命改変プログラム

ファーストなサイコロ

王家の探し物



 今、俺たちは薄暗い迷宮を進んでる。頼りに成るのは手に持つ松明の明かりだけ。その火の揺らめきに合わせて、俺達の影も壁や地面を這うように揺れている。
 肌を撫でる冷たい空気の流れ、さっきから不意にヒューヒュー聞こえてくるのは明らかに風の通り道があるからだろう。
 そういう風に造られてるって事か。俺達が入ってきた場所から風がここまで入ってこれるとは思えないからな。このダンジョン、正式名称『試しの迷宮』は王都アルテミアスの真下に広がる地下迷宮。
 入り口はアルテミナス城の中にあるから風が入ってくるなんてあり得ない。このLROのサービズ開始時からあるダンジョンだが、ここはまだ殆ど攻略されてないのが現状だ。


 てか訪れる事がまずないからな。アルテミナスの地下っていうとてもお手頃な場所だけど、狩りには全く持って不向き何だ。
 まず入る度に構造が変わるやっかいな仕様で、それに加えてモンスターの出が悪い。てか殆ど出くわさない。けれどいろんな厄介な罠が有ったりするから、一度入ると二・三時間迷う羽目に成るってのを良く聞く。


 にわかには信じ難いが、一日出られなかったって事もあるらしい。その場合の究極は何とかモンスターを見つけて殺して貰うか、自身に毒でも盛る事だそうだ。
 ログアウトじゃまた入っても同じ場所のままだからな。だから戦闘不能でゲートクリスタルへ飛ばされる他ないんだ。
 けれどそんな厄介な場所こそ好む奴らも居るわけで・・いわゆる攻略組って奴らだな。後は世界の全ての目測を企む集団。確か『世界図絵』って名前だったか。
 純粋にゲームの攻略の為の奴らと、そのためだけに命を張ってでも世界の果てまで行く奴らのおかげで、ある程度の情報がある。


 まあ、普通にマップって行った場所は埋められて行くもの何だが、彼らが造る地図は詳細が売り。何と立体表示するからな。最初からあるのは古臭い紙型なんだ。
 ホログラムっていうんだっけか? そう言うので表示して、どんなモンスターが出るかどこに宝箱があるかどんなトラップがあるか、それを詰め込んでるんだ。
 だから効率やらを徹底的に求める人は殺到する。結構売れてるって聞くし。


 そしてそんな世界図絵の地図が今も絶賛活躍中だ。先頭を行くレイアードの一人の掌にはゴルフボール並の球体がある。普段は曇り空の雲が流れてるそれが、今は青い光を放って三十センチ四方の場所に『試しの迷宮』の詳細な地図を表示してる。
 そしてそれに従って進んでる……筈なんだが。


「なあ、かれこれ一時間は歩いてるよな俺達」
「そうだね。でもこれくらいは聞いてた通りって言うか――きゃ!」


 唐突にダンジョン内に響いた悲鳴。みんなの視線が俺に集中してる。それもその筈、だってアイリが粋なり俺の腕にしがみついてるからだ。


「どうしたんだよ一体?」
「ね……ネズミが」


 ネズミって、まだそんな物が怖いのかアイリは。てかLROっているのかそれ? って物まで再現してるよな。
 俺は仕方ないからアイリが安心出来る様に頭を撫でて見た。何て髪の毛サラサラしてんだろコイツ。


「ネズミぐらいでそんな……もっとグロいのモンスターにいただろ?」
「違うの! ネズミがね、何かウネウネしたものくわえてたぁぁ!」


 そう言って涙目に成ったアイリが上目遣いに俺を見る。


(うわ、やばい……超可愛い)


 思わずそう思うのも仕方ないだろ。アイリは怖がってるけど、俺は何だか和む感じだ。てかウネウネって何?


「ミミズとかじゃねーの?」


 取り合えずウネウネって言えばミミズだよな。するとアイリは耳を塞いで叫ぶ。


「きゃー! ミミズって言わないで! ダメなのダメなの。あれだけは絶対にイヤー!」


 もの凄い拒否反応。女の子でミミズが好きって言う子も居ないとは思うけど、ここまで苦手って言う奴もあんま居ないよな。
 偶に計算高い奴も居るけど、アイリはそんな奴じゃないし、てかやっぱり異常だろ。ここまで嫌われたらミミズだって悲しむんじゃね?
 ブンブンと俺まで一緒に揺らされる。何か周りの奴らの白い目が俺に向いてるぞ。それに異様な殺気も感じるし。これは一刻も早くアイリを落ち着かせた方が良さそうだ。


「落ち着けアイリ! 大丈夫だ! もう何にも居ないから」
「ホント?」


 グスっと半ベソ状態のアイリが見つめるから、俺は精一杯コクコク頷いた。これは俺も早く離れた方が良さそうだ。
 このミッションにアルテミナスの運命が掛かってる・・筈なのに、うっかりと目的を見失いそうになる。それだけアイリの泣き顔は強力だ。女の子の涙って色々男には毒だよ。
 そして周りを見回して何も居ない事を確認したアイリは、ようやく俺の腕をがっちり掴んでる事に気づいたらしい。


「あわっわ……ごめんねアギト。皆さんもお騒がせして済みません」


 振り返って丁寧に礼するアイリ。やっとで解放された。けど何か名残惜しい様な――でもどっかのバカに後ろから刺されたくはないから今は残り香で我慢我慢。


「お遊び感覚とは笑わせるな」
「むっ……」


 そんな事をぼそっと言ったのは、我らがレイアードのリーダーグラウドだ。最近は侵略で目一杯暴れられるからって最後で負けてれば気分良くないらしい。
 それに徐々にグラウドの呼びかけにも応えなく成ってきてるしな。まあ結果を見ればそれも仕方ない事って言うか、当然なんだが。


 偉そうなことをのたうち回る癖に結果は全然付いてきてないしな。それにそろそろグラウドの無能っぷりも知れ渡ってるだろ。
 今までは勢いというか、少しは持ってそうなそのカリスマ性とかで率いてきたが、そのメッキも今や危ない。けれどグラウドが居なければ、後はなし崩し的にアルテミナスが崩れるのも見える。


 今はまだ……だけどな。犬猿の仲に成りつつあるアイリとグラウド。そんな二人だから、んな事言われたアイリはちょっと目くじらたててる。
 今にも火種が燃え上がりそうなそんな感じ……その時、アイリの開きかけた口を征するように前から腕が伸びてきた。


「押さえろアイリ。まだ早い。決めたのはお前だろう」
「う……早いって私は、まだそこまでやるとは……」
「そうかな? 私には奴にこれ以上の期待値は見えないがな。そうだろアギト」


 急に何振ってんだよガイエンの奴。それに何か悪い顔してるぞ――ってそれはいつもか。アイリもこっちを見てるし、何か言わない訳には行かないな。


「まあその通りだが、過激な事なんてアイリはしたくないんだよ。アルテミナスが守れれば良いんだから、変に煽るなよな」
「だが、やりたいことは自分でやるべきだと思うがな。タイミングを逃せば何も出来なくなってしまうからな。分かってるはずだろお前達」


 そう言ってガイエンは俺達を見据える。何だこいつ? 煽るなと言った傍から煽ってじゃん。言ってることも分かるが、タイミング……それが今か今回か……それをアイリは判断する気だろ。


「ガイエンもアギトも心配してくれてありがとう。でも……もう少し待ってて。だってみんなで出来るのならそれが一番だもん」


 アイリは優しい。いつも誰かの為に身を投げ出せる奴だ。だから俺はそんなアイリを守りたいと思う。誰かの為に……みんなの為にアイリが我が身を犠牲に晒すなら、その痛みを俺は受け止めたい。
 アイリの優しさが届くようにさ。


「俺はいつだってアイリを信じてるよ」
「ふん、腰巾着が。まあいいさ。でも覚悟はしておけよ」


 そう凄むガイエン。だけどアイリは俺をちらりと見てこう言った。


「もう覚悟は出来てるから大丈夫」


 あの日確かにアイリは言った。『この国を守りたい』と。その覚悟はあの日にしたんだ。だからアイリは笑ってる。






「こそこそと相談事は終わったか?」
「そっちこそ、最深部へのルートは分かったのかよ? これ以上迷わせるなよな」


 何か感づいてる気配のグラウド。だけど何でも無い風を装って俺は話を持っていく。てかこれ以上こんな暗いところにいたら気が滅入る。
 それに何の為に高い地図を買ったんだって事になるしな。


「ふん、この地図でも全てのダンジョン生成パターンを記録してるわけじゃない。ここは勝手が違うんだからな」
「なら、どうするんだよ?」


 運か? 運でも使う気かこいつ。元々そんな頭使うタイプでもないし、いざと成ったら棒倒しの要領で進みそうだ。
 毎回変わるダンジョン生成の仕様が仇になってるのか。それでも百通り以上は網羅してる筈と聞いたけどな。この目に見える範囲で殆ど変化しない壁と床と天井の作りの中、地図を頼りに出来なきゃ五秒で迷うぞ。


「こうなったらこの脆そうな壁でも壊して進むか?」


 そういってこんこんと壁を叩くグラウド。早速地図捨てやがった。そして原始的に暴力的な事言ってやがる。


「ふけるなよ。こういう迷路じみたもので壁なんて壊せるかよ。大体ダンジョン内のオブジェクトは基本破壊不可だろ」


 こんなの一般常識だ。何でもかんでも壊せたらリアリティとかが壊れるわ。クエスト的にも問題だしな。だから壊せるわけ無いと思うが、グラウドは自身の武器を取った。


「知ってるかアギト? LROのオブジェクトは許容量を越えるダメージを与えると壊れるらしいぞ」
「そんなダメージ、そうそう叩き出せる物じゃないだろ」
「お前達にはな。だが俺のスキルと武器はそれを出せる要素がある!」


 暗い迷宮に機械音が響き出す。そして何回も打ち付けるカートリッジが火花を散らしてる。こいつ……マジでやる気らしい。
 確かにスキルを加算できるグラウドの武器ならそれが可能かも知れないが、それって無限に加算出来るのか? そんな事を考えてる間にもグラウドの槍からはもの凄い熱が放出されている。


「行くぞおお!! 離れてろよテメーら!!」
「あのバカ! アイリ!」


 俺はアイリを庇うように動いた。そしてその直後、爆音と煙が辺りに轟き立ちこめる。握っていた松明の明かりさえも煙に封じ込められる様に光を奪われて行く。


「ケホッコホ……どうなったの?」
「分かんないが、あの音はもしかするかもな」


 信じられんが、この煙やあの音はそれを想像させる。煙たい暗い空間に浮かぶ幾つ物丸い光は示してる。そして前の方には未だ火花散る槍が微かに輪郭を現してる様な・・しかし、地下だからなかなか立ちこめた煙が拡散しないな。
 微かに流れてる風だけじゃ心許ない。こうなったら――


「アイリ頼む」
「そうだね、待ってられないよこんなの」


 ――アイリの魔法で一気に流すほか無い。了承してくれたアイリは早速詠唱開始。オールマイティな魔法剣士してるアイリは本当に便利だな。
 ある意味、LRO中の誰もが「こう出来たら良いのに」と思う事を実現してる。アイリの奴は当たり前みたいにやってる魔法と剣技の混合戦闘。けれど実際は簡単なんてもんじゃない。
 誰もが出来るなら、誰だってやってる筈の技術だからな。でも出来ないのはLROの魔法は詠唱が必須ってのがネックになってる。


 詠唱の判断はシビアで一文字の間違いも許されないし、しかも戦闘で有益に使える魔法なんてなるとそれなりに長い。
 それに詠唱の言葉って独特なんだ。それを攻撃したり避けたりなんだりやってる間に剣技系のスキルと使い分けるってなると、脳が一つじゃ足りないくらいだ。
 そんな考察をしてると、詠唱が済んだアイリが魔法を発動させる。通路一杯に剛風が吹き抜けて一気に煙をかっさらって行った。


「よし、煙は晴れたよアギト」
「ああ、でももうちょっと弱い魔法でも良かったんじゃないか? 耳がキンキンするぞ」


 てか、風ってよりも衝撃波に近かったような……そこかしこで小さな悲鳴が聞こえたぞ。まあ、攻撃魔法だろうしこんな物なのだろうけどさ。
 それに最悪なのは松明が消えてる事だな。


「おいアイリ、何にも見えないぞ。意味なくないか?」
「大丈夫です。グラウドの位置は確認できますよ」


 確かにグラウドの槍は光ってるから分かるが壁が壊せたのかは全く持ってわからん。今度は火の魔法が必要だな。そう思ってると火花散る槍の側から声が聞こえてきた。


「ふん、なかなか持って頑丈だな」
「なんだ、要するに壊せなかったって事か」


 まあそうそう壊せるように出来てる訳なんてないんだが。すると俺の言葉にグラウドは負け惜しみのような言葉を返す。


「もう一度やれば壊せそうだ。感触で分かる。壁にヒビも入ってるしな」
「ホントかよそれ」


 ここからじゃ壁は見えないから確認できない。だけど取り巻きどもはグラウドの気持ちを煽る事しか言いやがらねえ。そのせいで再びスキルの加算に取りかかるグラウド。


「次こそぶち抜いてやる!!」


 そんな声と機会音が再び膨れ上がってる。その光で暗闇にうっすらと奴の姿が浮かび上がってきた。そして同時に壁も照らされて見えてくる。


「マジかよ……」


 思わず出た言葉。それはグラウドが打っ叩いた壁に大きな亀裂が入っていたからだ。間違いなんかじゃない、確かにその壁には大きな傷が付いてる。


「うらああああああああああ!!」


 そして二撃目がグラウドの手によって再び叩き込まれる。するとその瞬間だ。同じように轟音と爆煙が木霊するのは勿論だが、異変が起きた。
 貫通したんじゃない……床・天井・壁――全てに細い光が流れ出した。


「おい! 何が起こったんだ?」
「動じるなアギト! 何かが起こるんだろう。貫通した感触はあったぞ」
「そのせいだろ!!」


 何冷静に語ってんだこいつ。こういう所は有る意味大物らしいが、何も考えてないだけの様な気がするな。次第に細い光は量を増していく。


「これって……グラウドが無茶やったせいでバグってるって事じゃないよな?」
「もしそうなら、私たちはGMに呼び出されるかもな。最悪出入り禁止とかの処分が」
「そ、そんなのだめ!」


 ガイエンの冗談めいた発言を真に受けるアイリ。怒られる事はあっても最悪までは行かないだろう。いくらバグってもそこまではされない……と思う。てか信じたい。
 すると光の線で輪郭を表す様に、真っ暗だったダンジョンの全容が見えてきた。そしてそれが組変わってる? これって……


「まさか俺達が居る中でダンジョンが組み替えわろうとしてないかコレ!?」
「そうみたいだな」


 確か入る度に変わるダンジョンが入ってから変わるなんて、ますます分からなくなりそうじゃないか? どうなるんだよ俺達は。
 目的の場所までたどり着けるんだろうか? そう思っていると組上がったらしいダンジョンは光を納めていく。今度はいったいどんだけ複雑になってんだろう。


「はれ?」
「何やってるのアギト? さあ行こう!」


 何かみんな躊躇なく真っ直ぐ進んでるんだが何故だろう。一日中迷うかもしれない複雑な迷宮は? 


「アホ面してるな貴様。見てなかったのか? 組上がったダンジョンは単純明快だぞ」
「単純って……」


 だからこんな堂々と歩いてるって事か? そういえば最後まで俺は見てなかったな。組上がる所を見てれば透けてたしルートが分かったかも知れない。


「直線だったよ」
「はあ!?」


 直線ってあり得るかそんな事? 確かにさっきから暗闇の中をズンズン進んで曲がろうと誰もしないが、だからって直線? 
 迷宮はどうしたんだよって言いたい。組上がりがランダムだからこういう事が起こり得るのか? それならこれは何千通り・何万通りと有るかも知れない組み合わせの中のアタリって奴かも知れない。


「直線ってマジ?」
「ああ、だから単純明快だ」


 ガイエンに確認を取ると先と同じ言葉が返ってきた。しかも振り返りもせずに。


「俺に感謝するんだなアギト。これで迷う事など皆無だ! わっはっはっは!」


 何かグラウドの奴が調子づいてるな。それに認めたくない。今更おまえの事なんて。だからこう言ってやろう。


「ふざけるな。たまたま偶然の産物じゃねーか。奇跡の様な出来事だろこれは」
「その奇跡も踏み出す奴にしか訪れない事を知れアギト。お前はお前は型にハマってないようでキッチリはまり過ぎなんだよ」


 上機嫌なグラウドの言葉に何か言葉を飲み込む事しか出来ない。俺は無難ってか? だけどそれを否定出来ない自分が居る。


「貴様も言うようになったな」


 うん? 何かガイエンが言ったような。けれどそれは誰に向かってだ? 背中しか見えない俺には分からないが、グラウドがサッと前に向き直った? 
 それに何か姿勢が正されてる様な……


「でも奇跡でも何でも良かったよ。あのままじゃ本当に一日迷ったあげくに死亡フラグだったもん」
「なんだ? 死亡フラグなんてこっちの言葉も使える様になったのかアイリ?」
「このくらい使えるよー!」


 アイリとガイエンが少し前で話し出すと、グラウドの緊張が解けた様な気がした。何だったんだろう今のは? 少し変な雰囲気だった気がする。
 けれどガイエンは俺達が来るまでレイアードでも浮いてた奴でグラウドともソリがあってない様だった。そこに何か有るとも思えないが――


「ちょっとーアギトもガイエンに教えてあげてよ。私の成長っぷりを!」
「ん……ああ、所でアイリってミミズが苦手なんだな。知らなかった。何で?」
「ええ? 唐突な話題転換……私の成長なんて語る価値も無いって事だね」


 ――肩を落とすアイリを見てるとそんな事は直ぐに忘れた。よく考えなくてもどうでもいいし。そしてどうでも良い話が続く。


「ミミズってね……地球外生命体なの」
「何言ってんだお前?」


 また訳の分からない事を言い出すアイリ。面白い頭してるな本当に。


「私は知ってるの! あのウニュウニュしたやつらは鼻から体内へ進入して脳へ……そして人体を操るんだよ。知らない? そんな映画観たもん!」
「それは映画だろ」
「でもママが『こんなミミズがいないって保証は私には出来ないわ……』っていったの。それ以来、いつか出会うかも知れないそんなミミズを警戒してるの!」
「無駄な事に神経使ってんだなお前。だからどっか抜けてるのか」


 変な子だ。変な子が目の前に居る。今まではもしかしてと思いつつも止めて置いたその評価を、今はもう止まらせる事が出来ない! 






 そんなアホな会話をやってるといつしか前方に何かが見える。あれが最深部? たどり着くとそこには壁一面の彫像が掘られてた。
 それもクリスタル……しかも淡く青く光ってる。


「ここが最終地点か? 別に何も無いって訳じゃないんだな」
「こんな彫像何の役に立つ。俺達は王家の力を手に入れに来たんだ。お前も付いてきた事を無駄にしたくなければ何か探せ。
 ここからは未知だぞ」


 そのグラウドの言葉で全員で“何か”を探す。何も手掛かりがないのに見つかるわけ無いが、怪しさ満点なのがこの壁一面の彫像。
 何だか何かを表現してるように見える。それにここだけクリスタルって何か違うんだよな。このクリスタル……天井を突き破ってる様な?
 全貌がどうか分からないがかなり大きいのかも知れない。それならこれを守るために作ったようなダンジョンだったのかも……
 その時、アイりが何かに気づいた様な声を出す。


「この彫像って城に有る絵に似てる。確かタイトルは『カーテナの光』っていう……」
「なるほど、その絵は知ってるぞ。カーテナ、つまりそれが手に入る王家の力!」


 そこでグラウドは有る物に目を付ける。それは剣……騎士の国アルテミナスの力はイコールを剣で結んでる。

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