が舞っている。それは間違える筈もない聖典の輝き。黄色い閃光は放つ攻撃だけじゃなく、その物から溢れ出てた。
「――っつ!! ここからなんだから!!」
「セラちゃん!」
私は頭を押さえながら前へ出る。シルク様の声は聞こえてたけど私は振り向きもせずに行きます。だって他に割ける頭が今の私にはない。
ただ前を見据えなきゃ、あの闇を切り裂いてガイエンに届くなんて出来っこない。ただでさえ今まで最高に達してる聖典の性能。だけどそれに伴って……ううん予想はしてたけど、頭に入ってくる景色が違う。
情報が半端無くて、私が飛んでる訳じゃないのに、まるで自分が聖典の数だけ分かれて空を飛んでるみたい。けれどそこに全部の感覚を持って行かれる訳にも行かないの。
だって幾ら速く動けても・・あの闇の隙間を縫って行けても、パワー不足は顕然たる事実。あれだけじゃガイエンを吹き飛ばして道を造るなんて出来ない。
だからどうしてもパワーが必要。けど……今飛んでる聖典は僅かに五機。元々飛ばしたのが十二機だから既に七機落とされた事になる。
そしてあの五機は道を造るのに必要で戻せない。なら、まだ飛ばしてない残り八機を飛ばすしかない! そして狙うは、超至近距離での収束砲の解放……それが私のパワー不足を補える唯一の方法。
だけどそれをガイエンに悟られる訳には行かない。カーテナの力を使われたんじゃ元も個も無くなっちゃう。だから残りの聖典の展開はギリギリで……そして収束までもそこまで時間は取れないから、これまででの最速で一気にチャージしないと行けない。
どれも成功する確率は極めて低いけど……やるしかないの。だって、今この場でそれがやれるのは私だけ何だから!
「そんなむき出しの身を晒して、何をする気だセラ? まあ良いがな。アイリが来るまでの暇つぶしだ。付き合ってやろう。
そしてその頭で理解しろ。私の偉大さをな」
そんな言葉と共にガイエンの腕がこちらに向けられる。その腕はカーテナと連動してる……ならそれが既に攻撃動作。背筋が凍る。
けど、私は止まらない。止まれない。だからトッサに横に飛んだ。その瞬間、私がさっきまで居た場所の空間が捻れてる?
前を見るとガイエンが突き出した腕を握りしめて捻ってた。つまり奴があの空間を掴んでねじ曲げてるって事!?
どれだけふざけた力をしてるのよカーテナって!! あんなのに捕まってたらきっと終わってた。けれど安堵の暇なんて無い。奴はカーテナの力を両腕から放てるんだから。
「はははははは!! さあどうしたセラ! そろそろ理解出来て来るんじゃないか? 逃げることしか出来ない自分と私の格の差という奴がな!!」
両手左右から繰り出されるカーテナの力の渦。それを避けれてるのは実際奇跡の様な物。それかもしかしたらガイエンの奴はワザと避けれるタイミングでしか攻撃を行ってないとか。
だけどその理由は分からないから、やっぱりその考えは却下かな。ただ今の私は、頭が爆発しそうな位に脳をフル回転させてるって事。
ガイエンの一挙一動を逃さずに見て、私は攻撃の軌道を瞬時に読みとって動いてる。だってカーテナの力は必ずその腕の動きと同じ様に繰り出されるからだ。
でもその腕が振り終わったりしてたら遅い。その瞬間にはペシャンコかクシャッとトマトが潰れた様に成っちゃう。
だから見るのはあくまで肩を通して肘に伝わるまで。後はカーテナの力の外まで全力で逃げる。それしか逃れる手はない。
だけどそれじゃ、ガイエンの言ってることを自分で証明してるみたいでイヤに成ってくる。認めたくないのに、奴が本当に厄介だって思っちゃう。
(違う違う! 凄いのはガイエンじゃなくカーテナ! だから絶対にあんな奴を私より格上だなんて認めない!)
そう思って避けながらでも私はガイエンに近づいてく。
「――っつ!?」
頭がズキズキする……これは今までに無いほどの痛み。もしかしたら今の状態……この聖典のスペックで更に数を増やすのはとても危険な賭なのかも知れない。
収束砲を制御出来るかどうか……でもこの行動全てが賭の様なもの。私は私を信じてやるしかないんだよね。頭の痛さなんて気力で吹き飛ばして、私はスカートの中の残りの聖典に手を掛ける。
「辛そうだなセラ。後ろにはまだまだ戦える筈の奴らが居るのに、たった一人で戦って空しいとは思わないか? これだから多種族など信用出来ないとは思わないか?
まあ答えは急かんよ。この舞台から退場して、自分の考えを改めることだ」
ガイエンは言葉の終わりと共に構えを取った。それは今度こそ逃げられないと言ってるみたいだ。そして実際、雰囲気がそれを伝えてる。もう私たちの距離は十メートルもない。
なら外しようがないって事なのかも。それに実際・・更に連続で振られたら。この距離じゃどうしたって対応しきれなくなるのは目に見えてる。
だから私は真っ直ぐにガイエンに言ってやる。
「改める? 一体何を!? 私は私が信じた仲間を信じます!! それに辛いのもここまでよ! アンタを吹き飛ばして見せるから!
もう逃げないわ」
「逃げないだと? その細い体じゃカーテナの力には耐えられんぞ。いや、例えドラゴンでもこの力の前にはひざまづく。
そんな絶対的な力に、貴様はどうやって対抗しようというのだ!!」
ガイエンの長い腕がしなりを伴って後ろから前へと振られていく。しかも両手同じ動作。こう言う時は決まって、広範囲で威力も高く成る傾向がある。
それはつまりこれまでの遊びじゃなく本気って事。逃す気なんて無いし、確実に相手を潰すだけのやり方。逃げ道は確実に無くて……だけどそもそも私は逃げないともう言った!!
だから私は逃げずに言ってやる。
「こうやってよ!!」
私の言葉が響いた瞬間、空から黒い闇を切り裂いて二筋の閃光が煌めいた。そしてその二つの閃光は振られてるガイエンの腕を正確にぶっ飛ばす。上方からの攻撃を受けた両腕は一気に下へと下がる。
そしてその瞬間。私の真横の地面が同時に大音響と共に弾け飛ぶ。
「くっ!? 聖典か!! まだ生き残ってたとは味な真似をおおおお!!」
そう言って空に目を向けるガイエン。だけど既に遅いのよ。この時を待ってた。この瞬間の為に泥まみれになりながら頑張った。必ず当てる。
弾かれた腕を再び振ろうとするガイエン。けれどその瞬間再び空から一陣の閃光が降り注ぐ。だけど今度は誰にも当たらない。てか当ててない。
狙いはガイエンの周り。その地面を抉る様に聖典の光線は円を描く。そして巻き起こるのは土埃。それはガイエンを包んで姿を消していく。
これでカーテナは封じた。カーテナを使う上で絶対に必要なのが視覚だから、それを奴は失った。視認した場所に正確に力を叩き込むその性質が仇なのよ。
「ははっやるなセラ!!」
「必ず決めるわ!! 聖典八機、解放! 更に収束!!」
解放した聖典を自身の周りに止まらせて腕の先に光を収束し始める。八機の聖典の光が一カ所に集まってこの闇を照らし出し始めてる。
だけど想像以上に頭が悲鳴を上げていた。頭が割けるような痛み……だけどそれに気を取られると、折角収束させてる光が弱まってしまう。
収束のバランスが酷く危うい。支える為の精神が持たない。私の眼前も今や土埃で満たされてる。だけどこの先にガイエンが居るんだ。
(出来る……出来る……私は……出来る!!)
それだけを考えて私は地面を強く踏みしめる。しかしその時、関を切らしたように周りから声が聞こえた。
「「「ガイエン様ああああああ!!」」」
それはずっと控えてた親衛隊。ガイエンが危ないってようやく理解したらしい。けれど邪魔はさせないわ。
「こ……ないでよ!!」
そう叫んだ瞬間に空から無数の閃光が親衛隊に飛来する。飛んでるのがたった五機でも使いよう。一瞬の足止めにしか成らないだろうけど、それで十分。
「くっそ……どうして!?」
どうして? それは聖典も私の目だから。頭が痛い代わりにそれだけの対価をくれてるのよ。
私は土埃を抜けてガイエンへと腕を伸ばす。その距離一メートルも無い。収束した光はまだ大きく成ったり小さくなったりを繰り返してる。どうやっても今の状態じゃ上手く制御出来ないみたい。
けれどそれでももう放つしかない。今、このタイミングがベスト。ガイエンはよりも私の攻撃が絶対速く届く! 大きくても小さくても……その中に変わらない強い光があるんだから!
「セラ! 貴様!!」
「食らいなさい! 聖典八相収束砲ブレイク!!」
回転が速まった周囲の聖典から一カ所に集められた光が解放される。黄金の光が炎と闇に染まるタゼホを貫く光となる。
ゼロ距離での収束砲の解放は成功した。けれどまだまだこれから! 私は更に踏ん張って叫ぶ。
「バーストオオオオ!!」
その瞬間更に光は大きく成る。だけど同時に頭に掛かる負担も腕に掛かる力の反動も飛び抜けた。そしていびつに歪む聖典から結ばれる光
すると周りを淀み無く回ってた聖典の一機が突然火花を散らして爆発した。
「――っつあ……何!?」
そんな言葉を言ってる側から次々と聖典は爆発して行く。そして見るからに光は弱く小さくなっていってる。これはきっと……制御に失敗したってこと?
元から収束砲は制御に難しいけど、こんな事は初めて。それだけ私の頭は限界なのかな? 何だか目まで霞むみたい……このままじゃもうガイエンを吹き飛ばすなんて無理だ。
けれど後僅かな聖典だけでも諦める訳には行かない。もう少ししか持たないだろうけど……後少し持つのなら、この光の最後の一辺まで目指した事の為に!!
「シルク様! 今の内にアギト様をお願いします!!」
弱まっていく光の中、私は後方へ視線を送り叫ぶ。その時、肩がビクッと上がったシルク様は少し戸惑った様だったけど言ってくれました。
「えっ……んっ、わかりました!」
タッタッタッタッタ……そんな音が後ろから近づいてくる。そしてそれが向こう側へ行ければ、それが私達の勝利。目的の達成。
だからそれまで……闇夜を貫くこの光、絶たせる訳にはいかないの。
風が流れ、聖典が大気を震わせてる。けれどその波はどんどん、どんどん弱くなっていく。周りに残ってる聖典のどれもが危ない火花を散らしてる。
(行って……通り抜けて!!)
また一つ……聖典が形を失って行く。顔の横を炎と化した固まりが落ちていく。
(まだ、もう少しだけ!!)
更に弱々しくなった光に私はそう願う。けれど現実(現実じゃないけど、今ここに体感してる現実)はそんなに甘い物じゃない。
想いとはぶつかるもので……人は誰しもが自分を幸せにしたい。そして目の前に居る奴はそれに貪欲なのか、いやもう暴走の域。
姿形を変えてまで貫きたい事があるんだろう。でもこっちはそれを許せない。守りたい物がある。だから私達はぶつかってるんだ。
だからガイエンはそれを許しはない。それはシルク様が私の真後ろに来たときに動き出す。
「随分、弱ってるじゃないかセラ」
その瞬間、私達二人は同じ場所へ目を向ける。拡散する光線の中、浮き上がるように見えてきた黒い影。四方に散らされた収束砲の幾つかが地面を抉り、炎に包まれた建物を突き破る。
「――っつ!?」
「狙いはアギトの蘇生か。あんな奴、幾ら立ち上がっても結果なんて変わらんよ!」
振られる黒い腕。その瞬間力の奔流が聖典を無に帰し、私達まで同時に吹き飛ばす。トラックにでもぶつかられた様な感覚……見えていた筈の向こう側が遠ざかる。
「「きゃああああああああああああ!!」」
私はシルク様を巻き込んで後方へ飛んでいく。地面に体を打ちつけて止まったときには、空にあった残り全ての聖典までも炎に包まれてた。
「これで、お前は何も出来ない」
時間は一分を切って……そう言われた。それは絶望。希望の灯火は今にも消えそう。切り札の聖典は無くなり、私の全てを出してでもシルク様を向こうに送ることは叶わなかった。
「セラちゃん! 大丈夫?」
「……えぇ。シルク様こそ……巻き込んじゃってすみません」
私はそんな事を言いながら、何が出来るか考えてた。でも、そこに答えがない。何も見いだせない。私はもう出涸らしだよ。
もう無理だ……そんな闇が私にもせり上がってくるよ。
「私の事は……けど、このままじゃ間に合わない。どうしよう。どうすれば……」
「もう、ダメです。私にはもう何も出来ません。ごめんなさい」
土を握りしめても儚くこぼれおちていく。そんな光景が、何も出来なくて座り込んでる私のよう。あの一瞬が、儚い私の最後の輝きだったのに……結局はこの様です。
何だって出来ると思わせてくれるこの世界。だけど本当に大切な事や重要な事ってのは、大抵一人じゃ出来無いんだよ。
落ち込む私にそっと優しい温もりが伝わってくる。顔を上げると、頬に添えられた手の先に私と同じように土で汚れたシルク様の顔があった。
「おかしいよ。謝る事なんて何一つ無いよ。セラちゃんは頑張ってくれた。私の方がごめんなさい。私は弱く無力で……駆け抜ける事も出来なくてごめんなさいだよ」
その言葉は自分を責めてた私を解放するような言葉だった。そんな訳無いのに……頑張る事なんて普通で当たり前。生きてたら誰だって頑張ってて、それを評価するのなら、目的までたどり着かなきゃ全然ダメな筈なのに……それでもシルク様は笑って私の重荷を取り除いてくれました。
謝る事なんて何もない。だって私達じゃ役割が違うもの。私はシルク様より戦いが得意で向いてるから、前に立っただけの事。だってそれが私の役割で、シルク様の役割はもっと大切な事があっただけ。
一緒に戦うって隣で剣を振るうだけじゃないと私は思う。シルク様は十分に、私と共に戦ってくれてた筈だ。だから私も手を上げて、頬にあるシルク様の手に触れる。
「ごめんなさいなんて、言わないでください。そうですね。二人でよくやった……それでいいじゃないですか?」
「そうだね。私達頑張ったよね。特にセラちゃん。凄く格好良かったよ」
そんな言葉とシルク様の屈託のない笑みに思わず私は照れちゃいます。
「あ、ありがとうございます……」
少しだけ重い空気が晴れたような気がする。だけど、残った事実は変わりません。私達は失敗した……これじゃもう本当に終わりかも知れません。
「よく笑っていられるな? 絶望的過ぎて頭がおかしく成りだしたか?」
既に頭がどうかしてるガイエンがそんな事を言って、勝利を突きつけてきます。反論したい……けど、それは出来ません。だって私達は負けたんです。
これ以上何が出来るのか、自分でもわからない。ただ刻まれていく数字を遠くから眺めるしかない。だけどその時、目の前のシルク様が立ち上がりました。
「まだです。私達が笑うのは、希望を捨てないから……諦めないから! 勝ち誇るには早いですよガイエン!!」
啖呵を切ったその声は内蔵までも震わせる様でした。けれどそれを聞いたガイエンは笑って言い返します。
「人間は余す夢を見るものだな。そのせいで今の状況の判断も出来んか。今勝ち誇らなくてどこで勝ち誇る? 終わったんだよ。
貴様たちは負けたんだ」
悔しいけど……その通りです。シルク様の言葉はとっても心に響くけど、もうどうしようもない。本当にそれはただの夢。私はどうしようも無いときも笑っちゃいます。
今から何が出来るかなんて思えない。
「シルク様……もう……」
無理です――そう言おうとした。けれどそれを言わせない言葉が振ってきました。
「まだ後一分もある。もう切っちゃってますけど……セラちゃんの頑張りを無駄にしないためにも私は諦めません!!」
その言葉を聞いたとき、私はハッとした。私が頑張ったから、シルク様は諦めようとしないの? それは破れたけど決して無駄じゃ無かったって事なのかな。
私自身が、負けたって思ってたことも、シルク様には何かを残して伝えれたのかな? そう思うと、何だか嬉しい。心がほっこりします。
でもガイエンはそうじゃないみたい。そろそろ目の前の蟻に鬱陶しさを感じ始めたみたいです。
「ふん、これだから人間は!! 無駄になったのだよ! あの頑張りも全て! 今更ろくに戦えもしない貴様一人で何が出来る?
大人しく、地面に這い蹲って泣いていろ!」
黒い腕を再びしならせるガイエン。カーテナの力が再び来る。だけどシルク様は避けようとしない。私を庇う洋に両手を広げてる。
そんな事意味はないって分かってる筈なのに……
「私は確かにろくに戦えないけど、きっと私だけじゃない! 無駄じゃないって思ってるのは!!」
その言葉の後に大きな音が聞こえた。地面が潰れる様なイヤな音。けれど何だろう……痛くない。あの距離なら私も巻き込まれてる筈なのに、全然痛みがないよ。
それどころかちょっと離れて聞こえた様な気さえした。腕が振りかぶられる瞬間、目を瞑ったから、一瞬で終わったのかも知れない。
前のダメージもあるし……それじゃ本当の本当にこれで終わりなんだ。そう思うと悔しさがやっぱりこみ上げてくる。
もっとやりようがあったんじゃないかとか・・だけど何だか、随分と風が優しく撫でる気がする。戦闘不能ならそこら辺に影響しない筈だけど・・そう思って瞳をあける。
するとそこには見知った面々の姿が映りました。
「み……んな? どうして?」
そんな言葉を思わず出しちゃうと、私をお姫様だっこしてる彼が言います。
「シルクちゃんが言った心の持ち主かな? 凄かった……一人であそこまで出来るなんて。そんなセラを見てたら、恥ずかしく成ったんだ。
きっとあの時、俺たちが加わってれば突破出来た筈だ。今更いくら謝っても遅いけど……でもだからもう一度! 今度は俺達もやってみるよ。
そしたらきっと抜けるよな?」
抱かれた体に熱いものがこみ上げてくる。みんなが私達を守ってくれたみたい。闘志が灯ったその瞳は、恐れよりも強い意志が見て取れる。だから私ももう一度――
「勿論、今度こそ絶対に!!」
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