美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H512

「何て迷惑な攻撃を……」

 そんな事を思ってたけど、光は潰える事はなかったようです。飽和攻撃に晒された天使騎士ですけど、その闇をかき消すような光を発して突撃していきます。そしてイケメンが変質した目玉の化け物の一体を切り裂きます。躊躇いはなかったですね。あれは自分達が連れてきた人のなれの果て……とわかってるのでしょうか? 

 

「駄目です! その人達は!!」

 聖女ちゃんが容赦なく切り裂いた天使騎士に対してそんな叫びを届けます。だよね。聖女ちゃんならそう言うよね。それにそれがわかってるから、聖騎士達だって奴等に手を焼いてたわけだし……けど天使騎士はそんな容赦はみじんも感じられなかった。

 実際、ああなったらまずは倒す事を優先するのが正しいとは思う。私ならそうするね。助けられるならそれが一番だと思うけど、こっちがやられたら一番最悪じゃん。そんな事になったら目も当てられないわけだしね。けど聖女ちゃんはどんなに苦しくても、まだ助けれる可能性が一パーセントでもあるのならそれを選んじゃう子だ。

 それでこそ聖女ちゃんなんだけど……付き合わされる側は大変だよね。まあそれを大変なんて……付き合ってる奴らは思ってないんだけど!! 信仰極まってるからね。でもその信仰極まってそうなのの筆頭が今や天使騎士だと思うんだけど……あいつだって聖女ちゃんがそういう子――というのはわかってるはずで、わかってないはずがない。

 けど殺した……いやもしかして殺してないのかな?

「聖女様、救いを」

 そう言って天使騎士は何かを聖女ちゃんへと投げた。まあ投げたというか、手を出したら、揺らめく何かが聖女ちゃんの方へと飛んでいく。なにあれ? いや、あれは……魂か? まさか魂をこの目で見るとは。いや、世界樹の中で観た事あるけど……あんな風じゃなかったみたいな?

 だって世界樹でまっさらにされたらただのマナになるわけだし、死んだ直後はまだ死んだ直後の姿を魂が覚えてるからね。けどあれはマナになってるわけでも、そういっても生前の姿な訳でもない。

 宝石のような光が中心にあって、その周囲に二つの輪が流れるように回ってる。なんか机に置いときたいオブジェ的な物に見えなくもない。あれが一つあるだけでおしゃれに見えるアイテムのような……

「これは……」

「彼らを邪悪から救うにはこれしかありませんでした。聖女様が浄化してくだされば、彼も死を経て世界へと変える事が出来るでしょう。それこそが我々に出来る救いです」

 なるほど……確かにそれは救い――なのかもしれない。だってあの目玉の化け物のままだと、変質させられても死んだわけじゃない。寧ろ生きたまま、意に沿わない事をさせられてるのと一緒だ。いや、勿論いやいやと思わないように、そこら辺の思考も洗脳してるんだろうが、そんな事をしたらいずれは魂から腐っていく。

 理想的には、元の姿に戻してこれまでの人生を歩ませるのがベストなんだろうけど、ああも変質してるとね……それは確かに難しい気がする。だから魂の解放という……それをあの天使騎士は救いと判断したんだろう。

 たしかに聖女ちゃんに浄化されれば、再び彼らは世界の輪廻に戻れるだろう。今回の生は終わっても、世界樹でマナに帰って再びこの世界で新たな生を得る事が出来る。けどそれで、聖女ちゃんは納得するだろうか?

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