命改変プログラム

ファーストなサイコロ

裏を知る者

 次から次へと慌ただしい報告が矢継ぎ早に届く。城の中はここ数日、ずっこんな感じだ。城の内外問わずに走り回る奴らのせいで、この荘厳なアルテミナス城がまるで騒音のはけ口かと思える程に騒々しい。
 そこら中からドタドタ、バタバタ、ガシャガシャ、カツカツと、建物の中は走るなと教わらなかったのか貴様等は! しまいには文句を言うためだけに集まってきた、権威にしがみつく豚共がうざくてたまらん。
 このアルテミナスの王の前で何故にコイツ等は頭も下げずに、好き勝手な事をほざいているんだ? 謁見の間というバカでかい場所でも無い、執政室というそれなりに普通の広さの部屋で豚共が籠もるとウルサくて仕方ない。
 私が書類に目を通して豚の声を無視してるとその中の一匹が痺れを切らしたように机に手を叩いてきた。


「ええい! 聞いてるのか貴様!? どうする気だガイエン? 昨夜の襲撃で遂に東西南北全ての街が奴らに襲われたのだぞ!! 
 次は間違いなくここだ! 救援要請は出したのか? 『人の国』か『モブリの国』へ直ちに使者を送らなければ……」
「ふざけるな!!」


 私は目の前の豚を怒号と共に睨みつける。信念の無い瞳はそれだけで意気消沈し、それは後ろではやし立てていた奴らも同じ。
 本当にコイツ等は何も分かってない。国に巣くうウジ虫としか思えない奴らだ。何が救援か? コイツ等は普段、誇りや何やらを振りかざす癖に、それを易々売ると言うか!
 背に有る大きな窓から曇り空の僅かな光が部屋に注がれている。それは今のこの国の雰囲気に良く合う様に部屋をそこまで照らすことは無い。
 せいぜい表情をようやく確認出来るレベルだ。ドアの付近は見えそうに無い。私は手にしていた書類を目の前の、豚に投げつけてやる。元々、全部予想の範囲内だ。


「うわっ!? な……何をするガイエン! 貴様!」
「貴殿等こそまだ理解してないのか? 私は既にこの国の王だぞ。それともその態度は処分を覚悟しての狼藉か? それならば望み通りにしてやろう」
「「「……ゴクリ」」」


 白い紙の束が無造作に床へと散らばっていく。場の空気がさらに凍り付く様に張りつめた。一番近くに詰め寄って来た奴は意図せずに足が後退を始めていた。
 だけどその時後ろの豚が一人、再び声を上げる。そして面白い事を言うではないか。


「貴様を王だとは我らはまだ認めたわけでは無いぞ! そんな重要な事が貴様の一存で決まるわけがない!」
「ふふ……ふはははははははははははは! 何を異な事を今更言うか貴殿は?」
「な……何だと?」


 後ろの豚に乗ろうとしてた奴らの動きが止まる。動く前に征された場。だけど元からこの場、この城、この国は既に私の物よ。


「王は人に決められる物ではない。そもそもそれだと民主ではないか。それとも貴殿等がアイリの様に都合のいい王でも仕立てる気か?
 もう、飾りなどいらんのだよ。ここに真の王が誕生したのだからな」


 部屋につんざく様に響く無数の子供の叫びが豚共を震え上がらせる。そして向ける一本の剣。この国を納める者だけが使える王の剣。


「貴殿等の判断など入りはしない。『リア・ファル』この叫びこそ、私を王だと認めているのだからな。なんなら試してみるか? 
 カーテナの攻撃はそれはそれは痛いらしいぞ」
「「「――っひ!!!」」」


 私はカーテナを握る“右腕”を振りあげる。それだけで一番後ろに居た奴らはドアから飛び出して行ってしまった。残ったのは文句を言ってきて豚二人。どちらもただ腰抜かしてるから逃げられなかった様だ。
 ふん、安全圏で惰眠ばかり貪るからこの程度の脅しに屈し逃げ出し腰抜かすのだ。逃げ遅れた二匹は開け放たれたドアをしばらく見つめてる。そして恐る恐るという風にこちらに向きなおすと、ガチガチ震える口を動かし出した。


「わ……我々を……追放……する気か? 待て……待て……お前が王だ。それでいい……後の奴らも私達が説得してみせよう」


 同じように腰を抜かした豚が首を何回も縦に振る。なんと無様な姿。私はカーテナを握る腕に力を込める。こいつらはそれが意味のないことだと気付いてないのか?
 潮時だな。


「聞いてなかったか? 貴殿等の承認など私はいらないと言った。王の口を二度も使わせるな。煩わしい。
 貴殿等などもういらない。この国は私が守って見せよう。それが王の責任でもある。『追放』だ。そして最後にその身に王の偉大さを刻め」
「「ううううあああああああああああ!!!」」


 カーテナを握る右手を私は振り下ろした。けれどそこに何の衝撃も生まれはしない。別にスカした訳じゃない。これで充分なだけだ。
 目の前の豚二匹は腕が振られた瞬間に、悲鳴を上げてそのまま泡を吹いて気絶している。


「おい、そこのゴミを捨てておけ。ついでにさっき逃げた奴らも同様だ」
「「はっ」」


 開け放たれた扉から入ってきたのは親衛隊の二人。今はもう、文字通り私の親衛隊だ。手早く豚二匹は片づけられて、同時にまた駆け足で二つの紙が届いた。それは親書。
 届けた親衛隊の一人がその場で指示を伺う様に待っている。


「どういたすのですか?」
「そんなの決まっている」


 そう言って私は届いた親書を破り捨てる。どの種族も今のアルテミナスの現状を知って借りを作らせようとしてるに過ぎない。そしてそれを私は許さない。


「この国は強く有らねばならない。どこよりも……何よりも。それを示すのに今の状況は好機でしかない。私達が弱ってる様にでも見えるか多種族め。
 しらしめてやろうではないか。我らエルフこそがこの世界の頂点だとな! 突きはねろ、こんな物!」
「はい!」


 目を輝かせてこの場を後にする親衛隊の一人。そして扉が閉まるとようやくこの場に一人に成れたーーと、思ったらどこからともなく手を叩く音が部屋中に響きわたる。
 そして部屋の一番暗い部分から奴は現れた。


「きゃははははは。すっごい、えっらいね☆ 私感動しちゃったよ。この国はぁ! 強く有らねばぁ! きゃははは賛成しま~――ぷぎゃ!?」


 アルテミナス城が衝撃で揺れた。そこかしこで被害を被った奴がいるだろう。だけどそれに目を瞑り、城を一部壊してまでやらなければ行けない時だと判断した。
 何故なら今、出てきた奴こそがこの国を潰そうとしてる奴だからだ。私は“左手”に握ったカーテナを躊躇い無く振り切って部屋を二つ分程広くした。
 運良く誰も居なかった様で何よりだ。それなら更なる追撃が可能。そう考えてカーテナを構え直す。するとその時、誰かの手がそのカーテナに添えられた。


「うんうん、調子は良いみたいだね☆ でも、さっきのはイキナリなご挨拶じゃないかな~? 誰のおかげでその力が使えて、君はそこに入れちゃうのかちゃんと考えたら?」
「この……バケモノめ!」


 私は歯噛みしながら構わずカーテナを振るう。窓と共に書類が溜まってた机までもが外に飛んでいった。だけど当然の様に奴は直ぐ再び現れる。


「ひっど~い! バケモノなんて酷いよ君! こんな美人で可愛い私に向かってそんな事言うならこうしちゃうもんね☆」
「――っつ!?」


 奴が指をパチンと鳴らす。すると途端にリア・ファルの輝きが無くなった。そして当然、そうなったら幾ら振ってもカーテナは反応しない。ただの玩具同然だ。


「きゃっほ~~! 私の勝利だねぇ☆ 当然だねぇ~、だってそれは私が~――」
「何が目的だ今更!? 既に貴様とは敵同士だ。この国から直ぐに追い出してやる!」
「――わぁお! そっれはたのっしみだな♪」


 奴は長過ぎる黒髪を振り回しなら踊っている。相変わらず感情が『楽』しか無いような奴だ。いつもクルクルパーみたいな発言してるのに、裏側までコイツは網羅してる。
 だからこんな小細工まで……別に信用なんてしてなかったが、これはやられたな。
 今の自分は王では無いと言うかカーテナ! 目の前の奴を倒したいが、私は今アクションを起こせない状態だ。並の武器では奴は倒せはしない。
 これはいよいよ、やはり『アレ』が必要か? それとも乗り切れるか、私は判断しなければ行けない。何故なら今のアルテミナスの王は誰が何と言おうと私だからだ! 
 奴は何しに来た? 今更も今更だ。何かよっぽどの事?それならカーテナ無しでもどうにか出来るのかも知れない。


「借り物の王様君は力が無くても大きいね☆ う~ん目的はね。ちょっとした交換条件だよ~」
「交換条件?」


 奴らの方が今は圧倒的に押しているのに交換条件なんて怪しい。交換条件なんて弱い方が許しを請うために差し出すものだろう。何を言う? 何が望だ? この外見だけは女神の様な悪魔は何を要求する?
 私はこいつを知っている。だけど全然予想が付かない。候補はある。だけどこいつがそれを言うとも思えないんだ。いつだって私の理解の斜め上を行く奴だから。
 そして案の定、奴の口から出た言葉は予想外の物だった。


「そっちにさ~居るっしょ? プリチーでぇキュートでぇマーベラスな女の子がさ。その子くれたらここは見逃してあげちゃうぞ☆」
「…………説明がたりん。誰の事言ってるんだお前?」


 自身の捉えた主観で伝えようとするなよな。プリテーでキュートでマーベラスって分かるか! LROはゲームでキャラクターも好きに作れるから大概そんな子ばっかりだ。ブスを探す方が苦労する。
 私の言葉に奴は頬を膨らませてご立腹。どうやらあれで分からなかったのが不服らしい。


「もう、これだから君って奴ぁ~さぁ。一体女の子のどこ見てるのかってことよぉ。君が王様になったあの日に、戦ったでしょ? マーベラスな巫女さんと」


 マーベラスな巫女さんってどんな巫女さんだ? だけどここで私が思い出す巫女と言えばあれかしかない。


「それは、あのサクヤって奴か?」
「うん~大正解! そうそう、その子頂戴☆」


 コイツが求める物はあの巫女。このカードは役に立つか? いや、立たせよう。この国の為に使える物は使うべきだ。元々、あの巫女も存在がおかしな感じだった。
 もしかして同類なのか。


「なんであの巫女を求める?」
「ふふ、それを君に教える必要が有るのかな? 良い条件じゃない。彼女この国と何も関係ないんだし、それでここは救われるの。特しか無いよね~違う?」


 確かにコイツの言うとおり、アレはこことは関係ない奴だ。売っても何も問題ない。だがここでこのカードを切ることが最善かと考える。


「じゃあ、どうして今こんな交渉をする? 落とされる気など無いが、そっちが優勢だぞ。お前、条件を守る気など無いだろう?」


 私の言葉に目の前の奴は目を細めて含んだ様な笑みを見せる。別にそれは確信を突かれたからとかでは無いだろう。そんな事を気にする奴じゃない。ただ単純に面白がるだけだ。
 風通しが良くなった部屋で奴は長い黒髪を風にはためかせている。


「くふふふふ。まあ確かにそうなんだけどね。えっらいぞ! よく分かったね。偉い偉い☆」
「当然だろ。お前は一度そうしてる」


 コイツは目的を果たした途端に攻めてきた。そして今の状況が出来上がってる。そんな奴を信じられる訳がない。


「う~ん、きゃは☆ でもそれってお互い様だよね。だからもう一回信じあいましょう。きっと私たちなら出来る筈! キャッホォォォォ!」
「どの口がそれを言うか?」
「この口、この口~☆」


 陽気な奴は、口の両サイドを指に引っかけてニ~としている。本当に感情を逆撫でするのが上手い奴。他の大多数の男共はコイツのこういう天真爛漫さを魅力と捉えるかもしれないが、私はバカにされてるようにしか感じれない。
 だが胸中をみっともなく晒すなどはしない。ここでコイツを上手く誘導出来れば、戦い安くなるだろう。それにカードはこちらに有るんだ。
 それならこのバケモノとせめて対等に……それがアルテミナスの為だ。その為に使わせて貰おうではないか、あの巫女を。


「まあだが、渡さなくも無いがな。こちらの条件を呑むのならだ」
「へぇーはぁーほぉーん。まあ別に良いよ。どんな条件でもここを落とす事に変わりないからね。束の間の夢くらい見せてあげる。
 私ってやっさっしー☆」


 もう既に落とす宣言までするかコイツは。ここがその落とす奴らの本拠地だと分かってるのか? 分かってない訳ないから、これは挑発か……コイツの場合は天然か。
 どちらにしてもアルテミナスは落とさせん。


「ふん、言ってろバケモノが。私もお前達との衝突を止める気など無いのだからな。必ず貴様等はこの地から追い出してやる」
「ふふ、良いね。どっちも腹の内出し合ってさ。なんだかスッキリしちゃったよ。で、何を君は求めてるのかな?」
「この石『リア・ファル』へのお前の干渉を排除しろ。徹頭徹尾完全に」


 周りからは慌ただしい声が聞こえるな。だけどここにたどり着く者は居ない。これだけ派手に暴れたのに誰も来ないなんてあり得ない。
 きっと目の前のコイツが何かしてるんだろう。良く分からない奴だからな。謎の代名詞みたいな存在。だがコイツの正体などに興味はない。
 私が思うはこの国とエルフという種族だけだ。そしてそれらを守るために、これが必要な事。


「それが押さえられちゃったらカーテナ使えないもんね君は。だって借り物の王様だから☆ だけどそれで、守れるのかな? 私達を止められる?」
「止めてみせる! そしてお前は私が潰そう!」


 風が抜ける。暖かさをはらんだ風が私達二人の肌に触れて行く。鋭い眼光と声を向けたが、奴が動じる事は無い。少し趣向する程度。顎の部分に指を付けてのそんな態度。


「う~ん、まっ別にいっかな。あははは、楽しく成りそうだね。だけど君じゃ私は倒せないと思うけど☆ それじゃあ早速彼女の居場所をって、先にやっちゃおっか?
 どうせ今は私倒されないし。そっちの方がいいでしょ君も?」
「そうだな。そうしてくれるとありがたい。だけど良いのか? カーテナが使えれば、また私はお前を攻撃するかも知れないぞ?」
「この城を無駄に破壊したいならどうぞ☆」


 その笑顔は自身には絶対に攻撃が通らない確信があるから出来るんだろう。さっき今は倒されないとか言ったからな。それに先の攻撃でも奴は実際効かなかった。確かにやるだけ無駄か。


「では、言葉に甘えてお願いしよう。だがお前の干渉が無くなった事をどうやって証明する?」
「ぬぬ~それは考えて無かったかも。信用?」
「ふざけるな!」


 そんなもの既に崩壊してるだろう。それに初めから信用なんて私達の間には無かった。あったのは互いを利用するという黒い思惑だ。
 だからこそ、今私達は衝突している。それぞれの目的を手にした時、手のひら返しを互いに行った訳だからな。そんな私達に信用など……片腹痛い。こっちは命運が掛かっているのだ。
 そんな曖昧な物に頼れる訳がない。ここぞと言う時に再び掌握される訳には行かないのだから。


「うぅ~そんな事言ったってぇ~、君にはどうしたって分からない事だし~何言ったって演技とか思うわけでしょ?
 無理無理~超私可愛そう~。冤罪を疑われるんだ~」
「じゃあ、あの巫女はいらないのか?」
「別に……潰した後でも良いことだよね・・そんな気がしてきた☆」


 ボソッと奴はそう言った。しまった、それは最悪のケースだ。そもそもコイツがこのタイミングで巫女を条件付けてまで求める理由さえ分かってない。
 それなのに余り強い押しは逆効果だったか? ここでコイツに引かれたら対抗手段が無くなってしまう。それは絶対に避けなければ行けないこと。
 どうすれば……巫女……カーテナ……リア・ファル……壊れた執政室で頭を働かせる。
 そして考えをまとめて口を開く。


「まあ待て。取り合えず『リア・ファル』にその仕様を施せ」
「でも、証明出来ないんでしょ? ブーブー、私嘘つきに成りたくないしぃ」


 既に嘘つきだろうがこのアマと言ってやろうか? やけに拗ね始めたコイツが鬱陶しい。ボロボロの床に体育座りで小さくなってその長い黒髪が四方に広がっている。


「証明は私がしてやる。だから大丈夫だ。それに巫女もここに連れてこよう。お前もその方が良いだろう?」
「えっ? 本当それ? って、君がそんな協力的ってなんか怪しいわね」


 珍しく瞳に疑いの色を乗せる目の前に奴。それに勘が鋭いな。だけどそこまで深く考える奴でも無いはずだ。ここは言葉を被せて行くのが上策。


「違うな。別に私は協力してる訳じゃない。この国の為の行動をしてるだけだ。良いのか? 欲しいんだろう巫女が。成るだけ早く。
 だからワザワザこんなタイミングでお前は来てる。こちらが証明方法を実行するんだ。お前に落ち度はない。それに必ず成功するさ」
「まあ、それなら~いいっかな~。で、どうやって証明するわけ?」
「それは私に任せて貰おう。それより部下に知らせて巫女をここに連れて来させたい。何か妨害してるだろう? それを解いてくれるか?」


 今度は私を値踏みする様な目を向けてくる。その事に気付いてるのが意外だったのか? 軽く見られた物だ。だがここを去るとき、お前はその評価を完全に改める。
 そう確信出来る。


「気付いてたんだ。まあいっけどね」


 そう言ってパチンと指を鳴らす。すると途端に親衛隊がなだれ込んできた。何やったんだコイツは? 底知れない奴だ。
 親衛隊はすぐさま奴を取り囲むが、それを止めさせて巫女を連れてくるように命じる。コイツ等は私に忠実だ。疑問を挟んではこない。あの豚共の様に。
 そして残った数人は再び部屋の外へ。


「じゃあ、リア・ファル貸して☆」


 差し伸べられた手に指から外したリア・ファルを渡す。すると目を瞑って何かを唱え出す。浮かぶ意味不明な文字の数々。そしてそれが収まると私の手元にリア・ファルは帰ってきた。そして響くあの叫び。
 これで後は――その時、大至急で親衛隊が巫女を担いで戻ってきた。私の横に放られた巫女は堅く瞳を閉じている。状態は気にしないのか奴は姿を確認しただけで、頬に両手を当てて満足気だ。


「で、一体どうやって証明しちゃうのよ。きゃはー☆」
「決まってる。それはつまりこうやってだ」


 私はカーテナを振りあげる。巫女の方を向いてだ。すると案の定、奴の笑顔がひきつった。


「はは……何やってるのかな君は?」
「証明だ。お前に干渉されないかのな。この巫女を使えばそれが出来る。お前にとっては必要でも私達にはそうでもないこの巫女の利用価値はここだよ。
 このカーテナの攻撃をお前が止めないのならその証明になる。その巫女が大切……なんだろ!?」


 カーテナがその輝きを見せつける。上から下へと流された動き。その時、奴は何かを叫んだが衝撃音で全てかき消された。


「ふむ、確かに確認できた。ご苦労だったな。そんな顔をすることはない、お前に対する有効なカードだ。みすみす殺しはしない」


 そう言うと煙が晴れた床から変わらぬ巫女の姿が出てきた。奴は安堵の表情を見せる。


「人間を舐めるなよシステム風情が!」
「ふふ……あはははははははは! 君も結構面白いね☆ いいよ、今晩は楽しく成りそう。君達は木っ端微塵に潰してあげるわ。
 それと、いつまでもシステムが手のひらの上にあると思わない事ね人間」


 奴は再び影の様に消えて行く。最後の台詞、雰囲気が一瞬で変わった。あれが本性……上等だ。アルテミナスの輝きは失われはしない。

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