命改変プログラム

ファーストなサイコロ

二人一緒に



 二つの槍がぶつかり合い、押されたのは俺の方だった。


(強い)


 まさにその感じが一撃で伝わった。初めから決めるつもりで行ったのに、力で強引に押し返された。スキルごと強引に……


「くわっはっは! 良い一撃だ。さあもっと楽しもうぜ!」


 身体強化のスキルの発動。そして地面が吹き荒れる様な踏み込みでグラウドは俺に迫ってくる。奴の槍は特殊だ。機会仕掛けのあの槍はソレ事態に特殊なスキルを纏ってる? いや装填してるのか?
 回転に併せて発動していく威力加算型のスキルがその正体。一つのスキルではどうやら太刀打ち出来そうにない。俺は奴の槍を紙一重でかわして前へ出る。
 幾ら破壊力抜群の一撃でも当たらなければいいだけなんだからな。それにグラウドは常に大振り。一撃の破壊力に頼った戦法何だろうが、それだけにかわせば一気に隙だらけだ。


「うらあ!」


 懐に入っての一撃がグラウドを捕らえる。この距離でかわす事なんか不可能。吹き飛びやがれ!!


「ふっ」


 その時見えた余裕の笑み。そして次の瞬間、大きくグラウドの体が後ろに退いた。いや、退いたというか飛んだみたいだったぞ? 
 不発に終わった自身のスキルが消えていく中、俺は奴の回避の正体を見た。


「お前のその槍……」
「どうだ? まだ俺以外には見たこと無い槍だ。格好良いだろう?」


 確かにあんなのは見たことないし、格好良いとも思う――が、グラウドが持ってるせいで何だかイヤな武器に見えてムカつくな。
 きっと俺は今後あのタイプの槍は使わないだろうと思う。まあそんな自分の中だけの決め事はどうでも良いこととして、あの槍どうやらブースターも付いてる様だ。
 ブースターと言うか噴射口かも知れないけど、どっちにしろそれで逃げられた。
「知るかそんなの。色々と詰め込み過ぎじゃ無いのかその槍」


「う~んまあそうかもしれんがな。俺は気に入ってる。その理由をお前には見せてやろう。詰め込みも
物に寄っては陪乗だ」


 そう言って少し離れた位置で槍を構えるグラウド。先程と同じく、再び回転を初めてその回転する段々事にスキルの発動が見られる。
 同じ奴が来るのは間違いだろう。だけど疑問なのはあの位置からって事だ。二・三歩じゃ足りないぞ。それでも同じ事をやる気だなんて……そう思ってると更に機能が加わっていた。
 回転の音に混じって空気を吸い込むような吐くようなそんな音が聞こえてる。そして回転する槍の隙間に何か熱気の様な物が見える? アレは一体?
 そしてグラウドは満足気な笑みを浮かべながら言う。


「今度は紙一重では足りないぞ」


 次の瞬間、槍の間から出ていた物が一気に後方へ線を引いた。それはつまりアレが推進力となってるって事だ。さっきのブースターはアレか!? と思ってると既にグラウドは目の前に来ていた。
 凄まじい速さだ。もうグラウドは完全に槍に引っ張られて飛んでるのと変わらない状態じゃないか。でもそれで事足りるって事なんだろう。
 元々の威力加算型のスキルの発動にこのスピードが加わればそれはもうかなりの威力なんだろう。目の前から迫るグラウドを見据えると、確かにモンスターを一撃でなぎ倒せそうな迫力がある。
 つまりは防御なんて考えられなかったって事だ。きっと防御を抜かれてあの槍は俺の体まで易々と届く。そう簡単に想像出来る。


「ちっ!」


 俺は真横に飛んでグラウドを避ける。別にアイツの忠告を受けたからな訳じゃない。そうしなければヤバい気がしただけだ。
 だけど――


「――っつ!? ぬあ! ぐべっ!!」


 避けた筈だった。完璧に、紙一重じゃない様に。だけどこれは……それでも足りなかったって事なんだろう。真横に飛んだ俺の足を何かが巻き込んだんだ。
 そしてそれはグラウドの生み出したあの強烈な風なんだ。ブーストと強力な乗算されたスキルの余波みたいな物に足を取られて、そのままあらがえない乱風によって地面に強打させられた。顔面から。


「くっそ……あんなのありかよ」
「アギト! 頑張って!」


 愚痴をコボす俺にアイリの精一杯の声援が届く。結構ガヤガヤうるさいのに、アイリの声だけはやけに自分の耳にはっきり届く事に疑問だ。
 システムがわざわざ選別してくれてるのかと思うな。それならありがたい事だけど……そんなことあり得ないだろう。まあでも、アイリの声でまだ終わった訳じゃないと思える。
 攻略法なんて今の俺には無いけど立ち上がろうってさ。


「良い目だ。だが今の一撃で実力差は分かっただろう。大人しく負けを認めればこれ以上痛い思いはしなくて済むぞ」
「はっ、実力差? 何のことだよグラウド。俺はまだ負けちゃいないぜ」


 グラウドの言葉にそう返した俺は、スキルを纏わせた槍を構える。そしてグラウドもそんな俺を見て楽しそうに笑いながら再びあの技の態勢に入った。


「そうだな。勝負はやり遂げなければ面白くない。遠慮無く潰してやろう。そしてお前を手に入れる!」


 爆音が尾を引いて俺に迫る。突き出したグラウドの槍は加算されたパワーが溢れ出す様に広がっていた。本当に凄まじい……だが、逃げても意味ないならこれしかない!


「潰されるかよ! 俺達はレイアードになんか成る気はない!!」


 俺は全身全霊を持って真っ正面からグラウドにぶつかった。纏わせたスキルは今の時点で最強の物。槍に灼熱の炎が被さり、その威力を飛躍的に高めてくれる物だ。
 そしてこの炎は操れる。だから槍一本に更に二本の炎を加算して受け止める。


「うおおおおおおおおおおおおお!!」


 後ろに徐々に下がるが、二つの力は拮抗していた。完全じゃなくても、何とか受け止められてる。腕が震える。炎の様に燃えたぎってるみたいに熱い。
 だけどこのままじゃ駄目だ。このままじゃ確実に弾かれる。けれど反撃の糸口さえ見えない。全霊をこの槍に込めてるからこれ以上出来る事なんて無い。
 この槍で、グラウドを突き破るしか道はないんだ。だけどその壁が余りにも分厚く感じれる。そしてその時、目の前のグラウドの声が嵐の様に響いた。


「良くやったが終わりだ! カートリッジ間装・装填!!」


 その瞬間更に増した槍の回転。そして更に加算されたスキル。実際、嵐の様に響いたのはその後に巻き起こった凄まじい暴風だったのかも知れない。
 加算されたスキルを纏った槍は用意に俺の槍を弾いた。そして直撃した槍と共に、俺の体もグラウド同様浮いたんだ。そしてどこかの建物に突っ込んだ。


「――ぐっはぁぁ!!」


 爆音と衝撃が体を駆け巡り、視界は一瞬で煙に包まれた。そして目の前に表示される画面は【Lost】の文字。どうやら今の一撃で規定のダメージを越えたらしい。
 そしてグラウドの方には勝利を知らせるメッセージとファンファーレが贈られている。それを聞いたヤジウマ連中は決着が付いた事を知り、周りで騒ぎたててる。
 だがグラウドはそんな様子を気にすることなく、俺の前に悠然と立っていた。そして勝ち誇った顔で俺を見下ろしながら言葉を掛ける。


「俺の勝ちだな。約束通り、仲間に成って貰おうか」
「……っち、分かったよ。それじゃあ――」


 気に入らない……がこれは約束だったんだ。そしてそれを受けたのは俺だ。ここは素直に受け入れるしかない……筈だがその時、俺とグラウドの中に声が割って入ってきた。


「ちょっと待ってください!!」


 それは紛れもなくアイリ。アイリは急いでこちらに駆け寄ってくる。そして俺の隣に膝を付いてハンカチを当ててきた。


「アギト大丈夫? 痛くない?」


 そう言って顔を拭くアイリは超近い。何だか知らんが胸の鼓動が速く成っているのがわかる。


「あああ……大丈夫。痛いところなんか別に……っは!?」


 俺はこの瞬間自分がもの凄く情けない奴に墜ちてる事に気付いた。だって、自信満々で受けた決闘に負けて何介抱されてるんだよ。
 スゴく格好悪いだろこれ。


「どうしたのアギト?」
「いいや、別に……ありがとアイリ。もう十分だよ」
「そう?」


 俺は居たたまれなくなり顔を伏せながらそう言った。なんだか既に体の痛さより、心の方が重傷だ。俺はあの攻撃でも実はビクともしてなかった建物の壁に縋るように体を丸めたい。
 だけどそれこそ情けないからしないけど……町中のオブジェクトは破壊不可だからな。あの煙と音はゲーム上の演出なんだ。
 まあ規格外の衝撃を与えれば壊すことも出来るって言われてるがそんな苦労をする奴はいない。


「おい、女邪魔だぞ。これは男同士の真剣勝負だったんだ。女が介入する余地はない」


 俺とアイリのやりとりに業を煮やしたのかグラウドがそんな事を言ってきた。そしてこればっかりは向こうが言う方が正しい。ちゃんと双方で合意した上での決闘だったんだ。今更無効になんて出来ない。
 だけどアイリはその言葉で少しムッと来てたのか分からないが、俺もグラウドも予想だにしてなかった事を言った。


「違います! アギトが負けたのなら今度は私と勝負です! アギトの仇は私が取ります。それにレイアードなんて真っ平ゴメンです!」


 ズバーンと臆すことなくそんな事を言ってのけるアイリは大物かも知れないと思った。だけど明らかに無謀だろ。だってアイリは数ヶ月前よりは確かに強く成ったが、まだまだ俺の方が断然強いし。
 その俺が負けた相手に勝てるだなんて思えない。絶対いつもの暴走スイッチが入ってる。俺は助けなんて呼んだ覚えはないのにな。


「女、貴様が俺と決闘したい?」
「ええ」
「そいつの仇を取りたいってか?」
「その通りです。二度言わないと理解できないんですか貴方は?」


 おいおい、敵と見なしてる奴にはやけに強気だなアイリの奴――って流石に止めないとヤバい気がする。


「やめろアイリ。お前が勝てる相手じゃないぞ」
「負け犬は黙っててください。しょうがないから私が守ってあげますよ」
「負け……」


 犬? って言ったか? 聞き間違いと願いたいが、何だか耳に張り付いている。延々とアイリの声で
『負け犬』が復唱されてる感じ。ヤバい、トラウマになりそうだ。
 それに本当に負け犬だから何も反論出来ねーよ。心が折れる。


「わっはっはは。負け犬か! 言うな女。貴様もなかなか……」
(不味い!)


 落ち込む俺の頭に本能がそう告げた。グラウドの野郎がアイリにまで興味を持ち始めてる。だからこのままじゃ不味いと。


「じゃあ戦ってくれま――」
「――ちょっと待て! 俺がレイアードに入るからアイリはやめろ! あくまでも俺だけだ! それで十分だろ」


 アイリの言葉に強引に言葉を被せて話を進める。だってアイリをレイアードに引っ張り込みたくはない。このままじゃアイリが決闘して二人で入る事に成りそうだが、今なら俺だけで良いはずだ。


「まあ、確かにお前だけでも十分だがな」
「ちょっとアギト! 何言い出すんですか!?」


 納得しだしたグラウドと怒った様な顔でこちらを睨むアイリ。グラウドの野郎もさっさと決めれば良い物を、アイリを惜しむように見やがって。絶対に入らせる訳にはいかないな。
 そしてそのアイリは俺が何としても引かせなければいけない訳だ。


「今なら俺だけでいいんだよ。それでアイツも納得する。アイリには手が出せないんだから、これで良いんだよ」
「イヤです! そんなの私がイヤだもん! 一緒に居られなく成るよ……それでもアギトがレイアードに入るのなら、私も一緒に入る!!」
「はあ!?」


 こいつは俺が言ってた事を聞いてたのか? アイリをレイアードに入れさせないために俺が入るって言ってるのに何言ってんだこいつは!?


「訳がわかんねーよ。だからお前は入らなくても良いんだ!」
「だから私はアギトが入るなら入るって言ってるんです! それがイヤなら私を信じて決闘させてください! そして勝てば全部納まるんだから!」


 アイリも俺も息がゼ~ハ~ゼ~ハ~する位に興奮していた。どうやら全ては俺が決闘に負けたことによる悪循環みたいだ。
 こんな事なら安易に決闘するんじゃ無かったと考えても後の祭りか。アイリの瞳は真剣その物でとても冗談じゃ無いみたいだし……と言うかアイリは普段から冗談何か殆ど言わない。
 毎日をとても真剣に生きてるのがアイリなんだ。だから当然これも真剣に考えて出した答え何だろう。そして更にアイリは意外と頑固という特性を持っている。つまりは一度言い出した事は曲げない奴だ。
 くそ……何だかリアルの親友の顔が浮かぶじゃないか。アイツはそんなに日々を真剣に生きてないが、何でだろうな。
 まあアイツなら勝てないと分かってても決闘位なら迷わずに突き出せるんだが、アイリはそうじゃない。だって女の子だしな。雑な扱いは出来ないだろ。
 だからこそ、同じ穴に何か道連れになんかしたく無い。


「絶対に認めねえ!」
「アギトが何言ったって決めるのは私です!」
「迷惑だって言ってんだ!」
「それでも同じ時間を共有したいんです! 良いじゃないですか! 一人なんてイヤだもん!」
「一人ってお前、知り合い位……あっ……」


 今まで考えて無かったが、もしかしてアイリの奴は俺と約束したときしか入ってないのか? 気恥ずかしそうに斜め下を向くアイリは何だか少し顔が赤くなってるように見える。
 俺とやる時は殆ど二人だし、知り合いなんて増えて無いって事なのかも知れない。アイリなら友達百人居てもおかしく無さそうだが、そう言えば俺以外と話してる所なんかあまりみない気がする。
 せめて買い物とかの時は頑張って話してるっぽいが、もしかしてアイリは人見知り体質? 


「お前……まさか俺以外にフレンドいないのか?」
「そそ、それが何ですか? アギトが私をストーカーしてたせいじゃないですか!」
「ストーカーだと!? 人聞き悪すぎだろそれ! 一緒に楽しくやってただろ!」
「だから楽しいままが良いんです。どっちかが何かに入って会えなくなる位なら、二人一緒が良いんです!」


 ああもう、どうすれば良いんだよって事に成ってきた。マジでアイリの奴は引く気が無いみたいだしこのままじゃ二人揃ってレイアードに入る羽目に成りそうだ。
 でもまあ、そこまで言ってくれるのは嬉しいんだけどな。


「おい、そろそろどうするか決めてくれないか? ノロケはこれ以上ゴメンだぞ貴様等」


 いつの間にかほっとかれたグラウドが呆れた様な声を出す。気付くと周りの人たちも何やらクスクスやってるのが見えるじゃないか! なんて恥ずかしい事を……てか、完全に誤解してるよな。グラウドも何やらノロケとか言ってたし……俺達はそんなんじゃない。
 それにそんな事を言われたアイリは何やら頬を染めて呟いた。


「ノノ……ノロケって、私達はそう見えるのかな?」


 その顔が何だかとても女の子してて、しかもそんな事言われたらドギマギしない男はいない。どう言えば良いんだろうか? アイリはどう思ってるのか知りたい所だけど、こんな所で聞く勇気なんか俺にはない。
 それに俺も……実際どうなんだろう。出会ってから本当に入る度に一緒に居るけど、それは特別な感情ゆえだったのかな。改めて意識すると、まだガキの自分には良く分からない事が一杯だ。
 体はでかくなって大人ともう殆ど変わらなくても、心の方は年相応何だよな。こういう所は実はアイツの方がずっと速く大人に成ってる気がする。
 アイツの家は本当に特殊だし……いつも一人でって日鞠がいたか。アイツがひねくれて無いのはきっと日鞠のおかげなんだろうな。


「はあ」
「何で溜息なの!?」


 ちょっと憤慨なアイリ。別にそう言う事ではなくて、この溜息は今は別にアイツの事は関係無いなって思っての溜息。


「別に、そう見えてても関係無いって言うか」
「そうなんだ……関係ない」


 アイリの声が暗く落ち込んだ様な気がした。傷ついたのだろうか? それってもしかして俺のことを……そんな考えが頭の先まででかかった矢先、アイリは先の声を吹き飛ばす位の声を出した。


「でも、私は一緒にいるから!!」


 え~あ~っと……なんだろう、凄く嬉しいような恥ずかしいような。アイリは凄いな。本当にさ。プルプル震えてるから随分勇気を出したのも分かる。
 これは……マジ無理かも。


「本当にお前……後悔しても知らないぞ」
「そしたら責任とってアギトが後悔をぬぐい取ってください」


 それは迷いなんて無い顔だった。その少しハニカんだ様な笑顔は結構反則くさい感じ。


「で、どうなったんだ? 勝負するか?」


 意気揚々とそんな事を言う戦闘ホリックを一瞥して俺は立ち上がる。


「やらねえよ。俺達二人、レイアードに入ってやる。だけど勘違いするなよ。俺達は別にお前等と同じ考えな訳じゃないからな」
「ふん、まあそれでいいさ。その内他との違いに気付いていく。俺達エルフは高尚だとな」


 そんな事を言って振り向き歩を進めるグラウド。何? 何も言わないがそれは付いてこいって意味なのか? 背中で語るとかをやってるのかも知れない。
 まあ入ってしまった以上、付いていかない訳にもいかないから他の取り巻き連中と共に歩き出す。


「もう後戻りは出来ないぞアイリ」
「どこだって平気ですよ。一緒なら」


 何だか自然と手を繋いだままの昼下がり。降り注ぐ太陽の光よりも、触れ合った手の温もりはずっとずっと暖かかった。
 そしてこう思う。


(まあ、いっか)


 てさ。






 たどり着いたのアルテミナス外れの一軒家。ここLROでは金さえあれば家も買えるから、多分ここがこいつらのホームって訳なんだろう。
 だけど家ってかなり高いんだ。それもここは結構デカい。家ってよりも屋敷に近い感じ。これだけの建物はきっと相当だろう。
 資金を出し合って買ったんだろうか。入会金とか取られないよな? 俺達は二人でもそんなに金持ってないんだ。
 だけどそんな心配は杞憂だった。建物の敷地を跨いでもそんなこと言われなかったし、中に入っても強面の人達に囲まれる事はなかったよ。


 中は意外と綺麗で調度品もちゃんとしてるし、観葉植物何かもある。何より日当たりが良い。こういう奴らのアジトは薄暗く埃っぽく、明かりなんか豆電球の様なイメージがあったのになかなか感激じゃないか。
 中には二十人位のプレイヤーがたむろってて勿論全員エルフだ。みんなグループになり何やら話し込んでる様子。
 そんなリビングと思われる場所の中心に俺とアイリは引っ張られる。そしてグラウドが気前の良い声でみんなにご紹介。


「おう、おまえ等良く聞けよ! この二人が今日の収穫だ。なかなか骨のある奴らだから仲良くしろよ」


 その言葉で全員の視線が俺とアイリに集中する。そしてトンと背中を小突かれた。ああ、自己紹介な。上手くやる気もないんだがな。


「え~と、アギトだ。仕方なく入るだけで俺はレイアードじゃないから、そこ辺勘違いするなよ」
「私はアイリです。私も彼の言う通りなので以下同文と言うことでお願いします」
「「「あああ!?」」」


 何だか一斉に全員の目に敵意が宿った感じ。だがそんな奴らをグラウドは豪快な笑いと共に納めた。
「はっはっは。どうだ骨がある奴らだろう。ジョークみたいなもんだから軽く受け流してくれや」
 それで一応は全員腰を下ろした。やっぱりなかなかリーダーやってるらしい。その時、アイリが何かを見つけた様に俺の袖を引く。


「うん? あっ」


 そこには蒼髪のエルフが感じ悪そうにこっちを見据えてる。

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