美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H300

「エデンを頼らずに自分たちだけ……人種だけでこの問題を対処するの?」
「キララ様恐れることはありません。我ら人種はすでに赤子ではありませぬぞ」

 髭を蓄えた老齢の軍幹部の人がそう言ってくる。普段はなかなかにカタヤ様とかベール様とかの影に隠れてしまうがこの人は人種の中では歴戦の戦士らしい。伝説とかがあるとか聞いた。生身一つで一度他種族を退けたとか……まあ何十年前だよって言いたいけど、この人の目の鋭さは今でも衰えてないのは確かだ。
 なにせ見られると毎回ビクッとなるからね。怖いんだよ。この人老人なのに目力ありすぎなんだよ。だからこの人と対峙したくは無いんだよね。けど人種だけで……しかもアンティカもなしにやるのはきついけど……どれだけ人形がやってくれるかだね。
 ラーゼがいうには、あの人形たちは戦うごとに強くなるとか言ってたけど……でも人形も実際はエデンの技術だ。こいつはそれも気に入らないのかも……

「人形は使うわよ」
「それは構いません。ですが、その後の対処は我らに任せてくださいませ」
「あなたたちにですか? 勝てる見込みがあるんですか? 相手はまだ正体も判明してませんよ?」

 無謀では? 人種は弱い……それはこの人だって……いやこの人だからこそ実感してるはずだ。軍に長年いて、それを実感してないとか無謀だしね。それでこの地位にいるなんてことは考えられない。昔の軍部なら腐敗とかも色々とあったし、それもあり得たと思うが、カタヤ様が王となって沢山改革をしたから、軍部だって生まれ変わってる。それでもこの人はこの地位にいるんだ。前の王に忠誠誓ってたようだけど、なんやかんやあって今ではカタヤ様に忠誠を誓ってる。
 そういう人の意見を聞くのも上の役目なのかもしれない。私はティアラ様とアナハに視線を向けた。ちらっとね。それは心で(いいかな?)と聞いてるのだ。二人とも首を縦に振ってくれる。うむうむ−−二人が納得してくれるなら大丈夫だろう。とりあえずどうするかは聴くけどね。無謀なら……流石にそんなことはないと思うけど……無謀すぎることなら止めなくてはならない。それが上に立つものの役目だ。
 人種は多いと言っても、質はまだまだたりてないのが現状だ。どこかもかしこも実質は人手不足。なにせ近代化が始まったのはここ数年で、それについて行けてる人たちは少ない。いや、他種族に比べたら圧倒的に多いけど、それでもどこも人手不足なのは本当だ。ただ体を動かすだけの人材なら沢山いるが、頭も使って働いてもらうとなると、やっぱりまだまだそれに見合う人たちは少ない。だからこの人はなかなかに貴重だ。
 おじいさんなのに、頭も柔らかいし、経験も豊富だ。それにエデンの強面で化け物な奴等にものおじしないのもポイント高い。大体他の軍人たちはエデンとの訓練とか怖がるから。まあ体とか……というか姿形が全く違ったりするからね。でもこのおじいさんはそうではないから色々とカタヤ様がありがたがってたと思う。

「人形を使ってもらうのなら、その間に看破して見せましょう。それに心配には及びません。我らにはネジマキ博士が作った新装備があります」
「貴方の領地で運用してると言うやつですか?」
「ええ、性能は保証されてます」

 ふむ……このおじいさんは軍部で高い地位にあり、そして貴族でもある。だから領地もある。成り上がり貴族らしいけど、だからこそ柔軟性もあるんだろう。いち早く、私たちの言葉を聞いて色々と受け入れた領の一つだしね。そして彼らの装備に関しても聞いてはいる。ネジマキ博士は最近はアンティカを小型自立運用できる開発に夢中みたいだけど、別のチームがねじまき博士のアイディアを生かして色々と作ってはいるからね。その一つだろう。
 装備にかなり拘ってるとは聞いてるし……やらせてもみてもいいのかもしれない。最悪人形たちと上手く連携すれば、倒せるかもだし。それで倒せればいい。無理ならエデンだ。今はオウラムを攻略するので向こうも忙しいだろうし、協力を要請してもすぐには動けないかもしれない。できることはやっておこう。

「わかりました。お願いします」

 私はそう言っておじいさんの部隊の出撃許可を出した。

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