命改変プログラム

ファーストなサイコロ

決戦 ~流星の夜~

 新月の夜、黒い悪魔が叫んだ。その凄まじい声に僕らの足は止まり続いて誰かが言った。
「不味い! 今の叫びただの牽制じゃない。付加した補助魔法を打ち消してる!」
 その声を聞いて僕達はウインドウを開く。確かにHPバーの横に表示されていた筈の赤と青と緑の玉が消えている。それはそれぞれ攻撃力・防御力・素早さを魔法によって底上げしていた印だ。
 開戦前にヒーラーの人達が掛けてくれたのに一閃を入れる前に無駄になった。このLROのゲームにマジックポイントは無いからMPが無駄になることは無いけど掛け直すのは難しい。
 魔法スキルにはそれぞれ有効範囲が設定されている。一番射程が長いのが基本攻撃魔法、その次に回復、そしてプレイヤーをサポートする補助魔法となっている。
 だけど攻撃魔法や回復魔法は対象との距離でその効果に補正が入るから離れすぎるのは良くないって事もある。だけど基本この二つは敵の攻撃が届かない場所から役割をこなせる。
 あんまり連続で回復や強力な魔法を連発してると敵のターゲットがそっちに向いたりするからそこには注意が必要だ。
 だけど補助魔法は一回掛ければ術者とどれだけ距離が離れても一定時間までは絶えずプレイヤーを支えてくれる。その代わりに掛けるときはかなり近くに行かなきゃいけない。PT全員に掛け直すならみんながその人の周りに集まらなきゃ一度に掛け直す事は無理だ。
 それに補助魔法は意外と詠唱が長いのも難点だ。前衛が一カ所に集まってたらいい的になる。詠唱が終わるまでモンスターが待ってくれる訳はないんだから。
 みんな戸惑っていた。高位の補助魔法の効果はかなり高い……それを無くしてあの悪魔に挑むのは自殺行為ではないか? そんな顔をして近くの人と不安な顔を見合わせている。
 後方のヒーラー組もどうしようか戸惑っているみたいだ。だけどそんな混乱を余所に悪魔はその巨大なメイス振り上げた。
「ヒッ!」
 誰かのそんな声がした。不味い……このままじゃ何も出来ずに総崩れするかも知れない。人の恐怖は伝染する。それは多ければ多いほどだ!
 僕は前衛陣から飛び出した。その時隣に全く同じタイミングで出てきた奴と目があった。それだけで互いの考えはを理解した。それだけ僕達の仲は深い。
 二人は互いに上方へ武器を凪ぐ。そこへ振り卸された悪魔のメイスがぶつかり激しい音と火花が散った。凄まじい衝撃が腕を走る。
「「うおおおおおお!」」
 だけど競り勝ったのは僕達だった。完全にシンクロしていた剣劇は悪魔のメイスを弾き返している。一人ではきっと潰されていただろう……でも、二人なら……僕は親友に目をやった。
 アギトは二カッと爽やかに笑う。本当にこいつは最高の親友だと思った。


 悪魔は武器を弾かれてよろめいている。今が体勢を立て直すチャンス。そう感じたアギトは素早く指示を飛ばす。
「よし、前衛の半分はヒーラーの元で補助魔法を掛け直してきてくれ。それまで残りの半分で奴を足止めしておく! 取り合えず全員が補助を受けれるまでは死なない様に戦えよ。アタックは最小限に、ただしターゲットを後ろに移すなよ!」
 その言葉でみんなが息を吹き返したように動き出す。
「了解」「はい」「よっしゃ~!」などの声が次々に耳に届く。
 さて、戦いはここからだ。僕は気を取り直して目の前の悪魔に向き直る。もう殆体勢を整えている悪魔は後少しで第二撃を放つだろう。
 僕はゴクリと唾を飲み、柄を強く握りしめた。その時後ろから襟首を捕まれて後方に引き戻された。
「なにすんだよ!」
 それは当然アギトの仕業だ。
「お前は前半回復組だ。武器は良くなったって装備はショボいんだからな。だからさっさと掛け直してこい。お姫様を助け出しても王子様が居ないんじゃお姫様は幸せには成れないだろ?」
 そういって前方のセツリを見やるアギト。僕も視線を追って黒い影に縛られた彼女の姿を見つめた。
「大丈夫だよ。信じろ、俺達はお前の百倍強い。必ずお前達が戻るまで支えるさ」
 アギトの差し出して来た拳に僕は自分の拳を当てた。そしてその余裕ぶった顔に言ってやる。
「当然だ」
 僕は武器を鞘に納めヒーラーの元へ駆けだした。


 後方へ戻ると既に詠唱は始まっていた。僕は急いで輪の仲に加わる。五人居るヒーラーの三人で一気に外された補助魔法を掛けてその間に残りの二人は前線の人達の回復役をやっている。
 その更に後方には攻撃魔法を唱えるソーサラーの人達四人。その仲のちっこいモブリと目があった。エイルだ。エイルは詠唱を破棄してトコトコ僕の元へ。おい、いいのかよ。
「別に大丈夫さ。今はあんまり強力なの打てないし。チマチマするなら同じだよ」
 まあ確かに今の状況で強力な魔法で悪魔を釣ってしまう危険は犯せない。だからみんな派手じゃない魔法を打っているのか。
 ん? いつもの毒舌は? 口癖の「死ねば」が出ない事に驚愕だ。
「うるさい! この状況でそんな事言えるか、縁起でもない。それに僕はお前に……お礼をだな」
 なんだって? 最後の方は良く聞き取れなかったぞ小声過ぎて。
「なんだよハッキリしないな。エイルらしくないぞ」
 そんな僕の言葉にエイルは不本意極まり無いという感じで言った。
「ああ、もう! そもそも巻き込んだのはお前何だからリルレットの事ちゃんと守れよ! リルレットが殺されたら承知しないからな!」
 エイルはプンスカと怒りながら元の場所の戻っていく。
 リルレットか……僕は周りを見回した。彼女も今集まってる中では強いとは言えない。だからきっと前半組の筈だけど。
 その時一際小さな背中を少し前の方に見つけた。ウナジの所で二カ所小さく結んでいる髪型はリルレットだ。僕は声を掛け様として気づいた。リルレットの肩はふるえている。彼女にはあの一瞬で悪魔に対する恐怖が植え付けられたのかも知れない。
 両腕を前で組んで震えを抑え様としてるのだろう。そのせいでただてさえ小さな背中は更に小さく見える。
 僕は迷ったあげくリルレットの肩に手をおいた。その瞬間ビクッと震えて彼女は振り返る。その顔はビックリする位青ざめていた。
「スオウさん……私……怖かった。今までだって……何回か戦闘不能になったけど……笑いながら『やっちゃった』位だったのに……さっきのは全然ちがくて……本当に……死んじゃうって……思った。
 なんでかな? 頭ではゲームって……解ってるのに」
 彼女の弱々しい声を聞く度に後悔がこみ上げる。リルレットには早かったんだ。幾らゲームだからって本能の恐怖は抑えられない。
 目の前に圧倒的に強い敵が居て、それは異形の化け物なんだ。誰だって怖がる。怖がらない訳がない。そこら辺にいる雑魚にだって最初は恐怖を覚えるんだ。
 それがボスクラスのモンスターともなれば受ける恐怖は計り知れない。本当は徐々にクエストをクリアしていく内にそれにも慣れるのだろうけどリルレットはまだそれだけのクエストをこなしてない。
 それに彼女は女の子だ。実際は解らないけど、今までの印象では正真正銘の女の子だと感じてる。それも年もみた目通り位だろう。そんな子には刺激が強すぎたんだ。
「怖いのなら戦闘に参加することない。元々僕が付き合わせたみたいなもんだしさ。ここに居れば安全だから」
 僕は彼女の肩を強く抱いて優しく言った。彼女が少しでも安心出きるように。
「でも……言い出したの私です。怖いけど……こんな所で投げ出したくありません」
 少しだけ彼女の目に光が戻った気がした。
「だけど、無理する事なんて……」
 僕はそれでも彼女の参戦はやっぱり止めて欲しい。怯えた女の子を戦場に戻らせるなんて……。
「スオウさんも……戻るんですよね?」
「それは……勿論だよ。僕がみんなを巻き込んでるんだ」
 そうだ。僕には戦場に戻る責任がある。だけど君にはそんなものないんだ、と伝えたい。だから止めたからって誰も責めたりしない。
「でも、スオウさん私より弱いじゃないですか!」
 あれ? なにかが心に刺さったぞ。新手のスキル攻撃か? 
「それなのに全然逃げない。さっきだって折れ掛けた私の心、支えてくれました」
 さっき? メイスを弾いた事かな? でもあれはアギトが居て力を合わせたから出来た事だ。
「この中で絶対に最弱なスオウさんが何かしてくれる気がするんです。そしてそれなら私にだって何かが出来るんじゃないかって思えるんです。
 でも今逃げちゃったらこんな気持ちと二度と出会えない気がします。私の腰の剣だって飾りじゃないんです!」
 彼女は腰に掛かる刀身が極端に細い剣に手を伸ばす。そして思いを伝えるみたいにその柄を握りしめた。
「ごめんなさい……偉そうな事言っちゃいました。だけどスオウさんと話してる内に心が整理出来て感情が出て来ちゃいました」
 そう言って笑ったリルレットの顔はまだ少し強ばっていたけど生気は戻っていつもの彼女の雰囲気が出ていた。
 強い子だなと僕は思った。こんな彼女に隅で震えていろと言った自分が恥ずかしい。
 僕は肩に置いていた手を彼女の頭に持っていきクシャクシャした。
「分かったよ。頼りにしてるよ先輩」
 リルレットは頬を染めて照れる様に言った。
「分かったのならよろしい。先輩をこれかも頼りにしなさい後輩君」
 それは僕に小さな先輩が出来た瞬間だった。


 メイスの風圧で前衛の一人が壁に叩きつけられる。その衝撃でHPが尽きその人はオブジェクト化し飛散した。
「これで四人目……くそ!」
 全員に補助魔法を掛け終わり、万全の体勢で戦闘する事十分位で既に四人のプレイヤーが戦闘不能になっていた。幾ら高位の補助魔法と言ってもそれだけで大幅に敵の攻撃を防げる訳じゃない。
 アギト達なら七回はその攻撃に耐えられるけど僕の場合はそれが二回。直撃なら一撃でやられそうなのは結局変わってない。
 それでも僕が他の熟練プレイヤーを押し退けて生き残る事が出来ているのはシルフィングについていたスキルのお陰だ。四つ付いていたスキルの中の三つは二刀流の攻撃スキルだったけど後一つが違った。
 それは「残影」といって一度だけ確実に攻撃回避が約束されていた。自身の残った影を切らせるスキル。分身してるみたいな物だ。
 お陰で絶対に回避出来なく防御も間に合わない時に重宝する。再使用に一分掛かるのは長いけど。このスキルは貴重だった。
 でもこのままじゃジリ貧は見えていた。ヒーラーの一人を蘇生専用に回したけど全然回ってない。三人では複数受けるダメージに対処出来なんだ。
 せめて奴の攻撃を受けるか弾ける奴をその専用にして攻撃を一手に引き受けて貰わないと追いつかない。一人か二人なら小間目に回復出来る筈だ。
 だけどそれはとてもリスクが高い。その役目を負う人は自分の命を削られていく恐怖を味わいそれとも戦わなくちゃいけないだろう。それにみんなの命を背負う事にもなる。
 そんな風に考えていると続いて二人が消えていく。その時一人が蘇生したけどこれじゃマイナス一だ。それに蘇生魔法はターゲットを集めやすい。ほら悪魔がヒーラーの人に歩み寄る。
「うわあぁぁぁ!」
 そんな悲鳴を上げるヒーラーに僕は駆け寄る。一人でもヒーラーが欠ければ途端に瓦解する。それだけ重要なんだ。みんながヒーラーを守ろうと駆け寄ってきた。でも間に合いそうなのは僕と……反対から来ているアギトだけ。
 僕たちは互いを見て下ろされたメイスとヒーラーの間に体を滑り込ませた。
 赤い火花と青い火花が同時にはぜ、轟く金属の衝突音。だけど今度は弾けない。二人ともかなりの疲労が溜まっている。だけど押し切らせる訳にも行かない。
 ヒーラーの人は腰が抜けたように悪魔を見上げていて動けそうもない。ギチギチと音を立てて僕たちの武器は体に近づいてくる。
 もう少し……後少しなんだ。僕は同じようにメイスを受け止めているアギトに言った。
「少しの間頼む!」
「は? おいって――ぐおぉぉぉ!」
 情けない声を上げているアギトには悪いけど今は絶好のアタックチャンスだ。僕は復活したスキル残影を発動して自分から奴の武器に突撃した。
 だけど残影の効果で攻撃無効化を果たした僕はそのまますり抜ける様にメイスの上に立つ。奴の巨体はそこに無防備に晒されていた。
 僕はメイスを蹴り奴の腕づたいに駆け上がる。そして奴の鼻面に二本の斬撃を可能な限り叩き込んだ。初めて響いた奴の悲鳴に聞こえる叫び。悪魔は後方へ倒れた。
 これ以上無いチャンスだった。この場の全員がこのチャンスを望んでいた。誰もが武器を構え悪魔に迫り怒濤のラッシュを駆ける。
 次々と弾けるアタックエフェクトが闇を次第に照らして行く。それは留まることを知らないかの様に次々とスピードを増していく。
 そしてそのエフェクトは次第に統一性を持って数を刻んでいた。これはチェーンアタックだ。スキルを連続して決めることで発動するボーナスアタック。これは数を増す度にその破壊力は増していくし貰えるアイテムやお金に影響するんだ。
 だから敵を倒す時はなるべく狙って行きたい技術。基本は十を越えるのも難しいと言われているけど今は優に二十を越えていた。エフェクトもそれに合わせて派手になっている。時折挟まる魔法も相まってその威力はスゴい事になっていく。
 悪魔の断末魔の叫びが夜空に響く。だけど五十を越えたあたりからおかしいと気づいていた。何故なら悪魔のHPバーは減っていない。ある一定のラインから幾ら攻撃を入れても減らないんだ。
 ここに来て無敵設定の敵とか言う気か? みんなの不安は次第にチェーンに現れる。このままじゃ不味いと僕は伝家の宝刀「乱舞」を発動した。
 一気にチェーンの回数を一人で稼ぐ。風を生み出しての斬撃は直ぐに百の壁に到達した。凄まじい光と共に悪魔の体は爆散する。それはきっとチェーンボーナスの一種だろう。
 誰もが勝利を確信した。だって弾け飛んだんだから。だけどその時名残の煙から黒い腕が飛び出してプレイヤーの一人を掴みあげた。
「うああぁぁぁ」
 悲鳴と共にその人は奴の手の中でつぶされた。そして表すその巨体にみんなが絶望した。やはりHPは途中で止まったまま減ってない。
 絶望のままに僕らは再び悪魔と退治する。どうやったら倒せるのか、そもそも倒すことは可能なのかも分からない敵の攻撃を凌ぐのはただただ苦痛でしかなかった。
 また一人……また一人と、退場していく。
「もうダメだ」「撤退しよう」そんな声が次々に上がる。それは抑えようも無い事だった。
 だけど僕は……僕だけはそんなこと言えない。言えるはずが無い。僕はもう諦めないと彼女に誓った。必ずあるはずだ。何か見落としてる物が。奴の体じゃ無いとしたらこのフィールドのどこかにその仕掛けかあるのかも知れない。
 だけど見回しても怪しい物なんて無い。草木に石ころとかだ。その時また誰かの悲鳴が上がった。もう何人死んだかも分からない。僕達は壊滅寸前だった。
 それでも辺りに目を這わせて探して探して探しまくった。だけど何も変わらない。強いて言えばセツリのHPが減ってるくらい……ん?
 僕はカーソルを黒い影に縛られたセツリに合わせた。そしてウインドウで彼女を確認して愕然とした。
「なっ……これって……」
 それはフルダイブゲームならではの盲点だ。目の前の事をリアルと同じように全てに捕らえていた。だけどそれが大きな間違いだったんだ。
 僕のウインドウに表示されている彼女の名前は『アンノウン』つまり正体不明。彼女を知っている僕に限って有り得ない事だ。そして悪魔と同じだけ減ったHPバー……全てが繋がった気がした。
「アギト!」
 僕は前線で奮闘しているアギトの元に急ぐ。事情を全部話してる暇はない。だけど僕達ならこれだけで伝わる筈だ。
「話しかけるな! 今は少しでも時間を……」
「今直ぐ奴を突破したい! 奴の向こう側に行きたいんだ!」
 よく考えれば悪魔は必ず一番セツリの近くに居た奴を狙っていた。大きく振り被る奴の攻撃もなるべく彼女から戦場を離すためだったんだ。
 だけどそこに普通のターゲット指定が加わってカモフラージュされて解りにくくなっていた。
 アギトは僕の目を見て直ぐに笑った。
「よっしゃぁ! 上手くやれよスオウ!」
 そう言って二人で距離を取り平行して並ぶ。本当にこいつは最高の親友だ。こいつと出会えた事に今は本当に感謝する。
 その時後ろから可愛い声がした。
「何かやるんですよね? 私も手伝います。何も言わなくて良いんです。上手く使ってください」
 それはリルレットだった。戦闘の開始当初は震えて居たのになんだか凄く成長している。そしてその足下にも人影がある。
「リルレットは僕が守る。 だけどついでに魔法で補助位はしてやる。……死ぬなよな」
 エイルの口からまさかそんな言葉が出るとは……これはどうあっても成功させるしかない。そして聞こえてくる多数の足音。僕達の後ろにはPTメンバーが集結していた。
 その表情はさっきまでの怯えた様子は無い。彼らは僕達がやろうとしてる事なんて知らないのに、それでも戻ってきてくれた。彼らの心が力に変わって伝わるような気がする。
「最高の仲間だな」
 僕はぽつりと呟いた。それが聞こえて居たのかアギトが続いて
「最高のダチだ」
 といった。それに更に続いてリルレットがエイルを見ながら
「最高のパートナーだよ」
 と言い更に続いてエイルが
「最高の気持ち……」
 と言ったので全員で突っ込んだ。そして戦場を忘れる様な笑いが響いて収まると同時に前を向いて走り出す。ある一定距離まで近づくと奴はメイスを横に凪いで来た。
 やっぱりこいつはセツリを守る様に設定されている。実際はセツリじゃないけど。
 僕はそのメイスを避けようとはしない。ただ真っ直ぐ彼女への最短距離を進む。その時出てきたリルレットと数人でメイスを上へはじき返した。だけど続いて悪魔は拳を突き出して来た。だけどそれはエイル含めたソーサラーの魔法で弾かれる。
 だけど悪魔は彼女に近づく僕に標的を固定したままだ。確定だ。今度は悪魔の叫びが轟いた。補助魔法を打ち消した悪魔の叫びはどうやら硬直効果もあるらしい。道理で最初の勢いが削がれた訳だ。
 だけど悪魔の叫びは途中で止まった。何故なら奴の口にアギトの武器が刺さったからだ。アギトは装備を変えて耳栓をしていたのだ。それも高級耳栓はボスクラスの効果も受け付けない。
 そして僕は遂に悪魔の足下に潜り込んだ。悪魔は前方にみんなの力で固定されてる。後ろ足を抜けたとき最後の砦として残っていたのは尻尾だった。だけどそれを僕は無駄な動きで交わさず武器で受ける事を選ぶ。
 そして狙い道理に僕のある程度回復されていたHPを削ってくれた。レッドゾーンに届く程に。僕は「乱舞」を発動して一気に加速する。悪魔がやっとで方向を変えてメイスを振るけどもう遅い。
 乱舞を発動した僕に追いつける者は居ない! そして僕は助けるべき存在に剣を向けた。二対の剣と無数の風が彼女を切り刻む。その時、悪魔の姿が崩れた。分かりやすい変化だ! 
 風を帯びた青い剣は流星の如く輝いて彼女のHPを削り去った。それと同時に悪魔は燃え尽き、僕達は今度こそ勝利を掴んだ。

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