美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H336

(ラーゼ一人ならなんとかなった……だが)

 やはり最初の数合で潰し切れなかったのが痛かった。俺の王の剣ならそれが出来たはずだ。だが仲間が来て余裕が出来たラーゼは今や優雅にお茶を楽しんでる。俺たちの戦いはただの舞台か何かのようにとらえてるらしい。
 本当に腹立たしい。人をおちょくることに対しては他のついづいを許さない奴だ。だが油断してるというのは悪くない。ラーゼの奴はこっちに俺たちが集中してると思ってる。だが……すでに世界樹への毒は打ってる。
 後は俺たちは脱出するだけだ。そのためには、奴の支配から世界樹が離れるのが必要。それまで……せいぜい余裕を見せておくんだな。俺たちは目的を達して奴の手の届く位置から逃げ出せれば勝ちではある。でも……

(ここであいつを打てれば、怪しいアクトパラスとゼンマイに頼る必要もない)

 そう言う打算もある。時間はあまりないだろう。でも……やる価値はある。もしかしたら世界樹を切り離すだけでは足りないかもしれない。でもラーゼをここで討ち取れれば、エデンという核をなくす人種は脱落する。間違いなく……だ。

「よそ見などずいぶんな余裕ですね」

 縦横無尽に飛んでくる鞭。さらにはちょこまかと動き回る様々な動物の形をした小さな機械達。さらにはその体のどこにでも武装を仕込み、種の特性までも発揮してくる機械までも――

「くっ!」

 俺は王の剣を振りかぶり切り裂こうとする。獣人を超えて進化した俺の身体能力は上位種にも引けを取らない物になってる。なので機械が認識して思考して行動する……そんな物では間に合うはずもない。だが……

「煩わしい奴らだ!!」

 どういうことだ? 見えるはずもない攻撃を奴らは避けている。しかも俺の攻撃だけじゃない。俺たちの攻撃をことごとく避けて、防いでいる。

(俺たちよりも連携が出来てる?)

 そうとしか思えないし、そしてそれだけじゃない。奴らはまるで全て繋がってるかのように動いてる。背後からの不意打ちだって、まるで見えてるかのように避けるし、奴らの攻撃は此方の行動を先読みしたかのような感じで先にある。

 だからこっちの攻撃は当たらないのに、向こうの攻撃は防ぐ必要が出てくる。そのせいでさらに一手遅れてしまう。防ぐという行動に一手が取られるからだ。そして数は向こうが多い。悔しいが、ラーゼの奴のお茶を邪魔することすら俺たちには難しい。

(欲はかかない方が良いか)

 俺は自分自身にそう言い聞かせた。

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