美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H677

『貴様、落とされかけてるぞ』

「はっ! これが私の力か……」

 まさか自分自身にも自分の力が降りかかるとは……なんか自然と保護欲が出てきたよ。この見た目と、自然と心にすっと入ってくる力があるって強力無比だね。実際私のその力はそんな強力な訳はない。強力な力って言うのは無自覚に相手を洗脳できたり、どんな攻撃も通さなかったり、どんな攻撃も防いだり……そんなのでしょう。

 どうやら神にはそういう理不尽な力があるらしいけどね。

「私の事……消さないで」

 戦っても本体である私には勝てないと悟った私(偽)がしなだれかかってくる。私は自分の保身に限ってはめっちゃ得意だからね。まあ女同士なんだが、私ほどの美少女になると、性別なんてのは関係ない。そもそもが生物が違っても魅了できるのが私だからね。本当なら私には私に対しての耐性があっておかしくないと思う。

 だって目の前に自分がいたらそれこそ警戒心とか、それか羞恥とか芽生えるものじゃん。眼の前の自分にまず真っ先に『カワイイ』ってなかなか思わないと思う。けど私は私(偽)に対して『カワイイ』と想っちゃったんだよね。

「消さないでって……言っても……流石にこのままってわけには……いや待てよ」

 私は有ることを思いついた。

『ねえズラララバライト、こっちの体を斬って再生させても、私の体の機能を持ってるよね?』

『貴様を完全再現にしてるんだからその筈だ』

『再生を繰り返して行くと、劣化していく……とかある?』

『それは有るな』

『やっぱりあるんだ? でも神なら、その回避方法だって有るでしょ?』

 神とは理に縛られたりしない。それを私は理解してるのだ。細胞から再生させる関係上、劣化するのは仕方ない。それが老いとかいう現象だろう。けど私にはそんなの関係ない。ある程度いい女に成長するのは許容するけど、老いは許容しないよ。まあ私が気にしてるのは老いというか、細胞の劣化によって私を再現できなくなることだけどね。

『貴様は、自分を切り分けるのは嫌だから、奴を使おうとそういうことか?』

『わかってるじゃない。それ用なら、まあ彼女をそのままにしててもいいかなって』

『それでも、変化はそのうち起こるぞ。今はあれは貴様でも、やはり貴様ではなくなる』

『魂はいつまでも同じままではいられないって事?』

『変化を阻害する方法はある。まあそれは成長しないようにすることだがな』

『なるほど……』

 ふむ、結局変化したらこの私(仮)を切り貼りして私の眷属を作り出そうとするのはすぐにできなくなるのか……となると、やっぱりこいつをこのままにしてはおけないよね。私は「カワイイ」をこよなく愛してるから、私自身をどうにかするってのはとても心苦しいし、自分を斬って再生させるってよく考えなくてもなかなかに猟奇的だよね。だからしょうがない……

「一旦ね一旦」

「ちょっ!? やめ!!」

 そんな文句が聞こえたが、とりあえず魂を私へと戻したよ。

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