美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H504

「おまえ達、仲間を攻撃してどうする!!」

 そう聖騎士の一人が叫ぶけど……沼から出てきたその人はもう輝きを失ってる。生きては居るけど……正気は保ってない。聖なる光で光ってたその鎧も今や泥で汚れてるからね。沼から出てきたから当たり前と言えば当たり前だけど。

「無駄よ。その子達はもう、私のものになったの」
「彼らの意思を奪ったのか……」
「違うわよ。あの子達が、私の方がそっちの女よりも魅力的だって、気づいただけよ。そして、すぐに貴方たちもそうなるわ」
「ふざけるな! そんなことがあり得るわけがない。我らの魂は聖女様に捧げている!!」

 一層光り輝く聖騎士達。皆思いは同じなのか、沼から出てる手をぶった切りながらベルちゃんへと迫ってる。けどそれを黒くなった彼らの元仲間が割り込んで阻む。白い光を宿す剣と、黒い光を宿した剣がぶつかり合ってる。周囲の人達もなんとか援護しようとベルちゃんへと攻撃魔法を放ってるわけだけど、それらをベルちゃんは意に介してない。
 彼女の意識はあくまで聖騎士、そして聖女ちゃんだ。

「ふふ、なかなか取込ませくれないわね。けどその立派な精神でどれだけやれるかしら?」

 そう言って両手を前に出すと、なにやらゴゴゴゴと地面が揺れ出す。まあ彼らが戦ってる場所は沼の上だから、ゴゴゴゴというよりもジャブジャブなのかもしれないけど……いや、なんか沼だけじゃなく、地面そのものが揺れてそうだ。
 何が起きるのか……とか思ってたら、いきなり沼全体が一気に盛り上がった。振動を感じた聖騎士達はなんとか沼の膨張というか爆超を急上昇でかわしたが、ベルちゃんの狙いはどうやらそれではなかったらしい。
 せり上がった沼はベルちゃんをそのてっぺんに残して、周囲に津波のように流れ出す。それに巻き込まれるのは勿論、聖女ちゃん達が引き連れてきた各国の合同軍の人達だ。

「皆さん下がってください!!」

 そういって泥の波を阻むように神々しい紋章が光ってそれが壁となり泥の津波をせき止める。それは勿論聖女ちゃんの力だ。けどどんどんとあふれ出す泥に次第にその壁に亀裂が生じ出す。

「騎士アルセウス! このままでは聖女様が!!」
「奴だ!! 奴を仕留めればこの術も発動を止めるはずだ!!」

 そういって騎士アルセウスと呼ばれた人がベルちゃんを狙う。けどそれをあざ笑う様にベルちゃんは告げるよ。

「無駄よ。私を仕留めたとしてもこの泥は止まらないわ。寧ろ今私を支えてるものまで堕ちることになるわよ。まあ、どっちみち……泥にまみれるあいつを観るつもりだけどね」
「きっさまああああああああああ!!」

 騎士アルセウスのペガサスがその翼をはためかせて輝く羽を舞わせてる。それはとても綺麗だけど、更に泥を出しまくった瞬間、聖女ちゃんの守りが破られる。それを観た騎士達が一斉に聖女ちゃんへと向いた。
 彼らはなんとか聖女ちゃんを泥から護った。けど……泥を防いでいた聖女ちゃんの壁がなくなったことで、地上に居た合同軍の人達が泥の津波にのみ込まれる。そして彼らは泥から湧き上がり、ベルちゃんの戦力となって聖女ちゃんと聖騎士達に襲いかかる。

 戦力の逆転現象が起きてしまったよ。

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