美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H513

「死を受け入れろと……」

「ただの苦しくて悲しい……後悔しかないであろう死が、聖女様によって希望の死へとなるのです。それが変質された彼らへの唯一の救いではないでしょうか?」

 天使騎士の言ってる事はもっともだと思う。あそこまで人間から逸脱したらね……それこそ体の再構成とかしないと無理だし、流石にそこまでの事を聖女ちゃんが出来るのか……と言われれば疑問だね。

 倒さなくちゃいけない相手……そんな存在になってしまった哀れなイケメン達は確かに気の毒で、同情の余地はある。まあ同情の余地しかないけど……けどだからって大人しくやられるわけにはいかないだろう。

 だって、彼らにとっては聖女ちゃんが一番で彼女が傷つけられるのが一番イヤな事だからだ。それにこの戦いで負けたら、世界がどうなるか……ってのもあるだろう。ベルちゃんって言う不安要素が楽観視をさせないよね。

 確かにベルちゃんなら、これまでの人とモンスターのあり方を変えれるかもしれない。なにせ全てのモンスターはベルちゃんの支配下にあると言っても良い。でもだからこそ……何だって出来る。そして、聖騎士達はそのなんだって出来るように成ったベルちゃんが、こうやって化け物を生み出したのを観てる。そしてそれに対してベルちゃんは何とも思ってなんかない。他人の命の価値……それが聖女ちゃんとベルちゃんでは決定的に違う。

 もしもベルちゃんが世界に君臨したら……一体どうなるのか……平和が訪れるのか、それとも人類にとっての暗黒時代が始まるのか……少なくとも、ベルちゃんでは良い方向に向かわないと聖騎士達は思ってるだろう。

 そしあわよくば聖女ちゃんを担ぎ上げたい――とかいう欲望だってあるだろう。そんな聖騎士達、そして天使へとなった天使騎士にとってはそもそもがベルちゃん何て邪魔だ。どうにかして、納得させてこの救いを天使騎士は聖女ちゃんに受け入れて欲しいみたいだけど……

「駄目です。それは私たちの自己満足じゃないですか。彼は今も願ってます。私たちに助けられる事を。それを見捨てて、何が聖女ですか。私は、全ての人を救って見せます。それが……女神様から託された私の役目です」

 そう言い切る聖女ちゃん。格好良いじゃん。まあ、私はそんな事を託した覚えはみじんもないけどね。ただ更にこの世界が良い方向へと発展すればいいかなって……けど私という女神に見いだされた事によって、彼女自身はとても大きな責任をその肩に背負ったとそう感じてるみたいだ。ごめんね、そんな事はなかったんだよ……と言ってあげたいけど、愚直に頑張る聖女ちゃんも好きだからまあいっか。

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