美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

AA 3

「あいつだけは絶対に許さない」

 という感じにラジエルへの憎しみをみなさんが燃やしてる。何せ私を一週間もねむらせたんだ。どうやら皆、私がこのまま目覚めないんじゃないかと、とても怖かったらしい。

 すぐに「心配なんてしてませんでしたよ。貴女なら……」とか同じようなことをみんな言ってたが、なんか怖くなったよね。どうしてだろうか? なんかそんな未来があったような……そんな気がしたんだ。

 だから私には珍しくみんなに誠心誠意誤った。私が頭下げるってそうそうないからね。立場的にもそうだけど、私の性格もある。私はそんなに頭を下げたくない女なのだ。

 まあ相手をちょろまかす時には躊躇なんてしないんけどね。ちょろい奴を操るために頭を下げるなんて簡単だ。それで思い通りに動いてくれるのなら、まあいっかな−−って思うくらいの度量はある。

 私みたいな高貴な美少女が!! なんて言わないよ。そんな勘違いはしてない。

「それで、ラジエルの力は取り込めたんでしょうね。あれだけ眠っててそれさえなかったらただの惰眠よ」

 そんなことを宣うのは魔王であり、人種の国の王であるカタヤの妹であるミリアだ。周囲の空気が一瞬でピリッとなる。みんな私のこと大好きだからね。私のことを侮辱するような発言は許せないんだろう。それは嬉しい。

 けど文句を言う奴はいない。なぜならミリアが魔王だからである。魔王であるミリアは魔族を束ねてる。そして魔族たちとは停戦協定を結んでそして協力関係にある。そのトップのミリアはいわば私と同じ立場であり、同格なのだ。てか魔王という存在が特殊でもある。私は世界樹・クリスタルウッドの巫女でもあるが、なんか本来は魔王らしい。

 そして魔王もクリスタルウッドへの干渉の権限を持ってる。そして能力もなんとなく似てる。私も相手の力を得ることができるが、魔王であるミリアも相手の力を奪うことができる。しかもミリアの方がちょっと汎用性高い。

 私はそれこそ精が必要だ。相手に精を感じさせて出させないといけない。けどミリアはそんな段階を必要としない。それこそ魔王だからだろうか? 暴力的に、無理矢理奪える。似てるけど、微妙に違う。色々と立場的にも似通ってる私たちは対等だからこそ、ここに集まってる人種の国の重鎮やエデンの重鎮たちもミリアには何も言わない。

「惰眠って……ちょっと待ちなさい」

 

 私は自身の中を確認するよ。うーん…… これは……ちょっと予想外のことが起きてるかもしれないぞ。わたしは事実を端的に言うよ。

「何もなくなってる?」

「え? どう言うこと?」

『母の取り込んできた力。それらが破壊されてます』

 そう言ったのは私を母と言って憚らないマナ生命体のメルだった。こいつは窓からその巨体をのぞかせてそんなことを言ってきた。そうなのだ。私がこれまで絶頂を与えて取り込んできた様々な力……それらが全部なんかなくなって……はないけど、なんか破壊されてる。

 やってくれたねラジエル。

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