命改変プログラム

ファーストなサイコロ

心ある所



 暗転した世界が白に変わり大量の情報と共に僕というキャラクターが形作られた。目の前には大きな石造りの扉がありこの向こうにLROの世界が広がっているはずだ。
 僕は軽装の心許ない装備に目をやり両腰に主を無くした鞘があることを確かめる。現実か仮想か、そんなことは実は問題じゃ無いのかも知れない。
 僕は実は何を確かめたいか自分でもよくわかってない。ただもう一度……どうするにせよ、セツリに会いたかったんだ。
 なんて言おう? 彼女は自分を見てどう言う反応をするだろう? また泣かせてしまうかも知れない。でもこのまま居なくなるなんてしたくなかった。
 僕にとってLROはゲームに成りうる前に彼女との出会いで変わったのかも……。
 頭を振って答えが出ない問いを考えるのは止めた。百聞は一見にしかずだよ結局。両手で扉を押し開き差し込む光源に瞼を閉じて再び開いた一瞬でそこはLRO内へとなっていた。
「おお~いスオウ!」
 声をした方をみるとそこにはアギトがいた。入る前に知らせておいたから迎えに来てくれていたんだろう。僕は級友に手を挙げて答えた。するとガバッとアギトは僕を羽交い締めにする。
「イテテテテ! 何すんだよ」
「うるせぇ! こんな時間まで何やってたんだよ。セツリをなだめるのにどれだけ苦労したか……お前街にも戻って無くて何故かログアウトしてるしメールは届かないしで交代でセツリを閉じこめて置くことにしたんだぞ!」
「閉じこめるって何で?」
 僕の問いにアギトは呆れた様なため息とともに言った。
「そんなの決まってるだろ! あいつほっといたらあの場所まで戻るって聞かないんだ。だけどあの化け物は倒した訳じゃないからそんな事出来る訳もないだろ。だから不本意だけど閉じこめるしか出来なくて」
 そうか……セツリは戻ってこない僕を心配してくれたのか。幾ら直ぐに蘇るとアギト達に聞いてもずっとここに居る彼女にとってはこの世界での出来事は本物なんだ。
 だからあの時、僕は本当に死んだと思ったのかも知れない。アギト達は心配ないと言っただろうけどそれだけじゃ不安は消えなかったんだろう。彼女にとってはここが本物だから……。
 僕は直ぐに彼女の場所に向かうことにした。直ぐにでも安心させてやりたい。僕は生きてるよ、そう言いたかった。
 だけどその時ハタと足が止まる。本当に安易に会っていいのかと僕の中の悪魔が告げる。このまま死んだことにすれば何の未練も無くこの世界の事を忘れられるかも知れない。
 そしたら自分の命を懸ける危険なんて侵さなくてよくなるんだ。僕が付いて来てない事に気づいたアギトは振り返りいぶかしげに顔をのぞき込んできた。
「どうしたんだよスオウ? なんか変だぞお前。まあ、昨日の戦闘からおかしかったけどな。普通HP0で動けるわけないのにな。蘇生魔法かアイテム使わない限り」
 アギトのそんな言葉を頭の端で聞いていて思い出した。そういえばそんな回復手段があったんだっけ。HPが尽きたプレイヤーは消滅するけどその場には小さなクリスタルが残ってそれに誰かがアイテムか魔法を使えばその場で復活出来る。
 あの時はそんな事考えもしなかった。目の前の事はゲームであってもリアルだった。僕はただ必死で、セツリを守りたかっ……あっ。
 そこまで思考して僕はようやく気付く事が出来た。簡単だった。簡単だけどとても大切な事だ。
 僕は友の顔を見て笑った。
「ありがとうアギト」
「は? なんだよキモいな」
 遠ざかる親友を横目に僕は歩き出す。早く彼女に会いたい。今はそう思うことが出来た。悪魔の声はもうしない。


 アギト達が宿を取っている場所に付いて最初に聞いた言葉はなんだか昨日とデジャブってた。
「ごめんアギト。あの子居なくなっちゃった!」
「はあ! 何やってたんだよお前等!」
「だからごめんだよ~」
 ぞろぞろと宿屋から出てきた一団がそろって頭を下げる。みんな熟練プレイヤーなんだろう。僕とは身につけている装備が違う。カッコいい。ってんな場合じゃない!
 僕は身を乗り出して同じぐらいの身長のエルフの人に詰め寄った。最初に謝った人だ。緑の髪は後ろでポニーテールにして重くはなさそうだけど豪華な彩色がされた防具というよりローブを来ている人。
「えっとどういう事ですか? なんで彼女……監禁みたいな事してたんでしょ?」
 するとその人はエヘヘと笑い。
「いやさ、あの子可愛いじゃん。あんな目で懇願されちゃあ男としてね……でも少し外を散歩したいって言っただけなんだよ」
 だめだこいつら。全員アホか! 揃って顔赤らめてるなよな。
「今直ぐ追えば大丈夫だよ。もう街の中には居なかったからフィールドに出ちゃったんだね」
「このアホ! 先にそれを言え! 全員今直ぐ後を追うぞ」
 アギトの号令で一斉にみんなが走り出す。まだぜんぜん知らない街が直ぐに遠くなる感覚。ああやっぱりこうなんるんだなと僕は思っていた。
 高低差を生かして作られた町並みは段々になっていておもしろいと思っていたけどゆっくりしている時間なんてそもそもないんだ。


 僕達は大急ぎで昨日あの悪魔と対峙した場所まで来た。だけどいない……最悪の想像が駆け巡る。その時思い出した。そういえば彼女を特定する為のシステムが全プレイヤーにはある! 
 僕はウインドウを開いて彼女探した。そして見つけた場所に猛然と走り出す。そしてそんな僕の行動を見ていたみんなも慌てて付いてきた。
 このフィールドは入り組んでるから迷ったんだろう。僕は途中であったモンスター共を後ろのみんなに任せて走り続けた。
「遠くでお前一人でどうすんだぁー」
 てアギトの声が聞こえたけどそんな事考えて無かった。ただ無我夢中で最後に見た彼女の姿を僕は追っていたんだ。
 そしてフィールドの端の端……そこに白い影が見えた。だけど周りをモンスターに囲まれていてよく見えない。
「セツリーーー!!」
 僕は心の限り叫んだ。すると返事は直ぐに帰ってきた。
「スオウ? スオウ! スオウーー!!」
 それは聴き間違いようの無い彼女のセツリの声だった。僕はモンスターに突撃しようとして気付いた。武器が無い。そうだ昨日の戦闘で僕の剣は折れていた。剣がなければ突撃してもモンスターを押し退ける事も出来ない。だけど彼女はそこにいるんだ。
 どうにかしてセツリの元へ……そしてこのフィールドの特性に気付いた。来た道を戻り駆けあがる。そして一気に飛び降りた。
 そして今にもセツリを食べようとするモンスター集団の中に降り立つ。衝撃でHPがかなり減った。だけど気にしない、僕は来れたんだ彼女の元に。一日ぶり? 位に見たセツリの顔はまだ涙が溜まっていた。一体どれだけ泣けるんだ? ゲームだからそこら辺は無限なのかも知れないな。
 そんな事を考えながら座り込むセツリに手を伸ばす。少しは王子様に見えるだろうか?
「大丈夫ですかお姫様?」
 冗談混じりで言ってみた言葉で彼女は決壊したように泣き出した。そして僕の胸に飛び込んできた。
「ばか……ばか……ばかばか! 遅いよ! すっごくすっごく心配したんだからぁ!」
 そんな彼女に僕は小さな声で「ごめん」と言うことしか出来ない。本当にごめん……何度謝っても足りない気がする。この宝石みたいな涙に代わる物なんて無いんじゃないだろうか。
 その時処理できない事態に戸惑っていたモンスターの一匹が雄叫びをあげて襲いかかってきた。そしてそれに吊られて他の奴らももっともシンプルな命令を実行に移す。
 それはプレイヤーを倒す事だ。
 僕達に武器は無く逃げ場もない。最悪の状況だ。だけど不思議と怖いとは思わなかった。それはゲームだからとかじゃ無い。いくらゲームでもこのフルダイブLROはプレイヤーに恐怖を掻き立てる。
 凶悪なモンスターに出くわしたとき、戦闘不能に成る瞬間……それは仮想とわかってても怖い物は怖いんだ。
 だけど今、僕の胸にある小さな背中を抱きしめてると心に不安や恐怖なんて入り込む隙間はないんだ。だから僕は彼女の手を握って力強く言った。
「生きよう。二人で」
「うん!」
 僕は走り出す。彼女の手を握ってモンスターの集団へ向う。七体のオークと呼ばれる半獣人は斧や剣と言った様々な武器を所持して時には魔法も使うやっかいなやつ。
 今の自分じゃどうやったって勝てるわけ無い。だから避ける事に徹底した。危ない時は無理にでも体で受けた。防御には残った鞘を使った。
 それでも突破口は開けない。こいつら意外にAIが高い。少しずつHPは減って黄色からとうとう赤へ突入する。
「スオウ!」
 セツリの不安な声が耳に届く。僕は気丈に笑って見せた。
「大丈夫。絶対……なにが何でもセツリだけは逃がすよ」
 そういった瞬間頬に攻撃を受けた。しまったHPが! と思ったけどモンスターの攻撃じゃない? だけど頬は熱くヒリヒリする。セツリを見ると怒っているような顔でその手は震えていた。……あっ。
「そんなの意味ないよ! さっきの言葉は嘘なの? 私にだけは嘘は付かないで! 君だけは……スオウだけは私信じるから!」
 また泣かせてしまった。本当に僕はだめだめだ。いつも口だけで安い言葉を並べて……いざとなったら全部押しつけていなくなればいいとか思っているのか。
 そんな分けない! それじゃダメなんだ。彼女がいるこの場所も僕にとってはもう一つのリアルなんだ! 一度だってもう彼女の目の前で死ぬことは許されない。
 諦めない屈しない……そんな強い心が欲しい。今は錯覚でもいつか本当にそんな強さを手にする為に僕は口に出し続けよう。
「ごめん……僕……弱くてさ。だけどセツリが信じてくれるなら何度だって立ち上がる。諦めない事しか弱い僕には出来ないんだよね」
 その時彼女は何か言ったような気がしたけど、その声は小さすぎて僕には聞こえなかった。その時きらめく剣が降りおろされる。僕はセツリを抱えて横っ飛びでそれを交わした。
 もう後一撃でも食らえば僕は再び死ぬことに成るだろう。だけど……だからこそ彼女とモンスターの間に立つ。弱い僕には諦めない事しか出来ないから……諦めない強さを僕は既に知っているから……もう片方の鞘も抜いた。
 あの時……昨日の悪魔との戦闘でHPが0に成ったとき、僕は諦めなかった。無我夢中で剣を振り続けた。だから僕達はもう一度出会えたんだ。
 日は既に落ちていた。僕達の天井には月がある。その月光を浴びて前を見据えて僕は吠える。
「うおおおおお!!」
 視界が一瞬ぶれて僕は一番近くのオークの懐に居た。何が起きたかわからない。だけど考えてる暇も無い。両手に握った鞘をおもいっきり突き立ててそのオークの胸を叩く。その時、鞘だから当然突き刺さったりはしないけどだけど何故か赤いエフェクトが弾けオークは後方に吹き飛んだ。
 その瞬間行けると思った。吹き飛んだオークの巻き添えに成っている奴らモロとも追撃する。なんだか嘘の様に頭が鮮明だった。
 HPがレッドゾーンなら体はダルくて一歩踏み出すのも辛い筈なのに今の僕の体は赤い湯気が立ち昇り普段より力強く、素早く動ける。
 僕の体は霞んでいた。左右の鞘は動かす度に鋭さを増している。オーク共が振り切るより早く僕は動ける。だけどそれは剣技なんて呼べる美しい物じゃない。僕はただガムシャラに二つの鞘を振るっていた。
 でもそれだけで事足りた。あまりの速さで左右の鞘で振りかぶる……その度にその場の気流は乱れ風を生み出す。その風は僕の鞘の動きを追う様に流れ次第にその場に小さな嵐が起きた状態に成っていた。
 するともうオーク共は動く事も出来なく成っていた。そして次第に風は鋭さを増していき奴等の四肢を切り刻む。僕の鞘には白い風の唸りが長い尾を引いていた。
 辺りを暴風の叫びが埋め尽くす。
「ああああぁぁっぁ!」
 力を振り絞り風の刃を叩き付ける。右手の鞘を左斜め上方へ、振り付いてきた白い風がオークを三体切り捨てた。それに合わせるように左腕の鞘を体の回転に合わせて地面を滑らせる様に滑空させて振り上げた。波打った白い風の刃は続けざまに四体のオークを切断する。
 僕の動きが止まると同時に嵐は過ぎ去った。舞い上がっていた草や木々の葉が地面に舞い戻ってくる。そんな草や葉は月光を受けて煌めいていた。
 そしてその草の一本が地面に付いたと同時にシステムが気付いたように地面に倒れていたオーク七体の死体が青いオブジェクトと化し飛散した。
 パリーン、と言う音が次々と響いた。その音を聞きながら自分に何が起こったのかを考えていた。だけど頭の中に答えはなかった。だからウインドウを開いて行く。あれはシステムのバグとも思えなかったからだ。
 そして案の定見つけた。僕の空欄だらけのスキル欄に色違いで表示されているその名『乱舞』を。二刀流の固有スキルで発動条件はHPがレッドゾーンであること。
 どうして乱舞が発現したのかは解らない。確かに言えることはこの戦闘の前までは僕のスキルにこんな物はなかったって事だ。だけど……僕は壁際で涙を流しているセツリに歩み寄った。そして手を伸ばす。
 その手に重なった華奢な腕を掴めた。それだけで、目の前の彼女を守れたと言う事実だけで僕には十分だったんだ。
「どっちにしろ泣くんだな」
 立ち上がったセツリの涙をすくいながら言った。指に伝わる頬の感触は柔らかく涙は次から次へと落ちてくる。セツリは僕のその腕を取ってポスン・・・と胸にオデコを付けるようにしてきて言った。
「君は……いつも危なっかしいんだよ!」
 僕はそんな彼女の綺麗な頭を撫でながら笑った。また呼び方が「君」に戻った事を残念に思いながら。


 アギト達が現れたのはそれから五分後の事だ。かなりモンスターが沸いたらしく激しくみんな消耗していた。こっちも同じ様な物だけど随分と迷惑をかけてしまったみたいだ。押しつけちゃったからね。
 だけどみんな良い人で笑って許してくれた。それどころかちゃんとセツリが居ることを確認すると「いや~良かったよ」「よくやった」とそれぞれ言ってくれた。だけどアギトだけは
「突っ走るなよなこのバカが。パーテーじゃチームワークが大切なんだ。独断専行は御法度だ」
 と言って小突かれた。だけどその後に「ま、セツリは無事みたいだしお前にしちゃ良くやったじゃん」と直ぐにいつものノリになった。
「本当に皆さんごめんなさい!」
 そう言ってセツリが頭を下げるとなんだかみんな照れ笑い。みんながそれぞれの無事を確認して笑えた。これが仲間って物なんだと僕は思った。
 取り合えずここは危ないから元の街に戻ることになった。仲間の一人が魔法を唱える。最初に宿屋の前で報告してきたエルフの人だ。どうやら彼はヒーラーらしい。回復や補助の魔法を使ってパーテーを支える役目を担う重要なポジションだ。
 その人はかなり高位なヒーラーらしく全員を一気に転送できる呪文を今唱えてくれている。このLROの世界では魔法発動には連動した呪文の詠唱が必須だ。だから結構面倒。強力な魔法になるとそれだけ詠唱も長くなるから覚えるのも大変らしい。
 だけどこの人はそんな長い呪文をスラスラと言っている。スゲ~。詠唱が終わると大きな魔法陣が僕達を包み込んだ。これでようやく安心だ。そう思った時だった。
「あれ?」
 魔法を唱えたエルフの人の疑問符。それに全員が首を傾げた。それは今にも発動する筈だった転移魔法が突然キャンセルされたからだ。口々に上がる疑問の声。そんな状況の中、僕の背筋に悪寒が走った。
 まるで背中にゴキブリでも落とされた様な嫌悪感と恐怖……これを僕は知っている。このフィールド……この時間帯……それに重なる物が一つある!
 その時、闇から何かが飛び出して来た。そしてそれはセツリを掴み引き戻される。僕達の視線はセツリを追って背後へ。その時、僕達は恐怖で声一つ出せなかった。
 闇に浮かんでいるのは羊の頭に大きな角、下半身は馬で片手には身の丈を越える巨大なメイス……それは紛れもなく昨日の悪魔だ! 悪魔に捕まれたセツリは悲痛な叫びを上げている。
「かっ……はぁ、ああああああ!」
「セツリ!」
 奴の手の中のセツリが黒い影に飲まれていく。何なんだ? 何なんだよあれは! 僕は走り出した。勝てない……勝てるはずはない。だけどもう諦めないと約束したんだ!
「返せよ! そいつを離せ、クソ野郎ーーー!」
 僕に続いて駆けて来る足跡が聞こえる。みんな戦おうとしてくれている。だけどそれをあざ笑うかの様に悪魔はメイス地面に突き刺した。その瞬間広がる魔法陣。
 だけどそんな事無視して僕は走った。奴の手のセツリを救う……それだけしか考えてなかった。しかしなんだか異様に静かだ。後ろから聞こえていた筈のみんなの足音が一つ……また一つと少なくなっている? その時アギトの声が響いた。
「しまった! 強制転移魔法だスオウ!」
 その言葉を理解したときには抜いた鞘が奴に触れる寸前だった。だけどそれよりも早く僕の視界は消え去った。目の前に悪魔も居なければセツリの姿も見失った。


 転送先は空の中だった。僕は今絶賛スカイダイビング中である。あんの悪魔め、次ぎ合ったら叩ききる。そう吠えながらもグングン地上は近づいて来る。だけど下は湖が広がってる。どうにかなるだろうと僕はもうこの位の恐怖には動じなくなっていた。いや感覚がきっと麻痺していたんだ。
 だから大音響を響かせて着水した後に湖で見た裸の女の子はきっと妖精さんだ。なんだか見覚えある顔だけどそういう事にして僕の意識は落ちていった。


 たき火がはぜる音で気が付くと目の前には小さな二等身の生き物がうごめいていた。そして僕と目が合うと振り返り向こう側に居る誰かにそれを知らせている。
「お~いリルレット。こいつ目覚ましたよ」
 そして向こうから「ホント? 良かったぁ」と言う声と共に駆け寄って来る十二・三歳ぐらいの少女の姿。なんだかさっき見た妖精に似てるな・・・うん? リルレット?
 焦点があって二人の顔を見て思い出した。昨日少しだけ知り合った二人組か。確かモブリの方はエイルといったはずだ。てか、じゃあさっき見たのは……僕はガバッと起き上がりすぐさま頭を下げた。
「ゴメン!」
 その行為の意味を察したのかリルレットは顔を赤らめて「止めてください」と言った。だけどエイルは「殺そう」とか物騒な事を言っている。
 だけどどうして二人がここに・・てかここはどこだ? それは向こうも同じで情報交換をした。
「なるほど……スオウさん達はあのクエストを……そしてまた彼女さんを助けなくちゃ行けないんですね」
「まあそうだね」
「でも、武器もなしじゃ無理ですよ」
 ごもっともです。僕はリルレットが箱から出したパンをカジりながら言った。
「だけどどうやって武器を調達しよう? お店のは質が悪いってアギトが言ってたし。だけど鍛冶職人頼む程金なんてないし」
 するとリルレットが指を立てて得意げに言った。
「ならまずは競売、オークションの品を見て回りましょう」
「お節介……」
 ため息を付いたエイルの目は僕に明らかな敵意を向けていた。





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