命改変プログラム
夢と現実の狭間
目が覚めたら僕は自室の天井を見た。
「あれ?」
おかしい……僕はそう思いベットから体を起こし自身の感触を確かめる。そして頭に着けているゲーム機を外して側面のランプを確かめた。
そこには青い光が灯っている。
「壊れたわけじゃないか」
青いランプはこのゲーム機が正常に作動している事を示す。ゲームにログインしている状態だとランプは点滅を繰り返す。どこかに異常が出たらランプは赤になる。
「異常も無いのに強制ログアウトされた……どういう事だよ」
手元の頭を包むような形状をしたゲーム機を見やり呟いた。おかしな事だらけで今更強制ログアウトで驚く事もないけどね。もう一回入れば良いだけの事だ。
そう思いゲーム機を再び頭に着けて「ダイブ・オン」と発する。これで再びゲームの中へ。死んだわけだから最初の街になるんだろうけどそこはしょうがない。
アギトやセツリは無事なのか? 後から来た人達と逃げたかそれとも倒せたのか気になる。みんな熟練プレイヤーばかりだろうから大丈夫だとは思うけど、ゲーム内でちゃんと安否を確かめたい……と、思ったんだけど何故か意味不明な言葉が頭の中に響くだけでログイン出来ない。
【あなたのログインは現在認める事は出来ません】
そんなメッセージが脳内で響き不愉快な甲高い音が鳴り響いた。僕は思わず頭のゲーム機を外してベットの上に落とす。
ログインが認められない? どう言うことだ。やっぱり彼女に関係あるのだろうか?
何度やっても同じ……頭に響く音のせいで頭痛を併発した。苦情出すぞこの会社!
取りあえずパソコンに向かいゲーム内に居るであろうアギトに今の状況を伝えようとメールを打つ。だけどメールもダメだった。何だ一体どうして?
ログインもメールの送受信も止められてる……そんな事、システム管理している会社か企業でもないと出来ないんじゃあ。するとその時メールが届いた。ピロリンという音と共に受信箱に一通のメールが入っている。そのタイトルは『アンフィリティクエストについて』そして送り主はギーガスクエア……ライフリヴァルオンラインの製作会社だ。
僕は震える手でメールを開いた。そして開いたメールの内容は簡潔な物だった。書かれていたのは僅かなお詫びの言葉と面会を希望する時間と場所の指定。
なんだって一プレイヤーでしかない僕に企業側がコンタクトを取りたがるか分からないけど会わない訳にも行かないだろう。だって内容が内容だ。製作会社ならこちらよりも沢山の情報を持っている筈だ。
アンフェリティクエストの事……彼女の事……聞きたい事は山ほどある。それにどうして僕のログインが止められてるのか。
場所は今日行ったビルだから分かりやすくていい。時間は正午頃……それまでゲームに入れないのはもどかしいけど仕方ない。僕はメールに了承の返事をして時計を見た。すると既に午後十一時を回ってそろそろ日付が変わろうとしていた。
今日はなんだか長い一日だった。キャラ作りは実は昨日の真夜中からやっていたから寝てないんだよね。結局そのキャラ作りに費やした労力は全部無駄になった訳だけど。
初めて直ぐおかしな事が起きて仮想もリアルも動きまくったからヘトヘトだ。LROは呼気まで再現してるからなんだか疲労が残るらしいからだろう。
やることも出来る事も今はない。アギトがログアウトして電話でも掛けてくれなきゃ連絡手段もないよ。僕は腰を上げてパソコンから離れ再びベットに倒れ込んだ。すると今日の張りつめた緊張が切れたみたいに自然と意識が遠のく。
なんだか全部が夢だった気がしてくる。実際にゲームの中での出来事なんだ……それでこんなに何頑張ってるんだろう? 沈む意識の中で浮かんで来たのは最後に見たセツリの顔。大粒の涙が次々に落ちる頬――揺れる栗色の髪――伸ばされた華奢な腕――僕の名前を叫ぶ小さな口――そのどれもが鮮明で僕の心に焼き付いていて自然と口が僅かに動く。
「夢じゃない」
そして意識は暗い闇を求めて沈んで行った。
ここはどこだろう? 真っ暗な部屋の中で光るのは一つの液晶画面だけ。画面は無数の数字とプログラミング言語を組み合わせたコードを延々と組み上げていた。
そして僕はその画面を凝視する人物に気付く。線の細い体にボサボサの髪、身長は高そうだけど決して強そうには見えないタイプの人物だ。くたびれたシャツに皺だらけのズボンは膝までめくり上げられている。
なんだろう、僕はこの人を知っている気がする。暗く落ち込む部屋の中ではその人のタイピングの音が異様に大きく響いている。ゾッとするほどの没頭ぶりだ。一体に何がこの人をここまで動かすんだろうか。
「どうして……」
僕の口はいつの間にか音を発していた。言葉とも言えない音の固まり。不意にタッピングの音が止まり世界の音は無機質な機械の駆動音だけになった。
そんな沈黙がずっと続いたような気がする。十分……二十分……それとも一時間。もしかしたらたった十秒位だったのかもしれない。
だけど体感的に長い時間の果てに背中を向けた人物はたった一言呟いた。それは僕に向けて行ったのか自分に言い聞かせているのか分からないけど確かに聞こえた。
「妹の為に……」
音の固まりに殴られた様な衝撃で僕の安眠は終わった。音に殴られるなんてライブハウスとかで直にバンドの演奏でも聴かないと得られない体験を家の中で出来るなんて貴重と思う君は変わってくれ。
毎朝音に殴られてたら地味に耳にくるし内臓の調子が悪くなる。僕が朝から冷たい物を飲むと必ずお腹を壊す体質に成った原因はきっとそのせいだ。
だから毎日毎日やりきったみたいな顔で鍋とお玉を抱えた目の前の幼なじみを恨みがましく見つめる。だけど日鞠はそんな事全然気にした風もなく元気に言うんだ。
「スオウ朝だよ! 良い天気だね。きっと神様が今日も私たちを見守って居るよって証だね」
じゃあ曇りや雨の日はどうなるんだと思った諸君、そこはいずれ分かるさ。日鞠のバリエーションは全天候を網羅しているんだ。
笑顔全快の日鞠にグイグイ引っ張られて朝食を済ました僕は昨日風呂に入らなかった事を思い出しシャワーを浴びた。浴室から出てきた時には既に朝食の片づけを終えた日鞠とはち会った。
最初僕は洗濯に来たんだろうと思ったけどそれは確か昨日済ましていた。基本両親が共働きで殆ど一人暮らし状態のこの家は洗濯なんて一週間に一・二回でいいんだ。つまり昨日したら今日洗う物なんて無いはずだ。
そして日鞠の手にある一眼レフのやけに黒光りする豪華なカメラを見つけた。
「おい、それなんだ?」
聞くまでもないけど一応聞いてみる。
「えへ、スオウの成長の記録をね」
「えへ、じゃねーよ! 普通逆だろ! 取りあえずカメラ渡せ!」
「イヤだよ。今からモザイク処理してお母様達に『今日はこんな爽やかな朝を迎える事が出来ました』って知らせるんだから」
「なんのねつ造だよ!」
僕は強引にでもカメラを奪う権利があるはずだ。睨みを聞かせて両手両足を開き中腰状態に。バスケで鍛えたフットワークを見せてやる。
タオル一枚で少女に詰め寄る変態の図の完成であった。いや、実際には変態は逆なのだけどもしも誰かがこの状況を見たら勘違いするのは確実だ。
すると僕の本気度が伝わったのかカメラを胸に抱えていた日鞠が大きく観念したように息を吐いた。ほ、やっとアホな考えは改めてカメラを渡す気になったかと思ったらもっとヤバいことをさらりと言った。
「わかったよ~。しょうがないからこの写真は今日のブログにアップするだけにしとくよ」
「僕の貞操が大ピンチだろそれ!」
きって落とされた第二ラウンドは熾烈を極めた。
なんとかカメラから自分の裸の写真を消去した僕は既にゲンナリしていた。朝から変態の相手は辛いよ。でもここからは気を引き締めないと行けない。
僕の目の前には上った太陽の光を反射する昨日もみたビルがある。指定された時間の十分前……丁度いいだろうと僕は自動ドアを潜り受け付けへ。だけど昨日と同じお姉さんに話しかける前に呼び止められた。
「君がスオウ君だよね?」
「え? あ、はあ」
「そうかよかったよ本人で。人違いだったらどうしようかとヒヤヒヤしてた」
その人は無理して着たようなスーツ姿でメガネを掛けた冴えなさそう人だった。首から下げた社員証か何かに「山田 石丸」といかにも冴えない名前が書いてある。
山田さんは僕にお礼とお詫びを言って受付から通行パスみたいなのを受け取って着て渡してくれた。そしてエレベーターに乗り込み会社内へ。
よくよく考えたらここってギーガスクエアじゃなくてハードの方の会社の筈だった。どういう事だろうか?
僕が通された場所は会社内の先端技術開発部と言うところの会議場だった。長机が長方形に並べられてそこには何十人かの人達がいた。
ここはフルダイブの研究施設みたいな物なんだろうか? 中に居るのはみんな技術者や研究者を思わせる格好だ。
「みなさんスオウ君を連れてきましたよ」
そんな山田さんの言葉でみんなの視線が僕に集中する。そしてちょっとしたざわめき。なんだ? 一体何なんだ?
僕は一番近くの席、長方形の長い方じゃ無く短い所に座らせれた。全員の視線が注がれるしなにより対面の人が怖いんですけど……。僕のそんな心の叫びは届かず全員が席に着いてなんだか緊張感が出てきた。
一体今から何が始まるんだろう。
「まずは自己紹介から始めようかな? スオウ君は誰が誰だかわかんないだろうからね」
そういって山田さんが全員を簡単に紹介してくれた。どうやらハードの開発者が六人ぐらいで後の四人がギーガスクエアのゲーム開発者と言うことだ。それはわかったんだけど……。
「えっと……どうして僕がこの中に?」
ずっと出したかった疑問を口にした。するとその問いには対面の一番怖い人が答えてくれた。
「それは君がアンフェリティクエストの発見者で今現在唯一の達成可能者だと我々が結論したからだ」
「ええ? 唯一って、あのクエストは全プレイヤーに発生してるんですよね? なら全プレイヤーに可能性はあるんじゃないですか?」
僕の当然の質問に答えたのは今度は右隣のゲーム開発者の人だ。
「いや、そうでも無いことが解ったんだ。確かにあのクエストは全プレイヤーに発生したけど達成者は既に決まっている。それが君なんだよ」
なんだって? 達成者が既に決まっている? そんなことあり得ないだろう。
「意味が分かりません」
僕は素直な感想言った。順を追って説明しろよ。
「う~んそうだね。説明は極めて難しい。説明と言う物はその事象を全て理解している者に与えられる役目だからね。ここに居る全員はその区分に当てはまらない。それに該当する者はただ一人桜矢当夜だけだろう」
その言葉に全員が反応したような気がした。態度に出す人は居ないけどその名前が出た瞬間に空気が震えたとでもいうのかな。
つまりはあのクエストや今のゲームの状況はここにいるゲームを支えるべきである人達も知らなかった事って事か。
「でもじゃあ、どうやって僕がそのクエストの達成者に成りうるだなんて解ったんですか?」
「それは簡単。君の名前がクエストの達成欄にはあるんだ。こっちの本体にはね。もしかしたら彼女桜矢摂理を見つけた者にその資格があるのかもね」
なるほど……彼女を見つけた者だけに達成権が与えられるってわけか。でも待てよ。
「あの時僕の他にもう一人プレイヤーがいたんです。そいつはどうなるんですか?」
確かに僕はアギトと共にセツリを見つけた。
「発見……だけじゃ無い他にキーがあったんじゃないのかい? 何か彼女にしたとか?」
その時僕の脳裏にあの感触が蘇る。柔らかいセツリの唇の感触。まさか……あれで?
「ええと……キスを」
「なんと! 眠っている少女の唇を奪ったのかい? やるね君」
「事故です。事故! そんな……やるんならちゃんと許可取ってやりますよ!」
なんだか訳解らないこと言ってる気がする。
「そういえばその後僕の時間をかけたキャラクターが自分自身になったんですけどアレはなんですか?」
「それは解らないな。強いて仮説を立てるなら……彼女にとって君だけは真実でいて欲しかった? とか」
なんだそれ? 自身が作ったキャラを被る事は嘘って事か?
すると山田さんが口を開く。
「実を言うとね、今あの仮想現実空間は一人歩きをしている状態なんだ。いいや、誰かの意志によって動かされていると言った方がいいのかな?」
「誰かの意志? それが桜矢当夜の意志って事ですか? でもあの人は……」
あの人は病院のベットの上だ。そんなこと……
「そうだけど予めそういう仕掛けをしていたのかも知れない。それにあの空間は世界最高峰のコンピューターで形作られている。それを作ったのが彼なのだから彼の意志と言っても変わらないだろう」
確かにそうかも知れない。僕も最初セツリからお兄さんの事を聞いたときあの空間はそもそも彼女の為に作られた様な気がした。
「ん? じゃあ僕がログイン出来なかったのも当夜さんの意志ですか? でも当夜さんは妹であるセツリさんを助けたい筈ですよね? 達成条件も彼女をリアルに帰還させる事だったし……それなら矛盾しますよ」
確かにその通りなんだ。クリア出来るのが僕だけなら出さない様にするならまだしも出してしまっては意味がない。だけどその謎は簡単だった。
「それは僕達がやったんだよ。君がゲーム内で死亡して街に転送される間に割り込みを掛けて強制的にログアウトさせた」
そういったのはゲーム会社の人たちだ。
「なんでそこまで? 確実に今日来て欲しかったからって入れ無くすること無いでしょう。 ゲーム内でもメールしてくれれば来ますよ」
だけど何故かここに来て周りの大人達の顔が変わった。なんだか言いにくそうに。そして対面の怖い印象のおじさんが口を開いた。
「実はそうも行かなかった。君は昨日ログアウトして何か違和感を感じなかったかい?」
「ん~別にそれとは……ただ疲れがフィードバックしてる気はしました。少しだけだるかったし直ぐに寝ちゃう程に。だけどLROはそういう事が有るって聞いてましたけど」
僕の言葉にまた少しだけ声のトーンを落として対面の人は言った。
「今はまだそれくらいか……今から言うことを落ち着いて聞いてくれ」
「え? はあ」
なんだ妙に真剣な面もちに緊張が増すぞ。
「このままログインを繰り返したり向こうでの活動を続けて行くと君は……こちらに戻れなくなるかも知れない」
「は!!」
なんて言った今? 戻れなくなる? それってつまりセツリと同じようにログアウト出来なくなってこっちでは意識不明って事か?
「あくまで可能性の話だが、君の向こうへの意識浸透率は異常な程に高い。限界値を越えればシステムで引っ張り戻せなく成るかも知れない」
「その限界値って幾らなんですか?」
「三百五十~四百だ。これは桜矢摂理のデータを元にしている。そして今の君が百を越えた辺り。普通は八十位で落ち着いている筈なんだがね」
まず彼らが嘘を付いていると疑った。だけどそんな理由なんて見当たらない。仮想空間から戻れなくなるかも知れない? そんなのリスク高すぎだろ! そもそもゲームなんて命懸けてやるものじゃない。
信じられないそんな事って……この人達はそれを伝えて僕にもうゲームに入るなって事を言いたいのか。
「どうしたい? 君はこのまま入り続けたら意識浸透率は上昇していきいずれ意識と体は引き破がされるかも知れない。その原因はきっと彼女だろう。
彼女を見捨てて、もうログインしなければそんなことも起こり得ない。ただその時は彼女はずっとあの世界の中ということに成るが……いや、一定時間が経てば他のプレイヤーにクエスト達成の権利が移るのかも知れない。それは解らないが決めるのは君だ」
重い声が会議室に響いた。なんでこいつらは意地でも止めさせないんだ? こんな事になったら普通適当な理由でも付け、謝礼でも払ってゲームを止めさせるのが普通なんじゃないか?
それを理由まで教えてわざわざ忠告まで……て忠告?
決めるのは自分って言うのにも引っかかる。精神が持って行かれるってのは命を亡くすと同義だろ。そんな事態になったら企業ならそんな最悪な事態は避けたいはず。なのに選択の権利まで与えて……。
「貴方達は実はクエストを達成して欲しいんですか?」
今あのゲームは一人歩きしてるといった。それは企業からしたら嫌な事だろう。今はイベントとしてるけどこんな状態が続いてはいずれ運営は出来なくなる。
その損失は痛いのでは? 今LROに登録しているユーザーは何百万だ。それを失うのは大きな損失。
「大人の黒い考えはお見通しか……」
対面の怖い人は言った。意外にあっさりだな。
「君が思っている通りに実はこのクエストはさっさとどうにかしてもらいたい。今のLROは非常に不安定なんだ。このままサービスをし続けるのはパラシュートの代わりにゴミ袋でスカイダイビングしてるような物だよ」
いや、それは今すぐ止めろよ。それ程までにこLRO市場……指してはフルダイブゲームの市場は手放せないってことか。
「僕にこんなに懇切丁寧に状況を教えてくれたのは最悪の事態……つまり僕が危険を冒してまでゲーム内に戻りそして戻ってこれなくなったときの保険。言い訳作りって事ですか? 自分達は危険を教えていたってね」
山田さん達は苦い顔をする。
「その通りだ。あっぱれだねスオウ君」
拍手が何故か巻き起こる。なんだそれ、おかしいだろ。
「見透かされたのなら仕方ないよ。これでLROは終わりだろうけど……それも仕方ない。たった一日前に出会った少女の為に命を懸ける理由なんて君にはないだろう?」
たった一日前……確かにそうだ。だけどなんだかそんな気しないな。命を懸ける理由か……確かにそんなものないかも知れない。
だけど心がなんだか痛い……誰も居なくなった世界でセツリはどうなるんだろう。僕は立ち上がり目の前の大人達に向かって言った。
「確かめたい事があるんだ。それから決めたい。だからもう一度ログインさせてください!」
全てはそれから……後一回のログインで僕は何かに確信を持ちたかった。
結果的に僕の要求は通った。一回位なら大丈夫だと判断してくれた。その変わり体調管理とかを徹底する事を条件に。やっぱり最悪の事態は避けたいらしい。血液検査とか色々やった。
そして彼らが侵入させていた僅かなシステムでアギト達の位置を特定してもらいその場所に復帰させて貰えることもした。ズルだけどこの位仕方ないよね。もしかしたら命懸けるかも知れないんだから。
僕は会社のハードを使ってログインする事になった。家に帰る時間がもったいないし、何か起きたときの為だ。
僕は手の中のハードを見つめる。あんな話を聞いた後じゃ今までの様に気楽に頭に着けるなんて出来なかった。だけど大きく深呼吸をしてハードをはめてリクライニングみたいなイスに腰掛ける。特性で座り心地抜群だ。
そして僕は目を閉じて魔法の言葉を紡ぐ。
「ログイン」
「続く」
「あれ?」
おかしい……僕はそう思いベットから体を起こし自身の感触を確かめる。そして頭に着けているゲーム機を外して側面のランプを確かめた。
そこには青い光が灯っている。
「壊れたわけじゃないか」
青いランプはこのゲーム機が正常に作動している事を示す。ゲームにログインしている状態だとランプは点滅を繰り返す。どこかに異常が出たらランプは赤になる。
「異常も無いのに強制ログアウトされた……どういう事だよ」
手元の頭を包むような形状をしたゲーム機を見やり呟いた。おかしな事だらけで今更強制ログアウトで驚く事もないけどね。もう一回入れば良いだけの事だ。
そう思いゲーム機を再び頭に着けて「ダイブ・オン」と発する。これで再びゲームの中へ。死んだわけだから最初の街になるんだろうけどそこはしょうがない。
アギトやセツリは無事なのか? 後から来た人達と逃げたかそれとも倒せたのか気になる。みんな熟練プレイヤーばかりだろうから大丈夫だとは思うけど、ゲーム内でちゃんと安否を確かめたい……と、思ったんだけど何故か意味不明な言葉が頭の中に響くだけでログイン出来ない。
【あなたのログインは現在認める事は出来ません】
そんなメッセージが脳内で響き不愉快な甲高い音が鳴り響いた。僕は思わず頭のゲーム機を外してベットの上に落とす。
ログインが認められない? どう言うことだ。やっぱり彼女に関係あるのだろうか?
何度やっても同じ……頭に響く音のせいで頭痛を併発した。苦情出すぞこの会社!
取りあえずパソコンに向かいゲーム内に居るであろうアギトに今の状況を伝えようとメールを打つ。だけどメールもダメだった。何だ一体どうして?
ログインもメールの送受信も止められてる……そんな事、システム管理している会社か企業でもないと出来ないんじゃあ。するとその時メールが届いた。ピロリンという音と共に受信箱に一通のメールが入っている。そのタイトルは『アンフィリティクエストについて』そして送り主はギーガスクエア……ライフリヴァルオンラインの製作会社だ。
僕は震える手でメールを開いた。そして開いたメールの内容は簡潔な物だった。書かれていたのは僅かなお詫びの言葉と面会を希望する時間と場所の指定。
なんだって一プレイヤーでしかない僕に企業側がコンタクトを取りたがるか分からないけど会わない訳にも行かないだろう。だって内容が内容だ。製作会社ならこちらよりも沢山の情報を持っている筈だ。
アンフェリティクエストの事……彼女の事……聞きたい事は山ほどある。それにどうして僕のログインが止められてるのか。
場所は今日行ったビルだから分かりやすくていい。時間は正午頃……それまでゲームに入れないのはもどかしいけど仕方ない。僕はメールに了承の返事をして時計を見た。すると既に午後十一時を回ってそろそろ日付が変わろうとしていた。
今日はなんだか長い一日だった。キャラ作りは実は昨日の真夜中からやっていたから寝てないんだよね。結局そのキャラ作りに費やした労力は全部無駄になった訳だけど。
初めて直ぐおかしな事が起きて仮想もリアルも動きまくったからヘトヘトだ。LROは呼気まで再現してるからなんだか疲労が残るらしいからだろう。
やることも出来る事も今はない。アギトがログアウトして電話でも掛けてくれなきゃ連絡手段もないよ。僕は腰を上げてパソコンから離れ再びベットに倒れ込んだ。すると今日の張りつめた緊張が切れたみたいに自然と意識が遠のく。
なんだか全部が夢だった気がしてくる。実際にゲームの中での出来事なんだ……それでこんなに何頑張ってるんだろう? 沈む意識の中で浮かんで来たのは最後に見たセツリの顔。大粒の涙が次々に落ちる頬――揺れる栗色の髪――伸ばされた華奢な腕――僕の名前を叫ぶ小さな口――そのどれもが鮮明で僕の心に焼き付いていて自然と口が僅かに動く。
「夢じゃない」
そして意識は暗い闇を求めて沈んで行った。
ここはどこだろう? 真っ暗な部屋の中で光るのは一つの液晶画面だけ。画面は無数の数字とプログラミング言語を組み合わせたコードを延々と組み上げていた。
そして僕はその画面を凝視する人物に気付く。線の細い体にボサボサの髪、身長は高そうだけど決して強そうには見えないタイプの人物だ。くたびれたシャツに皺だらけのズボンは膝までめくり上げられている。
なんだろう、僕はこの人を知っている気がする。暗く落ち込む部屋の中ではその人のタイピングの音が異様に大きく響いている。ゾッとするほどの没頭ぶりだ。一体に何がこの人をここまで動かすんだろうか。
「どうして……」
僕の口はいつの間にか音を発していた。言葉とも言えない音の固まり。不意にタッピングの音が止まり世界の音は無機質な機械の駆動音だけになった。
そんな沈黙がずっと続いたような気がする。十分……二十分……それとも一時間。もしかしたらたった十秒位だったのかもしれない。
だけど体感的に長い時間の果てに背中を向けた人物はたった一言呟いた。それは僕に向けて行ったのか自分に言い聞かせているのか分からないけど確かに聞こえた。
「妹の為に……」
音の固まりに殴られた様な衝撃で僕の安眠は終わった。音に殴られるなんてライブハウスとかで直にバンドの演奏でも聴かないと得られない体験を家の中で出来るなんて貴重と思う君は変わってくれ。
毎朝音に殴られてたら地味に耳にくるし内臓の調子が悪くなる。僕が朝から冷たい物を飲むと必ずお腹を壊す体質に成った原因はきっとそのせいだ。
だから毎日毎日やりきったみたいな顔で鍋とお玉を抱えた目の前の幼なじみを恨みがましく見つめる。だけど日鞠はそんな事全然気にした風もなく元気に言うんだ。
「スオウ朝だよ! 良い天気だね。きっと神様が今日も私たちを見守って居るよって証だね」
じゃあ曇りや雨の日はどうなるんだと思った諸君、そこはいずれ分かるさ。日鞠のバリエーションは全天候を網羅しているんだ。
笑顔全快の日鞠にグイグイ引っ張られて朝食を済ました僕は昨日風呂に入らなかった事を思い出しシャワーを浴びた。浴室から出てきた時には既に朝食の片づけを終えた日鞠とはち会った。
最初僕は洗濯に来たんだろうと思ったけどそれは確か昨日済ましていた。基本両親が共働きで殆ど一人暮らし状態のこの家は洗濯なんて一週間に一・二回でいいんだ。つまり昨日したら今日洗う物なんて無いはずだ。
そして日鞠の手にある一眼レフのやけに黒光りする豪華なカメラを見つけた。
「おい、それなんだ?」
聞くまでもないけど一応聞いてみる。
「えへ、スオウの成長の記録をね」
「えへ、じゃねーよ! 普通逆だろ! 取りあえずカメラ渡せ!」
「イヤだよ。今からモザイク処理してお母様達に『今日はこんな爽やかな朝を迎える事が出来ました』って知らせるんだから」
「なんのねつ造だよ!」
僕は強引にでもカメラを奪う権利があるはずだ。睨みを聞かせて両手両足を開き中腰状態に。バスケで鍛えたフットワークを見せてやる。
タオル一枚で少女に詰め寄る変態の図の完成であった。いや、実際には変態は逆なのだけどもしも誰かがこの状況を見たら勘違いするのは確実だ。
すると僕の本気度が伝わったのかカメラを胸に抱えていた日鞠が大きく観念したように息を吐いた。ほ、やっとアホな考えは改めてカメラを渡す気になったかと思ったらもっとヤバいことをさらりと言った。
「わかったよ~。しょうがないからこの写真は今日のブログにアップするだけにしとくよ」
「僕の貞操が大ピンチだろそれ!」
きって落とされた第二ラウンドは熾烈を極めた。
なんとかカメラから自分の裸の写真を消去した僕は既にゲンナリしていた。朝から変態の相手は辛いよ。でもここからは気を引き締めないと行けない。
僕の目の前には上った太陽の光を反射する昨日もみたビルがある。指定された時間の十分前……丁度いいだろうと僕は自動ドアを潜り受け付けへ。だけど昨日と同じお姉さんに話しかける前に呼び止められた。
「君がスオウ君だよね?」
「え? あ、はあ」
「そうかよかったよ本人で。人違いだったらどうしようかとヒヤヒヤしてた」
その人は無理して着たようなスーツ姿でメガネを掛けた冴えなさそう人だった。首から下げた社員証か何かに「山田 石丸」といかにも冴えない名前が書いてある。
山田さんは僕にお礼とお詫びを言って受付から通行パスみたいなのを受け取って着て渡してくれた。そしてエレベーターに乗り込み会社内へ。
よくよく考えたらここってギーガスクエアじゃなくてハードの方の会社の筈だった。どういう事だろうか?
僕が通された場所は会社内の先端技術開発部と言うところの会議場だった。長机が長方形に並べられてそこには何十人かの人達がいた。
ここはフルダイブの研究施設みたいな物なんだろうか? 中に居るのはみんな技術者や研究者を思わせる格好だ。
「みなさんスオウ君を連れてきましたよ」
そんな山田さんの言葉でみんなの視線が僕に集中する。そしてちょっとしたざわめき。なんだ? 一体何なんだ?
僕は一番近くの席、長方形の長い方じゃ無く短い所に座らせれた。全員の視線が注がれるしなにより対面の人が怖いんですけど……。僕のそんな心の叫びは届かず全員が席に着いてなんだか緊張感が出てきた。
一体今から何が始まるんだろう。
「まずは自己紹介から始めようかな? スオウ君は誰が誰だかわかんないだろうからね」
そういって山田さんが全員を簡単に紹介してくれた。どうやらハードの開発者が六人ぐらいで後の四人がギーガスクエアのゲーム開発者と言うことだ。それはわかったんだけど……。
「えっと……どうして僕がこの中に?」
ずっと出したかった疑問を口にした。するとその問いには対面の一番怖い人が答えてくれた。
「それは君がアンフェリティクエストの発見者で今現在唯一の達成可能者だと我々が結論したからだ」
「ええ? 唯一って、あのクエストは全プレイヤーに発生してるんですよね? なら全プレイヤーに可能性はあるんじゃないですか?」
僕の当然の質問に答えたのは今度は右隣のゲーム開発者の人だ。
「いや、そうでも無いことが解ったんだ。確かにあのクエストは全プレイヤーに発生したけど達成者は既に決まっている。それが君なんだよ」
なんだって? 達成者が既に決まっている? そんなことあり得ないだろう。
「意味が分かりません」
僕は素直な感想言った。順を追って説明しろよ。
「う~んそうだね。説明は極めて難しい。説明と言う物はその事象を全て理解している者に与えられる役目だからね。ここに居る全員はその区分に当てはまらない。それに該当する者はただ一人桜矢当夜だけだろう」
その言葉に全員が反応したような気がした。態度に出す人は居ないけどその名前が出た瞬間に空気が震えたとでもいうのかな。
つまりはあのクエストや今のゲームの状況はここにいるゲームを支えるべきである人達も知らなかった事って事か。
「でもじゃあ、どうやって僕がそのクエストの達成者に成りうるだなんて解ったんですか?」
「それは簡単。君の名前がクエストの達成欄にはあるんだ。こっちの本体にはね。もしかしたら彼女桜矢摂理を見つけた者にその資格があるのかもね」
なるほど……彼女を見つけた者だけに達成権が与えられるってわけか。でも待てよ。
「あの時僕の他にもう一人プレイヤーがいたんです。そいつはどうなるんですか?」
確かに僕はアギトと共にセツリを見つけた。
「発見……だけじゃ無い他にキーがあったんじゃないのかい? 何か彼女にしたとか?」
その時僕の脳裏にあの感触が蘇る。柔らかいセツリの唇の感触。まさか……あれで?
「ええと……キスを」
「なんと! 眠っている少女の唇を奪ったのかい? やるね君」
「事故です。事故! そんな……やるんならちゃんと許可取ってやりますよ!」
なんだか訳解らないこと言ってる気がする。
「そういえばその後僕の時間をかけたキャラクターが自分自身になったんですけどアレはなんですか?」
「それは解らないな。強いて仮説を立てるなら……彼女にとって君だけは真実でいて欲しかった? とか」
なんだそれ? 自身が作ったキャラを被る事は嘘って事か?
すると山田さんが口を開く。
「実を言うとね、今あの仮想現実空間は一人歩きをしている状態なんだ。いいや、誰かの意志によって動かされていると言った方がいいのかな?」
「誰かの意志? それが桜矢当夜の意志って事ですか? でもあの人は……」
あの人は病院のベットの上だ。そんなこと……
「そうだけど予めそういう仕掛けをしていたのかも知れない。それにあの空間は世界最高峰のコンピューターで形作られている。それを作ったのが彼なのだから彼の意志と言っても変わらないだろう」
確かにそうかも知れない。僕も最初セツリからお兄さんの事を聞いたときあの空間はそもそも彼女の為に作られた様な気がした。
「ん? じゃあ僕がログイン出来なかったのも当夜さんの意志ですか? でも当夜さんは妹であるセツリさんを助けたい筈ですよね? 達成条件も彼女をリアルに帰還させる事だったし……それなら矛盾しますよ」
確かにその通りなんだ。クリア出来るのが僕だけなら出さない様にするならまだしも出してしまっては意味がない。だけどその謎は簡単だった。
「それは僕達がやったんだよ。君がゲーム内で死亡して街に転送される間に割り込みを掛けて強制的にログアウトさせた」
そういったのはゲーム会社の人たちだ。
「なんでそこまで? 確実に今日来て欲しかったからって入れ無くすること無いでしょう。 ゲーム内でもメールしてくれれば来ますよ」
だけど何故かここに来て周りの大人達の顔が変わった。なんだか言いにくそうに。そして対面の怖い印象のおじさんが口を開いた。
「実はそうも行かなかった。君は昨日ログアウトして何か違和感を感じなかったかい?」
「ん~別にそれとは……ただ疲れがフィードバックしてる気はしました。少しだけだるかったし直ぐに寝ちゃう程に。だけどLROはそういう事が有るって聞いてましたけど」
僕の言葉にまた少しだけ声のトーンを落として対面の人は言った。
「今はまだそれくらいか……今から言うことを落ち着いて聞いてくれ」
「え? はあ」
なんだ妙に真剣な面もちに緊張が増すぞ。
「このままログインを繰り返したり向こうでの活動を続けて行くと君は……こちらに戻れなくなるかも知れない」
「は!!」
なんて言った今? 戻れなくなる? それってつまりセツリと同じようにログアウト出来なくなってこっちでは意識不明って事か?
「あくまで可能性の話だが、君の向こうへの意識浸透率は異常な程に高い。限界値を越えればシステムで引っ張り戻せなく成るかも知れない」
「その限界値って幾らなんですか?」
「三百五十~四百だ。これは桜矢摂理のデータを元にしている。そして今の君が百を越えた辺り。普通は八十位で落ち着いている筈なんだがね」
まず彼らが嘘を付いていると疑った。だけどそんな理由なんて見当たらない。仮想空間から戻れなくなるかも知れない? そんなのリスク高すぎだろ! そもそもゲームなんて命懸けてやるものじゃない。
信じられないそんな事って……この人達はそれを伝えて僕にもうゲームに入るなって事を言いたいのか。
「どうしたい? 君はこのまま入り続けたら意識浸透率は上昇していきいずれ意識と体は引き破がされるかも知れない。その原因はきっと彼女だろう。
彼女を見捨てて、もうログインしなければそんなことも起こり得ない。ただその時は彼女はずっとあの世界の中ということに成るが……いや、一定時間が経てば他のプレイヤーにクエスト達成の権利が移るのかも知れない。それは解らないが決めるのは君だ」
重い声が会議室に響いた。なんでこいつらは意地でも止めさせないんだ? こんな事になったら普通適当な理由でも付け、謝礼でも払ってゲームを止めさせるのが普通なんじゃないか?
それを理由まで教えてわざわざ忠告まで……て忠告?
決めるのは自分って言うのにも引っかかる。精神が持って行かれるってのは命を亡くすと同義だろ。そんな事態になったら企業ならそんな最悪な事態は避けたいはず。なのに選択の権利まで与えて……。
「貴方達は実はクエストを達成して欲しいんですか?」
今あのゲームは一人歩きしてるといった。それは企業からしたら嫌な事だろう。今はイベントとしてるけどこんな状態が続いてはいずれ運営は出来なくなる。
その損失は痛いのでは? 今LROに登録しているユーザーは何百万だ。それを失うのは大きな損失。
「大人の黒い考えはお見通しか……」
対面の怖い人は言った。意外にあっさりだな。
「君が思っている通りに実はこのクエストはさっさとどうにかしてもらいたい。今のLROは非常に不安定なんだ。このままサービスをし続けるのはパラシュートの代わりにゴミ袋でスカイダイビングしてるような物だよ」
いや、それは今すぐ止めろよ。それ程までにこLRO市場……指してはフルダイブゲームの市場は手放せないってことか。
「僕にこんなに懇切丁寧に状況を教えてくれたのは最悪の事態……つまり僕が危険を冒してまでゲーム内に戻りそして戻ってこれなくなったときの保険。言い訳作りって事ですか? 自分達は危険を教えていたってね」
山田さん達は苦い顔をする。
「その通りだ。あっぱれだねスオウ君」
拍手が何故か巻き起こる。なんだそれ、おかしいだろ。
「見透かされたのなら仕方ないよ。これでLROは終わりだろうけど……それも仕方ない。たった一日前に出会った少女の為に命を懸ける理由なんて君にはないだろう?」
たった一日前……確かにそうだ。だけどなんだかそんな気しないな。命を懸ける理由か……確かにそんなものないかも知れない。
だけど心がなんだか痛い……誰も居なくなった世界でセツリはどうなるんだろう。僕は立ち上がり目の前の大人達に向かって言った。
「確かめたい事があるんだ。それから決めたい。だからもう一度ログインさせてください!」
全てはそれから……後一回のログインで僕は何かに確信を持ちたかった。
結果的に僕の要求は通った。一回位なら大丈夫だと判断してくれた。その変わり体調管理とかを徹底する事を条件に。やっぱり最悪の事態は避けたいらしい。血液検査とか色々やった。
そして彼らが侵入させていた僅かなシステムでアギト達の位置を特定してもらいその場所に復帰させて貰えることもした。ズルだけどこの位仕方ないよね。もしかしたら命懸けるかも知れないんだから。
僕は会社のハードを使ってログインする事になった。家に帰る時間がもったいないし、何か起きたときの為だ。
僕は手の中のハードを見つめる。あんな話を聞いた後じゃ今までの様に気楽に頭に着けるなんて出来なかった。だけど大きく深呼吸をしてハードをはめてリクライニングみたいなイスに腰掛ける。特性で座り心地抜群だ。
そして僕は目を閉じて魔法の言葉を紡ぐ。
「ログイン」
「続く」
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