美少女になったら人生イージーモードだと思ったけど案外そうでもありませんでした。

ファーストなサイコロ

H278

 俺たちは結局、列車の所まで後退を余儀なくされた。前方に展開してた部隊とかも戻ってこれる部隊は戻ってきたが、どうやら連絡をとれなくなった部隊の方が多いらしい。

 本当ならどんどんと押し込んでオウラムを包囲する計画だったらしい。でもオウラムの町には手を出せてないのが現状らしい。いや正確にはオウラムという国の町自体は抑えたらしいが、そこはもぬけの殻だったらしい。周囲の話に耳を傾ける限り、どうやら戦闘できる奴らは森でゲリラ戦をやってて、戦えない奴らは山へと入ってるんじゃないかということだった。どうやらオウラムのすぐ近くにあった山は特別な山らしい。
 既に戦場にはアンティカとかいるんだが、芳しい働きが出来てないらしい。なにせ森の中ではアンティカの機動力は落ちざるえないからな。
山は強力な結界で守られてるらしいから、そちらを突破するのも時間がかかると……なので俺たちのような末端の平な兵士の頑張りが必要になってるみたいだ。

 アンティカが蹂躙して、俺たちは後ろからチクチクとやってればいい……ならよかったんだが、どうやらオウラムがあるこの森の関係でそういうわけにはいかないみたいだ。運が悪いのか……オウラムの戦略なのか……運なんかという言葉で考えを放棄していいようなことじゃきっとないだろう。けど俺が考えることじゃないし、そもそも考えることができるような状態でもない。何せ衝撃だったんだ。目の前で沢山の人が血飛沫を上げて死んでいくその光景が。

 でも悠長に下がってればいいというわけでもない。俺たちはこれ以上オウラムの奴らが前に来ないように攻撃をし続けなければならない。そうしないとここまで一気に攻め込まれたら、それこそ全てが終わりだ。沢山の怪我人の命も俺たちも……そしてこの線路は人種の国に通じてるわけで、これが奴らの手に渡れば、戦略的にとてもこちら側にとって大きなリスクとなるだろう。そんなことがあってはならないんだ。だから俺たちは下がったがシールドを展開して簡易的な防衛陣地を築き応戦を繰り広げてた。防御に徹して、銃弾を撃ち続ければ、流石のオウラムの戦闘員どもも、おいそれとは近づけなくなってる。こっちがなんと耐えてる間に、アンティカが敵を減らしくれることを願おう。そうなればまだ……まだ生き残ることができる。

 失敗は学習して二度目がないようにしてある。地中からの襲撃、遠くからの狙撃、それにそのほか色々、拠点があってそこを中心に戦えれば、人種はその連携で強固になれる。やっぱり個で見れば人種は最弱だ。だからこそ、俺たちはこうやって集団で戦う術を身につけてきた。しばらく俺たちは列車の周辺で粘っていたが、森からちらほらとアンティカが見えるようになってきた。どうやらはこっちを対処するために集まってきてくれたらしい。さらに続くように、魔族の軍団が空からやってくる。

「皆さん、あとは私たちにお任せください」

 そういった子は女の子だった。それも可愛らしい子だ。俺は誰? とか思ったが、周囲のみなさんが全員敬礼してる。相当の大物? そう思ってると目があった。そしてニコっと微笑んで背を向けた。彼女はそのままゆっくりと空に上がってそして森の方へと飛んでいく。浮遊魔法……人種にはできないとされる魔法。人にしか見えなかったが、彼女は人種ではないのか? 彼女に続き魔族の軍団が森へと進軍していくのを見送って、俺は「魔王?」とつぶやいた。

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