美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H649

「ふう、いつ来てもここはなにもないわね」

 私が自分の空間に彩りを加えてるのとは違って、アクトパラスとゼンマイの空間には何もない。いやそれは語弊があるね。実はある。アクトパラスの空間にはなんかドラゴンの首が飾ってある。それしかないけど……飾ってあるというか、なんか空間に生えてるから悪趣味以外の何物でもない。しかもまだ生きてるし。

 観たくないから何もないって表現してるんだけど、流石に数が多くなってくるとぎゃあぎゃあうるさい。ときどきブレス吐いてくるし。きっとアクトパラス的には戦利品的な感じなんだろう。ドラゴンは神に匹敵するほどに強い。だからそのドラゴンをこれだけ倒したんだというと証。

 自己顕示欲が強いやつである。知ってたけど。

 そんなアクトパラスに対してゼンマイの空間は別段禍々しさはない。なんか所々で白い球体が浮かんでるだけだ。これがなにか……ずっとわからなかったんだが……それがなにか今回判明したよ。

「え? ゼンマイ?」

 なんと中からゼンマイのやつが現れた。すると後ろから更にゼンマイが現れた。

「ふむ、ようやく千体目か」

「千体目?」

「ああ、個人では効率が悪いからな。だといって、私は自分以外を信用などしてない。だから私は私を生み出すことにした」

 なんとまあ……どうやらゼンマイはたくさんいるらしい。全然気付かなかった。

「それって実際に存在してる分体を作ってるんだよね? それだと力が分散されるんじゃないの?」

「なにか問題が有るか?  分散されても、その分多くの質の良い星を作れれば、早くに元の力以上の力を得れる。こっちの方が成長度合いでいうと早い」

「なるほど……」

 一時的に弱体化したとなっても、数が増えればそれだけ一気に星の数を増やすことも出来る。しかも増やしたのはわざわざ意思疎通必要とするような他人ではない。自分自身なのだ。やることなんてわかりきってるんだろう。しかもすでに千体目って言ったよね? アクトパラスとゼンマイを相手にしたらいい……と思ってたけど違うようだね。

 アクトパラス1にゼンマイ1001体を相手にしないといけないらしい。やばくないそれ。ちょっと勝ち筋がみえない。数の暴力って奴がさ……私が圧倒的に強いのなら、それこそ数なんていくら揃えても意味なんてないって出来る。

 けどそうじゃないし。そうだよね。私が成長してるように、コイツラだって成長してるんだよね。それを忘れてはいけない。たしかにドラクの中の聖杯のお陰で私は急激に成長してるが、まだそれを悟られるわけにはいかないし。

 本気でやり合う時は、確実に勝てると思った時にしたい。私はそれくらい慎重派なのだ。

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