美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H392

 予想外のアクトパラスの足の襲撃があって数日。まだまだ皆の胸には恐怖ってやつがあるのか、エデンの地下にはどんよりとした空気みたいなのが立ちこめてた。

 そんな中、私は一室で声を張り上げている。

「シズちゃん! もっと大きく! 手足の先まで意識を集中しないと駄目だよ!」
「はい!」
「オオランちゃんはちょっとテンポが速いね! もっとシズちゃんにあわせて!」
「わかった!」

 室内には音楽が流れてる。それはアップテンポでテンションが高揚するような音楽だ。その音楽に合わせて、シズちゃんとオオランちゃんは踊ってる。本当ならあと三人くらい加えて、アイドルユニットをやりたかったんだけど……参加してくれたのは結局この二人だけだった。まあこの二人が飛び抜けて可愛いから良いんだけどね。

 本当なら私も中央に入って良いかな? とか思ったんだけど、二人の中に私が入ると、バランスがね。二人はまだ十歳くらいだからね。私とも身長差が大きい。
 だから二人だけのユニットとしてる。

「ラーゼ様……私たち上達してるかな?」

 休憩時間にそんなことをシズちゃんが言ってきた。更にオオランちゃんも……

「こんなこと……してていいのかな?」

 ってといってきた。こんなこと……か。確かに今は大変なときだ。アクトパラスの足がこの数千年間不可侵だった地下世界まで脚を伸ばそうとしてきたんだもんね。なんとか追い払ったが、世界全ては敵の物だからね。
 そもそも今までが何で見逃されてたのか……そっちの方が不思議なくらいだよ。アクトパラスとゼンマイの魔の手がついに伸びようとしてる。その事実に、この地下の人々の中には不安と恐怖が蔓延してると言っても過言じゃない。
 一応皆さんそれを出さないように振る舞っては居る。けど、やっぱりそれは空気として出てる気はするよね。ちょっとした物音でも異様に反応したりする人いるし。

 まだ数日だからね。これが数ヶ月くらい経てば、また今まで通り……ってなると思う。まあでも実際、本当に本格的にアクトパラスとゼンマイがここを滅ぼそうと考えてるのなら、あれだけで終わるわけもないんだよね。
 でもそんな物に怯えてても人生楽しめないのだ。だからこそ、気持ちを切り替えるために、私はシズちゃんとオオランちゃんのライブを画策したのだ。

 可愛い子が歌って踊ってる――それだけで人々は勇気づけられる物だよ。だから私は二人に言ってあげるよ。

「大丈夫、二人ともとっても可愛いよ」

 ってね。

「美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く