美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H489

 女王様達が世界最大の沼に到達すると、そこには黒い沼に佇む人がいた。不気味すぎるそれにすぐに警戒して聖騎士達が浄化を試みる。けど……一瞬だった。女王様が意気揚々と浄化しようと命令した瞬間に、全員肉塊に変わってた。

「あれはまずいね」

 怨念の塊というか……何かそんな物だねあれは。そもそもが人々の悲劇と絶望で出来てる沼である。それらドロドロとした物がより中心で凝り固まって、あれは生まれたようだ。なんの変化も沼にはない? いや、ちゃんと沼も危機を理解して変化しようとしてたらしい。
 希望なんて糞食らえだと……そう思って奮起したらしい。やるじゃん。まさか意志的な物があるとは……まあでも成り立ちを考えればあり得たかな? 妹大好きな奴が復習に燃えて生み出した物だしね。その意思の残留思念とかあるのかも? てか聖騎士を殺して女王様を殺さなかったのは何でなのか?

「あ……あぁ……」

 自分だけ残った女王様はその場にへたり込む。そこに近づいてくる黒い物。ジュワーと何か暖かい物が下半身に広がったようだ。みっともない……とは私は思わないよ。女王様も女王様いってるが若くて可愛い子ではある。まあちょっときつめの表情してるけどね。やっぱり女王に担がれるだけあって可愛いのだ。
 だからまあ、失禁も可愛い子なら許されるよね! もちろん当の本人はそんなことを考えられる余裕はなさそうだけど。ガチガチと歯が鳴ってる。恐怖でそうなってるらしい。顔を近づけて、その真っ暗な顔面が女王様の視界いっぱいにひろがる。

「わわわ、私は……ベル……ベルベ……ベルベファ――」
『べ……ル……』

 なんと黒い人間が反応した。何が引っかかったかわかんないけど、それをよしとして女王様は頷く。声は出ないけど、彼女的に自分の地位が理解できたと思ったのだろう。でもモンスターには地位なんて物は何の意味も無いというか……そう言うのは気づかないのだろうか? いやテンパってるんだとは思うけど……そんなことを思ってると、予想外の行動に黒い人は出る。なんか頭をポンポンしてる。女王様のね。

『ベル……ベル……」

 なんかそう言うって抱きしめてもいる。なんかめっちゃ気に入られたようだ。てか……ベルって呟いてるし名前と勘違いしてない? 多分女王様は『ベルベファーゼの女王』とか言いたかったんだと思う。ベルベファーゼというのは彼女の国だ。だからベルが彼女の名前じゃない。けど……なんかめっちゃ黒い人間がそれを連呼してるから、違うなんて言えないんだろう。それにそんなことをいったらここで殺されるかも知れない。
 だから女王様は決意した。

「ええ、私がベルですわ」

 そうして抱き返したのだ。いや、ここでそれを出来るってのはなかなかの胆力だよ。女王様、小物だと思ってたけど、見直したよ。

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