命改変プログラム

ファーストなサイコロ

陰る国



 大量の足音が開かれた草原に響いていた。蒼天の抜ける青空に靡く緑の風景はいつもならピクニックにでもやれば気持ちよさそうな物だが、今はそんな風景に似合わない光景が広がっている。
 風に乗って漂う匂いは新緑の匂いでは無く、焦げ臭い様な暑苦しいような爽やかとはほど遠い匂いだ。その原因ははっきりとしている。
 それは今、このフィールドが侵略対象エリアとしてプレヤー同士――いや、エルフと人の国による戦いが行われているからだ。
 そこかしこで上がる爆炎に、途切れる事の無いスキルの光。倒れてる双方のプレイヤーは、今までに見たことのない数に成っている。
 これはまさに……戦争だ。




「いけいけ行けぇええええええ!! 脆弱な人間どもを踏みつぶせ!!」


 グラウドのそんな声と共に突撃を掛けるエルフ勢。こういう国を掛けた戦いってのは、別にレイアードじゃ無くても参加したプレイヤー達は別に違和感無くグラウドの指示に従ってる。
 やっぱり自分が選んだ種族だからな。多少なりは愛着があって当然か。それにやっぱりこういう所でグラウドの奴は一際存在感があったりするようだ。
 だからこそ、それなりにはこうやって指揮する立場になってる。自然にな。まあ指示なんて言っても、何か作戦を事前に立ててた訳でもないからスッゲーずさんだけど。
 それにやっぱりエルフなんて言う種族の奴らはこうやってそれなりに追い込まれないと他人の話になんて耳を貸さない。


 レイアードは二十人位しかいないし、それだけじゃこの大規模な戦闘には勝てないんだ。だからこそ一般プレイヤーの取り込みが大事だが、知っての通りエルフは我強く自己主張が強い。
 だからやっぱり纏まりきらないって感じ。多分向こうとは結束の力が違いすぎる。俺だってレイアードに入ってるから無理矢理グラウドに連れてこられた感じだし……やる気がなかなか出ない。
 まあ一人やる気一杯の奴が目の前に居るけどな。


「ちょっと! ここで突撃なんて、無謀にも程があります! アナタは本当に勝つ気があるんですか!? このままじゃ、このフィールドも取られちゃいますよ!」


 そう叫んだのはアイリだ。この戦争の間は何故かアイリは良くグラウドに喰い掛かる。こんな激しい子じゃ無かった筈だが、多分アイリは人一倍郷土愛とかが強いんだろう。
 だからこそ、最近は自分達で「アルテミナスを守ろうよ」とか言って頑張ってるんだ。だけどそんなアイリの言葉を聞くグラウドじゃない。
 こいつこそまさに我の塊みたいな奴だからな。


「うるさいぞアイリ。貴様に言われる事じゃないそんなこと。言葉の前に貴様も力で貢献してろ。一体でも多く奴らを倒すんだ」
「それって……ただ、戦闘をやりたいだけじゃない」
「それがどうした!? 俺達エルフは一体一体、出来る限りの敵を倒す。それだけで最強種は事足りるんだよ」


 部下を引き連れて歩き出すグラウド。やっとでアイツも出るみたいだな。だけど幾らアイツが強くても、今からじゃこの戦局はひっくり返る事はないだろう。
 元々個人でどうにか出来る物じゃないだろう戦争ってさ。それにやっぱり人の統率性はスゴい。それをそろそろ認めろよって思う。
 最強種ってさ……一体どの種族を言ってんだよグラウド。


「無駄話やってる暇があるなら貴様等も後ろに続け! 俺達の力を見せつけてやる! 手に手を取り合うだけの脆弱な種に真の力と言う物をな!!」


 ようやく出てきて何言ってんだよって感じだ。こっちはさっきからずっとその力って奴を行使しとるわ! だけど当然、人と変わる訳もない。
 だって、グラウドの言ってる事は設定でしかないんだからな。LROの世界を形作る上での、それぞれの種族に与えられた物語に過ぎない物だ。
 それでプレイヤーに優劣何か付いていない。だけどこいつ等はそんな設定を本気で信じきってる奴ら何だよな。レイアードってのはそう言うことだ。エルフの場合は。


「やろうアギト。仕方ないけど……こうなったら最後まで頑張ろう! 私達だけは純粋にアルテミナスの為にね」
「アイリ……まあ仕方がないか」


 アイリは拳を握りしめてグラウド達の後ろへ続く。そして俺も仕方ないから続いてやる。アイリを一人敵陣の中央へ行かせる訳にはいかないからな。
 レイアードの奴らは庇い合うって事を知らないから、アイリだけじゃ大変だ。それに結局、俺が嫌々でも参加してるはアイリが心配だから。
 ただそれだけなのに、アイリと共に居なければ意味なんてない。後ろに続いてグラウド達の背中を追っていると、横から同じようにグラウドを追う影が入ってきた。


「アルテミナスの為……なら、私の方が余程頼りになるぞアイリ」
「どっから沸いてきてんだガイエンてめー!」


 どこからともなく現れたのは蒼髪エルフのガイエンだ。何こいつ? 最近すっかり、アイリに取り入るような行動ばかり取りやがって。マジで狙ってんのか?
 そしてガイエンは俺の言葉にいつも通り鼻に付く言葉を返しやがる。


「うるさいなアギト。貴様のそう言うところが将に成り得ない由縁だ。雑兵は雑兵らしく、先に死んでれば良かったものを」
「ああ!? 悪かったな、お前よりも敵を沢山倒してて」
「質の問題だな。貴様が倒せてるのは同じ雑魚ばかりだ。雑魚は雑魚を将は将を倒すと、良く出来てる世界だなまったく」


 何かの間違いが起これば握りしめる槍が隣のこいつに向きそうだ。取り合えず間違いをどう起こすかだな。躓いた振りをしてその拍子にブスッとやってもいいな。
 本当に減らない口だから最後はいつも拳。時も場所もガイエンとの場合は関係ない。こいつは年中無休で殴り飛ばしたいコンビニみたいな奴なんだ。
 まあコンビニよりもお手軽じゃないのが偶に傷だけどな。俺とガイエンの実力は拮抗してるから、バトルに成るとどっちもボロボロになる。けれどぶつかり合うことを止められない……きっとそんな宿命の元の関係何だろう。


「こら二人とも! これは遊びじゃないんだよ。私達の国が掛かってるんだからね。ガイエンもアギトもそんなにお互いを意識しないでよ。
 お互いを必要としあって!」
「「え~」」


 アイリのお説教に俺とガイエンの声がハモった。何とも不愉快だが、これが結構いつもの感じだ。俺達を止めるのはいつもアイリ。
 てか、アイリが居なかったらこんなクソムカつく奴と一日とて一緒には居られない。だけどお互いを必要としあうだなんて……どっちも多分、消えて無くなれ位思ってる同士だからそれはなかなか厳しい。
 でも今のアイリは厳しかった。


「え~じゃない! もうこうなったらせめて私達でみんなに声かけよう」


 アイリは決意に満ちた瞳を俺達に向けてそう言った。少し前を走るアイリの背中……それが出会ったときとは明らかに今は違ってる。
 あの頃は右も左も分かってなくて、どうしてこんな子がLROなんて始めたんだろうって思ったけど、今はもう完全にこっちでも生きてるって感じだ。
 結構死に続けて来たけどさ……三歩進んで二歩下がるって奴をまさに体現してきたが、あれがアイリ何だよなって今は分かる。
 頼もしく成った背中はもう、もしかしたら何かを背負えるのかも知れない……そう思える。だから俺はその背中にこう応える。


「分かったよ。俺もただやられるだけなんてイヤだしな。やれるだけやろうぜ!」


 そしてガイエンも俺に続いて言葉を紡ぐ。


「まあ実際かなり厳しいが……私はこれ以上負ける事など許せない。あんな脆弱な種族にな。いい考えだ。あんなクソ頭悪い奴にはこれ以上任せてなんて居られんからな」


 こいつはマジでレイアードだな。ほぼ私情じゃん。アイリがさっきアルテミナスの為って言ったの聞いてたか? それに相変わらずグラウドの事見下してるし。
 俺も実際は変わらんし、アイリさえも最近はそんな感じに成ってるが、コイツ何でここにいるんだ? 良く考えたらレイアードに何で入ったんだガイエンは? 誘われてって訳でも無さそうと言うか……コイツが誰かに言いくるめられるところなんて、アイリ以外では想像出来ない。


 てかあのグラウドにそんな話術は無いだろう。なら俺達と同じか、自分から? どっちかって言うと前者の方が想像が付く。
 まあ、別にガイエンの事なんか興味も無いからどうでも良いんだけどな。俺はただ目の前の背中をもう少し支えられれば……支えられれば……良いんだろうか? 
 何だか最近、頼もしくなったアイリをこうやって見てると寂しい様な気が沸くことがある。これが親心って奴かな? それとももっと別の感情? 
 少しだけ遠くに感じる事が不安の波紋を広げる感じって一体さ……


「じゃあ行くよ二人とも! まずは敵を倒しながら協力者集めてね!」
「「おう!!」」


 考えは迫った敵の中心で途切れた。そこでは激しい戦いが既に繰り広げられてる。そして倒れてる人影に目を向けると、それはエルフばかりだ。
 そして人側は組織的な動きで効率よく回復を回して戦闘不能を防いでる様だ。こっちは絶対的にヒーラーもそう言えば少なかった気がする。


 まあ定員数までに登録した奴らが参加できるシステムだから、俺達エルフの場合は前衛と後衛の比率も始まるまで分からないんだよな。
 向こうは元から決まった人数を集めてるみたいだったから、多分バランス良く集まってるんだろう。少なくとも、一パーティーに一人はヒーラーが居そうだ。それに比べてこっちは二パーティーに一人居れば良い方かも知れない有様。
 回復が追いつかなくて当然だ。それにヒーラーを守ろうとかいう殊勝な奴が居たかも微妙だから最悪だな。一体どれだけヒーラーが残っているのかがこの戦闘をどこまで延ばせるかの鍵に成りそうだ。
 そしてそれはアイリも同じ考えの様だった。


「アギト、ガイエン! ヒーラーの人を守ってあげて! 復活させた人達はきっと協力してくれやすい筈だよ。それに戦力を取り戻さなきゃ話に成らない」
「よし!」
「了解だ!」


 俺達はバカバカと戦闘を楽しむグラウド達から一線を置いてヒーラーの人達の援護をする。アイリは魔法も剣術も使えるから、見つけたヒーラーはまずアイリが回復だ。
 そして恩を売ったそばで説得。これはなかなか効率的だった。助けて貰えば誰だって無碍には出来なくなるからな。
 これならアイリの考えは上手く行きそうだ。戦闘不能状態って惨めだからな。






 俺達はグラウド達が全力で戦ってる間に、何とか出来る範囲の戦力を回復させた。向こうだってバカじゃないからな。こちらの行動に気付いて攻め立てられると、流石に防護だけに偏ってられなくなった。
 復活出来たのは十数名……これじゃ幾ら頑張っても形勢逆転なんて無理だろうが、アイリの元でみんなやる気になっている。


「まずは彼らの布陣を崩しましょう! 大丈夫です。私達ならまだまだやれます!」


 そんなアイリの言葉と笑顔に後押しされて俺達も遂に敵陣へと突っ込む。驚く事にグラウド達の野郎はそれなりに戦線を崩してるみたいだ。伊達にリーダーやってる訳じゃに無いな。
 俺も負けたし……それは消したい過去だがな。


「「「うおおおおおおおおおおおお!!」」」


 俺達は気合い一線、敵陣へと殴り込む。どうせだからグラウド達を上手く使う形で、一番薄くなった所へ突っ込み、更に魔法で分断させた。
 これで俺達が前へ進める希望が沸いてくる。敵側にとっては二段構えの攻撃に成った感じ。戦力差は絶対的だが、これなら。


【まだやれる!!】


 きっとそんな感情がみんなの心に燃えていた筈だ。そう俺達は一人の少女の下に集うことが出来る。それは俺達エルフが今まで出来なかった事へのキッカケ……この時、確かに俺達は纏まってた。






 耳に届くどちらか分からない悲鳴の応酬。スキルの光が常に視界の端にチラツいては弾け飛ぶ。刺しても刺しても次々に迫る敵にウンザリしそうだな。
 完全に倒せる事がまず無いように敵側はやってるから、実際は進んでるのかも分からない。今の俺には突破力が足りないって事かも知れない。


「くっそ、次から次へと……」


 既に俺達は囲まれた状況だ。良い線までいけたが、やっぱり戦力不足は否め無い。いや、敵の統率力が予想よりも上回ってたって事かもな。
 やっぱり付け焼き刃のチームワークじゃどうしたって限界が見える。


「ふん、倒れるのなら邪魔に成らないところで死ねよアギト」
「はあ?」


 唐突に側に迫った声は振り向かなくても誰か分かる物だった。わざわざ俺の感に障る言い方をする奴なんてガイエンしかいねーよ。


「何だよガイエン。随分ボロボロの癖に嫌味言いに来たのかよ? んな暇あるなら、もっと倒せやクソ野郎!」
「当然! 私は貴様よりも先にやられる気なんて無いからな。私の気を張り続ける意味でも、せいぜい貴様は気張ってろアギト!」


 こんな事は初めてだ……まさかコイツと背中合わせで戦う事に成るなんてな。そしてその時、今度は俺達のリーダーが戦場に咲く花の如き声を響かせて頭上から降ってきた。


「アギトもガイエンも協力してね! 大丈夫! 私達三人なら突破口を開ける!」


 そう言ってアイリはどこか目的があるように前へ行く。すると俺達に何か暖かい光が加わった。


(これは……身体強化の魔法か)


 どうやらアイリが掛けてくれたらしい。ヒーラーの人達は回復にてんやわんやで補助系をやる暇無いからな。これは助かる。そして更にアイリは魔法を付加させた自身の剣で、横には目もくれずに進んでいく――って流石に無茶だぞ!


「行くぞアギト! 我らが姫のお言葉だ」
「はっ……いつからあいつは姫なんだよ!」


 なんか最近ガイエンの奴は乗りが良く成ってきたと思う。良く笑う様になったし……って、今はコイツじゃない。アイリの元へ!






 俺達はアイリと共にラッシュをかけて突き進む。最近ハマって来たと思ってた、アイリの魔法と剣の同時運用はかなり強力に働いてる。
 直接系の武器では届かない場所・そして範囲に攻撃を出来る魔法を直接戦闘中に出せるってのがコイツのスゴいところだ。
 そして俺達三人の連携は決して付け焼き刃なんかじゃない! 喧嘩を繰り返してでも組んでいただけの事はある。


「てやああああああ!!」


 風の暴風が前方の敵を吹き飛ばす。そして見えたのは、何だかゴツい鎧に身を纏った奴ら。軍で言うなら将校みたいな感じ。
 そんな奴らがこんなフィールドの中ぐらいで何やってるんだ? いや……そんなの考えられるのは一つしかない。


「まさかアイリ! あそこに!?」
「そのまさか。だってあの人達、スッゴく偉そうでしょ?」
「ああ、決まりだな!!」


 俺とガイエンが一気に奴らに近づく。そしてアイリは大きな魔法の為に詠唱に入る。この侵略の勝利条件……それが奴らが居るあの場所にある! 多分その筈だ。
 侵略側の勝利条件は制限時間内にその地に埋まる国のシンボルを捜し当てて破壊すること。そしてその場所に自分達のシンボルを入れ替える事で侵略完了となるーーだ。
 埋まってるシンボルの場所は守る側も分からない。だから両陣営が守るため・壊すため――それぞれの目的を持ってフィールドを駆ける事になる。
 そしてシンボルの埋まる場所はスキルに反応する。それにLROのフィールド一つはだだっ広い。掌サイズのシンボル一つを見つけるのはかなり困難だ。


 だから実際は探索班と戦闘班に分けるのが定石だが、俺達はグラウドがああだし、最初はまとまっても無かったからただただ戦闘してただけ。
 だけどやはり向こうはちゃんと探索してたらしい。しかも大部隊で。今まで微妙に戦闘位置を変えてたのは、シンボルの位置を特定するためか。
 最初は小隊に分けてやってたんだろうけど、大体あたりを付けたら俺達がそこに近づけないように大部隊を配置したって事だろう。
 でも俺達は届いた。今からじゃシンボルを時間まで守り抜くことは出来ないかもだが、目の前でやらせてたまるかよ!
 今までは全滅させられてシンボルに俺達は届きもしなかったにこれは大きな進歩だ。
 アイリがさっき上から現れたのはもしかしてコイツ等を見つける為だったのかも。俺が目の前の敵で精一杯の間に、ちゃんとリーダーぽい事やってたらしい。
 大した奴だ。


「「やらせるか!!」」


 俺とガイエンの声が重なってゴツい装備の奴らに武器を向ける。だけどその時、横から人が吹っ飛んできた。そして現れたのはグラウドだ。


「なっ!?」
「雑魚共め。ん? 貴様等何やってる?」


 信じられんバカだ。ここまで一人で生き残って来たのは賞賛物だが、明らかに邪魔してんじゃねーよ! その間にも奴らは地面からシンボルを取り出してる。
 その時、後ろに居たアイリが動き出した。あの状況が分かってないバカに期待なんて出来ないから、アイリにここは頼るしかない。
 あいつの最大の魔法や技でも通るか分からない装備だが、アイリのコンビネーションなら――そう思った時、信じられん事をグラウドの野郎はまたやりやがった。


「きゃあああ!!」
「アイリ!?」


 攻撃をしたのは敵じゃない……グラウドがアイリを止めるために槍を突き立てやがった。


「な……何しやがるグラウド!!」
「骨が有りそうな奴を取られちゃかなわん。アレは俺の獲物だ!!」


 こんの、戦闘中毒者が! コイツは国の勝利なんて微塵も考えて無いじゃないか。ただ気に入らない他の種族を潰したいだけ、そして自分の強さに酔ってるだけだ!


「止めてよ! やっとで……みんなでここまで頑張ったのに邪魔しないでよ!!」
「邪魔だと? 貴様等は誰に付いてきてると思ってる!? 俺だよ。俺という最強のエルフに付いてきてるんだろうが!! そうだろう貴様等!」


 グラウドの言葉の先には今も頑張ってくれてる協力者がいる。そして俺達もいつまでも倒れてる訳には行かなかった。
 将校を守る様に立ちふさがった敵だけで先が見えなくなる。最後のチャンスだったはずなのに。


「ふざけないでよ! 一人で勝てもしない癖に!!」


 アイリの叫びは良く通る。俺達はそれぞれがどこに居るかももう分からない状況だ。でも声がした方へ必死に進む。降り注ぐ攻撃にあらがい続けて。


「国が無くなろうと、俺が居ればエルフは最強だ! それをこの戦いで証明していくだけだ!! 勝てるさ。俺だけはな!! 


 そしてそれがエルフの繁栄だ! 貴様等も最強の下に居たいだろう。か弱い女の下で満足など出来る訳がない! 知れ、何も出来ないのは貴様だとな!!」
 ガイエンの声がどこかから聞こえてる。ムカつくことを淡々と喋りやがって。


「戦え! 戦略戦術助け合い? 俺達に必要なのは目の前の首だけだ!!」
「「うおおおおおおおおおお!!」」


 呼応する声。そんなまさか・・あんな言葉で上手く回って連携を止めるわけ――


「だめーー!! みんなそんなんじゃダメだよ!!」


 ――無いと思ったがアイリの声でそれは消えた様だ。何で……そんなにバカばかりかよエルフって……今度ばかりは呆れるぞ。
 俺は必死にアイリを探す。声のした方の敵を払って、その涙声を辿る。聞こえるんだ。俺にはさ。だけど遂に見つけたアイリの体には幾重もの武器が突き刺さり、そして色が黒ずんでいく。
 HP表示はゼロ……そして同時に俺の視界もフィルターを重ねた様に色を奪われた。侵略システム実装からこれで三度目の敗戦……アルテミナスの輝きは失われつつある。

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