美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H490

 女王様はそのままモンスター大陸に住み着くことになった。というか、黒い人が彼女を放すことがなかったからだ。本当なら女王様はなんとか黒い人を説得して人間大陸の自分の国に帰りたいみたいだった。けど、それは叶わなかった。いや、まだわかんないけどね。ずっと黒い人間が女王様を包んでる。背中側から包み込むようにしてね。まあそれだけで、別に何かをすることはない。けど、ずっとその状態だ。そしてずっと――

『もう絶対に放さない。怖い思いをさせない……』

 ――と呟いてる。四六時中そんなことを言われ続けてる女王様はよく平気だね。私なら精神おかしくなりそうだよ。一応食料とかはなんか黒い人が魔法で生み出してた。てもわたし、その種が分かったよ。魔法で食料って……幻覚ならともかく、ちゃんとした食事をそのまま生み出すって、実はとっても大変だ。それこそ神クラスでないとゼロからそんなものは生み出せない。
 私は時々ゼンマイにねだって色々と出して貰ってるから分かる。まあゼンマイの奴自体は食事にあんまり思い入れがないから、最初は糞不味い料理しか出せなかったけどね。それこそオイルのような味のオムライスとかハンバーグとかね。ゼンマイの奴はそもそもか食事の必要とかないから、仕方ない。元々が生物としてマナと親和性高い奴等は、食事を必要としない奴等が多い。
 マナだけを取込んでおけば良いからだ。そんなわけで私の記憶を詳細に提供して見た目だけでなく、味までも再現して貰った奴を最近は食べてる。まあ私も今やマナだけでもきっと生きていけると思う。でもずっと食事という行為をしないと、なんとなくお腹が空いたな――って思うんだ。実際私が作った世界の人々は私が過ごしたあの世界の人種よりもマナへの親和性は高いと思う。けど、食事は必要なようにした。なんかそうした方が文化的に良さそうじゃん。

 確かに生物的には食事なんてせずに、マナだけ取込むだけで生きていけるのならそっちの方が優秀なのかも知れない。でも私的にはメシマズな世界なんてイヤだったのだ。だから食事は必要という制限は設けた。まだまだ発展途上だけど、その内料理だってきっと成熟していくだろう。そうなったらお忍びで下界に降りて食事巡りをするのだ。
 そういう思惑がある。

 まあつまり何を言いたいかというと、女王様には食事が必要で、そのために黒い人間が魔法で食事を生み出してたけど、どうやらそれは食事そのものを生み出してたわけじゃなく、人間大陸のほうでモンスターが襲ったときに丁度あった食事を転移? させてるみたいだ。どうやら黒い人間は全てのモンスターと繋がってるらしい。
 何回か食事を行うことで、女王様もそれに気づいたらしい。まあ実際、食事をくれるが、その食事は彼女が今まで食べてきたような豪華な物じゃない。それに毎回、違うというか……食べ掛けだったりカビがついてたりしてたから、生ものっぽかったのだ。いや生ものなのは当然だけど、魔法で生み出してるのなら、新品じゃん。どうみても中古的なそれをみて、彼女は黒い人間に甘える声を出した。

「もしかして、人間大陸と繋がってますの?」

 それに頷く黒い人間。すると女王様はより黒い人間に身を預けるようにして甘い声を出す。

「あの……向こうの様子を……観ることは出来ますか?」

 精一杯の可愛いを駆使する女王様。その精一杯ぷり嫌いじゃないよ。

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