美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H458

 黒い物体は銀河を飲み込むほどのエネルギーがある。これを私がどうにかなんて……実質無理なんだよね。なんか伸びてくる黒い……手なのか? それをさっきからさっさと避けてるんだけど……これに触れたら私も食べられるかもしれない。
 でもあんまり邪悪な感じはしない。でもそういう邪悪さって、それ自体に感情があるから乗る物じゃないかな? つまりはこの黒い物体はそういう善悪がないから、全然邪悪さを感じない……とも言える。そもそもこれに感情的な物があるのかって気がするからね。
 こいつにあるのは多分だけど食欲だけだと思う。食べたいというね。別に私を欲してたべたいのであればまあいいよ。私のこの可愛さ、綺麗さを求めてるんなら、気持ちいいことをしてあげなくもない。けどそうじゃい。この銀河を食い尽くした奴は、私の事も食料としか見てないだろう。それは違う。私の求めてる事と違うのだ。なので捕まって食われるわけには行かないのだ。

「ちょっとどうしたらいいのこれ?」

 なんか私がつかめないとなると、他の銀河に手を出し始めたよ? バリバリ食ってますけど……このままもう一つ分の銀河のエネルギーを取込まれたら更に凶暴になるんでは?」

「不完全なドラゴンの幼体がどのようになるのか……その進化の先は分からないから興味はある。だが不完全なドラゴンは宇宙を崩壊に導く存在とも言われてるからな。このままでせっかく成長しつつある銀河まで食われるかもしれない」
「アンタならプチッと潰すくらい出来るでしょ?」
「やってもいいのか?」

 出来るんだ。いや、確実に出来るとは思ってたよ。なにせゼンマイだって神だろう。複数のドラゴン相手に立ち回ってるアクトパラスと同等の力はあるはずだ。確かにこのドラゴンのなれの果ては銀河のエネルギーを要してるだろうが、それもアクトパラスとゼンマイ――そして私!――の力の産物でしかない。なら押さえつけることが出来るのは普通のことだと思う。私には出来ないけど……けどここで私の意思を確認するなんて、ゼンマイは律儀なやつである。私が産みだしたから、それを問うてるのかな? けどもうこいつ、私的にはどうしようもないっていうか? 確かにドラゴンのなれの果てと言ってもそのエネルギーは銀河クラス。手懐けることが出来たら心強くはある。
 でも普通は生物って力で主従を決めるものではないだろうか? 自分よりも弱い奴に単純な奴ほど従わないと思うんだ。ぞれで言ったら私には全く芽がない。なにせ今の私は弱々だからだ。まあ宇宙基準で見たら、前の私も強かったのかどうか……今よりは断然マシだったと思うけどね。

「うーん、やっちゃって」
「わかった」

 そう言ってゼンマイが手を向ける。カタカタと機械仕掛けの手が発射されて、黒いそれを掴む。掴めたんだそれ。ケーブルで繋がってるゼンマイの手はそれをギリギリと締め付けてる。苦しいのだろうか? でも形があるように見えないのに捕まれて握りつぶされそうになってるってどういうことだろうか? 宇宙は不思議でいっぱいだ。

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