美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H304

「だから早く私をここから出せと言っておる! プリン銘菓のプリンを知らんのか!! 私がいなくなれば、この国の損失ぞよ!!」

 ぞよってなんだよ……とか思ったけど、あのプリン伯爵とかいう貴族……まさかクワイロ印のプリン作ってる貴族か? なるほど……

(むむむ……そうなら殺すのはちょっと惜しいね)

 実はさっき食べたのが何を隠そうそのプリンだった。このタワー内の店舗に彼のテナントが入ってて、そこは連日大人気なのだ。私ならいつでも食べ放題だが、部屋で食うのとこういう所まで出張って食べるのは雰囲気違うじゃん? だから今日は一層おいしく感じたが……まさかあんなアホ貴族の商品だとは……なんかショック。

(ショックだけど……プリンに罪はないからね)

 今日は私は自身の正体を明かさずに食べたけど、私が列に並ぶなんて煩わしい事をする訳はない。今日はちょっとしたコネを使ってVIP待遇を受けたのだ。
 
(でも挨拶に来なかったなアイツ)

 確かに私――ラーゼだと名乗ってはないから、どっかの貴族の令嬢だと思われたのなら仕方ない……とも思うけど、コネとか作ろうとは思わないのかね? 
 貴族ならそこら辺抜け目なさそうなのに……それにじゃあ、何のためにお前はここにいたんだといいたい。だって貴族って事業をしてても、それをちゃんと把握してる奴なんているの? って感じじゃん。部下に任せて……とかじゃないの? 

 儲けた金で遊びほうけてるイメージしかないが……それにあのプリン伯爵だってめっちゃ金目の物ジャラジャラさせてる。遊ぶためにここにきてたようにしか見えないが……

「ん?」

 よく見るとその服装には違和感があるよう? いや、むしろ違和感しかないが……あってないからね。でもただ趣味が悪い……とかじゃない。よく見ると、内側の服と外側の服の豪華さが違う。外側のコートはいかにも成金的なギラギラした奴だが……内側の服はなんか白いよ? アクセサリーをじゃらじゃらとつけて誤魔化してるみたいだけど、あれって……

(料理服では?)

 衛生面とか私がファイラルの領主をやるようになって気を遣うようにいってたからね。今ではその衛生概念は人種全体にいきわたってる。いや、ようやくそれを気にできるほどに人種の暮らしが豊かになったんだろう。
 生きるのにギリギリなら、そんなの気にしてる場合じゃないからね。清潔で文化的な暮らしというのは余裕から生まれるものだ。
 もちろんそんな生活をしてた奴らは今までもいた。それが貴族だ。でもそいつらは他者をこき使う事で実現してた文化的な生活だったわけだけど、今では誰もがそんな生活を享受できるほどにはなってる。

 まあそんなことよりもあの横柄に見えたプリン伯爵だ。靴もよく見たら羽織ったコートには似つかわしくない白いシンプルな奴だ。どうやらコートとあとは宝石類をジャラジャラとして金持ち演出してるだけにみえる……

(いったいなんで?)

 私はそんな疑問が湧いていた。

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