美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H360

「それって特別なの? てか、皆そんな服な訳? ファッションは?」
「は?」

 何かめっちゃにらまれた。キララとカタヤの孫ちゃんもシシとコランの孫ちゃんも同じようなスーツになってる。体にぴったりくっついた黒い服で、肩や膝とか腰とかには防御のためなのか、硬質な物体がある。足下も薄いけどちゃんと保護するようなのがある。
 このスーツだけで完結出来るようになってるみたい。ファッションよりも実用性を重視してるね。

「ファッションなんてそんな概念無いわよ。これが一番効率良いの。一度脱げばまた元に戻るときには汚れも一緒に落ちてるし、負傷した部位だって復元してるんだから」
「それは凄い」

 何その高性能なの。私が起きてたときにそんな高性能なスーツがあるのなら、軍には採用してたよ。流石に皆にこの格好はさせないけど、軍の標準装備にするには良いと思う。てか多分だけど、その感覚だよね。

「すごい……ふわふわ」
「ん?」
「綺麗」
「ありがとう」

 私はシシとコランの孫ちゃん達ににっこりと微笑んであげる。てかこの服は普通にあったけど……

「この服、ここの入り口くらいで見つけたけど? ファッションってないんじゃなかったの? この服ファッションセンス高いよ?」
「それは展示されてたものでしょ。昔の資料的なものよ。そんなの着る奴は私の時代には居なかった」
「結構機能的だと思うけど」

 確かにこの服はとてもふわふわだ。三人のぴっちりとした服と比べたら、機能性なんて皆無に見えるかもしれない。でも特別な繊維で作られてるのはわかる。多分これは私の力を通したらその本領を発揮するだろう。

「私の時代にはそういう服はもう生産出来なかったから、きっと過去の技術を詰め込んでるんでしょうね」
「あれ? でもあなた、えーと――」

 たしか名前もちゃんと情報のところで見たんだけどね。

「私は『ラリア』よ」
「そうそうラリアって偉いんでしょ? ならこう言うの、着れなかったの?」

 最後の女王とかじゃないの? ならこういう服着ててもおかしくないと思うけど? 

「そんなの着られる訳ないじゃない」
「なんで?」
「……そんな余裕なんてない。それにそういうのは古いのよ」
「古い……」

 なんかちょっとカルチャーショックだよ。古いんだこれ……まあ確かに流行って奴は時代によって移り変わっていく物だけど……

「これ、変だと思う?」

 私はそう言って一回転してみる。くるっとふわっと髪とスカートが流れる。
 それを見た二人、シシとコランの孫ちゃん達はぶんぶんと音が鳴りそうくらいに首を横に振っている。

「全然変じゃないって。てか可愛いよね?」

 今度はぶんぶんと音が鳴りそうなくらいに高速で首を縦に振ってくれる。大丈夫? 首痛めない? 

「ふふーん、本当はラリアだって着たいんでしょ?」
「別に……それよりも……よ。これからどうするつもりなの?」
「これからって?」
「これからはこれからよ! あんたがようやく目を覚ましたのであれば……そう、私たちの反撃の開始よ!!」

 そういうラリアの奴は何か悪役みたいな声の笑い方をしててちょっと引いた。

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