美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H497

「そんなこと……そう……ね。貴女にとっては……そんなことでしょうね。だって……貴女は皆に誰しもに愛されて、神にまで愛された初めての女性ですものね」
「どうして今……そんなことを?」

 むむむ……どうやら聖女ちゃんは純粋なせいで嫉妬という物がわかんないみたいな? いや、でも聖女ちゃんだって最初から聖女だったわけじゃない。最初はただの一兵士だったわけで、しかも女性で……そこにはきっと女性ならでは苦労があったんではないだろうか? いや、この世界は「可愛いは正義」という理念というか概念がすり込まれてるから、男尊女卑ではない。寧ろ女尊男卑の節がある。
 でも戦うのは一般的に男性が主……と言うのは変わってないというか、寧ろ自然とそうなってる。男は可愛い女性達にアピールする為に必死に自分をよく見せなければならないのだ。女は可愛ければ何もしなくても男が寄ってくるからね。そして持ち上げる。可愛くない女性にはじゃあどうなのか……顔面偏差値ってどうしても出来るからね。皆が美女ではそのなかで優劣は付きにくくなる。でもどうやらこの世界の男性の可愛いと美女の基準は広いらしい。いろんな可愛い……を私が推進したからと言うか、そういう思いがあったからだと思うけど、この世界の男性は心が広いのだ。だから結構どんな顔でも一定以上は女――と言うだけでチヤホヤはされてる。
 だからこそ、女に生まれれば人生イージーモードに近くはあるね。男だと大変だけど、男にはある意味顔とか求めてないみたいだ。勿論可愛い顔格好いい顔はある。でも男に求められるのは稼ぎというか、女をどれだけ飾られるか……みたいになってる。

 そんな世界でわざわざ危険な職業に就いてた聖女ちゃん。それはそれは変な目とかで観られてたんではないだろうか? そうなると心にもやっとした物や鬱憤とかさ……貯まってくると思うんだけど、その記憶はどっかに置き忘れてきたのかな? いやもしかして……

「私のせいかな?」

 なにせ彼女に力を授けたとき、その強大な力を納める為にちょっとだけ……そうちょっとだけその体を弄ったし……もしかしたらその時に意図的に聖女なら清純で潔白に違いない! とか言う考えが、彼女のそういう気持ちを省いてしまったのかも? 魂における心の比重は大きい。
 変に嫉妬とか憎悪とかされると神聖な力を納めるのに面倒だった……かもしれない。

「ははははははは! 私はね、女王なのよ! 一介の聖女よりも偉いはずの女王! なのに! なのに! 誰も彼もアンタのことを聖女様聖女様って!! ねえ……あんた目障りなのよ」

 そう言ってベルちゃんは手を向けて黒い炎を放った。放ったそれを聖女ちゃんは光の壁で受け止める。

「目障り……私は貴方よりも偉いなんて思ってません!」
「そういうところが勘に障るのよ」

 うん……この二人のぶつかりはちょっとは……ほんのちょっとは私にも責任があるかもしれない。聖女ちゃんの良い子ちゃんムーブがね……ベルにはたまらなくイラつくんだよ。それを理解してやって!!

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