美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 21

 魔族達が次々と化石化した触手へと食いついていく。そしてバリバリと噛み砕いて行くとともに、そこから新鮮な……といって良いのか分からないが、みずみずしい触手がでてきた。まあけどここまで来ると――

「芸がないわね」

 ――そんな事を思ってしまう。きっとアクトパラスとゼンマイはこの世界の……というか私達が要してる世界樹のマナに微妙に適合しづらくなってると思われる。だってそうだろう。自分たちの世界樹を擁立してそれのマナで世界を満たそうと企んでるのだ。それなのに自分たちがこの世界の既存のマナに一番適合してたら示しがつかない。それに新たな世界樹の生み出すマナというのは、きっとよりアクトパラスとゼンマイに適合してるはずだ。

 今のマナだって何が悪いとかはきっと無い。けどそれはどの種にも差がないって事だ。ある程度上位の種になるとってことだけどね。人種とかはそもそもがマナへの適合が低いせいでそもそもが世界のマナが変わったとしてもあんまり関係ないと思われる。けど上位になるとよりマナを蓄えることが出来るし、より多くマナを使う事ができる。

 だからこそ微妙なマナの違いで影響を受ける。それこそ以前に別の星が影響を及ぼした時、一番被害を受けなかったのは人種だ。それは人種が一番マナに依存してないから。けどだからって上位の種がそのマナに飲まれたか……というとそうでもない。一番別の世界のマナの影響を受けて理性ならなんやらをなくしたのは中程度の種たちだ。

 なにせでかいマナを蓄えられる上位種たちは豊富なマナを蓄えてたからどうにかなったけど、中程度のやつらはそれこそ都度マナを取り込んだりする燃費の悪さのせいで、自然とマナを取り込むのだ。そうなると別の星のマナだって取り込むことになる。ちゃんと選別できるほどにマナ操作……魔力操作が得意なら防げたかもしれないが、大体の種は奢ってるからね。それにプライドというのは一番上よりも実は中間みたいな奴らのほうが高かったりこじらせたりするものだ。

 中間だから自分たちよりも下には傲慢な態度を取る。けど自分たちよりも上が居ることもちゃんと分かってて、それがストレスになってるんだろう。なら努力をすればいいじゃないと思うかもしれないが、大体の種は自分たちの生活圏から出ないし、自分たちの周囲しかしらないものだ。そうなると均一化してくるというか、大体同じ強さでとどまるというか……中間の種なんてのは皆で不満を持ってるのに、皆で同じところでとどまるとこを良しとしてる。

「実際、アクトパラスとかゼンマイって、そんなに強い種じゃなかったはずだけど……」

 そこまで名前を聞いた種ではなかった。でも弱くもなかったとは記憶してる。ここまで残って、そして世界樹までも擁立しようとしてるアクトパラスとゼンマイは確実に上位種となってるとは思う。

 奴らに一体何があったのか……なんてのは興味もないが、そこまでこれまでの歴史で目立った種でもどっちもなかったせいで、そこまで情報ってやつがない。そもそもが触手一辺倒なのは、きっとアクトパラス側の力であって、ゼンマイはずっと謎のまま。それがなかなかに不気味だと思ってる。

 けど……

「攻め手を緩める気もないけどね」

 私は黒い槍を作り上げる。魔族達が開けた化石化した触手の穴に叩き込むためだ。ブラックホールでもいいが、あれは全部吸い込むからね。あの化石化した触手が生えてる場所はマナの湧き出る場所だ。それは世界に効率良くマナを満たすために必要だ。だから触手だけをどけるために特大の攻撃で退かそうと……そう思ったわけだ。

「皆、退きなさい!!」

 私はそう言って魔族達が一斉に離れた瞬間に黒い槍を打ち込んで化石化した触手を打ち砕いた。

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