美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H325

「邪魔だね、これ」

 私はそう言って空でサングラスを外した。この状態なら素早く移動できるしね。地上に降りなければバレないだろう。
 まあけど一階に行かせた黒ウサギのぬいぐるみは回収しないとね。そう思ってるとピョコピョコとタワーの外壁を登ってくるかわいらしい姿が見えた。

「うむうむいい判断してるね。AIも進化してるじゃん」

 自分で判断してここまで来てくれたから飛び込んできた黒ウサギをなでなでとしてあげる。そんな私の行動に頭をこすりつけることで愛情表現をしてくる黒ウサギのヌイグルミ。愛い奴である。

「さあ、クリスタルウッドまで一気にいくよ!」

 私は自分の足にくっついたウサギみたいなもふもふに意識を集中する。自分の力をわずかにわずかに流してあげる。いや、これは私専用にチューニングしてあるってネジマキ博士が言ってたからそこまで繊細になる必要はないんだけどね。
 でも一応ね。この子たちが壊れたら心が痛いじゃん。私の力って規格外だからね。私にとっては微々たる力でも人種にとってはそれはとっても膨大なのだ。それこそ計り知れないほどの力……といっても過言じゃない。
 でもこの子たちはそれこそ私専用に作られてるからそこら辺考慮されてる。でも一応気遣うのは悪いことじゃないだろう。

 私の力を受け取って興奮気味に毛が逆立つ体中の装備たち。地面についた瞬間――というか地面につく前から障害物を検知した足は魔法によって力場を形成して地面につくよりも先に勢いを落として私の体の準備をしてくれる。
 私は別に正式な訓練してるわけでもなければ体だって別に鍛えてない。それでこの完璧なプロポーションなのは反則チックだろうけど、それは私だからね。許してほしい。
 何が言いたいかというと、私にはそんな高所から飛び降りて姿勢制御をする技術なんてのはないってことだ。そういう諸々をちゃん補助してくれるようにこの装備はなってるのだ。このまん丸いお尻の尻尾だって別に意味がないわけじゃない。

 体のサポートは主にこれがやってくれてる。耳はもちろん周囲の索敵だ。ドレスは私の力を受けて防御力をあげてる。元々私は超強い防御力を誇ってるけどね。でもそれを普通の服に適応するのは難しい。
 だから私が戦闘すると攻撃受けて体は無傷でも服はボロボロでそのうち裸になるっていうのがいっぱいあった。

 そりゃあ戦場で私のような女神の裸が拝めたら眼福間違いなしだが、それでは私が困る。だからこのぬいぐるみの服はそういうことがないようになってるのだ。私の力を通せる服というね。

 私はうまく姿勢制御されて膝を曲げさらにもう一度ジャンプする。うん、サポートがあるおかげで私自身も一段階くらい上の肉弾戦ができる気がするぞ。
 やる気ないけどね。でも戦場では何が起きるかわからないからね。特にクリスタルウッドからのアラームなんて初めてだし最悪の状況を想定してないとね。それとエデンにも連絡をしておこう。この状況で外に出てたのがバレるけどしょうがない。プリンだってどうにかしたいしね。
 プリンを確保してくれる人材を要請した方がいいかもしれない。本気でそれを考える。

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