命改変プログラム

ファーストなサイコロ

四つの剣線



「カーテナ! その力を我が手に!」


 そう叫びながらグラウドは彫像へと手を掛ける。このクリスタルで出来た像の中に、そのカーテナが有ると思ってるって事だろう。
 でもそんな単純か? それなら前にここまで来たって言う攻略組が手にしたっておかしくは無いだろう。彼らの知識とかははんぱないって聞くし、アイリが気付いた位の事を彼らが気付かないなんて考えられない。
 でも彼らさえカーテナを手にする事は叶わなかった。それが事実で結果。まだ、何かが有るはずだ。『カーテナの光』という絵は俺も見たこと有る。
 てかアルテミナスに居るエルフでそれを見たこと無い奴なんて居ないだろう。だって城の一室を全部その絵が覆ってる程の物なんだ。


 だけどそれだけの絵だから人物も一杯描かれてるし、それにどれがカーテナか何て銘打ってない。一番怪しいのはアルテミナスの初代女王って言われてるそのエルフが掲げてる剣だろう。
 一番目立つし、それに装飾も勿論立派に描かれてたと思う。だけどまたそれも単純過ぎな気もする。だがグラウドの手は迷わずそこへ向かってた。
 やっぱり単純な奴だな。てか彫像の剣が取れる訳なくね? だけど何の手がかりも無いんだし、取りあえずは出来る事を全部試すしか無いのも事実か。


 グラウドは無造作に彫像を掴んで剣を引き抜こうとしてるがやっぱり取り外し可能な訳じゃない用だ。でも何かさっきと印象が違うように感じる? 
 綺麗な彫像の中に無骨なグラウドがまとわりついてるせいかな? その時、諦めきれないグラウドは周りに叫ぶ。


「お前達も探せ! これだけ有るんだ。どれか取れるのが有るかもしれん!」


 その言葉で躊躇っていた奴らもワラワラと彫像に触り始める。するとやっぱり何かが……


「私たちも探しましょう」


 アイリの声に俺の思考は中断された。そしてガイエンもその声に続いて行く。何か引っかかる違和感がそこには有るが、それが何か分からない。
 だから俺もアイリと共に彫像を調べるしかない。それしか出来ない。こんな事ならもっとアルテミナスの歴史でも調べておくんだったな。
 俺は手近な彫像に手を伸ばす。どれもこれもやっぱり外れる様には見えないんだよな。全部一つの巨大なクリスタルを掘って作って有るような感じだし。


 でも素直にグラウドへカーテナが渡っても困る訳で……アイツがアルテミナスの事を本当に考えてるか、アイリは知りたいんだ。
 だからアイリもグラウドに負けず劣らず必死に彫像を調べてる。そしてガイエンも珍しく、その輪に入ってる。これで未だに彫像に触れてないのは俺だけか。
 そう思いながら俺は彫像の剣の柄を握る。その時、誰かの声が不意に聞こえた。


「何か思ったんだけどさぁ。さっきからこのクリスタルの光……微妙に変わってない?」


 その瞬間、違和感の正体に気付いた。そうだ……色だったんだ。最初は青く光ってた筈の光。それが誰かが触れる度にその色を微妙に変えていたんだ。
 そして俺が触った今は……


「赤い」


 奇しくも自分の髪と同じ色に成っていた。


「クリスタルの色が変わる? どういう事なの?」
「知るか! 取りあえず触りまくって見ろ。また何か起きるかもしれん!」


 アイリの考察するような言葉にグラウドはいきなり実践的手段で強行突破を試みる。とにかく何でもかんでも取りあえずやってみる奴の様だな。
 まさにこいつの戦闘スタイルその物の直撃前進。全ての傷害は壊せるとでも思ってそうだ。でもいつもそんなんで良い分けない。
 現にグラウドの後先考えない無謀な突撃戦略のせいで連敗続きなんだからな。
 グラウドの言葉に取りあえずで触りまくる奴ら。だけどこれ以上は変わらない? それか彫像に寄って色が分けられてるとかか?


 でも隣の奴を触っても赤いまま。これ以上は何も起きないみたいだ。一体何を意味してる? またドン詰まりだな。
 もっと注視して光を見てれば何か分かったかも知れないのにミスした。今ここに居るのは七人。もしかしたら虹の様に変わったとか?
 けど今となっては全てが憶測だ。他の奴に聞いてもハッキリとは見ていないし、どうする事も出来ない。ついでに全ての彫像を調べたが、剣は一本も抜けなかった。


 『カーテナの光』っていう位だし、光も何か意味がある事だとは思うが繋がらない。すると業を煮やしたグラウドが再び飛んでも無い事を言い出した。


「壊して見るか。このクリスタル」


 何か超軽いのりだ。こいつの行動理念は「壊して進む」しか無いのか? するとすぐさまそんなグラウドの発言をアイリが否定する。


「ちょっと!! 何言ってるんですか! そんなのダメに決まってます!」
「何故だ? カーテナはこのクリスタルの中にあるかも知れないじゃないか」
「そんなの何も決まってません!」


 けれどグラウドはアイリの言葉を聞く気は無いようだ。槍を手に取りやる気満々でクリスタルを見据える。そしてアイリを見てこう言った。


「無い何て事も決まってない。俺達の目的を忘れるな! これはアルテミナスの為の所行だ! クリスタルの一つや二つがどうした? この国には大量に突き出てるじゃないか」


 舌なめずりする顔が気持ち悪い。こいつ単にオブジェクト破壊で自分の武器とスキルの威力を確かめたいだけ何じゃないかと思える。
 それにアルテミナスには確かに至る所にクリスタルがあるが、だからこそそれを大切にしてる節がある。クリスタルの輝きはアルテミナスの輝きと言うほどだ。
 言う成ればこの国とクリスタルは一心同体みたいな物じゃないのか? それを安易に破壊するなんて言うことは、アイリに取ってはアルテミナスの輝きの一つを奪うみたいに聞こえたはずだ。
 だからこそ、そんな事は認めない。


「クリスタルの一つや二つ……そうじゃない! この国にあるクリスタルは自身で光を放って国を照らしてくれる大切なものです! 
 その一つ一つが、この国の輝きなのに……それを安易に壊す様な事がどういう事か貴方は分かってない!」


 アイリの叫びが暗い地下空間に木霊する。けれどそれ以上の叫びをグラウドは突きつけた。


「ふざけるな!! 分かってないのはお前の方だ! このまま何も手にせずに帰ることが罪なんだよ! 出来ることは全てやるべきだろう!! 
 どんな犠牲を払っても、それで国を守れる力が手に入るなら安いもんだ。そう思え! それが正義だ! 光を支えるのも力有ってこそなんだよ!」
「そんなの違う!! 力が光を支えてるんじゃない! 光が有るから、私達は力でそれを守ろうとしてるんです! その光が私達エルフに取ってはアルテミナスなんじゃないですか!」


 振り乱れたストロベリーブロンドの髪が赤い光に照らされて、更に赤みを増してる様に見えた。アイリは大きく肩を揺らして呼吸している。
 大柄なグラウドに負けない様に声を出したから、一気に空気が肺から尽きたのかも知れない。だけどそれだけの価値はあったと思う。
 少なくとも俺には届いたよ。けれど当然グラウドは自身の考えを曲げるなんてしない。奴はいつだって自分が正しいって思ってる奴だから。


「そんな軟弱! 俺達の国はそんな弱々しくなど無いわ! 俺達エルフとい上位種が照らす国! それがアルテミナスよ!! 
 太陽も月も、ましてやクリスタルが照らしてる訳ではない! あの国を照らしてるのは俺達だ!!」


 ガイエンは自身の槍をアイリに向けている。そして耳障りな機械音が回転を始めていた。けれどアイリは動じて何かない。
 真っ直ぐに堂々とグラウドに立ち向かってる。


「そんな傲慢……そんなエゴ、貴方しか思ってない! 一人の力には限界がある! それは貴方だってそうですよ!」
「だからこそ! カーテナが必要なんだ! その力があればアルテミナスの光は保たれる! それどころか更なる高見へも昇れるぞ! バランス崩しと予想出来るその力なら限界を超えられるんだからな!! それを何を躊躇う必要がある!?」


 勢いを増していくのはグラウドだけじゃなくて、その槍の回転もだ。それは今にもアイリへと向かって行きそうで、俺は気付かれない様に武器へと手を回す。
 グラウドの上がるテンションとは裏腹に、アイリはその瞳にうっすらと涙を貯めてる様に見える。だけど別にグラウドの勢いに負かされ掛けてるからとか、押され出してるとかじゃないだろう。
 アイリは本気の時、良く感極まって涙を流す。止められないんだってさ。自分じゃあ。そしてそんな本気のアイリは今日……いやあれからずっと確認したかった事を口にする。


「躊躇うのは……貴方が本当にアルテミナスの為にカーテナを欲してるのか分からないから! アルテミナスの為と言いつつ、アルテミナスを傷つけるグラウドが私は分からない!」


 ずっと考えてた事だ。グラウドの奴が言ってることとやってる事のズレ。伴わない結果に、それでもアイツは何も変わらなかった。
 それは本当はアルテミナスを潰したがってるんじゃないかとも思える所行だろ。でもアイツは言い続けた。堂々とアルテミナスのエルフの為と。


 それが本当に本当なら……このままカーテナをガイエンが手にしても良いとアイリは言ってた。誰が救ったって国は良いってさ。
 その言葉が本物なら、カーテナさえ有れば変わるかも知れないと思ってた。だからここまでずっと見てきたんだ。そしてその答えが今出される。


「それは当然、アルテミナスの為だ。俺がカーテナを手にして最強と成ることが、即ちアルテミナスの為なんだよ!!」


 それはきっと思っていた最悪の答えだった。「何だよそれ」そんな怒りが沸沸と煮えたぎってくる。そしてアイリはその場で拳を握ってた。


「そんな詭弁……そんな後付けの理屈で私は騙されません!! グラウドは結局、自分がカーテナを手にした最強を証明したいだけ。
 その一番分かりやすい手段がアルテミナスを救うってだけです! そんなついでの様な気持ちの人に! 一つの国は軽く何てない! 
 背負ってなんてほしくない!!」
「ならお前はどうする!? お前が背負えるのか!? あの国を! アルテミナスを!! そんな訳ないな。
 人とは! 自分の目的のついでに何かを成すものだ! 俺は最強である事を証明する! それがつまりはアルテミナスを支える事! それが強く太い幹へとなるんだよ!」


 グラウドは言葉の終わりと共に飛び出してた。そんなに距離が有ったわけでもない二人。耳障りな音と共にガイエンの攻撃は炸裂し、その強さの権化の攻撃がアイリを爆煙ごと多い隠す。
 視界が消えた。淡く光るクリスタルの彫像が横に有るのは分かるが、それ以外はさっぱりだ。まあでも、気が抜けない事になってるんだけどな。
 そしてやけに近くで再び聞こえるグラウドの声。


「くっくっく……はははははははは!! これで分かっただろうアイリ!! 弱さは罪だ。お前の言葉こそが、机上の空論でしかない! 
 弱い奴は何も守れん! 守る資格すらない! 強者こそが選び取る権利がある! その俺がついででも背負ってやるんだ。ありがたく使わせてろよ、アルテミナスをな!!」


 爆煙の中グラウドの言葉だけが上機嫌に轟いてた。こいつは結局、自分の為だけにアルテミナスを利用してんだ。自分の強さの証明……それにこいつは『最強』ってのに憧れてる。
 マンガとかアニメを見て、男なら一度はそんな物に憧れるけど、その中のヒーロー達は絶対にこんな考えしてないだろう。
 グラウドは自分勝手な最強しか見て無いじゃないか。自分しか見てない。この世界のエルフとして、先んじて力を持ってしまった事で酔ってんじゃないか? 
 強い自分……強いエルフで居ることがこいつのLROでの存在価値でも有るのかよ。だから俺はそんなこいつをくだらないと思う。やってられるかって心から思う。
 そしてそれは俺だけじゃ無かった様だ。


「「テメーに自分が使われるのも、アルテミナスが使われるのもはっきり言って、ムカつくんだよ!!」」
「何!?」


 二つの光の線が同時に爆煙を切り割く。赤と青……それは俺と、そしてガイエンのスキルの光だった。切れた煙の先でそれをお互いに知った。俺達はきっと同時に飛び出してたんだな。
 アイリを守るためにさ。そして爆煙の中、グラウドのあの攻撃を受け止めてたのは一人じゃ無かった。知らなかった。気付かなかったが、二人だったから、止められたのかも知れない。
重なって振るわれた二つのスキルで、俺達は目の前でゴチャゴチャ叫んでたグラウドを押し返して、互いの存在にケチ付ける。


「何でお前が居るんだよガイエン? 何かテンションが上がりきらないと思ったら、その青い光のせいだったのかよ。邪魔すんな」
「邪魔だと? はっ……それはこっちの台詞だな。貴様の目障りな赤が入ってきたせいで、暑苦しくて叶わん。最低五メートルは離れてろ」


 ビキっとお互いの額に血管が浮かび上がる感覚。だって許せない、何同じ事やってんだよ。俺達は基本、仲が悪いんだ。
 てか仲良くしたくないってのが本音だな。だから言ったらさっきの何て鳥肌物の出来事だ。でも何であんな状況が出来たのかって言えば、原因はハッキリしてるよな。
 行動がそれを証明してる。俺達は互いに守りたかったから同じ行動を取ったんだろう。アイリっていう一人の女性をさ。


「アギト! ガイエン!」


 弾けるようなそんな声に俺達は振り返る。そこには出したけど使えなかった剣を、中途半端な位置で止めてるアイリが居た。
 ちょっと怒ってるような……でも次の瞬間。二人同時に抱きつかれた。ガバッて感じでさ。そしてとても近い位置でこう言った。


「遅いよ二人とも! 潰れるって思っちゃったよ!」


 何か怒られた。でもアイリの顔は笑ってる。するとこんな場所でも少し顔が綻んで……だがガイエンと目が合うと俺達は互いにそっぽ向く。
 顔も意地張ってな。するとその時、吹き飛ばした方に多数の気配を感じた。拡散していく爆煙の中には無数の影。まあ無数って言うか俺達三人を除いた四人何だがな。
 そいつ等がグラウドの後ろに集まってた。


「ふん、アギト……お前はアイリに付くと思ってたぞ。だが……」


 そう言ってグラウドが見てるのはガイエンだ。何だか随分深刻そうな顔してるが、そんなに意外か? あった当初かガイエンはあんたの事ボロクソ言ってたぞ。
 それを考えると俺的には妥当……納得はいかんけどな。


「何だよ? 文句でも有るのか?」


 見据えられたガイエンはグラウドにそう返す。


「いや……別にいいさ。そっちに付くなら潰すだけだ」


 そう言ってまた槍が回転を始めた。そして後ろの取り巻く連中も、今度は入ってくるだろう。もしかしたら予想されてたか? グラウドの奴は一番みじかな奴らを連れてきてるし、人数も多くしてる。
 でも自信過剰な奴にしては弱気な気もするから、やっぱりたまたまか? 


「お前達は身を持って知れ! 力の正しさをな! 力での支配を誰もが望んでる事だとな! それが絶対の正義って奴だ!」


 その言葉と共に、リーダー権限で俺達はパーティーから外された。それは完全に俺達を敵と認めたって事だ。フールドやダンジョン内ならLROはPK有り。
 それは別に同じ種族にだって出来る。これで俺達は殺しあえる。上等だな。


「もう、十分だろアイリ?」


 俺のその言葉にアイリは頷く。そしてガイエンを見据えて最後の思いを伝える。


「力は……責任ですよ。私は貴方にはそれが有ると信じようとしてました。でも貴方は、その力を使いたいように使うだけ。見せつける様に示すだけ。
 そこには実は何の方向性もない。理性や責任……それに繋がれてない力は暴力でしかない! そんな物の支配を私達は認めません!! アルテミナスはそんな支配に落とさせない! あの国は、白く綺麗で……光明で照らされるのがふさわしい。そんな国です!」


 それがアイリの決断だった。そしてその瞬間だ。アルテミナスを……エルフの全てを思うその言葉に反応するようにクリスタルが強く輝きだす。


「何だこれは?」
「まさかこれが……カーテナの光?」


 グラウドの声に俺の声が続いてた。そしてそれはそうとしか思えない。強く光るその光は、今まで薄暗かったこの迷宮をどこまでも照らしそうな程……これがカーテナ以外で何だと言うんだ。
 まさにアイリが言った光明その物。


「遂に姿を現すかカーテナよ!! 俺の元に来い!! 俺の意志に応えろ! その光だろう!?」


 グラウドが光の中、クリスタルに向かってそう叫ぶ。どう考えたって反応したのはアイリへと思うが、この自意識過剰野郎はそんな事気にしない。
 まだカーテナの姿は影も形も見えないが、こいつがここに居るとやっかいなのはどう考えたって確かだ。だから俺は井の一番にグラウドへ向かった。
 そしてそして振るった槍は直前でグラウドに止められる。


「もうお前の役目は終わりだ。お前の示す国に何て、これっぽっちも同意なんかできねえよ!」
「ふん、忘れたのか? お前は俺に負けたんだ!!」
「だから! 今度は勝つ!!」


 今度こそ負けられない! アイリの前で、二度も同じ奴に負けてられるかよ。グラウドの怖さは突進。特別な武器によるスキルの多重掛けで増す攻撃力。
 だが、張り付いていればそんな沢山のスキルを一気に掛けることは出来ない。それなら何とか防げるんだ! 規格外に何てさせない。お前が最強じゃない事を今この場で証明してやる。




 槍と槍の応酬は激しさを増していく。周り何て見てる暇さえない。けれど不思議と援護も横やりも入らない。それはきっとアイリもガイエンも戦ってるだろうから。二対三だが大丈夫だろう。
 ガイエンはムカつくがその強さは知っているし、アイリも更に成長してる。だから俺も過去に勝たなきゃいけない。アイツの背中を支えるためにもグラウドを越えていく!


「うおおおおおお!!」


 俺の槍が炎を帯びる。そして突いてきたグラウドの槍とクロスして奴へと向かう。だが間一髪体を逸らされた。けれど鎧を掠った感触。
 それだけで十分だ。


「ぐあああ!!」


 そんな悲鳴と共にグラウドは避けた方向へ吹き飛ぶ。何故なら俺の槍が掠った部分が弾けたからだ。正確には爆発した。そういうスキルだ。
 そしてこれが初めてのまともなヒット。でもまだまだこれからだ。そう思い一気にグラウドに迫る。だがその時、グラウドの槍の一部が外れ落ちた。
 そして口元も上げる仕草が見える。


「調子付くなよアギトオオオオオ!!」
「――っづ……くっ!?」


 とっさに急ブレーキを掛けて槍で受ける。だが……これは! さっき落ちた部分はカートリッジ。そしてその部分にグラウドは再びそれをはめ込んだ。
 刃と柄の間が何度も打ちつける。そして膨れ上がる奴の攻撃力。それはとても体一つで受けれる物じゃない。ブースターが作動し、地面を削り俺は下がり続ける。
 そして遂に限界を超えたダメージに寄って、炎の槍はへし折られ、幾重のスキルの重なりが俺の体を貫いた。クリスタルに突き刺さり、今もHPは減り続ける。


「ダメなのか……」


 そう思った時、二つの影が見えた。だが捉えたのは一つだけだ。自然ともう、そうなるんだ。


「「アギトオオオ!!」」


 そんな声と同時に俺は残った槍の残骸に力を込めた。そして四つの武器が軌跡を描いて一つに集まる。俺かアイリかガイエンかグラウドか……カーテナの光の中、俺達は互いの思いをぶつけ合う。

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