美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H516

「愛がたりないのなら、どうするの? アンタを慕ってる人達、全員と寝るの? とんでもない奴ね」

「ねっ!? 寝るなんて……そんな不謹慎な事はしません!! 体ではなく、心で繋がるのです!!」

 そう言って顔を真っ赤にする聖女ちゃん。まあ聖女ちゃん処女だしね。そう言うのに慣れてない。そもそもが愛を語ってるけど、その愛は本当に純潔なのだ。大人のドロドロとした愛なんてものは聖女ちゃんには期待してはいけない。

 でも……

「心なんてそんなの誰にも見えないじゃない。だからこそ、不安になるのよ。アンタは沢山の信者をたぶらかしてお預けしてるだけなの。ひどい奴ね」

「ひどい?」

「ええ、酷いわ。愛を確かめるために皆抱き合ってるんじゃない。それに、そうするから愛の結晶たる子供が生まれるんじゃないの? なに? 聖女様にとっては愛の結晶は不謹慎なの?」

「それは……」

 むむむ、ベルちゃんも意地悪な。聖女ちゃんはそれをやった事で出来る子供を不謹慎なんて思ってはないだろう。それは絶対だ。でもそういう行為を不謹慎と呼ぶのなら、それによってしか出来ない子供だって、不謹慎だよね――とベルちゃんは突いてるのだ。

 流石性格悪い。嫌いじゃないけど……

「そういう事はするのは……本当に愛し合ったもの同士でだけです。そうでないと、いけないのです」

「愛も、見えたりしないわ。それに体の相性とかあるわよ?」

「かかか、体の相性?」

 さらに真っ赤になる聖女ちゃん。そう言う話はきっと聖女ちゃんには入らないようになってるんだろうね。いや、聖女になる前はそう言う話だって聞いたと思うんだけど……それとも誰もが気を遣ってたのだろうか?

「そう、人間が様々なように、相性だって様々よ。でも誰もが、一度はだきたいとか思うのが、私や、アンタのような女なの。皆思ってるわよ。アンタを滅茶苦茶に犯したいって」

「そう……なのですか?」

 そんな言葉に聖女ちゃんが周囲の聖騎士達をみる。すると皆さん慌てて、「そんな事ありません!」やら「その魔女の言葉を真に受けては駄目です」やら「そ、そんなわけ無いじゃないですか」やら、怪しい事を言ってる。いやいや、絶対にあるでしょ。

 聖女ちゃんをベッドの上で滅茶苦茶にしたいって――男ならきっと誰もが思うと思う。でもそれはしょうが無いよ。だって男なんてそんな物である。

「そんな事でどうやって皆を満足させるほどの愛を届けるって言うの? アンタがやってるのは愛という曖昧なもので、誰もを惑わせるのよ。そうやってアンタの愛を巡って世界はきっと焼かれるわ」

「正しい愛が、正しく伝われば、そんな事にはなりません。私わかりました。貴女が言ってる愛と、私が伝えたい愛は違います」

 聖女ちゃんは頭を振ってそう言いきった。きっとベルちゃんに惑わされてるって気づいたんだろう。確かに愛にも色々とある。男女の愛だけじゃないしね。家族愛とか親愛とかそういうのは確かにある。

 けど世界には家族だって殺したり、親しかった誰かが他の誰かにとられたりしたら嫉妬したりするものだけどね。それに聖女ちゃんの愛が本当に世界に広がったら、それはそれで刺激がたりないような気もしないでもない。

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