美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H498

「やめてください! 私たちが争っては駄目です! この沼を浄化できれば、世界に平和が戻ります! そうなれば皆が幸せになれるんです!!」

 聖女ちゃんはそういってなんとかベルちゃんを説得しようと試みる。けど、その言葉がベルちゃんに届くことは……きっとないね。なにせベルちゃんはそんなのどうでも良いからだ。聖女ちゃんはその言葉通りに聖女である。その心は他の人達に向いてる。けど……ベルちゃんは違う。確かに彼女は女王様だ。ベルベファーゼの女王様……だった。今やもうその地位は意味が無いのかもしれない。彼女は存在を大きく変えた。
 ベルちゃん的にはただ力が付いたって思ってるだけかもしれない。ちょっと見た目変わったけど、より美しくなったしまあいっか……的なさ。けど、あの黒い人の考えとかだって入ってきてると思う。そしてその欲望が表に出やすくなってるとか……さ。

 さてさて、どっちが勝つのかな? 私は手を出す気はない。

「そんなの私は幸せじゃないわよ。ここで全てをなしえたら、あんたも賞賛されるじゃない。いえ、私を救出しに来て、沼まで消してそのまま私と共に戻ったら私はどう皆に写るのかしら? 愚かな女王様じゃない?」
「そんな……皆……べルべファーぜの民達は貴女の帰還を嬉しく思うはずです!」
「それだけ?」

 それだけ……ときたか。そして聖女ちゃんはそんなベルちゃんの言葉を受けて「それ……だけ?」
と疑問形になってる。わかんないんだろう。ベルちゃんの言ってる意味が。なにせ聖女ちゃんはマジでそういう賞賛とか賛美とか必要としてないからね。ただ誰かの為に……という無償の愛をこの子は体現してる。
 それはとても立派なことだ。誰しもに出来ることじゃない。そう、誰しもに出来ることではない。普通は良いことしたら褒められたいし、頑張っても褒められたいし、悪さしても怒られたくはない……そう言うものだ。それが普通の人だろう。
 けど……聖女ちゃんも昔はそんな気持ちがあったと思うが、今はよく分かってない。そしてベルちゃんはそれがより顕著になってる様な気がする。だから二人は相容れない。そんな折、聖女ちゃんが連れてきた聖騎士の一人が進言する。

「聖女様、あれはもう人ではありません。あの力はモンスターの物です。れも禍々しい。分かっておられるでしょう。あれを人の国に連れて行くなど、出来ません」
「駄目です。彼女はちゃんと話せています。モンスターなんかじゃない。彼女は今も人です!」
「聖女様……」

 なんか感動してるね。聖女ちゃんは絶対にベルちゃんを見捨てなさそうだけど……どうするのか……はっきり言って聖女ちゃんの力をそのままぶつけたらベルちゃんも消えそうだしね。それを多分聖女ちゃんは感じてる。だからこそ防御しかしてないんだと思うし……自分の死を願う言葉が通じる相手で、その憎悪は決して消えないとなったら……聖女ちゃんはどうするのかな? お手並み拝見だね。

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